2009年12月 3日 (木)

戦略の必要性

 テレビドラマ「不毛地帯」を欠かさずに見ている。総合商社の仕事や戦略の重要性が理解できる。それはともかく、1960年代の職場ではタバコを職場で吸うのが普通であったことに驚かされる。今日の常識からは逸脱した喫煙量である。

 さて学生の就職活動を見聞していると、自己分析や自己アピールそして企業研究などが就活の準備として強調される。それはよいのだが、就職の戦略をもつことも必要ではないか。

 これは具体的には、どういう企業をどのような順番で会社訪問し、また就職できなかった場合、どのようにするか。その対応策も考えておくことである。そのために最新の情報収集は不可欠であるし、戦略の適時修正もありうると考えておくべきである。

 戦略には、さまざまな定義があるが、私見では、あるべき姿に向かう大筋のシナリオである。「あるべき姿」は個人差があり、それが個性である。また「あるべき姿」が当面は、どこかの企業に就職することであるが、もっと先の人生の「あるべき姿」が構想されてもよい。将来の夢と言ってもよいかもしれない。

 そういった将来展望がないと、就職活動や人生は迷走することになる。それでもよいという人生観があってもよいが、普通の学生にはあまり勧めたくない。

  

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2009年11月18日 (水)

自己PRの書き方

 自己PR 書いて自分に 惚れてきた

 これは、大学生向け就活用の宣伝誌であるNOTE BOOK(2009.5、No.002、株式会社CLOCK-ON発行)に掲載されている川柳である。就活ナビ(http://www.shukatsu.jp/)がスポンサーであると思われる。

 自分に惚れるような自己PRを書かなければダメという意味である。また同時に、そのためには自分に惚れるほどに自己を分析することを勧めている。これまでに自分に惚れるようなことがない場合でも、深い自己分析をする自分に惚れることはできる。

 まず自分に惚れることが、就活で自信を生む源泉である。もちろん重要なことは、この惚れる要因は何かということである。それは各自で多様である。それが個性である。

 自分に惚れて他人に惚れる。こういう人々ばかりだと、日本も世界も平和で楽しいだろう。「好き」というよりも「惚れる」という言葉の綾(あや)を大学生に理解してほしい。

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2009年6月26日 (金)

公務員の志望動機は安定志向でよい?

 公務員を志望する場合、その動機として「経営破綻しない安定性」を述べることは避けた方がよい。それが本音であっても、安定性では前向きな積極性をアピールしないからである。

 私は、これまで大学生にこのように指導してきた。しかし、やはり「安定性」を述べた方がよいそうである。面接担当者は、そのことで志望者が本音を正直に語っていることを確認できるために安心する。もちろん安定性だけでは志望の動機としては弱い。いくつかの動機の中に安定性を入れることが好ましい。

P1030390  兵庫県警察本部・警察官採用センター長の田瓜聖一警視から、このようなご指摘を頂戴した。流通科学大学の「実学」講義の一環である「21世紀の業界展望」の中での一場面である。

 また一般市民が警察に期待することは何か。市民との交流や親しみやすさと答える志望者が多いそうであるが、それなら市役所の職員の仕事と変わらない。警察の独自の使命は、犯罪者の検挙・逮捕ということになる。かつて日本警察の絶頂期には60%を超えた検挙率は、今では30%前後になっている。

 犯罪の防止および抑止のためには、犯罪の高い検挙率が必要である。「検挙に優る防犯なし」。私見では、他方、「無謀な検挙は犯罪である」とも指摘できる。現実問題として、この両者は難しいと思われる。

 ご多忙の中でご講義を頂戴した田瓜さんに感謝を申し上げたい。冗談を交えたお話は、そのお人柄を感じさせる。テレビに出てくる「人情デカ」は、こういう人なのかと想像していた。なお「デカ」とは、昭和初期の警察の制服が「カクソデ」(角袖)であり、それを逆に読んだ符帳から「デカ」となったそうである。

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2009年6月20日 (土)

就職先の紹介:これなら私は本気で世話する・・・

 大学4年生の就職が難しい。世界同時不況を理由として、どの企業も採用を抑制している。こういう時には「コネ」が有力な就職の手段になることが多い。

 これまで私は、いろいろな就職の事例を直接・間接に見聞してきたが、次のような状況の就職先の紹介なら、おそらく私は全身全霊で取り組むだろう。

 山崎豊子『白い巨塔』の里見脩二先生(前浪速大学医学部助教授)の再就職である。田宮二郎版では山本学、唐沢寿明版では江口洋介、韓国版で言えばイ=ソンギョンが演じるチェ先生である。

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 里見先生の再就職を世話するのは、かつての恩師である病理学の大河内教授である。田宮版では加藤嘉、唐沢版では品川徹が演じた。大河内教授は、自らの弟子である里見先生の学問的能力と人間性を高く評価しているが、それを暖かく見守るという姿勢を貫いている。

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 自分の弟子に対して、まるで「親分」と「子分」の関係を強制する先生が一般に多い。私の体験でも、たとえば東京で「○○学会」があるとなれば、大先生を中心にして同じホテルに宿泊し、大先生を中心にした集団で学会に出席する。こういう行動をしていると、大学院の弟子は就職を世話してもらえ、さらに次第に「○○学会」の理事や理事長の席に近づく。親分・若親分・組長・舎弟・子分・・・といった関係なのであろうか?

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 幸か不幸か、私の恩師である神戸大学の故・松田和久教授も二木雄策教授も、そういったこととはまったく無縁の人であった。それだからこそ私は自由を謳歌させていただいている。改めて感謝をしたい。おそらく大河内教授も同様である。そうなると、なかなか里見先生の次の就職先を見つけることは難しい。

 国立大学の医学部助教授であった里見先生の次の仕事として、田宮版の「近畿がんセンター」は適当のように思われるが、唐沢版の「千成病院」や韓国版では、かなり研究機関として貧弱である。それは、大河内教授の「コネ」の貧弱さを意味しているのだが、そのことが同教授の「学問一筋」の高潔さを示している。

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 大河内教授は、優秀な弟子であっても通常は就職の世話をしない人であると思われる。その教授が里見先生のために就職を紹介する。これは、極めて特別なことなのである。それほどに教授は里見先生に共感と同情と愛情をもっている。

 田宮版では、大河内教授が就職先の話をもって里見先生の自宅を訪問する場面は出てこないのだが、唐沢版と韓国版では師弟の愛情が控えめではあるが情感豊かに描かれている。これは唐沢版も韓国版も優劣がつけ難い。大学教員の立場から見れば、最も感動する場面の一つである。

 こういう弟子に出逢いたいし、こういう弟子のためなら、どんなことをしても就職先を世話すると思うのだが、その前に自分が、こういう教授にならなければならない。また実際には、余分な苦労を弟子もしない方がよいに決まっている。

 大学生の就職難の今日、いろいろな問題が見えてくるように思われる。それからの将来の教訓を導出することが前向きで生産的であろう。 

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2009年6月 9日 (火)

就職活動で未内定の学生に贈る

 真面目な女子大学生なのだが、就職は未内定。おそらく彼女にとって初めての挫折ではないかと想像される。だから落ち込んで、就職活動から逃避したい。しばらく活動を中断している。

 他方、あまり深く考えないで生きてきた男子大学生。なんとなく大学に入学した。真面目で素直な性格だが、就職は未内定。就職したいのだが、この情勢だからやむをえないと思っている。

 今日、大学は異なるのだが、上記のような2つのタイプの4年生に会った。2人とも悪い学生ではない。むしろ好印象の青年である。おそらく例年なら就職は決まっていたと思われる。大学に関係なく、今年の就職難は深刻である。

 何とかしてあげたいと私は思うのだが、就職は本人次第。強制的に就職させるというわけにはいかない。やはり「自然の流れ」が必要である。この「流れ」を作るのは、やはり本人である。就職活動の主体は本人である。待っていれば会社が向こうからやって来るわけではない。自分でチャンスを自分に呼び込む外向きの積極性が必要である。

 では具体的に何をすればよいか。少なくとも履歴書を3通は常に持参することである。私は今日、上記の2人の学生に「就職はどう?」と質問して、以上のような返事であった。その時に「先生、内定は未だです。もしお知り合いの企業があれば、よろしくお願いします」と言って、私に履歴書を渡されるとどうだろう。何とかしてあげようと思うのが人情である。

 このような対応で彼女または彼の「流れ」が変わったかもしれない。最後まで可能性を追究して積極的に粘り強く営業することはビジネスパーソンの成功要因だが、厳しい就職活動の時期には、その資質の発揮が就職前の今に求められているとみなされる。

 就職未内定の学生は、気持ちを入れ替えて、これからが「本番」と考えることである。今後に内定を獲得した学生は、おそらく将来の仕事で成功するだろう。人間にとって苦労はムダではない。就職してから待ち受ける苦労を学生時代の今に経験しているのだから、社会人として自信をもって仕事に臨める。このように考えれば、現在の就職難は学生にとって「逆境」ではなく、むしろ自分を鍛え成長させる「好機」である。

 すべての就職活動中の学生の健闘を祈りたい。積極的で前向きで粘り強い学生が最後に勝利する。また同時に、そういった苦労を経験している学生を企業は受け入れて欲しい。就職難を経験した学生は、入社後も仕事で頑張るに決まっている。このような採用の好機はめったにないと採用担当者は考えるべきである。

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2009年2月17日 (火)

個性を発揮するために注意すること:就職活動中の3回生に贈る

 大学の期末試験も終わり、3回生の就職活動が本格化している。以下では、その留意点を1つ明示しておきたい。

 一昨日に紹介した山内太地『下流大学に入ろう!:一流大学より未来が開ける』(光文社)に次の文章があった。玉川学園の創始者である小原國芳氏の指摘である。

 「個性とは、単に人と違うことをすることではありません。人は組織集団のなかで、ある程度同じことをする。そのなかで社会から評価される面で違いを出す。人の嫌がるところで、あえて手をあげる。これが個性なのです」(121頁)。

 このことは、個性を発揮するのはよいが、それが「変人」とみなされるようではダメという意味である。これまでの私のゼミ学生の中で、特別に「個性的」な人間がいた。彼は自分で「私は変わった人間です」と就職活動でも自己アピールしていた。それが成功したのか、京都に本社がある大手企業に本学から初めて就職することができた。現在の彼は結婚して父親になっている。久しく会っていないが、年賀状を毎年頂戴している。

 彼は、私と一緒にベトナムのフィールドスタディに参加したし、ベトナム語を学ぶために大阪外大(当時)の富田教授が主催する「ベトナミスト・クラブ」にも顔を出していた。今から考えても確かに変わった学生であったが、私に対する礼儀や言葉遣いは、むしろ他の学生よりも丁寧で好感がもてた。

 個性的で変人のように思われるが、社会的な常識や協調性が重要なことを体得し、それに基づいて行動できる。個性と常識のバランスが取れた人間。こういう人材は企業にとって魅力的であろう。

 以上は、就職活動における先輩の成功事例である。まだまだ3回生は自己成長のための時間がある。就職活動を経て大きく成長してほしいと願っている。

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2008年6月 3日 (火)

就職戦線「第2ラウンド」を迎える学生にメッセージ:(株)ダイエーからの教訓

 (株)ダイエー人事・人材開発本部・人事企画部の久保敦氏に、流通科学大学で講義していただいたことは先週の本ブログで紹介した。そのご講義の中から以下では、小売業で求められる人材についてのメッセージを紹介する。

 久保氏は、ダイエーが経営不振に陥った原因について、人事部門の立場から次のように総括された。「新たなチャレンジを正しく判断・指揮できる人材育成を怠ってしまった。「お客様のニーズ」と「ダイエーが目指したい姿」にギャップが生じてしまった」。そこで「ダイエーは、「原点」に立ち返り、もう一度、お客様から支持をいただける店舗を目指し」たい。

 このような反省に基づいて久保氏は、小売業で働くことの意義を次のように指摘された。これらのことは、小売業に就職を希望する学生のみならず、すべての業種に共通して必要な能力であると思われる。

 6月は就職活動の「第2ラウンド」である。すでに内定をもらった学生は「第1ラウンド」の勝者である。勝者に「奢り(おごり)」は禁物である。長い人生から見れば、それは初戦のわずかな勝利にしかすぎない。他方、現在も就職・求人活動は依然として継続している。就職未内定の学生は悲観する必要はない。これから改めて自己点検して、自己の「売り出し戦略」を再構築すればよい。

 さて「小売業は接客業か?」と問えば、「はい」と答えるだけでは不十分である。正しくは「小売業は接客する」のである。「小売業の中に接客業も含まれる」ということが正しい認識である。このことは、「接客が好きだ」という理由だけで小売業に就職を希望することが、必要ではあるが、十分ではないということである。

 それでは小売業に必要とされる能力は何か? 久保氏は次の2点を指摘された。

 (1)変化対応力:お客様のニーズに如何に応えていくか? お客様の求めているものをどれだけ把握できるか? お客様に支持されるであろう提案をどれだけできるか?
 (2)戦略立案力:どのように競合他店と戦っていくか? どの店と戦うのか? どこで「差異」をつけるのか? (注:これら課題は、競争戦略論が対象とする基本問題である。)

 「常に新しいものを求めるお客様のニーズに対応することが社会貢献になり、そのことが同時に自己成長を実現することにもなる。これが小売業である」。この指摘は、特に小売業に限られていない。新しいイノベーション(技術革新)を追求するという観点から言えば、そべての業界に共通していると私は思う。それでは小売業の特質は何か?

 (株)ダイエー・川戸義晴・代表取締役会長((株)イオンモール前社長)は、久保氏によれば、次のように述べている。「物事には達人がいる。もし「人間の達」がいるとすれば、それは小売業を経験した人であろう。小売業は、お客様に対する1対1の対応の連続である。お客様は口頭では言わない。直接に何も言わないが、お客様の行動・態度・目線を見れば、お客様が何を考え、何を求めているかが理解できる。お客様を読む。すなわち「人間を読む」。これができれば、「人間の達人」である。その領域に最短で達することができる人は、日常にお客様に接する小売業に従事する人である」。

 「人間の達人」の領域に達する。これは、すべての企業経営者に求められることでもある。銘記すべき名言である。以上、貴重なご講義を賜った久保氏に改めて感謝を申し上げたい。

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2007年11月 5日 (月)

メガネが就職の決め手になるか?

 なかなか就職先が決まらない大学4年生がいる。私が非常勤講師を引き受けている某大学の受講生の男子学生である。いろいろ話してみると、けっして能力も性格も悪くない。でも、この時期になって未だ就職が決まらない。

 教師の特性として、何か助言をしてあげたいと考える。その結論は、第一印象が悪い。その主要な理由はメガネだと思った。

 いわゆるカジュアルなファッション指向の強いメガネなのだ。どう見ても、ビジネス用のメガネではない。その第一印象が、かなり採用決定に悪影響を及ぼしているとみなされた。

 この指摘は私見であるから、家族や友人にも自分の印象を質問してみなさいと助言した。人間に対する印象は人によって様々だから、いろいろな人に自分の印象を質問してみればよい。そこでの共通した意見は、だいたい当たっていると考えられる。

 本人も、第一印象が大事であることは知っていて、真面目な学生であるから、私の意見を真剣に聞いてくれた。彼の新たな就職戦略の成功を祈りたい。

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2007年7月18日 (水)

ブレインワークス(株)近藤昇社長の講演:『バカモン!』

 流通科学大学では、専任教員が担当する講義の中で外部講師を招聘できる制度がある。そこで7月4日(水)に、ブレインワース(株)の近藤昇社長をお招きして、ご講義をしていただいた。

 講演のテーマは「バカモン」。独創的で異色のテーマだ。そうは言うものの、最近の大学生にはピッタリだ。せっかくの自由な時間がある大学時代に「バイト三昧」の学生。バイトに精を出し、幾ばくかの報酬を得ることで本人も親も安心する。しかし仕事をするなら、社会人になってからでも十二分にできる。

 大学時代にしかできないことがあるのに、それが理解できない。こういう大学生は「バカモン」だ。これは私の意見だが、これと同じような調子で近藤社長は、以下のような著書を出版されている。

 近藤社長の講演の中で学生に好評であった指摘は、大学生は就職先を迷うことが多いが、それは余り意味がないということだ。いろいろな社会人の入り口があって、どこから入るのかを迷っているのだが、中に入れば同じということだ。社会人という舞台に上がるためには、いろいろな道があるのだが、結局は社会人になり、そこで勝負するという意味だ。

 このような考えに基づけば、当面の就職先の思案よりも、その後の社会人としての実力を養成することが最重要だ。短期的な目標よりも、より長期の目標に向けて大学生活を送るということになる。

 ご講義に対する学生の感想文によれば、「就職に対して不安であったが、近藤社長の話を聞いて、気が楽になった」という。これは、本講義の大きな収穫である。ご多忙の中で来学くださった近藤社長に心から感謝を申し上げたい。

バカモン!―一流ビジネスパーソンへの登竜門 Book バカモン!―一流ビジネスパーソンへの登竜門

著者:近藤 昇
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2007年4月23日 (月)

檜谷芳彦『大学3年になったらすぐ読む本』を読む

 東京出張のための新幹線の中で、檜谷(ひのたに)芳彦『大学3年になったらすぐ読む本:面接試験「自己PR」の準備と実践』大和書房(2007年、619円+税)を読んだ。

 すでに私のゼミ学生にも読むように推薦し、何人かの学生が「読んでます」と言っていた。全員が読めばよいと思うが、読むか読まないかは自己責任だ。嫌なモノを無理矢理に読ましても、その内容が身につくはずがない。

 本書は、就職面接での自己紹介のノウハウを教えている。その要点を簡単に言えば、社会人としてのマナーの基本である礼儀正しい挨拶、それと大きく明朗な声、そして学生らしい明るい笑顔。そして自己PRのシナリオを準備し、その演技を練習するということだ。

 「あいさつは、日常の習慣であって、何かのときにだけやるものではない。いつでも、だれとでも、大きな声でしっかりあいさつする習慣が身についていないと、面接でいざというときに、声が出ない」(p.60)。

 私は、できるだけ学生に挨拶するようにしている。声をかければ、ほとんどの学生は返事をくれる。これは気持ちのよいものだ。全教職員が、学生に声をかけて挨拶することを提案したい。なぜ、挨拶するのか? 以上の理由を学生に講義中にも話して、学生の意識改革をすることも、挨拶を促進するために有効だ。精神論・理念論で訴えるのではなく、その合理的な理由が大学生を「動かす」には一般に必要だ。

 「そんなことまで大学で指導するのか?」という疑問があるかもしれない。しかし大学の使命が研究・教育であるとすれば、この教育には知識・知見の移転のみならず、人間教育が含まれている。常識ある社会人として大学を卒業させるために、大学教職員が努力することは当然であろう。

 「自分はもともと暗い性格だ、とか、人前で明るく振る舞うことが苦手だ、という人は、自分を就職活動向けに改造するしかない。そしてそれは、訓練によって十分可能である」(p.66)。

 就職面接では、ありのままの自分を出せばよいとも思うのだが、本書では「改造するしかない」と断言している。このような明確な指摘があれば、学生にも自信をもって指導できる。「元気出せ」、「笑顔が足らん」と何度も言うことにしよう。

 本書は、自己PRや集団面接について書かれているが、最近流行している「圧迫面接」について言及していない。これは、学生をいじめるような質問をネチネチとすることだ。それについて学生の反応を見るという趣旨だが、普通の人間なら不愉快になって口論になるだろう。ゼミ学生の話によれば、面接担当者が最後に「以上は圧迫面接でした」と学生に告げることがあるらしい。そうでも言わなければ、面接者の人格を問われるし、そのような面接をする会社の印象も悪くなる。双方に後味の悪い面接は好ましくない。

 このような面接に対して学生は、自然体で受け流せばよい。圧迫に対して反抗・反発することは絶対にしてはならない。どのような場合も、大人として堂々と対応する。そういった人間性を観察するための面接である。

 就職活動に真剣に取り組むことによって、学生が社会人として成長する。子どもから大人になる。このような論調で本書は執筆されている。これに私も同感だ。すべての学生が、しっかり自己分析して、自分の長所に自信をもって、就職活動を通して自己成長してほしい。同じ就職活動なら楽しくやる。この心構えを固めておけば、余裕をもって面接に楽しく臨めるであろう。

 大学3回生に広く本書を推薦する。今から就職について意識を高めておくことは有益だ。就職活動が本格的に始まる年末から来年早々では「手遅れ」になる可能性もある。自己分析や自己アピールの準備と錬成に十分に時間が取れず、時間不足に後悔しないようにしてほしい。

 専門科目の講義も始まり、就職活動の準備もする。大学3年生になれば忙しくなるのだが、それを楽しむように「プラス志向」で考えてほしい。やっと大学生らしい生活になったのだ。本格的な大学生活を楽しく過ごそうではないか。

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