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2015年5月18日 (月)

ヴォー・グエン・ザップ著、古川久雄 訳・解題『愛国とは何か』を読んだ(2)

以下の引用文は、1974年当時の南ベトナムのグエン・ヴァン・チューの民主党に対して述べている。

民主党は・・・ジェム=ヌーの「労働者」党派に似ていた。「その党派は己の利益をめぐって突っつき合う強欲な日和見集団にすぎなかった。チューの党は内部のみならずその周辺にも汚職や賄賂を広範に横行させ、もっと危険だった。金になる私腹を肥やすポストは傀儡政権の網の目の中で取引された」(93頁)。

このような政権が、一般の民衆から支持されるはずもない。自由・独立・民族統一といった主張を掲げる北ベトナムのホーチミン政権の清廉な魅力を増幅させる効果がある。

ザップ将軍は述べている。「ヴェトナムの人民戦争を律する考えは、「民衆全体が敵と戦う。国全体がフランス人とまたアメリカ人と戦う」ことだ。前線と後方の区別はない。」と。こういった指摘の大前提には、民衆の強固な支持を受けているという確信が必要である。

私見では、これが複数政党の効用である。現在の中国やベトナムの共産党も汚職や賄賂を撲滅すると自らが言っているのだが、一党内の「自己批判」もしくは内部の「権力闘争」といった性格をもっているとも考えられる。複数政党が存在すれば、それらの相互批判によって、各政党が自己をより強く律するという効果がある。そうしなければ各党は、一般民衆の支持を獲得できないからである。

こういった問題も、ベトナム戦争の歴史からベトナム人自身が学ぶべき教訓ではないかと思われる。TPP加盟を目前にしたベトナムにとって、経済制度とともに政治制度の民主化を進めることは、それを促す米国の圧力の有無にかかわらず、自らの課題である。当面の問題は、政治的安定を維持しながら、民主化に「ソフトランディング」するタイミングまたは情勢であろう。

当然、このような課題をベトナム共産党は十分に認識していると推察される。ザップ将軍は言う。「最後の決定的戦闘を最善の状態で行う状況を作る必要がある」(303頁)。この「最後の決定的戦闘」は軍事のみならず、政治についても妥当するであろう。ベトナム共産党は、政治的な民主化の決定を「最善の状態で行う状況」を「待つ」のではなく、主体的に自ら「作る」ことを検討することも求められている。(続く)

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