2009年6月12日 (金)

「あ・い・う・え・お」・「け・け」:成功する社長の条件と評価

 流通科学大学の「実学」講義の一環として、竹原信夫(『”日本一”明るい経済新聞』代表取締役・編集長)をお招きした。この新聞については、http://www.akaruinews.com/ を参照。

 この不況下にも成功している中小企業の社長は多々おられるという講義であった。そして結論として、そういった社長の成功の条件は「あ・い・う・え・お」と指摘された。

 これに加えて、私は「け・け」を加えたい。「あ・い・う・え・お」という表現は一般的であるが、それを「あ・い・う・え・お」・「け・け」とした方が、より印象的?で覚えやすいというのが「上田流」である。

 happy01 あ: 明るい性格。常に前向きの性格ということである。たとえ泣きたい時でも笑うのが大人である。これは、ダイエー創業者の故・中内功氏が好んで色紙に書いた「ネアカ、のびのび、へこたれず」と共通している。

 heart01 い: 意志が強い。粘り強い。簡単にあきらめない。パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、「松下さんの事業成功の秘訣は何ですか?」と質問されて、「成功するまであきらめないことです」と応えたそうである。

 heart04 う: 運が強い。これは自分で思い込めばよい。たとえ交通事故に遇っても、「何て運が良いんだろう。死なないだけ運が良かった」と考える。「有り難いことだ。これは安全運転しろという警告なんだ」と思う。「運が強い」と思うことは「プラス志向」の基礎である。

 lovely え: 縁を大切にする。いわゆる人脈を作ることである。この場合、自分だけよかったらよいという人の縁は広がらない。「情けは人のためならず」。他人にできるだけのことをしてあげると、それは自分に返ってくる。これを当然のことと思って自然体で実行する。

 annoy お: 大きな夢を持つ。夢が実現することは難しいが、その夢自体が小さければ、その夢よりも大きく自分は絶対に成長できない。小さな夢は、それで自分の成長を制限してしまう。夢は大きい方がよいに決まっている。たとえば私の夢なんて、もう50歳を超えているというのに、恥ずかしくて言えないほどに超巨大である。何と言っても私は少なくとも100歳まで生きると宣言している。100歳まで生き延びるようなら、次は120歳まで生きると決めている。私の夢は「生涯現役」である。

 以上の「あ・い・う・え・お」が、竹原氏の講義の中での指摘である。それに加えて以下を私は強調したい。

 heart02 け: 健康であること。、これまでに私も多数の経営者の方々にお目にかかってきた。また自分自身も2006年に会社を設立した。それらの経験を想起すれば、やはり健康でないと社長は成功しない。「英雄、色を好む」というが、それと同時に「英雄、美食を好む」と私は思う。そういった基本的な好奇心と欲望がビジネスの成功欲にも通じる。その原点は、何よりも健康でなければならない。

 thunder け: 決断ができること。決断=意思決定できない社長は、社長としての存在意味がない。この場合の決断とは当然、それに対する責任が伴う。自分が責任を取らないで部下や集団に責任を押しつける。こんな自己保身の社長には誰も従わない。おそらく部下は面従腹背になるであろう。まさにリーダーシップの欠如である。

 以上、社長の成功の条件は「あ・い・う・え・お」・「け・け」である。そして最後に、作家の藤本義一氏が別の意味で述べていたが、それを借用すれば、社長の成功の評価は「あ・い」から始まるあ・い=愛。現在放映中のNHK大河番組ではないが、愛がなければ、社長は務まらないと私は思う。さて何を、または誰を愛するのか。お金? 従業員? 自分自身? 正義? 社会的弱者? 権力? 「あ・い・う・え・お」・「け・け」によってビジネスが成功するとしても、その評価は「愛」によって左右される。

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2009年4月26日 (日)

「実学」の探究:「宮本理論」から学ぶ

 表題の「宮本理論」の宮本とは、剣豪の宮本武蔵のことである。津本陽『日本剣客列伝』(講談社文庫)は、私の入浴時の愛読書の一つである。同書の中で宮本武蔵について著者は次のように述べている。

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 真剣勝負の場では、小手先の技はすべて通用しない。芸道の伝授にあたって、初伝、中伝、奥伝などと段階をつけるが、殺しあいの場で、奥伝の技と初伝の技の区別はないというのである。

 当時、諸国流派のなかには、形の数が百五十から二百に達するものがあった。そのような形は、ほとんどが敵が死人か藁人形のように動かない対象でなければ通用しないものであると、武蔵はみていたのである。
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 私は、以上の指摘を次のように読んだ。正しいかどうかは検討を要するが、少なくとも問題提起に値すると思われる。

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 ビジネスの現場では、小手先の理論はすべて通用しない。経営学の教育にあたって、初級・中級・上級などと段階をつけるが、実際のビジネスの場で、上級の理論と初級の理論の区別はないのである。

 特に今日のような不況時には、ビジネス書が次から次に出版されている。そのような書籍は、そのほとんどがすでに過去の事例の受け売りであり、そのままでは企業経営や営業の最前線では通用しないものである。
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 著者の津本氏は、次のように続ける。「彼は空疎な剣術の形式を嫌い、あくまでも実戦に役立つ技を弟子たちに教え、破邪顕正の力を伝えようとしたが、そのため孤高の険路を歩まざるをえなくなった。・・・剣術は・・・すでに教養化していた。命を懸けての闘いに勝つために考え抜いた武蔵の理論は、凡庸な門人たちに理解できるものではなかった」。

 以上は、「命を懸けての闘い」に臨んだ経験をもつ武蔵の独自理論が、そういう経験のない凡人には理解できないことを指摘している。また、そもそも「命を懸ける」必要のない凡人に不必要の理論であったから、その理論は一般に受け入れられなかった。

 この意味では、経営における「実学」を探究するためには、やはり「命を懸けた実戦=実践」の体験(少なくとも疑似体験)が不可欠である。さらに命を懸けている人々のための内容でなければならない。単なる知識や情報としての経営理論は教養のために必要であるが、それが実戦に役立つかは別の問題である。

 たとえば「実学」としての理論は、ビジネスの基本は報告・連絡・相談(ホウレンソウ)するというような内容なのかもしれない。実学への探究は続く。

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2008年12月22日 (月)

株式会社ユー=エス=イー・吉弘京子副社長のご講義

 12月9日(火)の私の企業論の講義で、株式会社ユー・エス・イーの吉弘京子副社長をお招きして、ご講義を賜った。http://www.use-ebisu.co.jp/

Dsc02228  情報通信技術(ICT)会社の老舗として、同社の歴史は日本の情操産業の歴史でもある。吉弘京子副社長のお話で私が今さらながら感心したのは次の2点であった。

 1.「ビジネスは人の心を動かすことである」。

 2.「営業は断られてから始まる」。

 この2点を自らの体験を交えてお話しいただいた。以上は簡単な命題で説明の必要もないだろう。それが体験を交えて話されると説得力があり、心に響く。けっして仕事はあきらめない。ダイエーの故・中内功は「ネアカ、のびのび、へこたれず」と述べたが、同じ趣旨だ。

 貴重な時間と貴重なメッセージを学生のみならず私にも頂戴して、吉弘社長に心から御礼を申し上げたい。

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2008年10月21日 (火)

流通科学大学「実学」講義始まる:感動の連続

 私が担当している講義「21世紀の業界展望(後期)」が始まった。流通科学大学の「実学」を代表する看板講義のひとつである。

 10月4日(水)には第一生命保険相互会社・大阪総局・大阪営業推進部・大阪マーケティング推進課長・大阪営業部課長の木村徹さま、同社・大阪中央支社・大阪第一コンサルティング営業室・大阪第四オフィス・特別営業主任の伊藤理沙さま、次いで10月8日(水)には丹陽信用金庫・人事部人事課・課長代理の大西大輔さま、同金庫・事務部事務指導課・課長代理の神本佐和子さまからご講義を賜った。

 この両方の講義とも、私は不覚にも涙ぐんでしまった。講師の皆さんの熱弁が理由である。両社の企業形態は、共通して株主の利益を追求する株式会社ではなく、前者は相互会社、後者は協同組合である。こういった相互扶助を目的にした企業が原点に立ち返り、独自の経営戦略を追求するようになれば、日本経済の閉塞感が打破できるのではないか? このようなことを考えさせていただいたご講義であった。

 もっとも第一生命は多様な事業活動の展開のために、株式会社に転換することが予定されている。またベトナムに進出している。「Daiichi Life」の大きな看板はホーチミン市で散見されるようになっている。

 第一生命の伊藤さんは流通科学大学の卒業生であり、最優秀の成績を維持するトップ営業レディである。中学生の時に阪神大震災に遭遇し、自宅に被害があったそうでが、その時に家族の絆を実感したそうである。この話にホロッとした。

 伊藤さんから営業トップの秘訣を話していただいた。「口癖が人生を作る」。絶対に成長しない成功しない人の言葉は、「だけどでもどうせだってできません」のbleah5Dhappy02である。今後これらは禁句にしよう。

 目標達成のために伊藤さんが実践していることは次の「か・き・く・け・こ」である。「か:紙に書く。き:期待する・希望をもつ。く:口に出す。け:継続する。こ:行動する」。

 丹陽信用金庫の大西さんは、金融機関の機能や信用金庫の独自性そして最新の経営事例を説明して下さった。さらに同金庫のCI(企業アイデンティティ)である「”よろず相談”信用金庫」について、ご自分が作成したDVDを見せていただいた。これが感動であった。

 「お年寄りご夫妻が、丹陽信用金庫の窓口で年金の中から2000円を引き下ろしに来る。天気やお孫さんの話を馴染みの窓口担当者と交わして、それから買い物に行く。このご夫妻にとって信用金庫に来ることが楽しみになっているし、健康にも役立っている。ATMを利用してもらった方が効率的であるが、それは企業側の都合である。顧客の幸福や満足を追求することが私の仕事だ。この仕事に私は誇りをもっている・・・。窓口担当者のセリフである」。

 信用金庫の原点に帰り、効率性を最優先にしない不器用に仕事をする。もちろん利益がなければ、こういった企業は存続しない。本年3月期の経常利益は225億円超、預金量は5384億円に達している。この利益は兵庫県下で第2位であり、このビジネスモデルは成功と判断される。また2007年の毎日新聞の調査によれば、都市銀行を含めた「メインバンクはどこですか」という質問で、丹陽信用金庫と回答した企業数が兵庫県下で最も増加している。

 最近の世界金融危機の中で、金融機関の「貸し渋り・貸し剥がし」の動向が注目されている。これによって実体経済の悪化が加速される。丹陽信用金庫の経営理念・経営方針から考えれば、「貸し渋り・貸し剥がし」はありえない。こういった時代だからこそ同金庫は最も頼りにされる金融機関になりうる。メインバンクと考える取引企業が、今後さらに増えて当然であろう。

 仕事を通して生き甲斐を見つける。労働力の売買だけでなく、その中から精神的な満足感を得る。これはお金には換算できない。お二人の講義から、仕事・職業・労働の意義や本質を改めて考えさせられた。仕事の対価としてお金は欲しいが、それだけでは面白くない。それでは「仕事が面白い」とは何か? 面白い仕事ができれば、それは幸運で幸福である。

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2008年5月28日 (水)

イオンとダイエー:特別講義の紹介

 流通科学大学の「実学」講義の一環である「21世紀の業界展望」では、学外の実務家の方々を特別講師として迎えて、ご講義を賜っている。そこで流通業界については以下の講義が開講された。

5月7日(水):イオン株式会社 西日本カンパニー人事教育部部長 田中恒星氏
「真のグローカル企業を目指して:新たな成長に向けた変革と挑戦」

5月14日(水):株式会社ダイエー 人事・人材開発本部人事企画部 久保 敦氏
「21世紀の業界展望:小売業再編の中で」

 かつては強力なライバル関係にあった両社も、今ではイオングループの一員として、それぞれの個性を競う関係に変化しているように思われた。

 イオンの田中氏は、少子高齢化の日本社会をグローバル化で乗り切ることを明言された。このように紹介すると、攻撃的な企業のように思われるのだが、他方で、「創業250年」の伝統と「社会貢献」の重要性が指摘された。流通最大手企業の風格を感じた。

 イオンの前身である岡田屋の次の家訓が印象深い。
 1.下げて儲けろ、上げて儲けるな。
 2.大黒柱に車をつけよ。


 1は価格のことである。「便乗値上げ」で儲けるなんてとんでもない 誠実な商売をするという意味である。2は即座に理解できない。「動かしてはいけ不動のものに車輪を付けて変化に対応する」という意味である。この家訓によってイオンは「変化に対して抵抗がない」。

 ダイエーの久保氏は、流通小売業界におけるダイエーの先駆性を強調された。創業者・中内功の開拓者・革命家としての情熱が社内に継承されていると感じた。流通小売業において利益率を上げると同時に販売価格を下げる「切り札」とも言えるPB(プライベート=ブランド)は、ダイエーによって最初に開発された。

 1961年:インスタントコーヒー。1964年:ブルーマウンティングンゼ(下着)。1970年:ブブ(カラーテレビ)・・・。1980年にPBの総称「セービング」が発売され、その後に2回の改訂を経て、1996年には「プライベートブランド製造業者協会」の優秀賞を受賞した。そして2007年にイオンの「トップバリュー」がダイエーで販売開始され、「セービング」は歴史の歩みを終えた。

 ダイエーは、「小売業界の先駆者として業界や社会に対して大きな影響を与えてきた」。これは、だれもが認める事実である。このDNAをダイエーが継承することで、イオングループの中にあっても、その個性を今後も発揮できる。また、そうあってほしと私は思う。

 注:イオンは本年8月に純粋持株会社を設立し、その傘下にグループ企業を集約させる。このことは、イオンがダイエーの株式を所有するのではなく、この持株会社がイオンやダイエーの株式を所有することを意味する。持株会社がグループ企業を統括し、それと同時にグループ各企業は、より独立性や個性を発揮できる。イオンの大黒柱に車をつける方法で、ダイエーの開拓DNAが温存されたとみなされる。

 

 

 

 

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2008年5月25日 (日)

大阪府橋下知事の「大阪ミュージアム構想」:やっぱり「商都復活」やで!

 5月21日に大阪府の橋下知事は、「大阪ミュージアム構想」を発表した。その内容は、メールマガジンによれば、以下のように述べられている。

 「京都や奈良は「古都」、神戸は「港まち」という空気感がありますが、大阪は一言では表現してきませんでした。これからは地域住民や市町村が主役となって、大阪の良さや魅力を再発見し、府も一緒に演出をし、「大阪といえばミュージアム」というイメージを国内外へ向けて発信していきたいと考えています。大阪ミュージアム構想は、まだコンセプトをまとめた段階です。皆さんのご意見をお待ちしています!」

 注:大阪府メールマガジン「維新通信」は、大阪府政の最新情報をタイムリーにお届けするメールマガジンです。登録内容の変更・配信停止の手続き・バックナンバーは下記のアドレスにて。http://www.pref.osaka.jp/magazine/index.html
 編集・発行:大阪府広報室広報報道課 ダイヤルイン電話:06-6944-6007
http://www.pref.osaka.jp/     mailto:koho-g07@sbox.pref.osaka.lg.jp

 昔から大阪は「商都」と呼ばれた商売の都市であったように思われる。こういう伝統から脱却して、カタカナ語の「ミュージアム」が提唱されている。ウ~ン。50年以上大阪に住んでいる者として違和感がある。

 私見では、アジアと共に成長する「大阪商都」復活。在日韓国人・朝鮮人を始めとして、大阪にアジアの人々が住みやすい環境を作る。アジアの人々が日本に住むなら大阪。中小企業の元気な大阪。小売店・商店街が繁盛する大阪。「アジアの屋台」といった猥雑なイメージが大阪だと思う。こういった中に飲んだり食ったりという「食い倒れ」の大阪が絡んでくる。アジア料理店の一番多い地域は大阪。このような構想はどうか。ビジネスは東京商売は大阪猥雑なイメージで元気な大阪。こんなコンセプトで他の都市と差別化して、大阪経済を活性化する。

 たとえば大阪府による箕面森町(みのお・しんまち)の住宅開発も、このまま人口減少が継続することを考えれば成功は疑問だが、大阪全体で外国人の居住者が増加すれば、十分に採算が合うのではないか。アジアに活路を求める。そのためには、少なくとも英語が通じる環境整備も重要である。こういう観点からの教育改革を推進する。このような施策を具体化するために、「大阪経済特区」つまり規制緩和を政府に強力に求める。大阪の活性化の決め手はこれと私は思う。

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2008年5月18日 (日)

昨日はティッシュの配布:その教訓

 昨日は、箕面船場ライオンズクラブの活動(アクティヴィティ)の一環として、献血の宣伝活動をした。ティッシュを配布して、献血の場所まで通行人を誘導する仕事である。「献血」という手持ち看板を片手に持ち、「献血にご協力をお願いします」と言いながら、ティッシュを配布する。heart04

 場所は、大阪府箕面市の新都心と言われているヴィソラというショッピングセンターである。ここは、イオン系のカルフールを中核店舗としており、映画館やレストラン・フィットネスセンターなどが集積している。

 ライオンズクラブが協力する献血活動は、大阪・和歌山で必要とする献血量の約13.7%に達している。残念ながら、私はイギリスを訪問したことがあり、狂牛病の感染を防ぐという目的で献血は禁止されている。ただし、それまでの私は学生時代から献血を継続しており、日本赤十字社から50回献血の表彰をうけたことがある。100回を目標にしていただけに、かなり無念である。

 このティッシュ配りが、なかなか面白い。このブログで以前にも紹介したが、通行人が1人か複数かを確認し、その人数に応じたティッシュを袋から出して、相手の目を見ながら、笑顔でティッシュを渡す。ヨチヨチ歩きの子どもからもティッシュをねだられることも何度かある。これは可愛い。他方、まったくティッシュ配布を無視する人もいる。タダでもいらないということだ。その時は少し不愉快になる。weep

 このティッシュ配布の休憩時に献血会場のテントに戻ると、意外なことに気がつく。ティッシュを受け取らない人や、愛想の悪い人が献血に来てくれている。配布時の不愉快が解消される。当然のことながら、ティッシュを受け取るという行為と、献血をするという行為は別個である。頭で理解していながら、これを実際に見聞したのは初めてである。

 人間は面白い。上述のように表情や態度と本心が一致しないことが多々ある。人間の表情や態度から本心を判断してはいけない。ただし、表情や態度から本心を読むこともできる。おそらく、その読解の可否は一瞬である。本心を示す表情や態度は一瞬しか出ないからだ。また、その表情や態度は個々人で相違していたり、クセがあったりする。

 こういった人間観察は、ビジネスの本質であろう。人間観察の出来・不出来が、ビジネスの成否につながるとも言えるのではないか。人間の本心の読解力を修得する。これは永遠の課題だ。

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2008年4月19日 (土)

ジャバグループ・株式会社ロートレ・アモン:門田さんのご講義

 流通科学大学における「実学」講義の一環である「21世紀の業界展望(A)」が本年度も始まった。本日は、神戸に本社を置くジャバ=グループの中の1社、株式会社ロートレ・アモン門田(もんでん)しのぶ氏をお招きした。

1  ジャバグループは神戸を本拠にして、神戸のエレガントな雰囲気にこだわったデザインを意識しながら、アパレル製品を日本や世界に発信している。写真は本社ビルであり、グループ企業11社が入居している。その中の(株)ロートレ・アモンは、資本金5,125万円、売上高154億4,000万円、従業員数は620人。婦人服・服飾雑貨の企画・卸・販売を事業内容としている。全国の百貨店・ファッションビルなどで160店舗を展開している。

 同社の門田氏は、SHOP運営部・採用教育リーダーとして大学4年生の採用活動と新入社員教育の両方を担当され、現在が最も多忙な時期である。ご来学に感謝を申し上げたい。

 繊維・アパレル産業は年間21兆円の市場規模を日本で持っており、それは家電や自動車の20兆円を上回っている。ただし零細企業が多数あり、「多数乱戦市場」が特徴となっている。Pict0013現在のロートレ・アモン社の基本戦略は、SPA(Speciality Store, Retailer of Private Label Apparel)ブランドの積極的な展開である。

 現在のビジネスは一般に、「プロダクト・アウト」から「マーケット・イン」の時代に移行している。つまりアパレル業界で言えば、「企業によって作られる流行」から「生活者が自ら作り出す流行」に変化している。 それに対応した業態が、SPAである。また個別ニーズに対応したブランド展開が必要であり、オーダーメードスーツのブランド展開が重視される。これは在庫負担を軽減し、顧客の固定化に寄与する。

 2000年以降、婦人服のマーケットは30歳代~40歳代に移行し、それは今後20年間は持続するとみなされる。2006年の人口分布は20歳代よりも30歳代が多くなっている。この世代の婦人服のキーワードは「本物・着心地・自分らしさ」である。

 以上、今後のファンション・アパレル業界の動向を門田さんは、優しい語り口で説明された。また日本の主要な女性誌のポジショニングの分析結果を紹介していただいた。縦軸に自分志向他人志向横軸にエレガントカジュアルを取れば、日本の女性雑誌が、いくつかに分類できる。最近の注目は「アラサー(Around Thirty):30歳周辺」であり、その中には『GISEL』・『GLITTER』・『GLAMOROUS』・『Ane Can』・『BLENDA』・『ViVi』・『SCawaii!』が含まれる。これはエレガント志向の強い「OL系」および「お姉系」と重複している。 こういった情報について普段は寡聞であって、私にとって非常に勉強になった。

 最後に門田さんは、採用リーダーとして「求める人物像」および「就職活動のポイント」について話していただいた。・明るく常に前向きな人、・広い視野を持つ人、・目標を設定しチャレンジする人。こういった人材が欲しいと指摘され、さらに「日頃から大人と人と会話することが就活のポイント」と話された。コミュニケーション能力は、あらゆるビジネスの基本である。

 貴重なご講義を賜った門田さんに、改めて感謝を申し上げたいと思う。ますますのご活躍をお祈りいたします。

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2008年4月 6日 (日)

剣客商売と学者商売

 『剣客商売』は池波正太郎の代表作のひとつと言ってよいだろう。江戸の風物や名物料理が、それぞれの物語の中にさりげなく挿入され、それが池波の独自の世界を作り出している。日本の江戸文化を感じ取ることができる名作である。

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 主人公の秋山小兵衛は、剣客の世界から引退しているのだが、その腕は今も健在という設定である。この秋山小兵衛は「必殺シリーズ」と並ぶ藤田まことの当たり役と思われる。剣を取った時の厳しさと日常の柔和な表情の落差が、必殺シリーズの中村主水と同様に、藤田の持ち味を十分に発揮させる。余人をもって代え難い適役である。TV・CATVで何度も放映され、DVDが発売中。レンタルDVDもある。

 このDVDを見ていると、剣客商売とは、剣客という厳しい修行の世界から脱力して、悠々と生活を楽しむ生き方を表現している。かといって剣客の姿勢や矜恃が消滅したわけでもない。剣客として、さらに人間としての生き方を踏み外してはいない。剣の道を一筋に歩む柳生十兵衛や柳生連也齋のような剣客もいれば、秋山小兵衛のように老後を「第二の人生」として楽しもうとする剣士もいる。後者は、より人間的であり、一般の人々から見れば、より身近な存在である。

 この「商売」という日本語には、「ビジネス」という外来語にはない楽しさや猥雑さを感じる。恵比寿さんのお祭りでは「商売繁盛で笹もってこい!」であって、やっぱり「ビジネス繁盛」とは言わんわな。

 このような意味で、「学者商売」を今年度の私の課題としよう。自己に厳しく禁欲的に研鑽を積み重ねる修行の道を歩む「学者」もいれば、そうでない学者がいてもよい。学ぶこと自体の知的な楽しさや、新しい事実を発見する驚きや感動を楽しむ学者を目標としてみたい。肩を張らない。気負わない。無理しない。楽しく仕事する。そうすれば、学生も楽しく勉強するだろう。「学者商売」。この意味を「実学」とともに追究してみよう。

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2008年1月17日 (木)

「チャンス」が見えない!:「運命と人生を決するようなとき」を認識するためには?

 チャンスを逃すな チャンスをつかめ こういったかけ声はよく聞くが、この指摘は「不十分」である。なぜなら、そもそもチャンスそれ自体が見えない人は、チャンスを認識できない。当然、チャンスを逃さないようにしたり、チャンスをつかんだりすることができない。したがって、このような実効性の低い「かけ声」は、あまり有益と言えない。

Cimg4227  では、チャンスが見えるようにするためには、どうすればよいか? この問題を以前から私は考えていたが、まったく偶然に、先週の金曜日の中内丈滋氏は、遠藤周作氏の次の文章を引用した。

 「ひとりの人間には、その運命と人生を決するようなときが、生涯に一度はあるもので、それを乗り切った瞬間、彼の未来は全面的に変わる」 (遠藤周作)。

 この「運命と人生を決するようなとき」は「チャンス」と同様の意味をもっていると考えてよい。それでは、それを認識するためにはどうすればよいのか。「運命と人生を決するようなとき」を認識・自覚しなければ、何となく人間は時間を過ごしてしまうのではないか? そして後になって、ようやく「その時」であったことに気づく。

 「あなたの運命や人生にとって重要なことだ」と両親や先生・先輩から言われても、それを聞き流す人がいる。これまでに私も何度か学生に話してきた。しかし「フゥーン」、「そんなものかな---」、「でも、俺には関係ない!」。こういう反応で終わりということが多かった。これが「チャンス」や「運命と人生を決するようなとき」を認識できない人の実例である。

 このような実例を考慮すれば、チャンスをつかむためには、素直さが必要であろう。換言すれば、ある意味での「バカさ」が必要なのだ。いろいろ理由や理屈をつけて、チャンスをつかまえる行動を回避するのではなく、バカになって、とりあえずやってみる。この愚直さが必要であると思う。これが、チャンスをつかむ第1の原則であると私は思う。欺されたと思って、ともかくやってみる。

 第2の原則は、自分から努力や苦労を経験することである。努力や苦労に必ず付随する苦悩・苦痛・不快感・不満・不安・渇望があるからこそ、そこから逃れるためのチャンスが見えるのではないか? まるで「救世主」のような、まるで「暗黒の中の光明」のような「チャンス」が見える。努力や苦労を経験しなければ、このチャンスが見えないのではないか?

 チャンスをつかむためには、チャンスが見えることが前提である。そしてそれは、すべて自己責任である。第1と第2の原則に早く気づけば気づくほど、その人はチャンスをつかむ可能性が高い。成人式を迎えた青年に向けて、以上のメッセージを贈りたい。

 

 

 

 

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2008年1月11日 (金)

中内丈滋氏を特別講師に迎えて

 流通科学大学において私が担当する企業論の講義で、「投資信託のカリスマ」と評される中内丈滋氏を特別講師としてお招きした。

Cimg4180  日本の財政赤字は、国家破綻の懸念があるほどに深刻であり、その危機感をもつことが重要である。そういった危機から自分の家族・資産を守るためには、外貨建ての預金・投資に注目しなければならない。そのためには、東南アジア投資に注目することである。

 こういった要旨で中内丈滋さんは講義された。中内さんは、流通科学大学の創立者であり、ダイエー創業者の中内功氏の「おいの息子」という間柄である。

 この講義の特徴は、社会人の方々に日常の大学の教室を開放したことである。これまでは社会人向けの公開講座があり、それに学生が加わる場合が多い。しかし今回の企画では、学生向けの通常の講義に社会人の方々が加わっていただいた。これは、学生にとって非常に刺激になることが証明された。

Cimg4250  学生の感想文を見れば、「社会人の方々が熱心にメモを取っていることに感心した」といった内容があった。講義での受講態度について反省材料になったことは、私の狙い通りだ。また、「国家破綻」の警鐘についての驚きや、アジア諸国でビジネスが可能であることについて認識を新たにした内容もあった。総じて、学生には知的な刺激を提供したと思う。

 また次の機会に、こういった企画の講義を設定したいと思う。最後に、社会人の皆さんも中内丈滋氏の貴重な情報とコメントについて、喜んでいただけたと思う。

 

 

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2007年12月27日 (木)

テレビ会議

 ラオスとカンボジアについて連載、ベトナムの証券法施行細則の紹介、ベトナム投資法の概要などのブログ執筆の企画がありながら、なかなか時間が取れないでいる。

 特にベトナム証券法の施行細則やカンボジア証券法の草案は、おそらく日本で最初の公開でないかと思われる。Coming Soon.請う!ご期待。

 今日は、まったく偶然であったが、神戸と大阪での「テレビ会議」に出席した。いずれも私が主に話した。これからは東京と大阪を往復する時代ではないのかもしれない。専用回線やインターネットがあれば、もちろん海外も同様に利用できる。

 以前に、ハノイのHSBC(香港上海銀行)でホーチミン市の担当者と話したことがある。ベトナムでも遠隔会議システムは利用されている。ただし、この時は映像がなかった。

 こちらの机の延長にスクリーンがあり、その中に話し相手の机がつながっている感じになっている。空間を超えて連続した長い机の端と端で話しているような気分になる。

 ただ気になったことは、会話が重なると音声が乱れることだ。これは、ある意味で会話のルールを自然に守らされることになる。最後まで相手の話を聞いてから、それに応える。当たり前のことが、通常の会話ではできていないと反省させられた。

 こちら側の人間で名刺を交換し、会議の主催者がそれをコピーして、スクリーンの中の相手側にFAXで送る。これでテレビ会議の名刺交換が終了する。

 会社でも大学でも、こういったシステムが個人と個人間で普及すれば、新しい仕事や勉強のスタイルが生まれるだろう。すでにメッセンジャーやスカイプで映像を伴うインターネットのチャットが可能である。本格的な活用方法が検討されてもよい。

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2007年12月25日 (火)

東京に出張した:東京のビジネス

 クリスマスの日は人出が少ない。新幹線の座席にも余裕があった。

 日帰りの東京出張であったが、収穫は大きかった。東京での情報収集は欠かせない。

 東京の「何、言ってやんだ!」といった口調のビジネス姿勢は、関西の「何、言うとんねん!」と共通していて波長が合う。東京のビジネスの特徴として、「何を言われているのですか!」スタイルという先入観をもっていたが、そればかりでないことが理解できた。

 この「何、言ってやんだ!」式のビジネスは、ベトナムでも通用するであろう。率直・元気・ユーモア・したたか。アジアビジネスの根底に流れる共通点かもしれない。すでに関西式がベトナムで通用することは実証されている。

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2007年12月 3日 (月)

竹原信夫氏大いに語る:『日本一明るい経済新聞』編集長を特別講師に迎えて

 先週の土曜日、流通科学大学の「実学」講義の一環である『21世紀の業界展望』が開講された。私が、この講義を担当して4年になる。

 この日は、産業情報化新聞社の代表取締役・『日本一明るい経済新聞』(月刊)の編集長である竹原信夫氏を特別講師に迎えた。http://www.akaruinews.com

Photo  竹原氏は、日本工業新聞社の大阪経済部長を経て、1992年に上記の新聞社を設立された。 現在のマスコミは暗いニュースが多すぎるという観点から、ともかく明るいニュースを提供しようという趣旨で『日本一明るい経済新聞』が創刊された。

 写真は、講義終了後の記念撮影。竹原信夫氏は、NHK「おはよう関西」、毎日放送「ちちんぷいぷい」に生出演中である。土曜日午後の時間であり、通常の水曜日よりも受講生は少なかったが、質疑応答はより活発であった。竹原氏の「明るい講義」が、受講生の積極性を促したのだと思う。

 明るく元気な中小企業の豊富な取材経験から、「ビジネスで成功する社長の条件「あいうえお経営」である」と指摘された。それは次の通りである。

 あ: あかるい(=明るい)性格の社長
 い: いし(=意志)の強い社長
 う: うん(=運)が強いと思っている社長
 え: えん(=縁)を大切にする社長
 お: おおきな(=
大きな)夢をもっている社長

Da21fc610af48bc23989d08d627b50ee  ここでは省略するが、「あいうえお」の各社長の特徴について、竹原氏から具体的・詳細に講義では説明していただいた。この「あいうえお経営」は、具体的な成功事例から抽出された帰納法的な結論である。

 この場合、一つの反証があれば、この結論は成立しない。性格が明るい社長でもビジネスに失敗する事例は多いと考えられる。その反対に、性格が暗い社長でもビジネスに成功する場合もありうる。これが企業経営の妙味であると私は思う。しかし少なくとも、「あいうえお経営」を実行している社長は成功の可能性が高いと言うことができるであろう。

 最後に、ご多忙の中で、わざわざご来学を賜り、貴重な講義を賜った竹原氏に感謝を申し上げたいと思う。受講生より以上に私自身が、企業経営について大いに勉強させていただいた。これは「役得」というべきなのであろうか。改めて心からご講義の御礼を申し上げます。

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2007年11月17日 (土)

関西財界人との夕食:励ましを賜った

 ある関西財界のOBの方と夕食をご一緒した。ベトナム現地法人ロータス投資ファンド運用管理会社」の日本における活動について、ご助言を賜るためだ。

 すでに投資運用を任されている日本の適格機関投資家(「金融商品取引法」(2007年9月末施行)での用語)は、ロータス社に対して「見る眼がある」というお言葉を賜った。

 確かにそうである。現地スタッフは優秀だし、運用成績(トラッキングレコード)は従来の投資ファンドに比べて最上位である。ただ問題があるとすれば、創業してから1年未満という実績の不足だけである。どのような企業でも実績には時間が必要である。そのための忍耐が必要である。こういう励ましのお言葉を頂戴して恐縮であった。

 ロータス社のソン会長とタイ社長は、『プラチナクラブ』という雑誌(11月号)に写真入りで掲載されている。ロータス社の商品である一任勘定の「ラップ口座」の最低投資金額は10万ドルであるから、こういった富裕層向けの限定読者の雑誌で紹介されても不思議ではない。

 ただし金融商品取引法において、ロータス社は、ベトナムでは公認の投資運用会社であるが、日本では無登録であるために、第一種金融取引業者(証券会社など)の代理や媒介がなければ、勧誘を伴う取引はできない。簡単に言えば、日本国内の一般投資家が直接にロータス社と取引することはできない。同社のホームページを見れば、そういった投資の申し込みが個人からあっても、取引は断ると記載されている。なかなかコンプライアンス(法令遵守)が徹底している。

 同社自身が、日本の投資運用業に外国会社として登録することも考えられる。そうすれば、日本での営業が可能である。また、ロータス社が登録しなくても、日本の金融取引業者の中で有価証券関連会社とは今でも取引できる。

 以上、金融商品取引法に少し詳しくなった。この点については、財務省近畿財務局を訪問し、さらに弁護士の意見も聴取した。まさに「実学」である。

 

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2007年10月 2日 (火)

中内功『新装坂・わが安売り哲学』千倉書房の刊行

 ダイエー創業者・故・中内功を再評価する動きがある。死後3年、経営者として失敗した中内功は、事業家・思想家として認識されるされるべきであると、大塚英樹『流通王・中内功とは何者だったのか』(講談社、2007年)が指摘している。これは本ブログでも紹介した。

 さらに本年9月に千倉書房から、中内功が執筆し、後に絶版になった『わが安売り哲学』が復刊された。これは中内の思想を示す原点である。私は旧版を古本で読んだことがあるが、今回はハードカバーの本格的な装丁である。

 本書で紹介されているダイエーと松下電器の社運を賭けた「価格戦争」も、今から思えば、最終的にダイエーが勝った。販売価格を小売店が自由に決められる「オープン価格」が、今日では一般的となり、松下電器が固執した「メーカー指定価格」は消滅したからである。この本は1969年に出版されている。その先駆性は明白である。

 新装坂の出版は、以下のように新聞各紙でも紹介されている。また、5冊以上の購入の場合は、2割引となっている。多数の人々に読んでもらいたい好著である。日本の流通革命にとって、この本は「バイブル」であると同時に、今後も広く世界に読み続けられる著書となるであろう。ぜひ、近い将来の英訳版の出版が望まれる。こんなビジネスピープルが日本に存在したことは、世界の日本人観を修正するかもしれない。

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2007年9月26日 (水)

「パラダイム」の相違?

 後期の2年生のゼミの教科書として、ライトワークス監修、岡本義行+江口夏郎著『クリティカル・シンキング』(ファーストプレス、2007年、1200円+税)を使用することにした。

クリティカル・シンキング (ライトワークスビジネスベーシックシリーズ) Book クリティカル・シンキング (ライトワークスビジネスベーシックシリーズ)

著者:岡本 義行/江口夏郎
販売元:ファーストプレス
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 同書は、最近の若いビジネスピープルや大学生の論理力を鍛えるための好著である。ただし、ただ読むだけでなく、同書で学ぶ「クリティカル・シンキング」の応用が大事なのだから、具体的な事例を何度も取り上げて、その考え方を体得するようにしなければならないだろう。

 最初の部分で興味深い指摘は、パラダイムを強く意識して他人の意見を聞き、また自分の意見を言うということである。このパラダイムとは、ものの見方、考える枠組みのことである。

 ここで私見では、意見の相違パラダイムの相違を区別することが重要である。たとえば、自民党の総裁選挙における福田さんと麻生さんにパラダイムの相違はあるのか? 両者の間には確かに意見や政策の相違はあるが、パラダイムの相違はないように思われる。では、自民党と民主党はどうか?

 少なくとも、意見交換・議論して妥協点を見つけ出すためには、パラダイムが同じであるという前提が必要である。上記の書物によれば、「どのようなパラダイムでものを見るかによって、何が正しいかが決まる。パラダイムを定義せずに何が合理的か、何が論理的かをいうことはできない。」(p.11)と指摘されている。

 パラダイムが異なる人との意見を戦わす場合、相手のパラダイムそれ自体を明確に示すことをしなければ、結局は意見のすれ違いになって時間が無駄になる。パラダイムが相違し、場合によっては間違っているということまで指摘して、初めて議論の論点が明確になり、多くの人々に判断材料を提供することができる。

 以上、抽象的なことを書いたが、具体的には北朝鮮の拉致問題や、日本の国内政治における「テロとの戦い」や「格差の是正」といった争点となっている問題を想定した。簡単に軽く書かれた本のように見えるが、なかなか考えさせられる内容をもっている。

 

 

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2007年9月23日 (日)

久しぶりに大阪弁で行ったろか:何でも言うたるで!

 今日は、久しぶりに「大阪弁」やで! やっぱし、大阪弁やと元気出るワ。そうでない人は、ゴメンな。

 ベトナム関連のインターネットの掲示板で、ワシについて、いろいろ批判しとる奴がおる。しかも匿名や。ワシは、カッコ悪いけど、恥を忍んで、自分の氏名のほかに経歴まで「プロフィール」で公開してんねんで。それに対して、匿名で批判しよる。ワシは、こんな卑怯なんは相手にせんことにしとる。その掲示板に反論したら、そんなん泥試合になるやろ。アホらし。

 そやけど、ちょっと言いたいことがあるねん。その匿名の投稿者は、「大学教授は気楽でエエとか、そんなんでベトナム株式投資がウマイことできるんか?」と批判しよんねん。

 確かに、大学教授は気楽な人は多かったかもしれん。そやけど大学は不況産業や。少子高齢化・人口減少なんやから、今までみたいに気楽にしとったら、大学経営は破綻するで。だから大学も必死なんやで。必死でない大学は、そらアカンな。大学倒産や。いくら必死でも、経営者がトンチンカンやっとったり、教職員が一致団結して危機を乗り切るという気概がないと、やっぱしアカンやろな。

 ワシは、老若男女すべての人が大学で学べるようにしたら、そら日本の国民の教養レベルを上げるし、それが日本の存在感を世界に示すことになると思うで。少子高齢化・人口減少の対応として、国民一人一人の教育レベルを上げることや。そしたら、大学経営は安泰や。日本国家の発展戦略として、少数精鋭主義のというやっちゃ。今の国民の中で「選別」するんとちゃうで。日本の国全体が、世界の中で精鋭になっていくと言うのがワシの主張や。こんなふうになったら、大学の学生数は増えるから、大学経営は安泰やろ。昔の「国民皆兵」やのうて「国民皆大学生」や。そやけど、こんな意見は少数派やろな。

 ほんで、もひとつ言いたいのは、「気楽な大学教授はベトナム株式投資なんぞ、ウマイことできへんのやないか」という意見についてや。ワシは、自分でベトナム株式投資なんて、やろうと思てへんで。ベトナムのことはベトナム人に任せる主義や。当たり前やないかい ほんまに外国の事情をすべて理解することは、外国人には不可能やろな。より正確に言うたら、理解はできるけど、それを納得はできへんで。外国人なんやから。謙虚にならなアカンで。もちろん勉強せなあかんけどな。

 でも最近になってな、自分の変化が怖いことあるわ。だんだん「ベトナム人化」してくるねん。よお、「ホラー映画」にある設定や。自分の中に異質な人格が侵入して、自分自身と侵入者との人格の闘いが始まるという内容や。映画の『エクソシスト』が、その最初やなかったかな。そう言えば、もっと昔の『ジキルとハイド』もそうやったな。スペンサー=トレイシーなんてワシは知ってんねんで。淀川長治の「日曜映画劇場」で育った世代なんや。ワシにも若い頃が、あったんや。

 ワシは変な大学教授でエエねん。でも、ベトナム人をバカにする奴は許せんで。ワシは、ある時はベトナム人、ある時は日本人なんやで。なんでか言うなら、やっぱりベトナム人にお世話になってるからや。ほんまに日本人にも、いっぱいお世話になっとるけど、ベトナム人にも同様に世話になっとんねん。カンボジア人も、ラオス人も同様や。外国人であるワシにも、いろいろ気を遣こうてくれるんは嬉しいやないか そんな人に不義理はできへんやないか。ワシは、そう思とりまんねんで。

 ヤッパし、大阪弁はエエわ。本音で話できるもんな。もっともっと大阪に頑張ってもらわな。それにしても、阪神タイガースは優勝しよるかな。いろいろ考えなあかん。 

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2007年8月 9日 (木)

20年前にタイムスリップ:この感覚は初めてだ

 大阪証券取引所に所用があり、その後に(財)日本証券経済研究所・大阪研究所を訪問した。大阪・北浜の証券会館別館・5階に証券図書館があり、そこで担当職員の玉谷さん・中西さんにお目にかかった。

 私は、このビル6階の研究室に1983年4月~1988年3月まで勤務したが、現在の6階は「空きフロア」になっている。今は5階の図書館と7階の研究所長室が昔ながらにある。証券図書館の書架の間を歩いてみて、まるで20年前に戻ったような感覚になった。これが「タイムスリップ」なのかもしれない。新鮮な、かつ衝動的な感じがした。

 この日本証券経済研究所・大阪研究所で私は、奥村宏先生(龍谷大学から中央大学)・松井和夫先生(大阪経済大学)・入江恭平先生(中京大学)・二上喜代司先生(滋賀大学)・田辺昭二先生などと研究室を並べて仕事していた。その想い出が、一挙に噴出した。それだからこそ「タイムスリップ」感覚を体験できたのだ。

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2007年7月20日 (金)

書評:田中森一『反転:闇社会の守護神と呼ばれて』幻冬舎、2007年6月

 久しぶりに大著を一気に読んだ。最近、自動車から電車に通勤経路を変更したので、車内での読書が可能になった。通勤が楽しくなったし、少しばかりダイエット効果もあるようだ。

 さて、本書の購読動機は、新聞広告を見たことである。いわゆる興味本位の「暴露本」というような先入観で読み始めたが、単なる自叙伝ではない迫力と説得力をもっている。同書は、一人の男の生き様を詳細に描いたノンフィクション作品であり、さらに日本の政治経済の裏面史を赤裸々に紹介したルポルタージュ作品でもある。

 著反転―闇社会の守護神と呼ばれて者・田中氏は特捜検事にまでなり、その後に弁護士に転じた。そしてバブル崩壊後に詐欺罪で懲役3年の判決を受け、現在は最高裁判所に上告中の被告でもある。

 検察という国家権力の中での田中氏の反骨精神は、その裏側として、反社会的なヤクザなどに対する人間的な共感や親近感となって表現されている。このことは、田中氏が人間を人間として素直に見ている証左であると思った。社会的な評価や名声で人間を評価していない。この人間性が田中氏の魅力となっている。

 本書では、実名の政治家の話も面白い。これらは今でも政治スキャンダルになっても不思議でないと素人には思われるが、おそらく証拠不十分や時効のために犯罪にはならないのであろう。だからこそ書けるのだと思う。当事者でないと知りえないと思われる事柄は信憑性が高い。

 貧困の中で育った田中氏が、検察特捜部の時代に大活躍し、さらに弁護士になってから7億円のヘリコプターを所有するまでになる金満ぶりは、まさに成功物語として痛快である。そして許永中氏との友情・信頼を守るために、敢えて懲役刑を受けるという本書の結末も、田中氏の人間性の魅力を強く訴えるし、劇的な効果がある。この作品の映画化やテレビドラマ化は当然、検討されてもよいし、大いに期待される。

 日本の政治権力の構造が、本書では具体的に多々指摘されている。「国策捜査」という言葉が何度か出てくる。現在の政治体制の維持が、検察庁でも最優先されるということだ。これらの政治権力の暗部について、田中氏は次のように指摘している。

 「いちど足を踏み入れると脱け出せないような、暗いブラックホール。その深淵に立ち、覗き込むことはあっても、足を踏み入れることはできない。検事時代に感じた上層部や政治家の圧力も、これと似ている。----日本という国に存在する、深く真っ暗い闇がそこにある」(401ページ)。

 私見では、このような闇の構造は強固なように今は思われるが、意外に脆く崩壊するようにも感じる。われわれの世代は、あの「ベルリンの壁」が倒され、超大国「ソ連の崩壊」を実体験している。そこからの教訓は、国民の力が結集されると、信じられないような政治改革が進行する可能性があるということだ。ただし、その実現は国民の意識の高低に依存する問題だ。

 本書を読めば、朝鮮総連をめぐる元公安調査庁長官の逮捕という最近の事件が想起される。田中氏の指摘を敷衍すれば、この朝鮮総連の問題も「国策捜査」の色彩が濃いように思われる。そういった新しい観点から、この事件のみならず、さまざまな日本の犯罪解釈が可能である。

 あらゆる事件の真相は、日本の権力構造にも似て、闇の中に埋もれているように思われる。すべての事件に人間が関与することを考慮すれば、曖昧で非合理的な特性をもつ人間の営みから生まれた事件の真相を明示的に説明すること自体が困難を伴うのではないか。つまり、自分の行動を客観的に自分で説明することは難しい。

 そこで、それなりに説得力のあるストーリーが作為的に検事によって作られる。多くの被疑者は、自分の行動を自分で説明できない状態であろうから、そのストーリーに迎合してしまう。不本意ではあるが、それが事実であるような気持ちになってしまう。これが冤罪の温床になる。本書を読んで、このようなことを私は感じた。

 本書出版に向けて田中氏の勇気と決断に敬意を表するとともに、ご健康に留意されることを心からお祈りしたいと思う。本書を一読し、そういった政治構造を容認するのか、また改革するのか。そのために、どのような行動をするのか。それらは読者側に問いかけられた問題であると思った。

Book 反転―闇社会の守護神と呼ばれて

著者:田中 森一
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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2007年6月23日 (土)

日本IBM(株)流通事業推進事業本部長・伊藤孝氏のご講義:21世紀の業界展望

 私が担当する「実学」講義のひとつである「21世紀の業界展望」では、7月23日(土)に日本アイ・ビー・エム(株)流通事業推進事業部長・理事・伊藤孝氏をお招きして、ご講義を賜った。

Dscf1692  注:左の写真は、クリックすると大きく鮮明に見ることができます。

 「IT社会の将来動向」というテーマで、21世紀の「ユビキタス社会」(いつでも、どこでも、だれでも、何でもつながるネットワーク社会)の展望が語られた。

 日本のIT(情報技術)業界の出発点は、1964年の東京オリンピック開催にさかのぼる。この当時、オンラインが初めて登場。データ通信の最初であった。その後の1970年の大阪万国博覧会では、民族学博物館の情報が日本で最初にデータベース化されたそうである。オリンピックと万博は、日本の高度経済成長の契機となったように思うのだが、IT業界にとっても画期的な出来事であった。

 それから今日までのIT業界の歴史を見れば、ハードの販売は常に価格下落が伴う。1970年代の大型コンピュータは1台当たり100億円であったが、今では、より高性能のパソコンが10万円で買える。ハードの販売は価格下落が常に伴う。そこでサービスを販売する。さらにビジネスモデルを販売する。次から次に時代の変化に対応して付加価値の高いビジネスを追求する。

 伊藤さんのご講義を聞いていて、IBMの歴史は、大胆なイノベーションの歴史であることが理解できた。常に時代を先取りする。このような経営理念が、変化の激しいIT業界での存続条件ではないか。時代を先取りする。これは、すべてに共通したビジネスの要諦だ。

 私自身が最も印象深かったことは、外国語の自動翻訳機械の完成が近いということだ。こうなれば、外国語コンプレックスは解消される。その代わりに、その国の文化を学ぶために外国語を学ぶようになると伊藤さんは指摘された。いわゆる語学力ではなく、コミュニケーション能力が問われる時代が来るということだ。外国人とのコミュニケーションが目的であって、外国語それ自体を学ぶことが目的ではない。このことが、翻訳機の登場で明確になるだろう。

 まさに「21世紀の業界展望」という科目名にふさわしい夢のあるご講義であった。ご多忙の中を大学にお越し下さった伊藤さんに感謝を改めて申し上げたい。

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2007年4月21日 (土)

SPAがアパレル業界成功の決め手:「実学」講義「21世紀の業界展望」が始まる

 4月14日(土)、私が担当する「21世紀の業界展望(A)」の講義が始まった。流通科学大学の「建学理念」を象徴する「実学」講義の一つである。

 最近では、多数の大学が実施している「インターンシップ」や「実務家の招聘講義」は、流通科学大学によって日本で最初に1990年に体系的に導入・実施された。当時、インターンシップ(流通科学大学では「OCP=オフキャンパスプログラム」と呼んでいる)実施のために学生の受入を依頼するために何度も企業訪問したことがある。その当時、医学部のインターン制度や、教育学部の教育実習を例にして、インターンシップの意義を企業担当者に話したことを思い出す。それが今では当然のようになっている。時代の変化を実感する。

 さて、今年度第1回目は、(株)MORIパーソナル・クリエイツ代表取締役・森貞雄氏を講師に迎えて、「いま、21世紀での生き残りを賭けビジネスプロセスの変革へ――SPA業態の開発はFB産業のキーワード――」というご講義を賜った。

 森さんは、『繊研新聞社』の記者・編集者として40年間勤められた後に、繊維・ファッション業界の人材育成や就職セミナーの会社を創業された。講義では、FB(ファンション=ビジネス)の現状と将来が具体的に紹介された。

 本日は、初Dsc09255回の講義のために開講日程が学生に徹底されておらず、写真のように、やや出席者が少数で残念であった。受講登録者数は70名を超えている。受講学生は、机の上に「名札」を置くように指示されており、講師との対話が活発になるように工夫されている。ほとんどの学生に森さんは気さくに語りかけられ、学生からも積極的に質問があった。

 FBにおいて、日本は世界で最先端の国になっている。第1は、日本の「ファッション係数」がイタリアに次いで世界第2位(5%)である。この係数は、家計費に占めるファッション支出の比率を示している。ここでのファッションとは、アパレル・靴・ベルト・バッグ・アクセサリー・化粧品を含んでいる。ただし宝石などの装飾品はFBから除かれる。この中でアパレルが約13兆円(約70~80%)の最大市場である。

 第2は、「東京コレクション」の存在感が増している。FBの商品企画者が注目する世界5大コレクションは、ミラノ・パリ・ロンドン・ニューヨーク・東京。「パリコレ」の関係者が東京の街を歩いて見て勉強している。インディーズ系と中心とした日本の若者の感性が世界を引っ張っている。

Dsc07542  日本がFBの先導役という理由は、日本人の消費体験にある。バブル経済期を挟んで日本人は多様な消費経験があって、価格と価値を見分けることができる人が増加した。価格は安くても価値がないものは売れない。逆に、価値があれば、高くても売れる。日本の消費者は専門家の眼をもっているという意味で、プロフェショナル=コンシューマー(=「プロシューマー」)と呼ばれることがある。

 写真は、原宿・表参道。流通科学大学では夏休みに毎年「東京キャリア探検隊」を組織している。小売・運輸・食品・情報・金融などの中からファンション業界を選択した学生は、企業訪問のほかに原宿を視察する。

 現代の日本は、大変動の時期を迎えている。上述のように生活者のファッション感覚は向上し、生産のグローバル化は当然となっている。海外のファッション状況、さらに一般にグローバル=スタンダードを理解しておかないと、日本の消費者にも対応できない。また、外資流通企業の参入も本格化し、大規模な流通業界の再編成の時期を迎えている。単純に言って、阪急・阪神の2百貨店が統合されれば、アパレルの2店舗が1店舗になることを意味する。

 このようにFBの経営環境は激変している。その中でFBが生き残るためには、生産システムの統合が求められている。アパレルの生産過程は次のようである。川上(素材メーカー)⇒川中(アパレルメーカー)⇒(卸売)⇒川下(小売:百貨店・量販店・専門店)⇒消費者。この中で「川中」と「川下」の統合が「企画・生産・販売の一貫システム」であり、SPAと呼ばれる。SPAは、日本人の造語であり、peciality store retailer of rivate label pparel の略語だ。

 SPAの定義は、森さんによれば、次の通りである。
(1)ボリューム市場の中で、
(2)製造者利潤と小売利潤の両方を確保し、
(3)顧客満足を第一義に考えた、
(4)企画生産販売の一貫システム。

 私見では、SPAを一般に言えば、製造小売業もしくは小売製造業ということだ。製造から小売り(ワールド・ファイブ=フォックス・サンエーインターナショナルなど)、そして小売りから製造(ユニクロなど)の統合である。これは「製販統合」と考えても良い。たとえば製造会社と販売会社が別会社であった企業が、両社を統合する。製造と販売を別会社にして、それぞれに責任と権限をもたせることは、これまで相互に緊張感を生んで企業グループ全体に好影響を与えてきたと思われる。ただし、これは市場成長期には適合しても、市場が成熟し、しかも「少子高齢化」・「人口減少」の日本では、より顧客に接近しなければならない。

 顧客に接近する目的は、消費者=顧客の個々の嗜好・志向・ニーズ・クレームなどの諸情報を的確に抽出して、それを製品・商品に反映させることだ。それによって、不良在庫コストを削減し、顧客満足を高めることができる。要するに現代の日本は、販売力・営業力によって何でも売れた時代から、売れるモノを作らなければ売れない時代になったのだ。このような時代に対応する生産体制が、ファッション業界で言えば、SPAとみなされる。

 アパレル業界のトップである(株)ワールドは、1991年にSPAに成功している。ユニクロやファイブ=フォックスもSPA型の成功企業である。共通する成功要因は、優秀な企画、低いコストの海外での生産、顧客満足を追求する販売が、今後の成功要因である。

 このSPA実現のためには、販売コストの増加が伴う。契約社員では、顧客情報が的確に抽出できない。顧客満足を徹底して追求できない。契約社員では優秀な人材が募集できない。このような意味で、契約社員の正社員化が、たとえばワールドでは進められている。

 初回講義のために学生が慣れていない状態の中で、森さんの講義は活気があり、興味深い情報を提供していただいた。貴重な時間を頂戴したことに感謝を申し上げると共に、森さんのますますのご発展とご健康をお祈りしたいと思う。

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2007年3月 9日 (金)

ベトナムから帰国して:ビジネス嗅覚の養成

 最近になって私は痛感するが、ビジネスで重要な「商機を見る眼」は真剣勝負の緊張感から養成される。私は、30年以上も経営学・経済学を学んできた。論文執筆や内外の学会発表において真剣勝負や緊張感は経験したが、現実の企業を見る眼については、それほどではなかった。今から思えば、やはり私自身の緊張感が欠如していた。企業を研究する単なる大学の先生にすぎなかった。

 親しいベトナム企業の日本人経営者から以前に「本音」を聞いたことがある。「大学の先生から企業訪問の依頼があると、ああ、またかと思う。緊張する」。この経営者の気持ちは理解できる。訪問者に対して同じように進出の経緯や問題点を話す。相手は大学の先生だから、その背後の大学生の存在も意識しなければならない。さらに、それなりの鋭い質問もあって緊張する。しかしビジネスには直接に結びつかない。私なら「うっとうしい」と思う訪問者だ。私の場合、こういう最初の手順は省略できる。私には、すでにベトナム進出を果たした経営者の側面がある。

 昨年から自分で会社設立し、多くの人々からの資金を預かるようになると、ビジネスに対する緊張感や嗅覚が格段に上昇したように思う。そうしなければ、自分の会社を維持・成長させることができないではないか。この緊張感や嗅覚は、本当に必要に迫られて向上するが、その前提として一定の基礎知識や経験も必要だと思う。最近の私は、やや大げさに言えば、長く眠ってきた「ビジネス嗅覚の覚醒」を意識している。注:勘違いかもしれない---!!

 このように考えれば、一般の企業の従業員として長く働いていても、会社の指示の下での仕事として仕事していては、この緊張感や嗅覚が養成されない。この状態では会社全体として、人材育成ができていないことになる。私は、従業員に大幅に権限委譲して、それに応じた成果報酬を提供する企業が成功すると思う。権限委譲しないで、成果報酬だけの評価システムでは、やる気が継続しないだろうし、長期的に見て「ビジネス嗅覚」が養成されない。

 おそらく以上の話は、経営管理論や経営組織論の中ですでに議論されているに違いない。そういった最近の文献を私は渉猟していないが、私は体験的に以上を確信をもって主張できる。念のために言えば、私の専門は経営学の中でも「企業論」である。株式会社制度・企業統治・企業支配・社会的責任などが私の研究対象だ。この研究は、まさにベトナムで実践的に現在進行中である。

 今日は、ベトナムを舞台にした「実学」の話だ。さらに追究したいと思う。

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2007年2月26日 (月)

2人の青年実業家

 いつもお世話になっているS夫人のご紹介で、2名の青年実業家と大阪・梅田で夕食をご一緒した。青年実業家というのは、古めかしい感じがするが、要するに30~40歳代前半の若手の会社社長である。

 若いにもかかわらず、お話ししていて刺激が一杯で楽しかった。その仕事の発想が新しい。また、企業経営について鋭い感覚や指摘がある。これは、若いにもかかわらずと言うよりも、若いからこそと言うべきだろう。しかし同じ若い世代の人々と話しても、面白くないこともあることを考えれば、やはりお2人の人間性が魅力的なのだ。このような「お見合い」の場を設定していただいたS夫人のマッチングの才能に感謝しなければならない。

 ご両人は経営者であるから、自分が意思決定する人間だ。意思決定する人間には、その決定に対する責任も伴う。そういう体験を繰り返す人間は、普通の人とは違うはずだし、違うから経営者なのだと思う。同じなら、あまり優秀な経営者とは言えないのではないか。

 大学における経営学者は、意思決定する過程や結果を研究や議論の対象にするが、それは後(あと)講釈である。後からは何とでも言える気楽な商売だ。これに対して経営者は真剣勝負だ。

 「気楽な商売」の人間は、その性格も気楽だ。お人好し。こんな大学教授がビジネスに関与して成功するはずはない。もちろん大学教授が「御輿」に祭り上げられるビジネスもあって、それが成功したからと言って、それは大学教授自身のビジネスの実力ではない。

 これに対して真剣勝負する人間は、毎日の修行や緊張感の持続が必要だ。ビジネス相手のスキを突く。自分のスキを作らない。スキを見せない。スキに誘って反撃する。これが真剣勝負。経営学における「ケースメソッド」は、竹刀での剣術練習のようなものだが、その勝負に強くても、真剣勝負に強いとは限らないだろう。

 私の直感では、精神力・気力・冷徹・非情の有無や強弱が、真剣勝負における勝敗を分ける決め手ではないか。ただし、強い気力を発してもダメな勝負もある。相手が無心・虚心・自然体なら、その気力は受け流されてしまう。ビジネスの本質は人間関係。人間と人間の真剣勝負。

 こんなことを考えさせてくれた夕食会だった。勉強になった数時間。S夫人とお2人に改めて感謝を申し上げたい。

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2007年2月19日 (月)

人の行く裏に道あり花の山

 「人の行く裏に道あり花の山」。これは、日本の株式売買の格言である。株価が安くなって人が売るときに買い、株価が高くなって人が買うときに売る。多くの人々の反対の行動をすれば、「花の山」=利益が見えてくる。

 企業経営という観点から見れば、他社の真似をしない。独自の商品やサービスを提供する。商品やサービスの「差別化」を考える。真似をしない。同じことをしない。この姿勢を持てば、自分で考える習慣が身につく。ここから新しい商品やサービスの発想が生まれる。

 一般に人間や組織(人間で構成されている)は、惰性や慣性が好きだ。これまでのやり方を変えたくない。また過去に成功体験があれば、その体験の枠組みを踏襲しようとする。既存の考え方や方法に安住する。新しいことをやるのはメンドクサイし、それが失敗するリスクを回避したい。結局、今までのままでよいという結論になる。

 「人の行く裏」を行くのはエネルギーが必要だし、勇気も求められる。でも、それを楽しむ気持ちをもつことが望ましい。人の行く後を付いて行って、何の楽しみがあるんだろう。このような気持ちをもつこと。このような気持ちを持てる人が「花の山」に行き着く。

 他人と同じことをしていて、それでお金をもうけようとする。こんな楽なことはありえないのだ。このように考えれば、冒頭の格言は、当たり前のことを言っている。このような格言、果たしてベトナム人投資家にも理解してもらえるのだろうか。今度、ベトナムに行って聞いてみよう。

 

 

 

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2007年1月26日 (金)

A4用紙1枚が40万円!:関西経済活性化のために

 先日、東京在住のコンサルティング会社社長にお目にかかった。かつては大阪で仕事をしていたが、今は東京が主要な活動場所ということだった。コンサルティングは大阪で商売にならないという理由だ。

 関西人は、情報をタダだと思っている。このような風土で、コンサルティング業は成立しないという。A4用紙で1枚のレポートを書いて、40万円の請求書を大阪の会社に提出したら、相手にされなかった。それが東京では受け入れられる。この関西と東京のビジネス環境の相違は大きい。

 「東京一極集中」と言われて久しい。東京に情報も人口も商機も集中する。その理由は、上述の実例からも理解できるように、東京では情報がカネになるからであろう。情報が集まる所に商機があり、その情報を求めて人間が集まる。情報にカネを払わない関西から、情報が逃げていくのは当然である。

 以上のことを考えて、関西活性化の決め手は何か。何も東京の真似をする必要はない。情報にカネを払えとは言わない。「ドケチ」や「厚かましい」のは関西人の特質であって、今さら変更は無理だろう。それならどうするか。逆転の発想だ。関西ビジネスは、すべてをドケチで厚かましく進めるのだ。お互いにドケチを容認する。厚かましいと思ったら、こちらも厚かましくすればよい。

 情報などにカネを払わなくてもよい。しかし、こちらも情報をタダで要求する。このような相互の情報のタダ利用ができれば、「情報コスト」は格段に削減できる。完全に東京に対する比較優位性だ。ただし、タダで情報を提供して、それが一方的であれば、その情報提供の相互関係は継続的に成立しないだろう。それが自然の成り行きだ。

 こういう関係は、割り勘をしない韓国人に似ているように思う。いつも年長者に付いていれば、いつも若年者はタダで食事をすることができる。しかし若年者は、さらに若い人に奢らなければ格好がつかない。「あなたも早く人に奢ってあげられるようになりなさい」。これが年長者から若年者に向けたメッセージなのだ。一方的に常時タダメシを食っている人が、周囲から信用や敬意を受けることはない。その程度の矮小な人間だ。

 以上、情報を受けた人は、情報で返してくれればよい。おカネは必要ない。こういうビジネス風土を関西で強化すればどうだろうか。要するに、ビジネス関係から生じる情報ではなく、人間の信頼関係から生じる情報がより重要なのだ。

 このような関西人の開き直りがあれば、関西に情報が集まってくるのではないか。私は「経営情報学科」に所属しているが、情報技術(IT)に関しては単なる利用者にすぎない。私が学生に話す「経営情報」は、経営(=金儲け)に役立つ情報だ。関西で経営情報が飛びかうようになれば、関西経済は活性化するように思う。私は、少なくともベトナムの経営情報を関西から発信したいと思う。私の周辺では、こういった情報が集まり、また発信されつつある。東京からの来訪者も多くなってきた。

 なお、私は原則として無料で情報提供するのだが、そのために、私が副理事長をしている日越経済交流センターの会員もしくはニュース読者になってもらうことを前提条件としている。このセンターで私は無給だが、このセンターから受ける恩恵は大きい。センターという「ブランド」は、おカネでは買えない。だからセンターに貢献する必要があるという理屈だ。個人向けのニュース会員は年間で1万5千円。ぜひ、ご購読をお勧めする。

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2007年1月23日 (火)

人材ビジネスの仕組みと展望:(株)毎日コミュニケーションズ・笹田人事部長のご講義

 昨年12月16日(土)、流通科学大学の特色ある「実学」講義の一環である「21世紀の業界展望」は、(株)毎日コミュニケーションズ・管理本部人事部長の笹田大介氏を特別講師として招聘し、ご講義を賜った。このブログでの報告が、年末の私のベトナム出張などもあり、遅くなってしまった。受講生を始め皆さまのご容赦を賜りたい。

Dsc08976  最近のベトナムにおける人材ビジネスは活発だ。特に理工系ベトナム人に対する日本の中小企業の求人が急増している。このためには日本側の人材派遣会社とベトナム側の人材派遣会社が契約することが必要だ。ベトナムの人材情報は、日越経済交流センターに問い合わせていただきたい。http://www.j-veec.jp/ 講師の笹田さんはベトナム訪問の経験があり、講義後にベトナムの話題で1時間も盛り上がった。これが「出会い」というものである。

 さて、ご講義では、いくつかの日本の雇用状況や人材ビジネスの特徴が指摘された。
 (1) 日本の人件費は世界最高水準。
 大学新卒の年収は残業代も入れると、250万円から400万円。アメリカでも2万5千ドル程度。したがって日本で生産すれば、コストが高い。そこで生産が海外移転される。また、日本では付加価値の高い商品が生産される。

 (2) 会社にとって個人報酬の1.5~1.8倍の人件費がかかる。
 したがって企業は正社員を少なくしたい。正社員に期待されるしてもらいたい仕事は、マニュアル化できない仕事、判断が必要な仕事である。したがって正社員以外の多様な雇用形態が生まれる。仕事に応じて雇用形態も変わる。受付は派遣でよい。レジ打ちはアルバイト(=パート)で十分だ。このような区別が実際の企業では行われている。

 (3) 日本の人材ビジネスには次の種類がある。
 ①人材派遣、②人材紹介、③紹介予定派遣、④再就職支援事業。これらは「対面型ビジネスモデル」である。これに対して、①新卒学生向け求人サイト、②転職希望者向け求人サイト、③アルバイト・パート求人サイト、④派遣社員向け求人ポータルサイト、⑤転職者向け求人ポータルサイト。これらは、企業対多数の「情報発信型ビジネスモデル」である。以下、それぞれの特徴は次の通りである。

 ★人材派遣業: これらの人材ビジネスは、15年間で年平均13%の成長を示し、人材派遣業の市場規模は、2005年度には2.5兆円に達している。今後5年間も成長は持続するとみなされている。欧米企業の派遣社員の割合は3%と言われており、その数値に日本は達していないので、まだまだ成長の余地はある。

 ★人材紹介業: 年間の成長率は10%超であり、2005年度の市場規模は1500億円である。紹介業者は、企業側から採用者の年収の35%を報酬として受け取るのが業界の相場である。もちろん一律に80万円といった報酬の場合もある。派遣から正社員に移行する場合は、紹介予定派遣と呼ばれる。この人材紹介業には、再就職支援事業が含まれる。

 ★求人情報業界: 市場規模は、未上場企業が多いので正確には把握できないが、2004年度に600億円、2007年度には1000億円超になると推定される。この求人情報の大手2社がリクルート社と毎日コミュニケーション社である。前者の「リクナビ」が8000社、そして後者の「マイナビ」が6000社の求人情報を掲載している。これらの情報業界は、大手2~3社に集約される傾向がある。

 ★転職者向け求人情報: 市場規模は不明。転職情報の提供だけで1000社ある。現代の世相では転職に抵抗感がなくなっている。転職者情報は、パートやアルバイト求人情報と重複する場合も多い。ただしパートやアルバイト(注:この両者の用語に厳密な区別はない)は、求人の回転が早く、広告掲載の単価は数万円であるが、転職者向け求人は、数10万円から数100万円になる。この広告主は、派遣者向けの求人をする派遣会社である。

 以上が人材ビジネスの概要である。業界は、総合人材サービスを提供する大手企業と、ある人材に特化・専門化した企業とに二極分化する傾向がある。後者には、たとえば情報技術(IT)技術者や障害者の求人などがあり、きめ細かい対応が特徴である。

 おそらく私見では、これから将来、より多くの外国人が日本の人材ビジネスの主役になることは間違いない。実際、たとえば今日でもベトナム人のエンジニアや数学専門家の採用を希望する企業がある。このような場合、そもそも外国人としてのベトナム人を受け入れるような寛容性が日本社会にあるのだろうか。これは、「人材ビジネス」といった企業レベルの話ではなく、日本政府や日本社会の問題である。さらに言えば、われわれひとりひとりの個々人の問題である。

 このように人材ビジネスは、今後ますます国際的な展開を見せると予想される。また企業の経営資源の中で、やはり最重要な要素は「ヒト」である。これに異論はないだろう。それだけに、人材ビジネスは、さらなる成長が期待される業界とみなされる。

 貴重なご講義を賜った笹田大介さんに、心から御礼を申し上げます。御礼が遅くなり、恐縮でした。さらに近い将来に、共通のベトナムの話題で再び盛り上がることを楽しみにいたしております。

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2007年1月13日 (土)

東京から大阪に:スカイプ余話

 今日も午前中は仕事だった。仕事と言うよりも勉強。実務家の方々から学ぶ。これも「実学」だ。せっかくの休日であるにもかかわらず、貴重な時間を頂戴した方々に感謝である。ただし仕事の話に熱中して、せっかくの料理が賞味できなかった。ランチミーティングは、ちょっと工夫が必要だ。

 その後、大阪で夕食を友人と一緒した。ディナーミーティングだ。東京・大阪と多忙だが、大阪での一時はホッとする。帝国ホテルでホッとするのとは、ちょっと違った気分だ。

 東京から大阪に帰ったばかりで、すっかり大阪談義で盛り上がった。大阪は江戸時代からの商都。堂島は、精緻な先物取引の発祥の地。大阪にこそ、金融取引の学校を作るべきだ。アジアからの人材を養成すればよい。大阪大学の本間教授など、大阪に留まって大阪のために仕事すべきだ。東京、東京と東京に集中するのは、おかしいんとちゃうか?

 この友人、ガチガチの大阪人で、ご説は「ごもっとも」。私は「はい、はい」と返事するほかなかった。東京と大阪の相違は、ベトナムで言えば、ハノイとホーチミン市の相違に類似していると指摘されることも多い。しかし今や日本では、経済も政治も東京だ。以前に言われていた東京からの「遷都論」はどうなったのだろうか? 

 しかし考えてみれば、インターネットやスカイプやTV会議が発展すれば、東京も大阪も関係ない。さらに言えば、日本もベトナムも関係ない。実際、帰宅後にベトナムに電話した。ボーダレス(無国境)の時代に東京も大阪もない。このように考えるのが、時代の流れに合っているのかもしれない。

 「スカイプ」について、英字新聞『ジャパンタイムズ』(2007年1月11日)に「無料ネット電話ソフトウェアが拡大している」という記事が掲載されていた。同記事によれば、スカイプ(Skype)は、2003年にルクセンブルグのSkype Technologies SA社が開発したもので、世界で約1億3,600万人、日本では400万人が無料ソフトをダウンロードしている。

 企業利用者も同システムを使用開始している。大手旅行会社のJTBは、ほとんど全従業員のコンピューターにスカイプをインストールしており、日本と外国のスタッフ間のコミュニケーションに無料システムを使用することで、年間約500万円を節約している。ソニーや他の電機会社も、同様の無料の電話ソフトウェアを開発している。

 当然、NTTは、こういった無料電話システムを既存の通信インフラに「ただ乗り」していると批判するのだが、スカイプの日本の広報担当者は、スカイプからNTTには接続料金を支払うので、相互の利益になると反論している。

 今後、個人のみならず企業のスカイプ利用が拡大することは間違いない。映像を付ければ、テレビ電話になり、さらに多額のシステムを導入しなくても、少し工夫すれば、無料でテレビ会議も可能になるだろう。

 このようなスカイプの利用が拡大すれば、まさに通信革命。携帯電話のソフトバンクが「通話料無料」と宣伝して話題になったが、スカイプは本当に無料。技術革新は、世界を変えるという場面を、われわれは目前で観察できるかもしれない。

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2006年12月16日 (土)

神戸ポートピアホテル:老舗ホテルのホスピタリティ

 (株)神戸ポートピアホテル・常務取締役・人事部長である木下雅文さんを特別講師にお迎えして、12月9日(土)に「21世紀の業界展望」が開講された。

Dscf1352  日本経済新聞の調査によれば、ホテルに対する宿泊客の評価は、ほんの少しのことで「満足した」と「がっかりした」に区別されるそうである。「ゴミがひとつ落ちている」といった程度のことで、今まで満足していた顧客が、がっかりしてしまうのである。細やかな配慮の有無が、評価を2分することになる。

 これは私も同感だが、そういった「細やかな配慮」に鈍感な宿泊客も多いのではないか。一般に店側が細やかに配慮して、それを顧客も理解して満足する。このような相互関係があってこそ、顧客はリピーターになるのだろう。

 サービス業の中でもホテルでは、ホテルと宿泊客の間での「無言の対話」があると言えるかもしれない。この対話が可能な感性をもった人材を擁するホテルが、顧客の支持が高いホテルであると私は思った。木下さんは、このことを「もてなす側の注意と受け手の感受性のやりとり」と表現された。

 ホテルの顧客満足の要因は、Q:品質、S:サービス、C:清潔感、A:雰囲気、P:価格となる。この中で価格は、ホテル業態や利用目的によって最初から異なっている。これらの変数から生まれる満足度が、事前期待より大きければ、宿泊客は満足する。

 ここで興味深いのは、この満足度を導き出す変数の関数だ。(Q+S+C+A)÷Pではなく、(Q×S×C×A)÷Pでなければならない。QSCAの変数の中で1つでも数値が0(ゼロ)であれば、いくらほかの3変数の数値が高くても、満足度は0(ゼロ)になる。これもサービス業では重要な指摘だ。

 企業側が、ほかの変数で高い数値を出しているから、ある変数が悪くても顧客は許してくれると思っていても、それは企業の論理でしかない。顧客は厳しい。ただし私見では、これは不特定多数の顧客の場合であろう。たとえば価格さえ安ければ、ほかは眼をつぶるという宿泊客もいるはずだ。でも、これは少数派であることは間違いない。

 他方、木下さんは、ホスピタリティ(=おもてなしの心)について「お客の数だけ形とやり方がある」と指摘された。それは「茶道に似ている」そうである。茶道を私は知らないが、この指摘には強く共感する。これは、学生を相手にする教育にも妥当する。また、個々の問題解決を提案する「ソリューション=ビジネス」にも共通する。これからのビジネスは、個々のニーズやウォンツに柔軟に対応する高付加価値サービスの提供ということだろう。

 こういったホテルのサービス提供は、おそらく『マニュアル』では対応できない。それぞれの従業員が、その場で即座に自分で判断できる能力を高めることが必要であろう。

 神戸ポートピアホテルは、映画『ラストサムライ』撮影のためにトム=クルーズが利用。また2004年のワールドカップではベッカム選手、さらに2005年には天皇・皇后両陛下も御宿泊されている。このような事実が、神戸の老舗ホテルとしての高い格式と評価を証明している。同ホテルにおける一層のホスピタリティの向上に期待したい。

 貴重なご講義を賜った木下さんに改めて感謝を申し上げたい。 なお個人的に言えば、映画『有頂天ホテル』を思い浮かべながら、ご講義を承った。少しばかり役所広司に似ておられる木下さんであった。

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2006年12月12日 (火)

社団法人・日本旅行業協会・田端事務局長のご講義:21世紀の新たなるツーリズム創造へ

 12月6日(水)、私が担当する「21世紀の業界展望」では、(社)日本旅行業協会関西支部・事務局長の田端俊文氏をお招きして、ご講義を賜った。

 日本の旅行総消費額は24.5兆円。付加価値は12.3兆円。この付加価値は食料品業界に匹敵する。旅行=観光は、経済における重要な位置を占めている。

P1010037  しかし日本には、観光省・観光大臣が設置されていない。田端さんは、ウズベキスタンにJICA専門家として短期で赴任されて、この印象を強くもたれたそうである。すでに私も、直接投資・貿易・ODA・海外送金に並んで国際観光が経済発展にとって不可欠なことをラオスについて指摘したことがある。

 日本でも、すでに北海道では夏でもスキーをしたいオーストラリア人が長期滞在する事例がある。こういう国際観光に重点をおけば、それが最大の平和政策になるように思われる。日本観光を通して親日家・知日家が世界で増加すればよい。このように考えれば、防衛省の昇格よりも観光省の創設が優先されてもよかった。

 田端さんによれば、日本の旅行業に課題は多い。①全日空のように航空会社が直接チケットを販売する。②楽天トラベルなどを通してインターネットで直接ホテルを予約する。③高速道路での日帰り旅行が増加する。④旅行代金の安売り競争が激化する。これらの中で①~③は、旅行会社を通さないので旅行業に含まれない。これらのことが近年、旅行業者数が横ばいになり、旅行業者の旅行取扱額が減少している理由である。

 日本の海外旅行者数は1740万人。これに対して訪日外国人旅行者数は673万人。この数字は2005年だが、前年2004年の614万人に比べて増加している。まだまだ外国人の訪日数は少ない。政府は2003年から「VISIT JAPAN」キャンペーンを継続している。外国人の国内旅行がより容易になるような体制整備がさらに望まれる。

 私見では、留学生支援を兼ねて、留学生に自国の観光客やビジネス人のガイドや交流の機会を提供する体制を公的に整備すればよいと思う。このコーディネートを私は個人的にしているが、もっと情報と人材が集まれば、留学生も観光客・ビジネス人も喜ぶだろう。

 さらに人口比率で見れば、海外渡航(出国)率の国別順位は次のようである。①シンガポール:119.7%、②英国:107.0%、③ドイツ:90.5%、④香港:70.3%、⑤カナダ:61.7%。それ以下、台湾:34.5%、米国:19.1%、韓国:18.4%。これらの国々に対して、日本は13.3%である。

 この数字が100%を超えると言うことは、平均して国民が1年に1回以上外国旅行しているということだ。さらに日本の極端に低い数字には驚かされる。田端さんによれば、それだからこそ、まだまだ海外旅行は伸びる余地があるということだ。

 しかしながら私見では、私は今年4回の海外出張している。これは重複計算されている。そうすると外国訪問しない日本人の実態は、この数字よりも低い。経済の外国依存が高いにもかかわらず、日本人の外国旅行は少なすぎる。

 田端さんは、最後に21世紀の観光を変える要因として、次の4点を指摘された。

 (1)2009年問題:この年に羽田空港の拡張工事が終了。関西空港の2期工事も完了。つまり空港の離発着数は、現状から見て過剰供給になるということだ。この対応をどうするか?
 (2)LOW COST CARRIERの出現:たとえば現状でも香港からロンドンまで100ドルの航空券が発売されている。ただし空港は地方空港を使い、機内サービスは有料化され、インターネットで航空券は直接販売される。これらによってコストが削減されている。このような形態の航空会社が増加するかもしれない。
 (3)OPEN SKY政策:これは、認可なしに申請だけで自由に離発着できるようにする国の政策を意味する。ハブ空港としての地位を確立するために必要な政策だ。旅行会社が自前でチャーター便を飛ばすことも可能になる。日本も採用せざるをえないだろう。
 (4)国内着地型旅行の開発:遠洋漁業型から養殖型への脱皮と特徴づけられる。これまでのような団体旅行で遠方に海外旅行するタイプは減少する。その帰国便に外国人が乗っているようにしたい。そこで日本の地域の人々と連携して外国人を受け入れる体制を整備する。双方向の旅行を育てていることが、今後の旅行業の展望だ。

 以上、最後の4点は田端さんの見解だが、もっともに思われる。人口減少の傾向にある日本にとって、外国人観光客の増加は経済活性化の決め手だ。さらに考えれば、外国人労働者の受入体制を整備すれば、それに伴って家族を呼び寄せる観光旅行も増加するだろう。このように考えれば、旅行を取り巻く問題は幅広い。

 旅行業界の全体的な動向が、田端さんの講義によって理解できた。貴重な時間を頂戴したことに感謝を申し上げたい。

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2006年11月27日 (月)

トランコム(株):増収増益を牽引する物流情報サービス事業

 流通科学大学の特色となっている「実学」講義の一環である「21世紀の業界展望(B)」が、11月25日(土)に開講された。講師は、トランコム(株)・総務経理グループ・マネージャーの三田村直毅氏である。

 さすがに土曜日の講義となると、写真のように受講生は通常よりも少数である。しかし三田村さんの親しみやすい人柄からか、通常よりも活発な質問が出された。

Dscf0101  トランコム(株)は、名古屋市を本社とする物流サービス企業である。売上高は連結で約500億円。営業種目は、①ロジスティックマネジメント、②物流情報サービス、③貨物輸送。約800台のトラックを所有し、従業員はパートを含めて3800人に達する。東証・名証第2部上場企業である。http://www.trancom.co.jp/

 荷主側からコスト削減を常に迫られ、さらに規制緩和で価格が自由化され競争が激化する物流業界にあって、トランコム(株)は、この5年間に増収増益を続ける好業績企業である。中期ビジョンとして連結売り上げ1000億円を構想し、当面、2008年3月期に売り上げ640億円・営業利益33億円を目標としている。

 この売り上げと収益の柱が、物流情報サービスである。これは同社の独壇場であり、このサービスを大手物流企業も利用している。それは次のような仕組みである。

 往路で積載したトラックが帰路で空車なら当然、輸送効率が悪い。輸送会社はトラックを空車で走らせたくない。他方、荷主やメーカーは、少しでも低コストで輸送したい。この両者のニーズをマッチングもしくはコーディネートするのが物流情報サービスである。

 トランコム社は、多数の輸送会社とネットワークをもち、空車トラックからの要請を受けて、それらに荷物を振り分ける。このようにすれば、自社所有のトラック数より以上のトラックを運行させることができる。このサービスの収益は仲介手数料ではなく、同社自身の運送料である。運送について同社自身が責任をもつためである。

 「このビジネスモデルは模倣されやすいのではないか」という質問に対して、その心配はないとのことである。「先発行動者の利得」が依然として有効である。すでに多数の運送業者と荷主との全国的な関係を20年間に渡って同社は保持しており、業界での知名度もある。なかなか新規参入は困難のようである。

 この情報サービスは主に電話を介して行われている。もちろんインターネットの活用も可能だが、それでは同社の担当者と顧客との人間的な関係が深化しない。他方、電話による「声」でのコミュニケーションは相互の信頼関係を深める。

 これは納得できる。学生に対する連絡に私はインターネットを頻繁に利用するが、それは単なる情報伝達にすぎない。人間関係を親密に深めるためには、対面の対話が最善であろうし、少なくとも電話での会話が望ましい。これは私にとって反省材料だ。

 以上、規制緩和後の競争的な運輸業界において、好業績を達成する企業は、やはり普通でない。

 私見では、新しいコンセプトのサービスに経営資源を集中していることが成功の秘訣である。無事故で、正確に、迅速に、安価に運送する。これは運送業では当然のことであり、このような競争の舞台では他社と差別化することは難しい。トランコム社は、他社に先駆けてこれを認識し、新しい物流情報サービスに着目した。この先見性や決断力が成功をもたらした。おそらく経営者の強いリーダーシップがあったのだと想像される。

 トランコム社が成功した物流情報サービスは「特許」をもっていないそうである。したがって外国に導入は可能である。また往路と帰路の移動をムダにしないという観点からは、この物流情報サービスはトラックのみならず、船舶・航空機・タクシー(特に長距離)にも応用できそうである。

 さらに郵便物や宅配便に活用できるかもしれない。郵便物や荷物の配達を終えて、空車で郵便局や配送センターに帰るのではなく、各配達先から荷物を集めることを考える。昔からの飲食店の出前や、最近のピザのデリバリー、そして生協の宅配サービスも同様に帰路が空車ではもったいない。帰路を空車にしない何か新しいサービスはできないか?

 注:もっとも、このようなサービスを追加すれば、ドライバーの過重な負担を強いることになる。これらの問題にも考慮が必要である。

 三田村さんの講義を通して、このような問題が想起された。それほどに刺激的な内容であった。また、三田村さんは学生と年齢があまり離れておられず、先輩・兄貴というような立場から学生に対して学生生活や就職について助言していただいた。これも学生に好評であった。ここで改めて、ご講義に感謝を申し上げたい。 

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2006年11月 9日 (木)

ハウス食品株式会社のSCM戦略:プロならではの「オーラ」を感じた!

 ハウス食品株式会社・上級執行役員・早川哲志SCM部長が、昨日の実学講義「21世紀の業界展望(B)」の特別講師であった。早川さんの講義から、私は「プロ」の迫力を感じた。もちろん、これまでの講師の方々が「ノンプロ」という意味ではない。管理職として当然プロであるが、それらの方々と早川さんの雰囲気はどこか違う。Dscf0774

 ハウス食品株式会社は、1913年11月11日に東大阪市で薬種問屋として創業。そして1955年に大ヒット商品「バーモントカレー」が発売された。その後に「ジャワカレー」も大ヒット。これらのカレー粉は、実は漢方薬の一種なのである。

 私見では、「カレー粉」という場合、たとえば「カレーの木」とか「カレーの実」は存在しない。各種のスパイスの混合物を「カレー粉」と呼ぶ。また、インドに旅行するとき、毎日カレーを食べることが健康の秘訣と言われた。カレーの漢方薬成分が解毒作用をもつのだと思う。カレーの成分が漢方薬ということは、ハウス食品の歴史と対応している。

 同社では、1959年に物流部が設置され、2000年に東京と大阪に受注センターが稼働。2003年に物流部が解散し、SCM(サプライ=チェーン=マネジメント)部に改組された。このように同社は物流問題に早くから取り組んできた。物流は常にコスト削減を要求され、また商品開発や営業と比較して地味な印象を与える。しかし物流は企業活動の基礎である。

 SCMは「供給連鎖管理」と翻訳される。メーカーとして、原材料の購入から生産そして販売までの仕組みを管理することである。たとえば財務管理が、企業の資金の流れを管理するのに対して、SCMはモノの流れを管理する。また物流が運送と同義に解釈される場合があるが、SCMは運送を含めた「物流の仕組み」を管理する。製造・販売・在庫というモノの流れの全体を最適化することである。

 早川さんは、営業職から仕事を始められ、物流からSCMの導入までを担当。この分野を自ら開拓されてきた。具体的には、5億円をかけてSCMのコンピュータソフトを導入し、この投資が3年間で回収された。このような改革には、常に抵抗があるものだが、同社では製造・営業を含め全社的な協力があった。SCMの導入は、結果として組織改革・企業活性化の手段であった。このほかに、実際の導入経緯が詳細に紹介された。

 早川さんのご講義は、学生向けというよりも実務家向けであり、あたかも「SCM実践セミナー」の雰囲気があった。さらに早川さんからは、通常の管理職ではなく、SCMの「プロ」もしくは「職人」としての自信や自負を感じられた。SCMという新しい分野の改革をご自分で推進・成功させてきた実績の裏付けが、そのような「オーラ」を発信するのであろう。この「オーラ」は、やはり「プロ」ならではと思われる。

 なお最後に、SCMを離れて、ご講義いただいたビジネス上の共通の要点を列挙しておく。
(1) 業務全体を調整・管理するためには、各業務の責任の所在を明確化しなければならない。
(2) 新しいことを導入・開始する場合、名称を変更することが効果的である。
(3) 「見本」はあっても「手本」はない。ぞれぞれの会社に応じた方法がある。そのために創造性を発揮する必要がある。
(4) 品質改善・コスト削減・時間短縮=生産性向上。これらはすべて数値で明示する。かけ声だけでは実現しない。
(5) P(計画)⇒D(実行)⇒C(検証)⇒A(行動)は改善活動の基本。この中のP(計画)の時点で、C(検証)するためのデータを予め決めておく。何をC(検証)するのかを計画しておく。
(6)山より大きな獅子はいない。海より大きな鯨はいない。大きいと思われる悩みも、本人が思っているほど大きくない。悩みは薬。悩みは一時的である。悩みは達成感を大きくする。こういった前向きのプラス志向が仕事を楽しくする。

 近い将来、ベトナム企業がSCMを導入するというような場合、ぜひお招きしたい講師である。また上記の6点は、来週から始まるJICAベトナム人研修で、早速ベトナム人経営者に話してみたい。以上、早川さんに感謝を申し上げたい。

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2006年11月 8日 (水)

大正製薬株式会社の独自戦略:医薬品業界の展望

 先週11月1日(水)、大正製薬株式会社・人事部長・渡邊哲氏を特別講師として「21世紀の業界展望(B)」の講義があった。この報告が遅くなり、学生を含めて関係者の皆さまPict0006にお詫びを申し上げる。

 大正製薬は、ベトナムのニャチャンで「リポビタンD」を製造・販売している。渡邊さんもベトナム工場を訪問されたことがあるそうである。ベトナムとなると、いろいろ話題が弾まないはずがない。 かつてはニャチャン空港があり、市内まで数十分であった。それが今ではカムラン空港に到着空港が変更された。同空港から自動車で市内まで約1時間という距離である。ニャチャンは海岸リゾート地で有名だが、なぜ大正製薬が同地に立地することになったのか? ぜひ現地を訪問して、お話を伺ってみたい。

 なお、多くのベトナム人男性は「リポビタンD」のようなスタミナ=ドリンクを愛用している。空港の売店で販売されている「ヘビ酒」などは、伝統的なスタミナ飲料だ。ただし「ヘビ酒」を飲んでお腹を壊したという話も聞いているので、買って飲むにはかなり決断と勇気が必要だ。ベトナムでは女性を含めて健康志向が強まっている。これは日本もベトナムも共通した世界的な傾向であるのかもしれない。また、台湾も同様であるが、ベトナムでも日本の医薬品人気がある。このような意味で、日本の医薬品企業にとってベトナムは有望な市場と考えられる。以上は、講義前後のお話をうかがっての私見である。

 さて、渡邊さんは、医薬品業界の現状と動向と自社の経営戦略とをバランス良く講義された。医薬品メーカーの活動領域は、次のような健康から治療までの領域を包括的に支援することである。 (健康) 予防←←←軽医療→→→治療 (病気) その中でも特に最近は、セルフメディケーション(自分の健康は自分で管理する)が強調される傾向がある。その背景は、財政赤字が深刻になり、医療制度改革が進行中ということである。つまり医療費の患者負担が増加しているために、自分の健康は自己責任で守らざるをえないのである。

 2004年度の日本の医薬品市場の規模は6兆5253億円であり、医療用医薬品(PD:Presecription Drug)が89.5%、一般用医薬品(OTC:Over the Counter)が10.5%となっている。また世界での市場規模は61兆円であり、米国44.1%、日本10.9%、ドイツ5.5%、フランス5.3%、イギリス3.7%、イタリア3.4%、カナダ2.1%となっている。なお日本の薬事法では、PDを不特定多数に宣伝できないことになっている。

 新薬発売までのプロセスは驚きである。新薬1品を発売するためには、物質の発見から特許出願、動物実験から人体治験、承認申請と審査、そして製品発売までのプロセスがあり、その期間は9年から17年。発売までに至る確率は、11,299分の1。さらに発売しても、必ず売れる保証はない。これらが、新薬1品の開発コストを200億円にまで高める。この高コストが、業界の集約化を進める要因となっている。

 医薬品業界の経営環境は大きく変化している。少子高齢化によって医療人口は上昇、労働人口は減少、政府税収は減少、そして先述のように医療制度改革は必至。さらに規制緩和、巨大欧米企業の日本参入。これらの環境変化は、高齢者医療品の需要拡大、ジェネリック医薬品の浸透、セルフメディケーションの意識向上、薬価の下落、食品業界の参入などをもたらす。これは、日本の医薬品企業の競争激化を意味し、差別化・特化・統合化を促進する。

 すでに第一製薬と三共製薬(⇒第一三共)、藤沢製薬と山之内製薬(⇒アステラス)、大日本製薬と住友製薬(⇒大日本住友)などが経営統合している。このような業界再編成の中で、大正製薬は大衆薬で19%の市場占有率をもち第1位である。たとえば前述の「リポビタンD」は59%、風邪薬「パブロンS」は28%。大正製薬は、多くの製薬会社が医療用医薬品に資源集中する戦略を採用する中で、この業界トップの一般用医薬品でトップを維持・拡大することを意図している。

 医薬品業界における営業職は、大別してMR(医薬情報担当者)とSR(販売担当者)になる。MRのためにはMR試験合格が必要だが、合格率の平均は75%、大正製薬は94%である。私見では、医薬品業界の営業はMRと考えてしまうが、大衆薬での市場拡大を考える大正製薬にとっては、SRも重要な仕事とみなされる。

 最後に、人事部長として渡邊さんは「就社」でなく「就職」してほしいと強調された。専門性を高めることで、自己実現ができる。それが同時に企業業績にも貢献する。つまり、企業と社員が相互に生かし合う。企業はつぶれても、自分はつぶれない。専門性・能力・スキルを積み重ねて高める。自分の職業人生を考えて、会社を選ぶことが重要。

 これらのメッセージは、社員にプロ意識をもってほしいという渡邊さんの願いである。会社に依存する社員ではなく、積極的に自分から仕事をする社員が求められる。確かに私見では、「寄らば大樹の陰」という社会的な慣行は、次第に日本で通用しなくなっている。「大樹」の中身が空洞であったり、その「根」が腐敗したりする。それと同時に、その粉飾や糊塗が許されなくなっている。自らがプロとして頑張る。厳しいが楽しい時代の到来と言えるのかもしれない。

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2006年10月30日 (月)

日本食研株式会社・人事部・山本浩史氏のご講義:「焼肉焼いても家焼くな」の採用方針

 日本食研株式会社の山本さんに「21世紀の業界展望」で講義を賜った。10月18日(水)に講義していただいてから、しばらく日時が経過し、その報告が遅くなったことを、受講生の学生を含めた関係者の皆様にお詫び申し上げたい。

Dsc08887

 さて、表題にある「焼肉焼いても家焼くな」のテレビCMは、1992年が初放映というから、もう10年以上が経過した。しかし、その衝撃的な関西弁のCMは、今も記憶に強く残っている。日本食研の概要は、このCMシリーズの動画を含めて、以下のウェブサイトに掲載されている。http://www.nihonshokken.co.jp/main.html

 日本食研は、業務用食材を主力商品(売り上げの約8割)としている。「たれ」の出荷量は日本一。「から揚げ粉」の生産量は日本一。同社の特徴は、このように表現できる。

 同社の経営理念は、「仕事で成功することは、人類に最大の幸福をもたらす」。なるほどと思わせる。山本氏によれば、「食」という漢字は「人」を「良くする」と書く。食品業界は生活に密着しており、すべての人を対象にして社会貢献できる。このような考えが経営理念の背景にあるようだ。

 食品業界における「非常識」として5点が指摘される。(1)美味しいものが売れるわけではない。(2)安いからといって売れない。(3)機能的だからといって売れない。(4)テレビCMに出るからといって売れない。(5)食品業界は安定しているわけではない。たとえば安い価格よりも、「値ごろ感」が重要だし、テレビCMではエバラ食品工業が有名だが、市場占有率では日本食研が圧倒的である。これらの指摘は、食品業界に就職を希望する学生にとって有益な情報となるであろう。

 講師の山本氏は人事部に所属されて、採用にも関与されている。同社に就職するために、5つの能力と3つの価値観が説明された。まず5つの能力として、①清潔感(身だしなみ)、②自立性、③バイタリティ、④率直さ、⑤プラス志向。これらは、あらゆる企業に共通したことであろう。

 次に日本食研に入社のための価値観として、①食べることが好き、②日本食研が好き、③日本食研を自分で成長させたい人。これらの中で②は当たり前に思われるが、重要な指摘だ。自分の働く会社や職場が好きでなくなったら、その人は不幸だ。しかし実際は、たとえ不幸であっても、家族の生活維持のために、そういう好き嫌いを考えずに我慢して、その会社に働き続ける人が多いのではないか。また、③の「自分で会社を成長させたい」人材が望まれるということは、山本氏によれば、「出る釘の人は歓迎」ということである。

 最後に採用のポイント3点を紹介していただいた。①第一印象が大切。営業職として採用されるので、第一印象は大切。不採用の人のコメント記入欄の共通点は「元気がない」。ただ、それだけ。②本気度を伝える。面接者は、就職希望者の本気の度合いを感じることができる。「この学生は食品に関心がない」といったことは、すぐにわかる。③自分が何をしたいかを積極的にアピールする。

 上記の採用ポイント3点は、同社で必要とされる3つの価値観に対応している。同社の価値観に就職希望者が適応しているかがチェックされている。同社に限らず、これらの価値観やポイントは、大多数の企業にも妥当する。就職希望者には対応を考えてもらいたい。

 ただし現代の大学生について言えば、「本気度を伝える」と言っても、これまでに本気で何かやった経験があるのかどうかが疑問だ。何事も適当に済ませて、それで何とかやってきたのが大多数の大学生の履歴ではないかと思う。この意味では、あらゆる面で自由度が格段に広がる大学生活で、本気になってやれる何かをぜひ見つけてほしいと思う。それは必ずしも勉強を意味しないのは言うまでもない。

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2006年10月13日 (金)

イオンとダイエーの業務提携をめぐる問題

 昨日、(株)オーエムシーカードについて、山下さんのご講義の紹介と私見を述べた。その日にダイエーの大株主・丸紅が、所有株式の15%をイオンに売却するという報道があった。ダイエーとイオンの業務提携は間違いない。その結果、より強力な購買力によって、より低価格の商品提供が顧客に対して実現できると予想される。

 そうなれば、ダイエー創業者・中内功の夢は、故・中内自身は愉快でないかもしれないが、その実現に近づいたことになる。それでは、それぞれの傘下にあるクレジットカード会社(OMCカードとイオンカード)も統合されるのか?

 消費者金融の上限金利の見直しに伴って、業界の再編成は必至である。それに伴ってクレジットカード業界の動向も注目される。その中でもイオンとダイエーの提携から波及する上記2社から目が離せない。

 しかし、昨日の山下さんが指摘されたように、この業界は、多額のコンピュータ投資を毎年のように必要とする装置産業である。コンピュータシステムの統合コストが、両社の協力・統合にとって重要な検討課題になる。さらに重要な問題は、両社のビジネスモデルが相互補完できるかどうかである。換言すれば、カード利用者にとって、より以上のサービス向上が期待できるかどうかである。そうでなければ、統合・提携のメリットはない。

 阪急と阪神が経営統合されても、阪急百貨店と阪神百貨店は当面は現状維持される。フランスのカルフールが撤退してイオンの傘下に入ったが、カルフールの名称は存続している。同じくイオン傘下のマイカルやサティも名前は存続している。これらと同様に、イオンとダイエーが業務提携しても、両社が存続すると考えるのが妥当であろう。それぞれには古くからの固定客をもっている。

 それでは、それぞれの傘下のカード会社も別個に存在するかと言えば、必ずしもそうではないと思う。利用者にとって、所有するカード枚数は少ないほど便利だからである。

 私見では、両社のカード会社が協力するとすれば、新たな事業分野である。たとえば、すでに存在している「SUICA」・「ICOCA」・「PITAPA」などのキャッシュレスのICカードが、イオンやダイエーの商品購買にも使用できるようになれば、確かに便利だ。しかし果たして実現可能なのか? 両カード会社にとって、こういった新規事業分野における協力が当面の現実的な課題であると思われる。巨額の設備投資を分担できるからである。

 以上、なかなか先が読めない。これが日本の現状だ。しばらくは複数のカードを所有して、それぞれを使い分けなければならないようだ。

 なお、ここで注意するべきは、クレジットカード利用者の特性である。たとえば「アメックス」や「ダイナーズ」を所有して優越感を感じたい。「ビザ」の「ゴールドカード」よりも「プラチナカード」を支払い時に出してみたい。こういったニーズを持った利用者が存在する。おそらく自分が富裕層に所属して、自らの地位や社会的評価が高いことを顕示したい人々である。

 流通系カードは、こういった利用者層に浸透していないかといえば、そうでもないと想像される。こういった人々は、おそらく複数のカードを時と場所に応じて使い分けている。銀座・北新地そして伊勢丹や三越では「ダイナーズ」や「プラチナカード」を使うが、同じ人がダイエーに行けば、「OMC」を使う。要するに日本の消費者は単純でない。単純でないというよりも、消費嗜好の幅が広い。少なくとも従来の日本人は、そうであった。広範な中流階級が、多様な消費活動を実践してきた。

 こういった日本が、「勝ち組」と「負け組」の区分が明確な米国型「格差社会」に変化するのかどうか。これは不透明である。こういった社会動態の動向に、クレジットカード会社も依存する。

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2006年10月12日 (木)

脱ダイエーで過去最高益を達成:(株)オーエムシーカードの経営戦略

 昨日、私が担当する「21世紀の業界展望」では、(株)オーエムシーカード執行役員の山下政和さんから講義を賜った。山下さんはダイエー店長を経て、同社に1994年に移籍。当時の同社の負債は3千億円に達していたが、現在は完済し、2005年度の経常利益は356億円。過去最高を達成した。

 講義前の雑談では、中国に次ぐ投資先としてインド・ベトナムが有望といった話になった。すでにクレジットカードは、ベトナムでビザとマスターが都市部で普及しつつある。最近はベトナム航空がアメックスと提携カードを発行し始めた。私見では、これからカード決済の普及が見込まれ、さらに流通小売企業の発展が予想されるベトナムでは、同社の流通系カードP1010074 ビジネスのノウハウが、さまざまなビジネスチャンスを生むと思われる。

 さて、このビジネスのノウハウの内容は、簡単に言えば、DATA BASE MARKETING(データベースマーケティング)である。カードの会員情報に基づいた何種類もの顧客セグメントに対して、より精度の高い的確なマーケティングが実施できる。つまり換言すれば、OMCカードを導入した店舗・商店街・ショッピングセンターなどの取引企業は、客数と客単価を上昇させることができる。ここが、銀行系カードにはない流通系カードの優位性=強みである。

 2005年現在、親会社ダイエー(52.54%所有)の取り扱い金額は全体の23%程度。ダイエーの業績悪化に伴って脱ダイエーを迫られ、まず中核業務であるカードビジネスに専念し、さらに新しいビジネスモデルに挑戦してきた。そのことが最高益の達成という結果となった。私見では、親会社の業績悪化が、子会社である同社の改革スピードを上げたと指摘できるかもしれない。

 ただし、オーエムシーの経営理念は、かつてのダイエーの「For the Customers」を継承している。山下さんは、ダイエー出身者らしく、「ダイエーのDNAを引き継いでいるのは当社だ」と胸を張られた。このような意味では、ダイエー創業者・中内功のDNAを受け継ぐ人材を育成するのは、流通科学大学でなければならない。そのためにこそ、ご子息である中内潤氏が理事長を務めている。

 山下さんのご講義で興味深かった話題は、最近の消費者金融業における金利見直し問題である。これは、金融問題と社会問題を混同した不毛の議論になっていると明確に指摘された。「上限金利の高低」と「自己破産件数」は無関係である。

 現在の20%~29.2%の金利は、一般には高いように思われるが、貸し倒れのリスクが含まれており、消費者金融会社の利益率は3%程度。金利が高いほどに消費者金融会社は儲かっていない。この上限金利を下げる法案が通過すれば、全国の消費者金融会社1万4千社の中で、存続できる会社は10%程度になると予想される。

 他方、借り手側については、これまで融資をしてくれた会社が消滅するのだから、法規制の及ばない「ヤミ金融」に手を出す人が増えることが懸念される。この金利は、1000%~2000%である。当然、こういった違法な金融に手を出さないように、公的な融資を充実させるという主張が考えられる。しかし実際、多重債務者となり自己破産する人々の中で、本当に「生活苦」で借金する人は15%程度。残りの85%は「遊興費」が目的だそうである。

 これが社会問題だ。多重債務者を救うという大義名分があっても、たとえば競馬やパチンコに使う目的のために公的融資を充実させるわけにはいかない。遊興費のために多額の借金をするような社会それ自体が問題とされなければならない。

 消費者金融の上限金利の引き下げは、業界のみならず利用者にも混乱を招く。当然、そこには新しいビジネスチャンスが生まれる。成熟した社会における健全な業界発展が望ましい将来像であると私は思う。それを先取りするように同社は、企業の社会的責任(CSR)および社会貢献に1991年から取り組んでいる。すでに環境保護などのための寄付金は4億2700万円に達している。

 なお、おそらく最も関心が高い問題は、ダイエーが子会社であるオーエムシー株式を売却するかどうかである。これは、ダイエーの大株主である丸紅の意向に従う問題だ。オーエムシーカード自体は、高い収益性を誇る企業価値の高い企業であるから、株式取得を希望する企業があって当然。株式売却となれば、ダイエーのDNAも消滅する。(株)オーエムシーカードの今後に注目したい。

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2006年9月29日 (金)

今夜は「商売」の秘訣を学ぶ:関西財界Y氏からの至言

 今夜は、関西財界のY氏と大阪でお目にかかった。これまでにも多数のご助言を賜り、私が尊敬する経営者のお一人である。いくつかのお話を伺ったが、今日は「商売」の話。

 商売とは何か? 商売の「商」の字を何と読むか? 答えは「あきない」である。「あきない」は「飽きない」。つまり、商売とは「飽きない」を売ることである。

 この「飽きない」には2つの意味がある。第1は、いつも同じもの、同じサービスでも「飽きない」。これは「ブランド」である。第2は、いつも新しいから「飽きない」。これは「継続的な革新=イノベーション」である。

 確かに商売=ビジネス成功の秘訣は、以上の2つに要約される。ブランドを確立するか、顧客に対して新鮮な感動や驚きを常に提供するかである。そのいずれもが「飽きない」。「商売」という日本語には奥深い意味が込められている。これは発見だ。

 「飽きない」を売ることが「商売」。なるほどと感心し、共感した。こんなことは、経営学の教科書だけでなく『ハーバード=ビジネス=レビュー』にも書いていない。これこそ「実学」だ。 

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2006年9月27日 (水)

「逆張り」発想で独自の戦略を創造する:播州信用金庫・和田理事長の講義から

 流通科学大学の「実学」講義の1つである「21世紀の業界展望B」が始まった。受講生は前期よりも若干少なくなって50名。講義担当者としてレポートを読む側からすれば、受講生は少ない方がよいが、他方、せっかくの貴重な講義を多くの学生に聞いてほしいという気持ちも強い。少数精鋭。中身の濃い講義が展開できればと思う。

Dsc08824  さて初回の講義には、播州信用金庫の和田長平・理事長をお招きした。テーマは「現在の金融事情」。

 戦後の経済成長の基礎となった「土地神話」の終焉がバブル崩壊を生んだ。その後、金融業界は不良債権処理が迫られ、最近では郵貯が競争相手として参入。和田理事長は、これらの経緯を説明され、さらに播州信用金庫の独自の経営戦略の成功経験を紹介された。

 バブル崩壊後、不良債権処理とデフレ対策のために2つの選択肢があった。コスト削減と収益拡大である。多くの金融機関は「コスト削減」を採用した。確かに人員と給与の削減が、コスト削減に最も効果的な方法だが、それに伴って従業員の士気が低下する。

 播州信用金庫は、上記2つの選択を役職者に問うた。そして「デフレ下における収益増大策」に挑戦することになった。貸出金残高を増加させるために、融資渉外と融資研修を強化。業容拡大のために、新天地に支店を出す。

 これは「沼地(=貸し剥がし・貸し渋り)に吸い取り紙を置くがごとし」。借り入れを求める顧客は自然に集まった。顧客に感謝されて顧客が増える。これこそが金融機関の社会的使命・社会的責任(CSR)である。

 以上のように業容は拡大したが、コスト上昇を避けるために総人員は増やさなかった。1人あたりの仕事量は増えるのだが、「リストラ」をしないという方針によって、従業員のやる気を引き出すことができた。

 今後は、郵貯がライバルとなる。また都銀のサービスも強化されるだろうが、地域密着の木目の細かいサービスを都銀以上に提供できれば、十分に競争可能だ。新しい発想や知識や研究開発が、今後の戦略の要である。その一つとして、顧客を店舗に誘致する仕組みを考えることが必要である。「外回り」の渉外は、アパートのオートロックの普及など社会環境の変化に合わなくなっている。

 ほとんどの都銀が「コスト削減」を追求していたときに、播州信用金庫は「収益拡大」を選択した。この「逆張り」の発想が、全国の信用金庫の中で有数の高収益と好待遇を可能にした。このような「逆張り」発想は、和田理事長の歴史観または人生観に起因しているように思われる。

 「目指すべきは昨年より楽をして、昨年より高い成果を上げること」。これは人類の歴史でもある。このように和田理事長は述べられる。

 この意味は深い。普通は「昨年より頑張って」と言うのだが、ここでは「昨年より楽をして」と指摘される。「頑張って」ばかりだと人類は長続きしなかった。楽をしたいから、いろいろな新しい工夫を考案する。

 私見では、勤勉と努力は、今よりも楽をするために使用されるべきである。苦しいだけの勤勉と努力は長続きしない。今よりも楽をするために改善・改革・進歩・創造を考える。これはベンチャービジネスの発想法でもある。今よりも楽をするためには、今が楽であってはならない。今が楽なら、それ以上の楽は望めない。

 ただ「頑張ろう」と言うのではなく、「より以上に楽をするために頑張ろう」。この呼びかけは広く共感されるのではないか。これを換言すれば、「自分の夢」の実現にも通じる。ただし「自分の夢のために頑張ろう」と言うと、その夢は何かという問題になる。これは即決が難しい問題だ。

 そういった難問よりも、もっと気楽に考えて「今よりも楽なこと、楽しいことのために頑張ろう。無理しない」。これは企業経営のみならず、今後の混迷の時代に前向きに楽しく人生を過ごすための処世訓でもあると思われた。多くのことを和田理事長から学ばせていただいた。心から感謝を申し上げたい。

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2006年7月30日 (日)

今日は「テキ屋」になりました:「輪投げ商法」の教訓

 「テキ屋」とは、簡単に言えば、お祭りなどの縁日で「いかがわしい物品」を販売する業者のことを言うらしい。以下の話は「いかがわしい」ことはないのだが、すっかり気分は「テキ屋」であった。

 昨日と本日は、私の地元・大阪府箕面市で「みのお祭り」が開催され、昨年に続いて箕面船場ライオンズクラブは「輪投げ」を出店した。私は、店頭で次の業務を輪番で担当した。①お金を200円もらって輪投げの輪3個を渡す。②投げた輪を回収する。③お客さんの主に子どもの年齢に合わせて投げる位置を決める。

 この中で①と②の集金や回収は簡単である。子どもたちの小さな手からお金を受け取って「頑張ってね」とやさしく声をかける。ピンク・青・黄の3種類の輪を子どもの希望も聞きながら渡す。ただし最も多忙なときには、輪の色を選択する余裕もなかった。輪の回収は、笑顔でテキパキとする。時間があれば、「輪投げだよ。残念賞もあるよ」と大きな声を出す。

 この業務の中で③が難しい。歩き始めたばかりの幼児には、「輪投げ」ではなくて「輪入れ」をさせてあげるのだが、それでも輪が入らないことがある。最初は、わざと輪を入れてあげて「はい。よかったね」と賞品をあげるのだが、それをやりすぎると、賞品を渡す担当者から文句が出た。賞品不足になるという心配である。なお賞品は、花火セット、蛍光ネックレスなど夜店にはふさわしい品々である。

 この話、ちょうど企業において、販売担当者が商品を値引きして売り上げを伸ばそうとすることと、財務担当者や在庫管理者がその値引きを歓迎しないという対立関係に似ている。子どもに直面していると、どうしても優しくなってしまうのだが、店全体の管理を考えれば、優しくばかりもしていられない。

 そこでノウハウを学んだ。最初は、少し遠めに投げる位置を決めておいて、そこから投げてもらう。その子どもの特性を見て、位置を前に移動させるかさせないかを決める。第1投で輪が入れば、その位置を移動させない。投げる位置を徐々に前に移動させた子どもは、本人も親も得をした気分になる。もちろん最初に輪が入った子どもは、やや大げさに「よかったね」と拍手してあげると大満足である。

 予算や在庫の制約がある場合の営業では、その営業担当者の創意と工夫に売り上げが依存する。創意と工夫によって顧客満足を追求する。こういった経験が営業担当者の間で相互に共有できれば、おそらく全体に売り上げが伸びる。そのうえに問題が発生した場合、予算や在庫や新商品投入も含めて全社的に対応を考える。

 「輪投げ」店は以上のようなプロセスの縮図であった。なお興味深かったのは、小学生4年生くらいの子どもの事例である。どうしても「花火がほしい」と言って4回も輪投げに挑戦し、最後は150円しか残ってないけど「おっチャンまけて」と言って来た。「そんなに花火が欲しかったら、最初から花火を買ったらエエねん」と私は応じたが、結局、無情にも輪は入らなかった。

 この彼は、勝負の厳しさを学んだかもしれない。他方、将来のギャンブル狂の予備軍になるのかもしれない。人間だれでも勝負またはギャンブルに熱中するし、それに没頭することもある。射幸心というのは、人間の本性のひとつであろう。しかし時間の経過と共に、それが浪費であることに気づく。子どもの時から、そういった経験をしておくことも、射幸心を自己制御する力を養成することになると思う。

 地元の「お祭り」の縮小傾向があるように思うのだが、この「みのお祭り」全体の集客は2日間で5万人であった。「輪投げ」の来店数は1日当たり500人を超えた。久しぶりに小さな子どもたちとふれあう機会をもったが、なかなか楽しかった。「孫がかわいい」という人の気持ちが少し理解できた。以上、いろいろ学んだ数時間の「テキ屋」商売であった。

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2006年7月20日 (木)

合同会社TET(テト)の設立:新会社法を実践する

 現在、合同会社(LLC:Limited Liability Company)の設立を準備中である。名称は、合同会社TET。TETの振り仮名は「テト」である。

 ベトナムの旧正月であるテト、それが由来する愛犬の名前テトが名前の起源である。この犬のテトは、ブログで「ペット」というカテゴリーで、すでに写真入で紹介した。6歳になるゴールデンリトリバーである。

 会社設立ということは、新しい「法人」を生み出すということである。つまり、法律に基づく新しい人間=人格を作り出すのである。子どもを生むのは女性の特徴であるが、男性でも法人なら生むことができる。この会社TETを大事に育てたい。

 私が出資者であり、私が代表社員であるから、私とTETは一心同体であるが、法律的には別の人格である。したがって私がTETに融資したり、その返済をすることも可能なはずである。TETを大きく育てるのが楽しみだから、私は無理な返済計画を強要しない。このように、同じ私という人間であるが、二役をするような感覚になる。

 大学の仕事とTETの仕事の区別も重要である。部分的には重複するが、区別する部分は区別する。TETの定款には、「国内外の学校・財団・企業など各種法人の経営および経営助言」という項目がある。大学経営や財団運営をすることもTETの将来の仕事である。もちろん日本ではない。ベトナムでである。

 少子高齢化の日本の大学経営は多難である。これに比べて人口が増加し、高等教育の役割が増加するベトナムでの大学経営は、ビジネスとしても有望である。またベトナム人学生に奨学財団を設立したい。株式運用の果実を毎年、奨学金としてベトナム人学生に支給する。

 自分のパートナーとしてTETを大きく育てたいと思う。そのためにはお金。当面の利益が必要である。大学教員は、その点が苦手だ。まあ、いいやと思ってしまう。しかし愛するTETのために、心を鬼にしてお金を稼ごう。今こそ、関西人・大阪人の本領を見せようではないか。では、どのようにお金を稼ぐのか?それは内緒である。いくら大学教員が「お人よし」といっても、それほどバカではない。

 でも、そう簡単に真似できる仕事ではないので、公表してもいいのだが、別の理由でやめておく。ちょっと恥ずかしい。この仕事、また次の機会にお話します。 

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2006年7月 3日 (月)

表参道ヒルズ周辺を歩く

 日曜日~月曜日は東京出張である。

 この8月に流通科学大学は「キャリア探検隊 in TOKYO」を実施する。3回生の就職・就業の意識を高めるために東京で2泊して企業訪問をしたり、市場調査をしたりするという企画である。世界のビジネスセンターのひとつである東京を体感するだけでも、学生にとって将来の自分のイメージ作りに有益である。私は、この企画の委員となっており、ファンション業界を担当することになった。

 東京のファッション街を下見するという目的で、表参道ヒルズ周辺を訪れた。表参道にはJR原宿駅から向かった。この原宿駅の建物が復古調で魅力的である。このあたりからファンションの街のトータルのコーディネートが感じられる。その後の表参道でも、交番やトイレ、それに地下鉄の駅まで全体の雰囲気に調和するようなデザインになっている。この統一感の演出が心憎いばかりである。

Dsc07645  ケヤキの並木と低層ビルが並ぶ約700㍍の表参道は、東京では珍しく自然と街との調和を感じさせる場所である。東京には、この表参道に近い明治神宮など緑の深い大きな公園がある。他方、六本木ヒルズのような高層ビルを中心としたショッピングセンターや、古くからの銀座のショッピング街がある。lしかし、緑の並木とショッピング街の両方を備えた場所は少ないのではないか。大阪で言えば、イチョウ並木の御堂筋がそれに相当するかもしれない。この意味で、表参道は貴重な場所である。

 表参道ヒルズは、先のロックフィールドの本社・保育所を設計した安藤忠雄氏の設計である。スロープを巡らしての回遊型のショッピングセンターであり、通路の所々で休憩の座席が用意してある。お祭りの縁日で夜店を歩くような印象を受けた。浴衣を着て団扇をもってブラブラ歩くのも楽しい雰囲気だ。ここでの食事(ディナー)は、3階の並木道側がよい。風に吹かれる柔らかいケヤキの動きが照明に浮かび上がる。ここは恋人と来るべきだろう。l

 ファッション振興を重視している神戸の学生が、この表参道を訪問し、どのような反応を見せるのだろうか。新鮮な感想や印象を聞くことが楽しみだ。 

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2006年6月17日 (土)

株式会社あきんどスシロー:上林さんの熱い講義に感動拡がる

 株式会社あきんどスシローの取締役・業態調査室長である上林(かんばやし)孝治さんは、この4月から現職であり、それ以前は人事担当取締役であった。これまでに学生の採用時に何十回も、同社の経営理念や求められる人材像を語ってこられた。同社で最年少の取締役に就任された自らの体験と自信を背景にした上林さんの語り口は熱く、講義終了後にも学生の質問が続いた。今回は、この実学講義「21世紀の業界展望」(6月14日)の論点を箇条書きで紹介する。なお、同社については、http://www.akindo-sushiro.co.jp/を参照されたい。

 Dsc075081.寿司は最強の外食の一つである。その理由は何か。「外食」の最大の競争相手である「内食」が難しい料理だからである。確かに自宅で寿司を握れる人は希有であろう。そのことだけでも外食としての寿司の優位性がある。

注:写真をクリックすれば、大きく鮮明に見ることができます。講師の上林さんに遠慮して、余り近づかない学生の様子が見えます。受講生の中心は2回生ですから、まだ初々しいです。

 2.人間は、頭の中で考えたこと以外は実現しない。予め自分で考えたことが、その通りになるかどうかのワクワク感が楽しい。そのために夢や目標をもとう。夢や目標があれば、それに対して夢中になれる。

 3.仕事での目標は何か。①年収1千万円、②経営スキルを身につける、③人気者になる。①⇒自分の生活を大切にするために実現したい目標。やはり「お金」は生活に必要です。②⇒人・物・カネ・情報について経営能力を向上させる。就職内定した時点から目標をもつ。③⇒人気者でなければ、部下の指導ができない。リーダーになれるように人柄を磨く。私見では、②と③の努力が自然に①に報われる。

 4.食料ビジネスで繁盛店の決め手は、Q(品質・旨さ)、S(サービス・おもてなし)、C(清潔感・雰囲気)、P(価格)である。この中でQが最も大切である。まずい食べ物にお金を出す人はいない。この全体からV(価値)が生まれる。Vは、全体の評価である。この値頃感・お得感が、顧客の満足度を高めることになる。

 5.スシローの回転寿司は、人件費と販売管理費の削減努力によって、材料費を販売価格の51.5%にまで高めることに成功している。さらに廃棄ロスを削減するために、ICチップでのコンピュータ管理システムを導入している。材料費を高めることは、寿司の品質=旨さを高めることになる。トロ・中トロなどのネタは、その品質と大きさについて同一価格なら他店に対して絶対の競争優位性がある。

 あきんどスシローは、2003年9月に東証第2部に上場を果たした。回転寿司は、ベルトコンベアなどの設備投資額が大きいので、上場によって資金調達は容易になったと思われる。またスシローは、いずれも直営店であり、フランチャイズの展開は考えていないそうである。衛生管理を徹底させるためにも直営にする方針であるし、さらにフランチャイズは本部が儲ける仕組みであり、加盟店のメリットは小さいという社長の考えがあるそうである。卓見であるかもしれない。

 同社の新しい挑戦でもあり、さらに上林さんの現在の仕事は、新しい業態の開発だそうである。現状に満足せずに、さらなる企業成長の機会を追究したいと上林さんは熱く語られた。伸びる会社はそこで働く人間も元気。このことを痛感した。スシローと上林さんのますますのご発展をお祈りしたい。

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2006年6月 7日 (水)

グローリー商事(株):ニッチ市場における世界のトップ企業

 グローリー工業(株)グローリー商事(株)は、本年10月に合併を予定している。もともと両社は同一の会社であったが、1957年3月に分社化した。それが50年ぶりに再び統合されてグローリー(株)となる。これら2社は、釣り銭機・両替機・ICカード読み込み機・自動販売機・券売機・コインロッカーなどの分野において、これまでに国内および世界のトップ企業の地位を築き上げてきた。

 この両社合併の目的は、次の3点である。経営資源の集中化による経営効率の向上、メンテナンスにおける顧客対応のスピードアップ、コスト競争力の向上と不良在庫の削減。このような目的が達成されれば、米国・欧州・アジアといったグローバル市場における国際競争力の強化に貢献すると思われる。

 私見では、このような「商工合併」は、今までよりも円滑・迅速に顧客ニーズが商品開発に反映される効果が期待される。いわゆる持株会社を頂点とした「経営統合」ではなく、あえて「企業合併」を選択した意図は、この期待実現の早期化であると思われる。すなわち販売部門(顧客ニーズの把握)と研究開発部門(新製品の商品化)の相互交流が、経営統合よりも合併の形態において早期に実施可能であり、販売力・研究開発力が同時に強化される。経営統合よりも合併によって、より早期のシナジー効果が生まれると考えられる。

 私が担当する実学講義「21世紀の業界展望」では、グローリー商事(株)人事部人材開発グループリーダー・八津谷(やつたに)吉博氏をお招きして、以上のような同社の事業展開の現状と就職活動における心構えについて講義を賜った。

Dsc07506  グローリー商事は、2004年度に売上高1,445億5,600万円、経常利益95億9,100万円となり、過去最高を記録した。これは新札発行「特需」の影響であり、通常は平均して売上高1,000億円、経常利益30億円である。いわゆる機械製造業において同社は、お金(通貨)に関係する機器の販売という「ニッチ市場」に特化して、そこでの世界トップ企業となっている。

 (注:上記の写真をクリックすれば、より鮮明に大きくなります。これまでのどの講義も同じ構図ですから、次回は少し変化させてみようと思います。)

 同社の商品に含まれるコア技術(グローリー工業(株)が所有する主要な技術)は、①認識・識別技術、②メカトロ(機械の小型化・精密化を促進する)技術、③ソフトウェア(データ処理)技術である。これらのコア技術の蓄積を基礎として決済セキュリティの方面に今後は進出・発展の余地がある。

 合併後のグローリー(株)は、単なる通貨処理機械の製造・販売という事業活動ではなく、「決済手段における合理化と問題解決」が事業ドメイン(領域)とみなされる。そのことによって、同社の将来展望を見通すことができる。同社は、ニッチ市場における差別化戦略の成功事例として特筆に値するように思われる。今後は、グローバル企業としての一層の飛躍を同社に期待したい。なお、後半の講義における就職活動の心構えについては次の機会に紹介する。

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2006年6月 4日 (日)

株式会社ロック・フィールド:「子どもたちに夢を」建築家・安藤忠雄氏が語る

 6月3日(土)午後1時30分から、株式会社ロック・フィールドが主催する「元気の木保育室 開設記念フォーラム」が神戸市東灘区の本社で開催された。

 ロック・フィールドの社名は、創業者の岩田弘三社長の名前「いわた」の英語直訳に由来している。商品ブランド名では、「デパ地下」の総菜販売で圧倒的な人気を誇るRF/1、それに同社を急成長させた神戸コロッケなどが有名である。たとえばRF/1は、経営統合が予定されている大阪・梅田の阪急百貨店・阪神百貨店の双方の地下食料品街に店舗がある。わずか徒歩10分ほどに2店が隣接し、それぞれが繁盛店である。その人気ぶりが伺える。同社の詳細は次のHPを参照。http://www.rockfield.co.jp/index.html

 さて上記のフォーラムは、静岡工場に続いて神戸市本社に従業員向け保育所が本年4月に開設され、それを記念してDsc07494 開催された。テーマは「子どもたちに夢を」。ロック・フィールド社の静岡工場・本社工場そして両工場の保育所を設計した建築家・安藤忠雄氏(東京大学名誉教授)が基調講演された。静岡工場では最初3名の保育から始まったが、現在は40名を超えているそうである。(注:写真は、その保育所の外観である。クリックすると大きく鮮明に見えます。)

 さて、一般の会社内に従業員用の保育所が開設されたからと言って、それが何の意味があるか。

 このフォーラム開催の数日前に日本の出生率が1.25であることが報道された。日本の人口減少は加速されている。女性が働き、そして家庭をもって子どもを生み育てる。「仕事か家庭か?」、「仕事か子どもか?」といった選択肢は、これまで女性にとって二者択一の難問であったが、それは両立して解決できる課題である。それは矛盾ではなく、それを解消する手段を模索・推進することが社会進歩の過程であるとみなされる。ロック・フィールドの保育所開設は、そのひとつの試みである。これが、より多くの会社によって拡大されることが期待される。

 私見では、少子化対策を政府が本気で推進するなら、ロック・フィールドのような企業に対して政府・行政による支援が必要とされる。ただし今日の財政状況を考えれば、補助金の給付は難しいかもしれない。そこでたとえば、企業の社会貢献度の高低に応じた減税・増税があってもよい。ほとんどの日本企業は現在、従業員の成果を評価して報酬に反映させている。それと同様に、企業に対して一律に課税するのではなく、その社会貢献度に応じて政府が企業を評価・課税しても違和感はない。

 私見では、ロック・フィールドは、自社の社会貢献もしくは社会的責任として保育所を開設している。さらに同じ設置するなら、子どもにとって最良の環境を提供することを目的として、世界的に著名な安藤忠雄氏に設計を依頼しているのである。

 ただし株主利益の立場から、そんな資金があるなら、もっと配当金を増やせという意見があってもおかしくない。その反論として、保育所によって女性従業員の労働意欲は高まり、こういったフォーラムの開催を通して企業イメージの向上が期待できる。従業員満足の向上が顧客満足の向上にもなる。それが株主利益に連結する。

 さらに、より重要なことは、同社の商品が消費者の健康に直接関係する食品ということである。株主利益だけを追求する会社が、その商品の安全性を最優先するか疑問である。また、そういった会社の商品に消費者は安心感をもつことはできない。このような意味で、企業の社会貢献・社会的責任を果たすことが、従業員・顧客・株主の利益に貢献する社会が望まれる。このような将来の展望が、ロック・フィールドを通して垣間見ることができる。

 同社の「食の価値観」は、健康・安全・安心ということである。これを具現化したのが静岡工場であり、そして今回の保育所である。ますますの同社の進化と発展を期待したい。

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2006年5月31日 (水)

K&K国分株式会社:食品卸売業のリーディングカンパニー

 実学講義「21世紀の業界展望」の特別講師として、K&K国分株式会社小木曽(おぎそ)泰治氏(人事総務部副部長・経営企画室副部長)に5月31日に来ていただいた。同社は創業は1712年、日本における食品卸売業の老舗であり、売上高1兆3,378億円は日本のトップ、世界の業界全体でも11位を占めている。ご講義は「食品流通の現状と企業が求める人材」というテーマであった。卸売業の現状や機能の説明から始まり、採用面接のチェックポイントまで豊富な内容をお話いただいた。小木曽さんご自身は、週末にサッカーの審判員をされたり、少年サッカーのコーチをされたりしているそうである。非常にご多忙であるにもかかわらず、社会貢献の姿勢を保持されている。

 小木曽さんは、学生の採用を担当されているが、学生を選ぶという責任だけではなく、学生から企業も選ばれてP1010031いるという自覚が必要であると話された。さらに企業を選ぶということは、採用段階で企業を代表している自分が学生から選ばれる立場にあるとお考えになっているそうである。このブログでも紹介したが、現在、私は新ゼミ生の募集中である。小木曽さんの謙虚と自戒の気持ちに学ばせていただいた。 上記のスポーツを通しての社会貢献も、このようなお気持ちから生まれているのかもしれない。

注:上記の写真をクリックすると大きく鮮明になります。講義終了時の恒例の記念撮影です。)

 先日の加藤産業(株)・久保敬一氏のご講義において、1万人当たりの食品店舗数を国際比較すれば、日本の店舗数が異常に多いことが指摘され、それは5月27日のブログで紹介された。そこで私は、零細小売店の非効率性の改善が必要であると指摘した。しかしながら今回の講義では、その多数の店舗数は、日本の食文化の特徴に起因していることが説明された。それは、次の2点である。

 1.日本では、和・洋・中・旬など食品の多様性がある。したがって多品種の品揃えという消費者ニーズがある。

 2.日本では、生鮮食品を主にした食習慣がある。したがって小商圏での多頻度の購入が一般の消費者行動である。

 このような日本の特徴は、多数のメーカーと多数の小売店舗の存在基盤となっている。それであるからこそ、それら多数の両者間を結ぶ卸売業の役割が重要となる。私見では、流通システムの効率化の促進は、中間流通業の機能強化に依存する。ここでの「効率化」とは、物流における時間やコストの削減が消費者に利益還元されるという意味である。したがって零細小売店の共同仕入れ・共同配送などを通した流通効率化が当面の課題であると思う。

 ただし小木曽氏は謙虚にも、そういった中間流通効率化の役割を既存の卸売企業が必ず果たすという保証はないと指摘された。すなわち、たとえば小売業のイオングループがメーカーと直接取引し、自前の物流センターを整備すれば、上記の日本の食文化を保持しながら、流通効率化を推進するという場合が想定される。イオングループの物流システムの傘下に多数の零細小売店が入るというような可能性もありうるからである。そうなれば、食品卸売業の役割は縮小するかもしれない。だからこそ食品卸売業は合併・経営統合などによる「規模の利益」を今後も追求せざるをえないのである。

 小木曽氏のご講義は、以上のほか貴重な情報を提供していただいた。また最後に、企業が採用したい大学生は、アビリティとコンピテンスの両者をバランスよく兼ね備えた自主自立型の人材」であると指摘された。これについては日を改めて紹介する。

 講義終了後、今春に開港した神戸空港から小木曽氏は帰社された。ご多忙中のご講義であるにもかかわらず、現役のスポーツマンのような笑顔を絶やされない講義姿が印象的であった。ご来学に感謝を申し上げたい。

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2006年5月27日 (土)

加藤産業(株):食品卸売業として「流通革命」を担う

 加藤産業株式会社は、食品卸売業界で第5位の売上高を占める東証・大証第1部上場企業である。本社は兵庫県・西宮市。西宮市と言えば、全国的には甲子園球場の所在地として有名である。さて、その売上高上位10社は次の通りである。

 ①国分(1兆3,378億円)、②菱食(1兆2,875億円)、③日本アクセス(8,172億円)、④伊藤忠食品(5,578億円)、加藤産業(5,296億円)、⑥三井食品(5,064億円)、⑦日本酒類販売(4,306億円)、⑧明治屋商事(4,244億円)、⑨旭食品(3,445億円)、⑩西野商事(3,144億円)。

Dsc07484  本学の実学講義「21世紀の業界展望」において招聘講師としてご講義いただいた久保敬一氏(総務部・人事教育チーム採用担当統括)から、自社を含めた上記10社に関する詳細な実態分析を紹介していただいた。食品卸売業における「21世紀の業界」の将来像が、ご講義を通して文字通り「展望」された。

 注:上記の写真をクリックしていただくと、大きく鮮明に見ることができます。通常の教室と今回は異なっていますが、やはり同じ階段教室です。階段教室は、教員と学生の目線が合わせやすく対話型の講義には最適の環境です。

 食品卸売業界の今後を展望する場合、その顧客である小売業の動向分析が不可欠である。たとえばイオングループは、メーカーとの直接取引を増やそうとして、自前の物流センターも建設した。この動きが拡大すれば、中間流通業=卸売業は不要となり、卸売り業界全体の死活問題となる。

 小売業全体では、日本において競争激化が特徴である。たとえば「人口1万人当たり食品店舗数」を見れば、米国:7.3店、英国:12.9店、ドイツ:21.7店、フランス:14.3店、日本:41.9店となっている。これは私見では、日本が単に店舗間の過剰競争の状況というだけでなく、流通経路の合理化の遅延を意味している。

 消費者の利益のためには、小売業・卸売業、それら全体の流通システムにおいて「規模の利益」が確保されなければならない。他方、零細小売店の経営を守るという見解も存在する。きめ細かい親密なサービスをそれらが消費者に提供することで、大型小売店と差別化・共存できるという主張である。この場合も、共同仕入れや共同配送といった流通合理化によって、零細小売店であっても仕入れ・輸送コストは削減できる。そのコスト削減の利益は消費者に還元されるべきものである。消費者を直接相手にする小売店として、そのような経営上の努力や工夫を怠ることは、やや厳しい表現であるが、自らに対する保身的な「甘え」であると私は思う。

 このような小売業の競争激化は、卸売業に対する仕入れコストの削減要求となる。そこでメーカーは卸売業者に対して販売促進ということでリベートを支払って利益補填することになる。私見では、このような不透明な取引慣行は、日本の流通システムの合理化・近代化に逆行している。

 さらに食品卸売業界では、業界再編が必至となっている。卸売業での「規模の利益」の追求である。たとえば業界第3位・日本アクセスと第10位・西野商事は合併もしくは経営統合が予定されている。

 以上のような卸売業界の現状や課題を見れば、それはそのまま日本の流通システム全体の特徴や課題に繋がっている。ダイエー創業者の故・中内功は「流通革命」を唱えたが、それは今日までも継続し、卸売業界の再編という新たな段階を迎えているとみなされる。米国のウォルマートという世界最大の小売店の日本進出によって、そのような革命・改革が後押しされているとみなされる。

 採用担当責任者としてご多忙の中、わざわざ東京からご来学いただいた久保さんに改めて御礼を申し上げたい。

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2006年5月20日 (土)

(株)トーホー:ハイブリッド型食品総合企業

 私の担当講義「21世紀の業界展望」において、(株)トーホー・人事開発室長・吉田憲司氏のご講義を賜った。(株)トーホーは、来年2007年に創業60周年を迎え、本年の売り上げは1559億円を見込んでいる。経営理念は「食を通じて社会に貢献する」。創業以来の増収を継続する東証・大証・福証の1部上場企業である。

 一般の消費者にとって「トーホー」と聞けば、食品スーパーを連想する。西日本に46店舗を展開し、その「地域の冷蔵庫」というイメージの店舗作りをしている。しかし売上高に占める割合は18.4%にすぎない。トーホーの売り上げの59.5%は食材卸売り、22.1%はAプライスである。このAプライスは、日本で最初の業務用食品現金卸売り店舗である。一般消費者も利用できるが、その主要な顧客は食堂・レストランである。同社の卸売り配送システムがカバーできない顧客に対して、Cash&Carryで食材を提供している。取扱商品は500品目から始まり、現在は5000品目に増加。このように同社は、外食産業を支える業務用食品の総合商社である。

 このほかに同社のグループでは、ホテルやレストランなどを対象とした卸売りコーヒーの製造・販売をしている。このトーホーコーヒーの歴史は古く、1950年のコーヒー豆輸入再開の翌年に生産を始めている。UCCやネスレなど消費者向けの独自ブランドをもっていないが、専門店には定評あるブランドである。なお、(株)トーホーの会社概要については、http://www.to-ho.co.jp/を参照。

Dsc07478  講義終了後の記念撮影です。写真をクリックすれば、大きく鮮明に見ることができます。土曜日(20日)は、流通科学大学で資格取得講座が開講されており、通常より受講生は少数でした。また、中国の中小規模食品スーパーを研究中の大学院修士課程の王くんも講義を聴講しました。

 トーホーは、小売りと卸売りの双方を業態にもっており、さらに顧客には一般消費者のみならず高級ホテルや一流レストランをもっている。私見では、このような現状を考慮すれば、同社は、内食・中食・外食のすべてに対応できるハイブリッド型食品総合企業である。様々に変化する気まぐれな消費者の嗜好に対して、そのすべてに同社は対応できる業態をもっているとみなされる。たとえば外食が人気なら、卸売り事業が活況になるし、景気低迷や健康志向で内食が重視されるようになれば、食品スーパー事業が対応する。中食は、卸売りの顧客である高級ホテルや一流レストランとの提携や新商品の共同開発が考えられる。このような柔軟な対応が可能な企業であることが、同社の差別化された競争優位性であると考えられる。

 ここで私が、単なる「総合」ではなく「ハイブリッド型」と命名したのは、すべての業態や事業が単に集まるだけでなく、そこから新しい業態や事業が創造されるという意味を表現したかったからである。また総合されて融合するのではなく、それぞれが自立・自律しながら協力するという企業組織を(株)トーホーにイメージしたからである。

 トーホーは「企業は人である」という経営憲章をもっており、さらに「企業は社会の一員である」という観点から、企業の社会貢献および社会的責任の活動に熱心である。このような意味で、人材開発室長として採用活動や社内教育を担当されている吉田さんの仕事は重要である。吉田さんは、大学卒業後にリクルートに長く勤務され、トーホーには昨年末に中途入社されたばかりである。吉田さんはトーホーの特徴として、生え抜き社員と中途入社社員のバランスが取れていることも指摘された。人材の適材適所の配置、人材の最大限の開発・活用を最優先にすれば、生え抜きと中途入社の区別は無意味なのかもしれない。

 吉田さんには、会社の説明をしていただいた後に、企業が求める人材についてお話をいただいた。本講義との関係で言えば、「21世紀の業界」を支えるために必要な「21世紀の人材」の展望を提示していただいた。これについては別途に紹介したいと思う。せっかくの土曜日の休日にもかかわらず、わざわざご講義を頂戴した吉田憲司氏に改めて御礼を申し上げたい。

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2006年4月30日 (日)

大学経営の反省と教訓(続)

 一昨日、今日の受験生減少に伴う大学経営の苦境は「逆境でなく自業自得」と指摘した。しかし他方、個々の大学だけでは対応できない大学教育に対する政策・行政上の課題も指摘しなければならない。

 2005年度の文部科学省の学校基本調査によれば、「年度高卒者を含む大学・短大への進学率が初めて5割を超え、51.5%と過去最高となった。同様に、専修学校を含む高等教育機関への進学率は76.2%と、こちらも過去最高となった」。この数字は、大学の入学が容易になっていることを象徴的に示している。

 この大学進学率が上昇すれば、高校生人口が減少しても、受験生数は維持される。大学の定員割れもなくなり、大学経営は安泰と言える。そのためには、高等学校の義務教育化や大学生に対する奨学金の充実などが考えられる。また、社会人の大学や大学院の入学を奨励するための税金などの優遇施策も必要である。このような高等教育の大胆な改革が実施されれば、国民全体の教育水準が向上し、経済社会のグローバル化における日本の競争優位性に貢献すると思われる。これについて、おそらく反対意見は皆無であろう。

 それにもかかわらず、このような教育政策の改革を政府から聞いたこともない。また、大学関係者からも、こういった要望や提案の声を聞かない。その主要な理由は政府の財政赤字であると思われる。教育予算が十分に確保できないという懸念が、そういった政策を最初から断念させてiいるのかもしれない。しかし前述のように、国民全体の教育水準の向上こそが、これから将来に渡っての日本の経済成長の最も有力な保証ではないのか。

 たとえばベトナム国民の高い識字率が、ベトナムに対する直接投資の理由のひとつとして指摘されている。優秀な国民であるから、経済成長の可能性があるという論理である。先進国としての日本も同様である。日本にとって識字率は問題ないとしても、大学生の誤字脱字が増加していることなどを考慮すれば、日本語教育の充実が必要である。さらに英語を含めた国際コミュニケーション能力IT(情報技術)に習熟した豊富な人材が、これからのグローバル経済における国際競争力にとって不可欠であろう。国民全体の教育水準の向上は、多様な形態や経路を通して高等教育を提供する制度改革が求められる。

 現在、教育基本法の「改正」案が国会で審議されている。そこでは「愛国心」が今よりも強調されるようである。その目的が自国中心的・洗脳的な「愛国心」の養成であるとすれば、それは自由や民主主義と相容れない。小手先の「愛国心」の教育改革よりも、政治的・経済的・文化的に世界から尊敬される日本であれば、日本人として自然に日本を誇らしく思えるし、日本人でよかったと思える。このような気持ちが、日本を愛することの内容であろう。愛国心を観念・思想として教えるのではなく、誇りをもって愛せる国に日本をするための具体的な政策や施策が重要である。

 中国や韓国からの反日感情に対抗するための愛国心ではなく、中国や韓国から尊敬・敬愛される国にすることこそが、日本人として日本を誇りに思えることである。それでこそ日本人でよかったと思える。日本を愛することができる。そのためにも、大学を含めた高等教育機関の役割は一層重要となるであろう。なぜなら事実として、日本の大学の留学生の大多数が中国人と韓国人だからである。中国や韓国からの留学生が日本の留学に満足し、やはり日本人は尊敬できるという感情を抱けるような学生交流や教育体制の改革が求められる。

 以上のように、日本における高等教育の必要性は高まっているし、そのための教育改革が求められている。大学に課せられた本来の使命に正面から取り組むことが、現在の大学に期待されていることであると思う。それに対応している大学だけが存続できる。

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2006年4月28日 (金)

大学経営の反省と教訓

 今年の黄金週間が始まった。5月1日と2日を休みにして、9連休の職場もあるらしい。私の場合、5月2日に講義があるので、本来ならベトナム出張したいのだが、そういうわけにもいかない。大学の「古き良き時代」には、こういう日は休講して、別の日に補講すればよかったのだが、最近では休講それ自体が教員給与のマイナス査定になる。受験生の減少期を迎えて、大学も「大変な時代」を迎えている。

 私が大学に勤務して20周年を迎えようとしている。流通科学大学の1988年創設と同時に助教授として就任した。この年に子どもが生まれて、今は高校3年生になっている。この当時から、まさに現在注目されている少子高齢化受験生減少が指摘されていた。しかし、その当時は受験生の当面の増加に対応するために臨時定員増といった対応を大学は迫られた。この定員増は臨時であるから、それを恒常的にするために学部増設が行われた。受験生減少という問題は、遠い先の話としてだれも関心をもたなかったが、それが今は最重要の課題となっている。

 先日の私の講義で、企業の永続的な存続のためには、企業間競争のための短期的な戦略と同時に、社会経済構造の大きな変化に対する長期的な戦略が重要であると学生に話した。すでにブログで紹介したミズノ株式会社・北野さんの講義に対する「まとめ講義」(学生の理解を助けるための補足・解説およびレポート返却を目的とした講義)における内容である。「通常の企業は短期戦略に傾注しがちであるが、それと同時に長期戦略を着実に遂行する企業が永続的に存続できる」という命題である。

 このような観点から、大学経営を顧みれば、受験生減少という長期的な変化が事前にわかっていたにもかかわらず、短期的な受験生の増加に目を奪われて、それに対応できていなかったことが反省点である。今の大学経営の危機と呼ばれる状況に教員が不満を言うとすれば、「それは逆境ではなく、まさに自業自得」なのである(本ブログの映画「逆境ナイン」を参照)。ただし正確に言えば、教育・研究労働者にすぎない教員の責任よりも、大学経営者の責任がより重大である。

 受験生減少に配慮した戦略を当時から考えるとすれば、入学偏差値の高い少数精鋭のエリート大学を目標にすることが選択肢としてあった。受験生減少は日本人学生についての問題にすぎないから、受験生を増加させるためには、英語で教育するコースを当時から設定して留学生を増やすことも早期に準備するべきであった。これ以外にも今から思えば、さまざまな反省ができるが、それらは今から急に対処できないことばかりである。

 歴史の逆行は不可能である。しかし反省には意味がある。少なくとも他国の高等教育機関の経営に対する教訓にはなる。そのためにも、こういった反省について包括的・体系的な記録が残されてもよいと思われる。それぞれの大学における反省点だけでなく、文部科学省の教育行政の問題点もまた抽出・集約されるべきである。

 私にできることは当面、学生のための今後の経営教育に大学での私自身の見聞や体験を活用することであると考えている。

 たとえば少子高齢化、地球環境や資源問題、財政赤字や公共投資の問題など、その問題が顕在化した時には、いずれも急に対応できなことばかりである。これは、大学での受験生減少と状況は同じである。

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2006年4月27日 (木)

ポケット=ティッシュを配る

 駅前や街頭でポケット=ティッシュを配布していることがある。消費者金融の宣伝が多いように思うのだが、受け取る人もいれば、無視して通り過ぎる人もいる。この相違は、今までは受け取る人の性格や気分の相違を反映していると思っていた。しかし昨日、ポケット=ティッシュを配布して、渡す側にも原因があるのではないかと気がついた。

 なぜティッシュを配布したのかと言えば、アルバイトではない。箕面船場ライオンズクラブが大阪府日本赤血液センターに協力して実施する献血活動を宣伝するためである。場所は、カルフールを中核テナントとする箕面市新都心ヴィソラである。献血は、だれにでもできるボランティア活動であるが、健康でなければ丁重に断られる。この意味で、献血は健康のバロメーターである。

 さて、道を往来する不特定の人々にポケット=ティッシュを配布する場合、配布する側の工夫が必要である。まず相手の眼を見る。笑顔で声をかける。受け取りやすい位置にティッシュを持って行く。これで、ほとんどの人は受け取ってくれる。一定の数量を早く配布し終えるといった事務的・機械的な姿勢では、受け取る人も事務的・機械的に対応してしまうように思われる。

 このことは、あらゆるビジネスに共通している。まず笑顔で挨拶して、相手の眼を見て語りかける。こういった働きかけ(=メッセージ)に対して悪い気持ちになる人はいないだろう。そこから商談が始まる。今回の場合、商談ではない。「悪い気持ちになっていない人」に対して、高価ではないにせよ、無料でポケット=ティッシュを提供する。普通なら受け取ってくれる。

 一瞬の出会いで、受け取るか受け取らないかが決まる。ポケット=ティッシュの配布にもコツがいる。笑顔で真剣勝負する。これには、それなりの修行が必要である。

 

 

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2006年4月23日 (日)

ミズノ創業100年:日本と世界でスポーツの歴史を拓く

 4月22日(土)午後、流通科学大学実学講義21世紀の業界展望」において、ミズノ株式会社・常務取締役・北野周三氏のご講義を賜った。北野さんは、順調に成長続ける中国ビジネスのご担当であると同時に、人事担当も兼務されており、現在は新卒採用のためにご多忙である。この土曜日は出勤日ということであったが、お仕事の合間を縫って来学していただいた。参考:http://www.mizuno.co.jp/

 私は、この実学講義を担当して4年目になるが、今年度は初めての試みとして、講義終了後に記念写真を撮ることにした。Dsc07445 講師の方々には、お疲れのところ申しわけないが、少しお時間を取っていただくことをご容赦いただきたい。こういった写真は、学生にとって一生の記念になる。学生であるからこそ、多様な企業の経営幹部の方々と一緒に並ぶことができる。また、この講義での北野さんとの出会いが、学生のミズノ製品に対する新しいイメージを確実に作ったと思う。そういった知的な発見や感動を社会人になっても持ち続けてほしい。この写真を通して「一期一会」の意味を学生に考えてもらいたい。このような願いを込めての写真である。

 さて北野さんは、ミズノ株式会社の歴史・概要・マーケティング戦略・中国ビジネス・新卒採用方針までを幅広く説明された。それらを通してミズノの特徴は次の4点であることが理解できた。①1906年創業以来、創造的な新商品開発を継続し、オリンピックを始め日本そして世界のスポーツ界を先導してきた。②企業倫理・経営理念・CSR(企業の社会的責任)を企業経営の中心に据えてきた。③地球環境保全スポーツ振興・健康増進のための商品開発や企画を積極的に推進している。④世界市場に対応した経営グローバル化を実践している。

 これら4点はいずれも、21世紀を迎えた日本企業が対処しなければならない重要な課題である。多くの企業は、企業競争に直接関係する①に傾注しがちであるが、ミズノはそれ以外の課題にも的確に具体的に取り組んでいるように思われた。これは、スポーツ業界のリーディングカンパニーであるからこそ可能であるのかもしれない。

 「カッターシャツ」と命名したのはミズノであり、その語源は「勝った~シャツ」。これを聞いただけで、ミズノ創業者・水野利八氏が、才気溢れる起業家であったことがわかる。現在の高校野球を初めて主催したのも同氏である。今日のリーディングカンパニーであっても、当初はベンチャー企業であった。このような歴史を詳細に見れば、今日のベンチャー企業が存続するための共通した必要条件が発見できるに違いない。

 2006年4月にミズノは創業100周年を迎える。スポーツ業界の老舗と言えるのであるが、北野さんの講義を聞いて、それらしさを感じさせない。若々しい先進的な企業イメージである。これは、スポーツに関係する青少年を中心にしたマーケティング戦略を採用しているからである。しかし日本の少子高齢化に対して、どのように対処するか? 長寿の高齢者層に対して、どのようにマーケティングするか? これが今後のミズノの課題であるように思われた。 

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2006年4月20日 (木)

ヘルシーカンパニーとは?:(株)ワールドの先駆的役割

 4月19日(水)、私が担当する「実学」講義科目である「21世紀の業界展望」において、アパレル最大手企業(株)ワールドを母体とするワールド健康保険組合・常務理事の安倍孝治さんにご講義を賜った。  

 写真は、講義終了後の記念写真である。学生は主に2回生。本講Big21義は、さまざまな業界における企業経営幹部の方々をお招きして、今後の企業経営のあり方を探るという趣旨である。それによって学生の職業観を涵養するという目的もある。少子高齢化・人口減少・経済のグローバル化・財政赤字(=増税)・地球温暖化・CSR(企業の社会的責任)重視といった経済社会環境の大きな変化に対して、どのように各企業は対応しているのであろうか。当面の企業間競争と同時に、これらの潮流に的確に対処する企業が21世紀に存続できると私は考えている。本講義では、これらの各企業の最新情報が提供される。

 安倍さんが常務理事に就任された8年前、(株)ワールドの健康保険料率は1000分の86であった。これを従業員個人と会社が折半する。それが今日では、1000分の47になっている。これは会社にとって累積10億円の経費削減効果があったことを意味する。もちろん従業員の保険料「天引き」額も減少されるのだから、会社だけでなく従業員もハッピーである。そして何よりも健康な従業員が働くからこそ、その会社にも活力が出てくる。顧客サービスの向上にもつながる。

 従業員自身の健康増進のみならず、さらに「元気な家族は元気な会社を作る」というスローガンの下に家族の健康にも配慮されている。このようにして医療費が減少し、それに伴って保険料も減少する。いわゆる「予防医学」に個人だけでなく企業全体が積極的に取り組むことによって、医療費の負担を軽くすることができる。このような会社が「ヘルシーカンパニー」である。

 こうしたワールド健康保険組合のような試みが、多数の企業、さらに地方自治体、さらに国全体に拡大されれば、日本における医療費の負担は軽減され、財政赤字の解消にも貢献する。ただしそうなれば、医療機関の経営悪化が懸念される。健康だから病院に行く必要がない状況が生まれるからである。しかし私見では、これまでの治療医学から予防医学に経営の重心を移動させればよい。同時に、われわれ一般の国民は、治療のためではなく予防のために病院や医院に行くようにする。もちろん、それを誘導するために医療制度・保険制度の改革が必要であろう。

 安倍さんのご講義で、21世紀の新しい企業像を具体的に想起することができた。また安倍さんは「古武道」の達人であって、学生を相手に「」の実演をしていただいた。私は電気のような「気」を感じることができたが、その感じ方は受け手側で様々に変化するそうである。

 盛りだくさんの知見を提供していただいた安倍さんに改めて感謝を申し上げたい。なお『公衆衛生情報』(2006年3月号、pp.11-13)は、(株)ワールドの「ヘルシーカンパニー」を特集している。

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2006年4月 1日 (土)

入学式:「知行合一」の勧め

 今日は入学式である。われわれ教員は参列するだけであるが、何回やっても新鮮な印象を受ける。勤務先の流通科学大学は「就職に強い」大学が「ウリ」であるが、最近の景気回復基調の経済情勢では、逆にその特徴が出しにくくなるという懸念がある。そこで「実学」の徹底という新しい対応を私は考えている。

 大学諮問委員会メンバーのお一人である加藤義和氏(株式会社「加ト吉」社長)の新入生に対するメッセージは、次のようなものである。「加ト吉には「知行合一」という言葉があります。良いことを知れば実行しよう。何もしなければ知らないのと同じという意味ですが、常に学ぶ心で行動するということの戒めにしています。」

 これは私の考える「実学」に合致している。知識を習得するために学習は重要である。しかし何のための学習か?行動を伴う学習。その学習が行動を促す。その行動を通じて学習する。これら相互のやり取りが「知行合一」ということであろう。こういったことを新入生に体験的に理解してもらいたいと思う。

 これらの学習の場として、基礎演習(通称、基礎ゼミ)が、昨年度までの半年間から今年度は1年間に延長された。1年間を通して、こういった学習と行動の一体化を私は訴えたいと思う。また同時に自らも実行したい。

 しかし新入学生は任意に各教員に配置される。何人かの相性の良い学生、何人かの普通の学生、何人かの相性の悪い学生が例年集まる。相性の悪い学生というのは、本来は教員側の教育的な力量で対応できるのであろうが、どうも私は苦手である。こういった苦手意識を捨てて、少し口うるさい父親という立場で学生に気楽に接してみようと考えている。

 年配の私が変わるよりも、若い学生が変わる方が簡単であるから、どうか相性の悪い学生の方から、私に合わせてほしい。その方がお互いに幸せである。どうぞ新入生の皆さん、よろしくお願いいたします。

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2006年3月19日 (日)

大変なこと

 人間は「大変なこと」に遭遇すると、過度な場合はストレス・パニックになることもあり、何らかの精神的・心理的な動揺がある。同時にそれを乗り切れば、大きな自信になったりする。ただし、このような「大変なこと」の認識の程度には個人差がある。

 たとえば小学生がひとりで東京の親戚に会うために神戸から新幹線に乗る。おそらく本人にとっては「大変なこと」であって、興奮もするのだが、大人から見れば、子どもの成長過程のカワユイ出来事である。大人の立場から暖かくほめて、本人に自信を持たせるのが普通の対応である。

 大学生や社会人になっても同様のことがある。自分が「大変なこと」をしたと思っても、周囲が評価してくれないことがある。これは個人的に「大変なこと」と思っても、一般には特別なことではないのである。新人が1億円の取引を成功させても、それは本人にとって感激であるが、先輩から見れば普通のことである。「どうして評価されないのですか」と問われても、それは当たり前のことを当たり前にしただけだから評価されない。甘やかされた若者の中には、これに不満をもつ人も多いのではないか。

 大学生や新人社会人の時代、自分で「大変なこと」に積極的に挑戦してほしい。その経験が、将来の自分のためになると思う。「大変なこと」が大変でなくなる。また、何が「普通のこと」で何が「大変なこと」なのかを自分で判断できるようにしてほしい。

 たとえば毎年、ラオスで清掃ボランティア活動を私は指導している。初回には学生と一緒に在ラオス日本国特命全権大使・橋本さんにお目にかかり、ピッサマイ科学技術環境庁長官と一緒に清掃活動にも参加していただいた。普通の感覚なら「大変なこと」なのだが、同行した学生はそれが認識できなかったかもしれない。昨年までダイエー創業者・中内功氏(流通科学大学・前理事長)が、学生の求めに対して気楽に握手や写真に応じていた。これは「大変なこと」だと思うのだが、それを当然に感じている学生も多かった。中内氏の亡き後、もう今や永遠にそういうことは不可能である。このような「大変なこと」を若い人は正当に評価しなければならない。

 中内功氏と私は個人的に話す機会が何度かあった。前JR西日本会長の井手さんとも親しく話す機会があった。こういう著名な経営者と話した最初は、20数年間の住友生命会長・故・新井正明氏であった。当時の私にとって「大変なこと」であって非常に緊張した。しかし当時、勤務先の日本証券経済研究所・故・熊取谷顧問が、「君も専門家として仕事しているのだから、自信をもって話しなさい」と助言をくださった。lこの言葉は忘れられない。それ以降、このようなエライ人との面談はあまり「大変なこと」ではなくなった。

 「大変なこと」を契機にして自分が成長する。この意味で、常に前向きに積極的に「大変なこと」に挑戦したい。これは「いつまでも若い」と言われるための秘訣ではないか。また「大変なこと」が大変でなくなるように努力したい。人間、死ぬまで不断の成長が重要であると思う。

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2006年3月11日 (土)

人間不信のビジネス

 ビジネスは信用が大切だと言われている。では信用とは何であろうか? 信用できる人間と信用できない人間の相違は何か?

 私の場合、時間や時刻について信用してもらっては困る。よく遅刻することがある。しかし「お金」についてはキッチリしているかもしれない。この意味で「お金」をもらう講義やセミナーでは、たとえば自動車事故発生に伴う交通渋滞といった不可抗力な原因以外は、ほとんど遅刻したことはないと思う。

 学生は信用できるか? 学生に貸した本やデジカメが未だ返却されていない。もう何年もなる。最初は返却を催促していたが、いろいろ事情もあるのかと思って、そのままになっている。このように考えると、あまり学生は信用できない。こういう先輩がいると、後輩が迷惑する。先輩のおかげで、何の罪もない後輩が信用されない。

 しかし教育ということを考えれば、学生を信用できなくても信用しなければならない時や場合がある。そもそも教員が学生を信用しなくては、学生も教員を信用しない。これでは教育それ自体が成り立たない。教員は、一方的に学生を信用してやらなければならないこともある。教育もビジネスと同様に信用が大切である。

 通常、ビジネスでは信用を前提に成り立っていると言っても、やはり初対面では信用できない。そこで契約書を書く。お互いに契約書を遵守するという信頼関係のもとでビジネスが行われる。いくら契約書を交わしたからと言っても、次の懸念は相手が逃げることである。たとえば100億円の取引契約をして、100億円を相手が持ち逃げしないかという問題である。持ち逃げしないという前提で契約するが、この持ち逃げを心配すれば、そもそも契約が煩雑になる。

 ある日本人経営者が次のように述べていた。「中国で日本企業はよくだまされるが、韓国企業はそれほどでもない。その理由は、日本企業の経営者が中国人を信用するからだ。韓国企業の場合、韓国人も中国人もお互いに信用していない。だから失敗は少ない」。「私は君を信用していない。君も私を信用する必要はない。しかしお互いの利益のために仕事したい。そこで厳密な契約書を相互に納得するまで作成しましょう」。このようなビジネスの進め方をしているのであろうか。これは当然のことである。双方が納得するまで契約書に条件を書き入れる。

 ベトナムで日本人がだまされることがある。ある日オフィスに行ってみると、パソコンから事務用品まですべてが持ち逃げされていた。これはホーチミン市の実話である。ここでは色恋い話とビジネスが混在したトラブルが頻発しているそうである。愛人のベトナム人名義でアパートを買って、そこで老後を過ごそうと思っていたら、その資金を持ち逃げされたり、ベトナム人男性からお金を要求されて拒否できない日本人女性がいたり、色恋い話に金銭トラブルはつきものである。

 こんな話を聞くと、本当にベトナムでビジネスができるのか心配になってくる。信用できる人間、しかも信用できる外国人の見分け方は難しい。結局は、上記のような詳細で厳密な契約書の作成以外に、だまされないための方法はない。

 信用するということは教育ではありえても、ビジネスではありえないと考えるべきであろう。教員がビジネスで失敗することが多い理由は、この点であると思う。たとえば大学教員が実際にビジネスで成功する場合は、周囲が祭り上げる御輿(みこし)の役割を果たす時だけのような気がする。人間不信を基調にしたビジネスと、人間信頼を基調にした教育は両立しないと考えられる。この両者を峻別できる能力や経験をもった教員がいれば、それはかなり希有な存在である。 

 

 

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2006年3月10日 (金)

ベトナム・インド・日本の創造的提携

 ベトナム人友人の子息がバンガロールの大学を卒業し、昨年からハノイの台湾系IT企業に就職している。友人は次のように述べていた。「本音を言えば、米国や日本に留学させたいが、そうするほどの資金的な余裕はない。しかしインドなら留学させることができる。学費も生活費も高くない。インドに留学すれば、世界でトップクラスのITと英語を同時に格安で勉強させることができる」。友人はベトナムで中流以上の生活水準である。

 今回にインドを訪問して、以上のような個人的なインドIT留学の実例を一般化・組織化して、ベトナム・インド・日本を結ぶビジネスプランができないかと考えた。「ITと英語を学ぶ」ことが、これからのビジネスパーソンに不可欠ということを流通科学大学創設者・故・中内功も強調していた。この事情はベトナムでも同様である。ITと英語ができれば、一般よりも高収入がベトナムでもインドでも日本でも期待できる。

 そこでまず日本企業がベトナムとインドに進出する。ベトナム人とインド人の優秀なIT技術者を採用する。彼らに日本語を教育する。このために日本人社員を派遣する。少し英語が得意な写真はインド派遣、英語は苦手という日本人社員はベトナムで日本語で通す。

 この場合のベトナム人とインド人の共通言語は、英語と日本語である。ベトナム人とインド人をIT・日本語・英語教育のために数名を相互に乗り入れさせる。それぞれの語学力と実務能力を向上させる。これら両方の人材が育ってくれば、この在ベトナム日系企業は、日本のみならず欧米企業をも顧客とするオフショア生産事業やソフト開発事業をベトナム・インドで受注できる。

 この場合、インドIT企業では日本語ができるインド人技術者が不足している。インド企業との提携・協力をすれば、投資コストは大幅に削減できる。より具体的には「日本部門」として、インド企業内の1部屋や設備を無償提供してもらう。今回のインド訪問では、このような提案をする企業が実際にあった。

 日本人の新卒学生1名分で、優秀なベトナム人・インド人が5名~10名は採用できる。こういった人材を活用できるかできないかで、企業の存続が左右される時代が来ている。このビジネスモデルの要点は、ベトナムとインドの架け橋として、日本が両者を調整・統制できるかどうかである。日本人の国際性が問われている。

 このモデルの最大のメリットは、ベトナム・インド両国の対日感情が極めて良好なことである。ベトナム・インド・日本の協力と連携で新たなビジネスモデルを創造する。私は実現可能であると思う。

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2006年2月 7日 (火)

「実学」とは何か

 流通科学大学では「実学」が建学の精神である。

 実学とは何か。これは定義し難い。以前は「仮説を立てて実証する」ことが実学と大学で公式に定義されてきたが、最近は、「知識を知恵に変えるチカラを身につける教育」と言われている(『読売新聞』2005年12月3日全面広告)。いつの間に変わったのか明らかでないが、もともと実学の定義は明確でないのだから、いろいろな解釈があってよい。

 筆者は学生に「学んだことを実行する」ことが実学だと話している。豊富な知識があっても、それが実行されなければ、それは「宝の持ち腐れ」だという意味である。人間は、長い歴史の中で日々の生活の維持と向上のために学習してきた。もっと簡単に言えば、生活と結びついた勉強をしてきた。このような学習活動がなければ、人間は存続できなかったに違いない。これが実学ではないか。このような意味を学生に講義で筆者は伝えている。

 たとえば「料理の本」が多数あって、それを一生懸命に暗記したとしても、その料理を作らなければ、意味がない。さらに料理の食材が実際に入手できなければ、その料理は作れない。新しい「料理の本」を出版しても、その料理をだれも作ってくれなかったら、それは料理の本とは言わないだろう。それは「自己満足の本」というべきではないか。人々の現実の生活や入手できる食材を念頭においた料理を教え学ぶ。これが「実学」としての料理の教育であると筆者は思う。もちろん料理それ自体を研究するという分野があってもよいが、それは実学とは言わないであろう。それは、あくまでも理論研究である。

 具体的な講義では、たとえば「CSを知ってますか」と学生に問う。少し勉強したり、バイト先で教えられたりして、それが「顧客満足」と答える学生が何人かいる。実学的なアプローチでは、その顧客満足が本当に理解できるまで日常的に教育する。すなわち顧客満足のための基本的な考え方と方法は「顧客の立場にたって考え行動する」ことである。より一般的には、相手の立場に立って考え行動することである。「それでは皆さん、相手のことを考えて、行動できていますか」と質問する。「講義中に遅刻したり、私語したり、そういう人は顧客満足を理解できていないのではないか」。「言葉を知ってるだけでは、本当に顧客満足を理解したことにならない」。こういう話をして、筆者の考える実学を説明している。

 このように実学を考えると、かなり思想的・哲学的な内容に立ち入ることになる。実践=行動至上主義というような考え方に近づくのかもしれない。本気になって実学を追究すると、かなり奥深いことになりそうである。この実学を建学の精神としているのだから、やはり常に「実学とは何か」と学生とともに問い続けなければならないと筆者は考えている。

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2006年2月 4日 (土)

大学生の就職のツボ

 先日、某メーカー採用担当者の方と話をさせていただいた。「流通科学大学(=流科大)の学生をよろしく」という就職率アップのための営業活動の一環である。

 この「よろしく」という意味は、「どっちにしようかなと迷う場合に配慮してください」ということである。「何が何でも何とか採用してください」というのでは、その後が長続きしない。私は、このような立場で「営業」している。すべてが満足するような「WIN-WIN関係」の就職が最善である。無理のある就職は、企業も大学も学生も不幸になると思う。

 流科大の開学当初(1988年)には「豪傑」のような教授が就任されていた。お酒の臭いをプンプンさせて講義して、その後に転倒して救急車で入院されたというような武勇伝(エピソード)がある。しかし、その経歴や業績は抜群のものであった。まさに「古き良き時代の大学教授」であった。これに対して最近の大学教授はサラリーマン化しているし、その勤務状況が評定されて給与に反映するようにまでになっている。この意味で、かつての「豪傑」や「名物」と呼ばれる教授が今日では生活し難くなっている。

 上記の「豪傑」教授は、大学と学生のためを思って就職の依頼に無理をした。この教授は、多数の経営者・経営幹部の友人・同輩・先輩なのだから、流科大の卒業生の採用を積極的に働きかけた。その成果は当然あったのだが、その翌年には、企業採用担当者から「先生、もう今年は勘弁してください」という反応があったそうである。

 筆者は、この教授を尊敬・敬愛すると同時に、とても真似ができないと思った。私見では、社会・経済において無理は厳禁である。自然の流れに任せることが必要である。まさに市場がそうである。いろいろな過程を経た後に、それなりに収まるところに収まる。これが市場原理である。自然の流れに任せることが最も安定的な均衡した結果となる。この間、積極的・主体的な働きかけが市場や環境に対してあって当然であるが、そこに無理があれば、市場全体からの反撃を受けることになるであろう。その結果、やむを得ない修正や変更が行われる。

 以上、要するに就職活動を個人的に頑張るのはよいが、無理をしてはいけないという教訓である。自分の実力と本音を素直に出せればよい。過大評価と過小評価の両方を避けることに心がけることが重要であろう。さて、上記メーカー企業にとって望まし大学新卒学生は次のようである。

 (1)日本のメーカーは共通して海外生産が一般的である。したがって 語学力がすべてでないが、必要である。特に女子の採用は、一般に語学ができる人が多い。
 (2)即戦力とは言わないが、2年目から成果を上げるような人材がほしい。
 (3)国内の転勤のみならず、外国赴任を嫌がっては困る。
 (4)コスト削減とスピード重視の企業経営が当然なので、1人当たりの仕事は多い。さらに「チーム連携」も必要である。こういう仕事の環境なので、ストレスに強い人、メンタル面で強い人が望ましい。
 (5)文系の採用では、国内・海外営業、購買、海外企画、それにスタッフ(総務・人事・経理)など仕事になる。それでも海外の仕事が増えてい る。人口減少による日本国内の販売減少を海外販売で補完するのは、どのメーカーにも共通してい る。
 (6)総じて、望ましい人材は精神的に強靭な骨太タイプ。こういう人は、どの会社でもほしがるので他社との取り合いになる。

 以上、 これから当然になる海外ビジネスを考えれば、 精神的にタフな人が求められていることがわかった。このような人材の育成が、大学に求められているとすれば、果たして具体的に何を教育すればよいか。そうは言っても、その第1歩は筆者のゼミでの指導が問題である。この4月から創意工夫したゼミ活動の戦略を学生と相談しながら決めたいと思っている。

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