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2015年6月 7日 (日)

『経営学大図鑑』で「誤訳」を発見した!

現在、私の担当する「特別クラス」の講義では『経営学大図鑑』(イアン・マスコーズほか著、三省堂、2015年)を使用している。

ここで「誤訳」を発見した。124頁、背景知識「1932年 アメリカのアドルフ・バーリとガーディナー・ミーンズが「所有と経営の分離」という語を初めて使った。」

この「所有と経営の分離」は誤りであり、「所有と支配の分離」が正しい。英語の原著を確認すれば、「Separation of ownership and control」となっており、原著は正しい内容を伝えている。

「所有と経営の分離」は、たとえばプロ野球の楽天のオーナー(=所有者)は三木谷さんだが、球団経営は専門の社長が別にいる。経営が多角化・複雑化すると専門経営者が必要となる。また、過去を振り返れば、いわゆる「機能資本家」に対して「無機能資本家」(=「持分資本家」)が出現した時点で「所有と経営の分離」は始まっている。

これに対して「所有と支配の分離」は画期的な概念である。単純に言って、本来の「所有と支配は一致」している。所有者はその所有物に対して自由に何でもできる。「自由に何でもできる」ということは「支配」していることである。一致しているはずの所有と支配が分離するのだから大問題である。

その「分離」によって、「経営者支配」という状況が生まれる。この経営者と株主の関係が当初の議論の対象であったが、その後、株主のみならず、株主を含む「利害関係者」と経営者の関係が議論の対象になってきた。上記のバーリとミーンズの研究が歴史に残る理由は、このような今日的な意義があるからである。

株式会社の「所有と支配」の問題は、私の担当する「企業論」という科目に必ず含まれている。また最近も頻繁に議論されている「企業統治」の考え方の基礎となる論点である。どのように経営者の暴走や私利私欲を「監視」するか、同時に経営者はどのように利害関係者に対して「説明責任」を果たすかという内容である。

三省堂と言えば、学生時代には各種の辞書でお世話になった権威ある出版社である。その書物の誤りを発見するようになったのか・・・私も年をとったものだ・・・というのが率直な気持ちである。

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