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2011年11月 9日 (水)

TPPの賛否:本音を話そう

 APECが開催を機会に、私自身のTPPに関する賛否を明らかにしておきたい。

 私の意見は、やや複雑である。経済的な意味での自由貿易促進のTPPには、農産物の関税撤廃を含めて賛成である。他方、「内政干渉」に匹敵する国内制度改革が強制されるTPPには反対である。

 農産物の自由化反対が、TPP交渉参加に反対する大きな理由となっているが、農産物を含む貿易自由化・経済統合・経済グローバル化は、より大きな世界の平和的な経済統合に向けて不可避な通過点であると思う。

 消費財・資本財のみならず食糧・資源・エネルギー・人材・医療技術・環境などの国際的な相互依存関係が進展・深化するほど、それは戦争の抑止力になると考えられるからである。

 極端な話、国内の食糧自給率を上げる目的は戦争準備のためであろうか。そうではないはずである。単なる気休めではないか。経済の相互依存関係が国際的に確立されていれば、食糧自給率が0%であっても、日本は安泰であろう。たとえば食糧はベトナムに依存するが、ベトナムの工業生産は日本に依存する。両国ともに不可欠な抜き差しならぬ経済の相互依存関係があれば、両国間に紛争があったとしても、解決に向かうように妥協・努力されるであろう。このように自由貿易化は軍事衝突を回避する安全保障手段である。

 また、自由貿易地域の枠組みとして、TPP交渉に参加するとなれば、同時に私はASEAN+3(日本・韓国・中国)の発展にも関心を向けるべきであると思う。TPP交渉参加によって米国の顔を立てたのだがら、中国も加わるASEAN+3の内実の深化や「東アジア共同体」の推進に日本は米国に遠慮なく取り組むべきである。

 さらにTPPが貿易自由化のみならず、さらに金融自由化を含むとすれば、投機的な資金移動に対する規制や緩和措置も不可欠である。それが、1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマンショックなどからの教訓ではなかったのか。この配慮なしのTPPには賛成できない。

 以上のように賛成とか反対とか単純に言えないのが辛いところである。また一般に、今後の交渉で決まることを事前に賛成・反対と言うことは不適当である。

 実際に会ってみないとわからない「お見合い相手」を事前に想像で評価するのに似ている。最初から嫌いなら最初から会わなければよいが、それでは相手に失礼になる場合もあるだろう。TPPの場合、この「相手」とは米国である。この意味では、交渉に参加すること自体に私は反対でない。

 ただし、TPP交渉において日本政府は国益を最大化する外交力量をもっているのであろうか。私には疑問である。どうせ日本は米国に言いなりになるのではないか。それなら、TPP交渉に参加しないほうがよい。また、それは交渉とは言わない。米国の「御用聞き」である。このような懸念が現実になることは、沖縄の基地問題に対する日本政府の対応で十分に類推できる。

 なお、『毎日新聞』(2011年11月8日)によれば、「交渉参加国には「日本が参加すれば、米国のけん制になる」と期待する向きもある。日本政府にも「複数国で交渉した方が米国の圧力をかわしやすい」(経済産業省幹部)との思惑ものぞく」と指摘されている。

 このような交渉参加国の間での外交力が日本政府に期待できるのか。少なくともベトナムは日本の交渉参加に期待しているであろうとすでに指摘したが、これも注目点である。

 私は、ベトナムは経済的には小国であるが、外交的な能力は高いと判断している。「全方位外交」の政策とは、日本や欧米など先進国のみならず、ロシア・中国・インドなど新興大国と関係を結びながら、地元のASEAN諸国との友好・親善も重視する。ベトナムがTPP交渉に参加するということ自体、ベトナム外交の高い力量を示していると思う。

 日本の国論を二分する大きな問題である。以上の私見も、また変化するかもしれない。いずれにせよ、今後の推移と政府の交渉を注視しなければならない。

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