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2014年10月19日 (日)

書評:メコン地域開発とASEAN共同体(9・完)

本書は「論文集」であるから、どの章から読んでもよい。しかし1冊の書籍として全体の体系性を維持しているところが優れた特徴である。本書が、周到な共同研究の成果であることが理解できる。

私は最後に、第Ⅲ部メコン地域の各国分析(2)のタイの章を読んだ。その中で興味深い論点を紹介しておく。

第11章 GMS開発のためのタイ環境保全政策――2011年大洪水の経験に基づく予防措置と事前行動――

第12章 GMS3カ国(タイ・ラオス・カンボジア)における知的財産制度の現状と課題

第11章は、タイにおける行政制度や官僚組織の不備を率直に指摘し、最後に事前行動の提案として、持続可能な開発と『足るを知る経済哲学』の融合が提案される(228頁)。

この「足るを知る経済とは、グローバル化によるさまざまな変化に対し、すべての人々が適切に対応するための法則として、仏教の「中道」の教えに基づいて提唱された哲学である。

すなわち、個人の意思決定を「人類の振る舞い」という大きな観点から捉え、過剰な生産・消費を改め、これらを必要最小限に留める節度を持ち、行動を戒めるための哲学である。・・・・・・この概念は、タイ国王が1970年代に持続可能な開発のための哲学として提唱した概念であり、1997年のタイ経済危機(アジア通貨危機)以降、タイにおける国内開発の基本方針となっている。

第12章は、3カ国の知財保護が不十分なことが紹介され、その充実・改善のために米国・日本・欧州諸国など先進工業諸国の支援が強調されている。そのことが、先進工業諸国のためにもなることが指摘される。

一般に日本では中国のコピー製品などが批判されるが、批判するだけではなく、その予防策を日本が積極的に指導・支援しなければならない。こういったことが本章を通して示唆されている。

コピーされるなら、コピーされない仕組みを考える。コピーされない商品を考える。こういった前向きの発想を日本企業は持つべきであると思われた。

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