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2015年5月17日 (日)

ヴォー・グエン・ザップ著、古川久雄 訳・解題『愛国とは何か』を読んだ(1)

ヴォー・グエン・ザップ著、古川久雄 訳・解題『愛国とは何か』(京都大学学術出版会、2014年12月)を以前に紹介したが、ようやく5月初めに読了した。

4月30日の南北統一(1975年)記念日に間に合うとよかったが、なかなか予定通りに計画は進まないのが常である。

第1に、本書は、名将といわれたザップ大将の「ベトナム戦記」であり、それは「必勝の戦略論」として企業経営にも非常に参考になる。そのためには古川氏の「解題」も併せて読むことがお奨めである。さらにザップ大将より以上に、ホー・チ・ミン初代主席の戦略家としての才能にも驚かされる。

たとえばザップ大将に対する指示としてホー主席は次のように述べている。「今回は帰趨を決定する戦いだ。勝利を確信できたら戦え、勝利を確信できなかったなら戦うな」(390頁)。決定的な場面では、負ける戦いはしない。確かに「戦わないこと」も戦略である。これは企業経営でも不可欠な発想ではないか。

ともかく何でもよい実行してみて、その後に検証・修正・改善すればよいという(たとえば「PDCAサイクル」を回す)軽い発想は、決定的な戦闘状況ではありえない。実行して失敗すれば、そこで戦争終了=敗戦だからである。

第2に、敵に対する情け容赦のない攻撃・殲滅の姿勢が、戦争の勝利には不可欠なことが理解できた。同じベトナム人であっても敵である。この峻烈な断固たる決意が勝利を導く。他方、敵のフランス軍のド・カストリ大佐夫人の手紙を敵陣地に届ける手配をするなどは、戦場での心温まる逸話である(397頁)。

この対比は、同胞に対する増幅された憎悪(=近親憎悪)があるようにも思われる。ただし、南ベトナム政府にも同様の心理が働いているはずである。同じ国民もしくは民族の間の感情的な対立を回避することは歴史の教訓であろう。

第3に、中国とベトナムの「ゲリラ戦」は性格が異なるという指摘は興味深い。中国のゲリラ戦が「遊撃型」であったのに対して、ベトナム流のゲリラ戦は「定住型」と言えるかもしれない。これはベトナムの独創的な戦術であった(370頁)。

第4に、サイゴン包囲戦(「ホーチミン作戦」)時、「ハノイでは総司令部が24時間、昼も夜もぶっとうしで働いた」(312頁)。こういった軍指導部の徹夜での働きぶりは何度も紹介されるのだが、これが勤勉なベトナム人の「イメージ」を現在も継承しているように思われる。

現在、軍事的には平和であっても、経済的にはTPP加盟やAEC発足(2018年に関税撤廃)といった激烈な国際競争が待ち受けている。官民が一体となって経済的な戦時体制と認識して「昼も夜もぶっ通しで働く」覚悟がbとナム人には必要であると思う。外国人としてお節介かもしれないが・・・。(続く)

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