« ヴォー・グエン・ザップ著、古川久雄 訳・解題『愛国とは何か』を読んだ(3) | トップページ | 故・中村福治教授:孤独なゲリラ兵でありたい・・・ »

2015年5月20日 (水)

「ギリギリ経営」の勧め:経営理念と利益追求

かつて私の講義の教材で使用したNHKテレビ番組で、「そごう百貨店」の再建と「西武百貨店」の経営統合を果たした和田繁明氏(当時の代表取締役)は、「そごう百貨店」の幹部研修で次のような意味の発言をしていた。

「ここにいる経営幹部の中で、従業員の人数が増えれば、それだけサービスが良くなるというような「勘違い」をしている人はいないでしょう。ギリギリの少人数の従業員で最大の顧客のサービス・おもてなしを提供する。これが鉄則です。」

当時の私は、この言葉の意味は表面的にしか理解していなかったように思う。しかし「JR西日本」の福知山線事故の10周年の各種報道に接して、この真意が納得できたような気がする。

どのような企業でも、利益追求が最大の目標であることは共通している。それは資本主義体制の大原則である。これを否定することはできない。ましてや上場企業であれば、株主や金融機関など利害関係者の利益にも十分に配慮しなければならない。

しかし各企業には社会的な役割もしくは使命がある。たとえば小売り業であれば、顧客のサービスまたは満足の向上であろうし、鉄道を含む交通運輸会社であれば、迅速で安全で安価な輸送と言えるであろう。

こういった社会的使命を最優先にしなければ、その会社の存在価値はない。これは当然である。これは「経営理念」と言い換えることができる。それを大前提にして民間企業として利益を最大に追求する。ここでサービスや顧客満足度の向上のための費用は、収益性に必ずしも結びつかない、同様に安全性と収益性も背反する。この背反する境界線において、ギリギリまで利益追求するのが民間企業の優れた経営者とみなされる。

このような経営姿勢には、けっして安全性よりも収益性を最優先にするという意図は入ってこない。安全性を最優先しながらも利益をギリギリまで最大に追求する。

この「ギリギリ」まで追求しないようにするためには、利益優先の民間企業ではなく国営企業=国有鉄道の形態に復帰することも一考である。また、利益追求を適当な所で妥協する企業経営を遂行する。ただし、こういった経営者は民間企業では一般に優秀とは言わない。

同様の論理はいろいろ成立する。従業員の満足を最優先にしながら、顧客が満足する低価格を最優先にしながら、高級感ある豪華な店舗作りを最優先にしながら、ギリギリまで収益性を追求する。この「ギリギリ」が経営の神髄ではないか? 

利益を最優先にしながら、収益性をギリギリまで追求することは、現代の顧客また社会からは受容されないであろう。この場合、収益性をギリギリまで追求しないという選択肢もありうる。これは結局、収益性を最優先しないことである。これは企業の経営目標として経営者が、なかなか株主を含む利害関係者に説明できない主張である。

社会的な使命や理想を企業の「経営理念」・「社是」として会社内外に公表し、それを最優先にしながら、ギリギリまで利益を追求する。

発展途上国の企業経営者に対して「経営理念」が重要だと指摘するのだが、それは以上のような制約条件で「利益追求」を思い切りできる考え方だからである。

|

« ヴォー・グエン・ザップ著、古川久雄 訳・解題『愛国とは何か』を読んだ(3) | トップページ | 故・中村福治教授:孤独なゲリラ兵でありたい・・・ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/7888/59783218

この記事へのトラックバック一覧です: 「ギリギリ経営」の勧め:経営理念と利益追求:

« ヴォー・グエン・ザップ著、古川久雄 訳・解題『愛国とは何か』を読んだ(3) | トップページ | 故・中村福治教授:孤独なゲリラ兵でありたい・・・ »