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2014年1月10日 (金)

ベトナムで法人税減税:ベトナム経済の展望(2・完)

ベトナム現地法人ロータス投資運用会社は、ベトナムの法人税減税について、顧客向けのレポートにおいて次のような見解を述べている。

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2014年1月1日より、一般企業の法人税が25%から22%に、2016年1月1日より20%まで引き下げられます。すでに年間売上高が200億ドン未満の企業の法人税は2013年7月1日から20%になっています。これらの減税により、黒字企業の税引き後利益は改善されますが、一方、短期的に国家財政にネガティブな営業を与えると考えられます。ただし長期的に見れば、減税分が事業活動に再投資されたり、債務を縮小させたりすることによって企業の税引き前利益の改善をもたらし、国家財政に貢献すると思われます。
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以上の指摘のほかに、外国企業の進出(=直接投資)促進のために、ベトナムの国家としての国際的な魅力を高めるための法人減税を実施するという意義が存在している。しかし私見では、あくまでも法人税減税の真意は、前回に紹介したように、ベトナム企業存続のための「苦肉の策」であると考えられる。

いわゆるベトナム戦争を通して国家の政治的な独立を国民の多大の犠牲によって獲得したベトナム政府また多数のベトナム人が、外国企業に経済的に従属することを好ましいと考えているはずはない。しかし経済成長を最優先するためには、やはり外国直接投資(FDI)の増大を甘受しなければならない。このように考えれば、やや乱暴に言えばFDIの促進策についても「苦肉の策」である。

このような考え方がベトナム政府内に潜在的または意識的に存在しているからこそ、WTO加盟国としてベトナムでは法的・制度的・公式的に自国企業と外国企業は平等・無差別でなければならないが、その制度の実際の運用において差別が存在していると考えられる。たとえば税務当局の徴税がベトナム人には甘く、外国人には過度に厳格であったり、自然環境保護規制がベトナム企業には甘く、外国企業には厳格であったりする。一般の裁判においても同様かもしれない。それは、必ずしも「袖の下」の有無や多寡だけの問題ではないと思われる。

本来はあってはならない国内外企業の不公平が実在する理由は、それを実施する担当者に何らかの「正当性」が存在しているからだと思われる。たとえば子どもに対する体罰は許されないが、それが根絶されない理由は、体罰を実施する教師に「子どもの成長のための教育」という正当性が存在しているからであると考えられる。同様の意味で、ベトナムの外国人・外国企業に対する差別が正当化される論理は「国家の経済的な独立性」ではないか。

国家財政にネガティブな影響を与え、さらに国家の経済的な独立性を侵害する懸念があるFDIを促進する法人税の減税は、ベトナムにとって二重の「苦肉の策」である。しかし「苦肉の策」は、それが「合理的な選択」であるとみなすこともできる。経済成長を最優先の政治目標にする限り、法人税の減税は、ベトナム経済の成長にとって選択可能で有効な政策の一つであると指摘されうる。

以上、新年から実施された法人税の減税の背景について私見を述べた。それを要約すれば、次のようである。前回は、ベトナム経済の成長戦略を長期と短期に区分して説明し、その中から「苦肉の策」として法人税の減税が実施されたことを指摘した。今回は、その法人税の減税がFDIの促進策になりうると考えられるが、そもそもベトナムにとってFDIそれ自体が「苦肉の策」という性格をもっていることを考察した。

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