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2014年10月18日 (土)

書評:メコン地域開発とASEAN共同体(8):楽しめる文書

学術書として客観的な記述をするように明示的・暗示的に研究者は指導されている。情緒的・文学的な表現は論文では不適当とまでは言わないが、特に必要ないと私は考えてきた。しかし、それは先入観または偏見であると実感させられた。

本書の第17章、シー・ホーン・キム(Shee Poon Kim)氏(台湾淡江大学グローバル政治経済学科教授「ASEANとGMS」は、その内容より以上に文書表現が面白い。

なお翻訳は、第18章を担当されている松野周治氏(立命館大学経済学部教授)である。本論文が楽しく読めるのは翻訳者の貢献も大きい。

本章の問題意識は「ASEANの視点という文脈からGMSプログラムをより深くかつ詳しく分析することが不可欠である」(325頁)ということである。

その中で次のような文言が綴られる。・・・「スパゲッティボウル」あるいは「ヌードルボウル」効果(同上)・・・「レンガ体」としての加盟国(326頁)・・・中国のゲームの仕方は、力にものを言わせ、GMSを裏口に用いASEANの権威と地域的利益を意図的ではないとしても浸食し、影響力を強化している(328頁)・・・

・・・中国の「真珠のひも」戦略(330頁)・・・褐色とグリーンの経済回廊(333頁)・・・経済回廊に沿ってグリーンで競争力のある諸都市が成長し、かつての「褐色」の経済回廊が「グリーン」の回廊に変身する(同上)・・・

・・・「排外主義的雄弁をまき散らすともに、国際社会をなだめる不承不承の融和的な提案を時折入り混ぜた閉鎖的市場政策という決して停止しない回転ドア・・・怒りっぽい国々とのファウスト的付き合いは、ASEANを政治的に処罰された虫けらの缶詰としかねない」(338-339頁)・・・。

・・・オリンポスの神々のような決断力が求められる(339頁)・・・「GMS参加国に対する中国の関与の拡大は、2009年の「橋渡堡戦略」を通じてなされている・・・いみじくも「一軸二翼」戦略と名付けられた挟み撃ち作戦が展開されている(339-340頁)・・・。

・・・「公平に見て、ASEANのGMSと非GMS国家の間にくさびを打ち込んでいると中国を非難することは、勘定を済ませて不運にも一文無しになってしまうのと同じように間抜けている」(341頁)・・・

以上のような興味深い文言の意義や含意について考えながら、本章を楽しむことをお勧めしたい。

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