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2015年11月26日 (木)

「企業論」講義記録(8):「経営者支配」と機関投資家の株式所有

1.「経営者支配」論の検討

(1)バーリ・ミーンズの研究
バーリとミーンズの「近代株式会社と私有財産」によれば、「経営者支配」の企業は最大株主が20%未満であるとした。その後の研究では10%未満を基準にしたり、銀行融資を考慮したりして「経営者支配」を抽出している。これは「株式所有の分散」を示す一つの分析方法とみなされるが、最大株主が20%や10%といった数値に特に根拠があるわけではない。

(2)「所有者支配」「銀行支配」「金融支配」
「経営者支配」に対して、依然として企業は「所有者支配」または「銀行支配」または・「金融支配」であるといった反論または批判が存在する。私見では、たとえば10%未満の最大株主の企業であっても、それ以下の大株主の数人(法人・個人)で「結託」すれば、経営者の任免に決定的な影響を及ぼすことができる。他方、こういった株主(多くは金融機関や取引先企業)と経営者が共通の利害をもって「結託」・「連携」すれば、経営者がその地位を維持することもありうる。このように企業の「経営者支配」を単純に決定できないことは事実であろう。

2.「経営者支配」論の評価

(1)純化された「経営者支配」論
それでは「経営者支配」が架空の概念であるかと言えば、そうでもないと指摘できる。たとえば最大株主でさえ0.001%の株式しか所有しないような場合、さらにそれらの株主が株価収益にしか関心をもたない場合、株主の支配力または影響力は消滅するのではないか。換言すれば、究極の「株式所有の分散」の状態であり、株主総会の議決権行使では「白紙委任状」が大多数といった場合、おそらく「経営者支配」という状態に至る。株主は、議決権行使を通して経営者を任免するよりも株式売却を選択する。

(2)バーリとミーンズの研究の評価
 ① 株式会社では「出資者=株主の支配」つまり「所有者支配」が法的に当然と考えられていた当時、「経営者支配」の可能性を初めて指摘し、その実証のために「株式所有の分散」を初めて実態調査したことは、やはり経営学の歴史の中でバーリとミーンズは特記に値する研究業績であると思われる。

 ② また、株主を無視した経営者の独断専行や自己保身が今日でも世界で見受けられる時、それは本来の「所有者支配」の会社における「経営者支配」的な行動ともみなされる。これは、現代的な課題である「企業統治」(コーポレートガバナンス)論に「経営者支配」論が引き継がれていることを意味している。

3.機関投資家による株式集中

近年では、投資運用者(ファンド=マネジャー)が投資運用に責任をもつ機関投資家(投資信託=投資ファンド、年金基金、銀行信託部、信託銀行、大学基金)に株式が集中している。この機関投資家は、会社がM&Aや取引関係や提携関係を強化するために他社の株式を所有することと区別される。前者は、出資者すなわち受益者は投資家であり、投資運用者または資金受託者とは別個に存在しているが、後者の投資資金は会社自身によって調達される。前者は、あくまでも投資家に代わって投資収益を追求することが目的であるが、後者は、取引・提携関係の強化またはM&Aが目的とされる。この両者の区別は重要である。

(1)「ウォールストリート・ルール」
ウォールストリート・ルールとは、株式の投資収益が悪化すれば、単純に言えば、株価が下落すれば、株式売却することを意味する。

(2)EXIT(退出)とVOICE(発言)
株主の売買行動として、「退出」とは株式売却のことであり、「発言」とは「売却」しないで株主総会での発言を意味する。大量の株式を所有する場合、その売却は買い手が見つからなかったり、株価の下落を伴う。したがって「退出」よりも「発言」が機関投資家や法人の大株主では選択される。「ウォールストリート・ルール」は「退出」のことであり、最近の「もの言う」株主または「株主行動主義」は「発言」に区分される。、

・・・以上の株式会社における株式所有や株式売買については、主に欧米で議論されてきた内容である。それでは日本の株式会社におけるそれらの特殊性・独自性は何か。それは「株式相互持ち合い」に他ならない。次回から、これについて講義を進める。

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