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2014年5月21日 (水)

南シナ海におけるベトナム中国の領土紛争(4):全方位外交の不安定性

ベトナムの外交政策は「全方位外交」と特徴づけられる。たとえば韓国とも北朝鮮とも外交関係をもっている。このために北朝鮮の日本人拉致問題についても、ベトナムが交渉の場所になったり、仲介したりすることもある。米国の空母を迎え入れることもあるが、ロシアからの潜水艦の購入を決めている。もちろん中国とも最高首脳の交流はあるし、陸上国境の確定についても平和的な交渉を進めてきた。

いずれの国も軍事大国であり、それらとの紛争や対立を回避しながら独立性・自立性を保持して、経済成長を最優先にするためには等距離の外交がベトナムにとって有効であったと思われる。しかし今回のような中国との紛争発生の場合、ロシアや米国が「ラストリゾート(=頼みの綱)」になってくれるかどうか疑問である。

「全方位外交」は、企業と銀行の関係で言えば、「並行メインバンク」の体制に似ている。たとえば企業Aの主取引銀行(メインバンク)が銀行αとすれば、主取引銀行は企業Aの経営に口を出すが、経営危機の場合は「頼みの綱」になってくれる。

企業Aが、銀行αの「経営口出し」を鬱陶しく感じれば、いわゆる「並行メインバンク」として、銀行βや銀行γからも融資を銀行αと同額に受ける。取引や従業員の銀行口座も3銀行を同等に扱う。企業Aは、特定のメインバンクを持たない代わりに、自由な経営を展開できる。ただし銀行側から見れば、自行がメインバンクであるという自覚や「頼みの綱」としての責任感は希薄になる。

現在のベトナムにとって「頼みの綱」となる国はどこか? TPP加盟交渉中の米国であろうか。また日本がそうなのであろうか。私見では、軍事的な支援は期待できないが、2015年からの新生「アセアン経済共同体」とそれを支援する日本と思われる。ベトナムを類推させる企業Aの話に戻せば、経営危機の場合の「頼みの綱」を既存の銀行に求めずに、新たな外資系銀行からの融資や外国企業との業務提携に活路を見いだす。

ベトナムは経済的に中国に過重に依存し、慢性的な対中国の貿易赤字の解消が課題であった。ベトナムには、こういった問題を改善する強い決断の好機が到来したともみなされる。

なお、この紛争を機会に中国にベトナムが全面的に依存・従属するというシナリオもありうるが、それでは国民の反発は必至である。ありえない選択である。

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