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2014年8月 9日 (土)

ベトナムに関する質疑応答(5)

質問 日本の集団自衛権容認の閣議決定は、南シナ海の領有権問題とどのように関係していますか? 

回答 南シナ海は、日本の安全保障上、極めて重要な位置を占めています。したがって密接な関係があります。中東からの石油輸送、さらにベトナムを始めとする海上貿易の要所となっているからです。したがって南シナ海で紛争が激化すれば、日本の船舶輸送の重要な航路が封鎖されることにもなり、日本の国益を害することになるとも考えられます。以上、南シナ海の領有権問題は、日本にとって中国流に言えば、「核心的利害」をもっているとも解釈できます。

東京大学の古田元夫教授が次のように指摘しています。インドネシアの国際政治学者スクマ氏によれば、「中国はアメリカが南ベトナムから撤退する時期にパラセル(西沙:ホアンサ)諸島を占領し、ソ連が撤退する時期にスプラトリー(南沙:チュオンサ)諸島を攻撃した」。

事実、中国は1974年にパラセル諸島を占領、1988年にスプラトリー諸島をベトナム軍と戦って占領しました。この1988年は、ソ連が崩壊に向かう時期ですし、フィリピンから米軍が撤退しようとしている時期でもあります。

これらのことは中国が、アメリカや当時のソ連という大国との直接対立を回避しながら、小国であるベトナムを翻弄したとみなされます。その国際政治感覚は優れていると言わざるをえません。

この中国の行動論理に従えば、日本とアメリカの関係が悪化したり、在日米軍の力が弱体化した時、中国が日本に対する干渉や挑発を強化したり、、場合によっては軍事侵攻したりする可能性があります。日本は、そういった可能性を考慮して、集団的自衛権の行使を容認をしたと解釈できます。

しかし可能性が現実化することを抑制したり、後退させたりする方法は、集団的自衛権の行使容認だけではないことも明白です。中国と日本の友好関係を深化させることは、可能性の現実化を遠ざけることになるでしょう。また中国とベアメリカの友好関係の醸成・促進も日本の安全保障にとって好ましいことです。これこそが「積極的な平和主義」でしょう。

さらに集団的自衛権の行使容認をしなくても、現状で平和維持は可能であるという論理もありうるでしょう。

独立国である日本にとって、軍事同盟や米軍基地の存在が解消されるべきであることは明白です。それに反対する人の論拠は、それが日本の安全保障にとって不可欠という理由です。私は、この反対意見を理解します。しかし、その状態が永遠に継続するという前提や先入観をもつことに反対です。それは思考停止にほかならないからです。

たとえば国際的な軍縮が中国を含めて実現されれば、日本の米軍基地の縮小も検討課題になるでしょう。このためには中国とアメリカの友好関係が前提になります。このような世界史的な将来動向の中で、ベトナムもしくはアセアン共同体と中国の領土問題も解決策が見つけられると思います。

ベトナムと中国の問題は、日本の問題でもあることを認識し、それについて積極的な議論が求められます。

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