中小企業にとって海外進出はベトナム(2):日本側の事情
世界に誇る日本の「ものづくり」(=製造業)の発展の主役は中小企業であったと言っても過言ではない。これら中小企業が製造する高品質で低価格の原材料部品が、その後の完成品の国際競争力の源泉であったと考えることができる。
高品質で低価格などという矛盾を解決してきたことが、私は日本人の凄さだと感じる。この「凄さ」とは、単なる「能力」のみならず、日本人の「こだわり」とか「心意気」いった精神的な特徴に依存するのかもしれない。ただし、こういった特徴を日本人だけが持つのかどうかは議論の余地がある。
完成品の組み立てを「頂点」とすれば、その原材料部品を製造する分野が「裾野産業」と呼ばれ、それは英語でsupporting industryと訳される。日本の中小企業は、自動車や家電の製造大企業に代表される最終製品組み立て企業の「裾野」を形成して、その品質向上やコスト削減を要求する大企業を支援・支持(support)してきた。
日本経済において不可欠な役割を果たしてきた「裾野産業」そして中小企業に将来はあるのか? ここで海外進出を切り口にして3つの類型に区分してみようと思う。
第1に、大企業に依存した「下請け」生産から次第に脱却し、独自製品の開発で生き残る中小企業がある。国内にとどまることもあれば、独自に海外に進出する場合もある。ただし、それを実現できる中小企業は、選ばれた技術力・販売力をもった少数の企業であると思われる。
第2に、大企業に追随して海外進出する中小企業がある。これらは「産業の空洞化」そして「雇用の空洞化」を伴うことは指摘されて久しい。このように海外進出できる中小企業は、ある意味で恵まれている。海外進出先の販路が確保できるからである。
しかし、そのいずれでもない中小企業は、人材や資金の面でやはり海外進出は簡単なことではない。第3の類型として、何とか日本で頑張ってきた大多数の中小企業が指摘できる。
現在の最大の問題点は、第3類型の「何とか日本で頑張ってきた中小企業」が次第に日本で頑張れなくなってきたことである。少子高齢化、人口減少、デフレ、中国・韓国企業の追い上げ、財政破綻の諸リスク、政治の不安定化、TPP(環太平洋経済連携協定)など市場開放・・・・・。このように現在、日本経済の不安が増幅している。
日本経済とともに自分も自社も衰退・破綻する。これが不安の内容であるが、大多数の人々は具体的な対策を実行できないでいる。私も含めて人間は、考えることとそれを実行することには大きな乖離がある。結局は「何とかなる」という「根拠のない楽観」に基づいて不安を解消している。
しかし、いよいよ日本は「何とかならない」状況ではないか? それを打破するために海外進出しか残されていないのではないか? 安価な労働力、安価な生活費、成長する販路市場、成長する資産価値、成長する株価は現在の日本では考えられない魅力である。
日本の中小企業の現況は、まさにこれであると思われる。海外に目を向けざるをえない状況である。では、その海外とはどの国か? 私は、それこそがベトナムであると思う。(つづく)
| 固定リンク
コメント