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2012年4月 7日 (土)

ベトナムについて質問がありました(3)

2.労働者を保護する考え方が強く、従業員を解雇するに際したやりづらさはないでしょうか?

回答

ベトナム人公務員の定年退職は、女性が55歳、男性が60歳となっています。男女差別ではないか? 日本では問題になることです。

ベトナムの製靴工場を数年前に見学しましたが、接着剤の強い臭いの中で労働者は簡単なマスクだけで作業をしていました。健康被害が心配されます。これはベトナムでも問題視されていますが、なかなか改善でないようです。その理由は知識や予算の不足です。

まず、このように「労働者を保護する考え方が強く」という指摘は、必ずしも現実的ではありません。労働者を保護する考え方をベトナム労働法は固持していますが、現実には資金的な制約や労働者の無知があり、なかなか保護できていないと思います。

さて、従業員を解雇することは可能です。解雇理由を明確にし、事前通知し、退職手当(最低でも2ヶ月分)を支払うことが必要です。なお懲戒解雇の場合、事前通知は不要です。

ここで解雇理由が重要ですが、「労働者を保護する考え方」が特に強く反映されているとは思われません。たとえば、その理由は次のような内容です。

・労働者が雇用契約書に定めた職務を継続的に達成しない場合。

・天災・火災および政府決定などによる不可抗力により、あらゆる手段を尽くして、それを克服しようとしたが不成功に終わったため、生産規模の縮小および雇用契約の解除が避けられない場合。

・企業・事業体が組織活動を終えたとき。

ただし、これらの解雇理由や懲戒処分に納得しない労働者が、地元の労働監督機関に訴えた日本企業の事例を聞いたことがあります。もし不当解雇もしくは違法解雇となれば、損害賠償などの支払い義務が生じます。この事例では、法的・合理的な問題というよりも、感情的な恨みが原因と聞いています。

このように解雇については、その正当性に十分に注意する必要があります。懲戒の場合、その証拠を確保しておくことも重要です。また、ベトナム人の人事管理者がいれば、これらの対応を十分に相談することができます。解雇を円滑に遂行するためには、日本人からも信頼され、ベトナム人からも人望のあるベトナム人管理者を養成しておくことが肝要と思います。また、ベトナム人弁護士に相談することも勧めます。

なお、ベトナムにおいて試用期間が過ぎた時点での解雇は自由ですし、最初の雇用契約書で契約期間を定めることも可能です。これらを悪用して、雇用と解雇を繰り替えして賃金上昇を抑制する韓国や台湾の企業があるそうです。

なお、斉藤善久『ベトナムの労働法と労働組合』(明石書店、2007年)は、「労働関係の終了に関する諸規定は、わが国と比較しても労働者の保護に厚いものと評価することができる」と指摘しています(113頁)。これは正論でしょう。しかし、そのことによって使用者は、労働契約の締結を忌避したり、期間の定めのある契約に固執すると述べています(同頁)。

参考:ベトナム経済研究所監修・みらいコンサルティング(株)編著『ベトナム進出・投資実務』日刊工業新聞社、2010年、186-187頁。 

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