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2015年4月 3日 (金)

ヴォー・グエン・ザップ著、古川久雄 訳・解題『愛国とは何か』(京都大学学術出版会)

大型書店に行けば、専門の経営学・企業論・各国経済などのコーナーで新刊書を手にとって眺めることが習慣になっている。さらに、すぐに読まなくても、とりあえず買っておこうと思うのが習性である。この習性=本能に従って以下の本を買った。

ヴォー・グエン・ザップ著、古川久雄 訳・解題
『愛国とは何か――ヴェトナム戦争回顧録を読む』京都大学学術出版会、2014年12月。


これは、久しぶりに面白い本。熱中して最初を読んだ。訳者であり、解題を執筆した古川久雄氏の本書に対する情熱が伝わる。なぜかと言えば、本書は、現代の日本に対する古川氏の「愛国」のメッセージとなっている。ベトナムを通して日本を考えてほしいという著者の気持ちが伝わってくる。

私は1994年に次のことを述べた。国家の政策目標となる普遍的な価値は、「経済成長」と同様に「独立と自由」である。そのほかに「所得の公平・平等」や「政治の安定」・「民主主義」といったことが含まれる(注:故・ハンチングトン教授/ハーバード大学の分類)。

日本は「経済成長」を優先したが、米国に対する従属に甘んじて「独立や自由」を後回しにした。これに対してベトナムは「経済成長」よりも「独立と自由」を最優先にした。そして今、ベトナムは「経済成長」に課題に取り組んでいる。現代の日本は「経済成長」をベトナムに教えているが、逆に「独立と自由」はベトナムから教えてもらわなければならない。

さらに「民主主義」について言えば、日本にもベトナムにも課題は存在しているが、歴史的に見て両国ともに徐々に前進している。

(注):ただし最近の日本は「後退」していると言える。もっとも長期的に考えれば、紆余曲折はあるものの民主主義を含む上記の「普遍的な価値」は前進すると私は考えている。そうでなければ、おそらく人類は滅亡する、または滅亡していたであろう。

このような私の主張と同様のことを古川氏も本書で考えていると思われる。こういう「共感」が本書にある。また古川氏は、今日の日本では「健全な愛国主義」を育てなければならないとし、今日の日本の情勢について「独立と自由は立国の基本であり、孤立と従属は亡国への道」と指摘している。私も同感である。

ザップ将軍の著書の翻訳書でありながら、それには現代日本に対する古川氏の愛国心・祖国愛が十分に秘められている。ザップ将軍のベトナムに対する愛国心が、古川氏の日本に対する愛国心と重なっているように本書の文脈から感じられる。

今、読み始めたばかりの本でありながら、以上のようなことを直感した。さらに機会を改めて、本書全体の感想を述べてみたい。2013年10月4日ザップ将軍の逝去の時、私はベトナム滞在中であった。ザップ将軍の家に向かう長い弔問の行列が記憶に深く残っている。

本書は、2015年「ベトナム南北統一40周年」にふさわしい日本人に向けた著書である。ベトナムから日本が学ぶべきことが発見できる。

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