« 「アジア経営学会第22回全国大会」(6):アセアンと南アジアの物流事情 | トップページ | 雑誌『シナリオ』11月号に記載:「ベトナムの風に吹かれて」 »

2015年10月 2日 (金)

「アジア経営学会第22回全国大会」(7):日本の損保企業のアジア進出

近畿大学教授・小林一雅先生は、住友海上火災保険(現在、三井住友海上火災保険)に勤務され、米国や香港の海外滞在を長く経験されている。損保業界のアジア戦略についてご自身の体験的な見解を述べられた。ご自分でそう言われるものの、報告は客観的なデータに基づく分析的な内容であった。私が印象的だったのは次のような指摘である。

(1)損害保険はどんな商品か?
A.商品が言語そのものであること⇒約款は言葉そのものであり、言語が違う集団間では共有は不可能。
B.商品や仕組みが社会制度や法律と密接不可分の関係にあること⇒国境の壁は相当に高い。
C.本質的にドメスティックであり、国際展開するとすれば、マルチ=ドメスティック型となる。

(2)損保業界の海外展開は圧倒的にM&A頼り
内部成長もあるが、割合的には小さい。M&Aの目的・効果・背景として、次の5点が指摘されているが(松本茂『海外企業買収:失敗の本質』東洋経済新報社、2014年)、それらは必ずしも目算通りには行かない。①時間を買う、②市場占有率、③シナジー、④現地人材獲得、⑤円高

私の質問は、保険業界は伝統的に欧州企業が強いと言われている。たとえば「取引信用保険」について日本の損保会社は、ベトナムにおいても、欧州の「信用調査会社」(ユーラーヘルメス;マーシュ;コファス等)と提携してリスク判断をしている。こういった欧州の「信用調査会社」の「強さ」の秘密またはノウハウは何か。

小林氏の回答は次のようなものであった。「取引信用保険」は説明が複雑なので、たとえば「役員賠償保険」を例にして説明したい。この保険は世界的にニーズがあるが、米国が発祥地であり、そのノウハウや経験は米国に蓄積されている。人間の進化の歴史を考えたとき、欧米は日本よりも進歩しているとみなされ、その歴史や伝統をもっている。こういった人間社会があって経済活動がある。こういった社会背景が「強み」の源泉であると思われる。

以上の小林氏の回答をより一般に敷衍すれば、社会の制度や組織の創業者・革新者の役割を果たす国に「競争優位性」が伴うということであろう。日本のコミックが世界に受け入れられるのは、単なる個人の才能に依存するのではなく、新たな「コミック文化」を日本が創造・先導しているからであろう。同様に映画界でも、ハリウッドの長い歴史と伝統が、世界における米国映画の優位性の背景にあるとみなされる。

この見解が正しいかどうかは検討がさらに必要であるが、それに気づかせて頂いた小林先生に感謝である。これが「学会」の意義または醍醐味と言える。

|

« 「アジア経営学会第22回全国大会」(6):アセアンと南アジアの物流事情 | トップページ | 雑誌『シナリオ』11月号に記載:「ベトナムの風に吹かれて」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/7888/61610913

この記事へのトラックバック一覧です: 「アジア経営学会第22回全国大会」(7):日本の損保企業のアジア進出:

« 「アジア経営学会第22回全国大会」(6):アセアンと南アジアの物流事情 | トップページ | 雑誌『シナリオ』11月号に記載:「ベトナムの風に吹かれて」 »