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2015年12月16日 (水)

「企業論」講義記録(10):日本型「経営者支配」

通常の「所有と支配の分離」に伴う「経営者支配」は、「株式所有の分散」によって株主の支配力が軽微になった場合に発生する。これはバーリとミーンズの研究以来の定説である。

これに対して、日本型「経営者支配」とは「株式所有の集中」にもかかわらず、発生しているとみなされる。その株式所有形態が一方的なら支配と従属関係が発生するが、日本のそれは「株式相互持ち合い」である。

「株式持ち合い」が「乗っ取り防止」という目的で始まったことを考えれば、それは経営者の地位を維持・防衛するためである。経営者が「株主からの支配」を免れるために自社の資金を使って株式を持ち合う。経営者が自ら「所有と支配を分離」する体制を作り出す。

このような「株式持ち合い」は世界でも日本だけだと考えられる。社会科学の中での「ノーベル賞」的な新規性・独創性があると言ってもよいが、当然、これまでに指摘してきた弊害や問題点が多々ある。また「財閥解体」が占領軍(GHQ)に強制されたということで、財閥に対する郷愁という日本的な要素も株式持ち合い形成にとって重要であったと思われる。

なお、株式の相互持ち合いという場合、「支配の相殺」という主張があったが、それは誤りである。相殺して支配力が「無」になる企業関係と、最初から無関係の企業関係が同じであるはずがない。株式持ち合いによって企業間の協調・同調関係が強化される。

また相互会社である生命保険会社が一方的に上場企業を支配しているという主張もあったが、それも誤りである。生命保険会社の保険契約者による「総代会」は株式会社の「株主総会」と類似の最高意思決定機関であるが、その代表にはは生命保険会社が株式所有をしている企業の代表が多数含まれることになる。さらに、いわゆる生命保険の「法人契約」が法人側から保険会社に対する影響力となっている。

こういった日本独特の株式所有形態である「株式持ち合い」が、日本型「経営者支配」の基礎となってきた。その論理は、確かに日本国内では通用したのであるが、企業の国際化さらにグローバル化によって外国人株主が増加すれば、それは経営者の自己保身のための利己的な「奇妙な制度」とみなされる。

こうして株式持ち合いの解消、換言すれば「企業統治の改革」が推進されるに至る。私見であるが、「財閥解体」の強制性が「株式持ち合い」を生み出したと言えるのかもしれない。より一般に社会の発展また変化は段階的に進むものであり、強制性が伴うと、それによって不可思議な現象が生まれる。「株式持ち合い」はその産物であると結論するのは言い過ぎであろうか。

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