« NHK「ラジオ深夜便・ないとエッセー」の要約:11月5日放送分 | トップページ | 石山寺の紅葉 »

2010年12月 5日 (日)

NHK「ラジオ深夜便・ないとエッセー」の要約:11月12日放送分

 NHK第1放送「ラジオ深夜便」の「ないとエッセー」の統一テーマ「変貌するメコン川流域の国々」の第2回は「ラオス・カンボジア:ビジネス最新事情」です。

1.はじめに
 先週お話ししたベトナムについて、私は1994年に初めて訪問し、1998年から1年ほどハノイの国民経済大学の経済発展研究所で研究員として在籍していました。現地の新聞を読んでいると、ベトナムの隣国であるラオスやカンボジアの記事が頻繁に掲載されていることに気がつきました。

 ベトナムとラオスは同じ社会主義を目指す国であり、政治体制が似ていることや、ベトナムがカンボジアのポルポト政権を追放して、現在のフンセン首相がベトナムとの関係を重視していることは一般的に知っていましたが、ベトナムとラオスまたカンボジアとの交流が具体的に日本の新聞は報道されていませんでしたから、それが新鮮でした。そらがベトナムに次いでラオスとカンボジアに興味をもつきっかけでした。

2.ラオスとアメリカの関係
 ラオスには、2001年9月から12月まで4ヶ月間、ラオス国立大学の経済経営学部にJICAの短期専門家として首都ビエンチャンに滞在しました。ちょうどラオスに到着して数日後でしたが、ニューヨークのツインビルに対するテロ事件がありました。JICAのラオス本部からは、アメリカ大使館には近づかないようにという連絡が入りました。ラオスとアメリカの関係は、現在もあまり良好ではありません。

 ベトナム戦争当時、アメリカはベトナムのみならず、ラオス国内にも爆撃したのですが、それについてアメリカは公式に認めていないからです。今でもラオス北部のベトナム国境付近には不発弾があります。ラオスも戦争の歴史を今日まで引きずっていますが、観光やビジネスという観点から見れば、そういった問題が障害になることはありません。不発弾があると言っても、通常の観光地では、まったく問題ありませんから、どうぞ安心してラオスを訪問してください。

3.心優しいラオス人
 ラオス語を今では、すっかり忘れてしまいましたが、「ナムチャイ」だけは強く印象に残っている言葉です。ナムは水、チャイは心です。つまり直訳すれば「心の水」という意味です。これは、どういう意味でしょうか。

 日本人の学生に質問すれば、メコン川、お酒、血液といった答えが返ってきます。正解は「真心」とか「思いやり」です。これはラオス語だけでなく、タイ語も同じ意味だそうです。人間の体の中に水分がなくなれば死んでしまうように、「人間の心」にも「水」がなくなれば死んでしまう。「心の水」つまり「真心」や「思いやり」の気持ちが人間になくなれば、その「人間は死んだも同じ」というように私は自分なりに解釈しています。その民族が使用する言葉から、その民族の優しさを感じます。これがラオスについての印象です。

 最近は、ラオスに進出する企業が増えていますから、働くことに対するラオス人の意識も向上しています。また、来年にはラオスに株式市場が開設され、すでに証券会社も設立されています。そうなれば、ノンビリしたラオス人も、次第にお金を優先した生活に変化してしまうでしょう。これは、経済発展をする国には共通したことなのかもしれません。

4.ベトナム・プラスワンの国:ラオス
 さて、ラオス経済の特徴は資源大国ということです。この資源には3つの種類があって、第1は、金や銅やボーキサイトなどの鉱物資源、第2は、メコン川に流れ込む水力を利用した電力資源、そして第3は、未開発の観光資源です。現在まで、ラオスの通貨であるキープはドルに対して強くなっているのですが、それは鉱物資源の輸出が好調だからです。また水力発電の電力はタイやベトナムに輸出するようになっています。ラオスの経済成長の原動力は、これらの資源の輸出と考えられます。

 これに加えて最近は、タイやベトナムからラオスに工場を移転してくる日本企業が増えています。その理由は、タイでは政情不安があり、ベトナムでは人件費が上昇しているからです。たとえばベトナムでは、毎年のように賃金が上昇し、これまでの最低賃金が、この5年間で2倍になると言われています。それでも中国やタイよりも安くて、毎月約70ドル、約6000円ほどです。それに比べてラオスの最低賃金は毎月43ドル、約3500円ほどです。多数の労働者で仕事をする縫製や衣料品産業では、この差は製造コストに大きく影響します。

 ラオスの懸念材料は、その人口が少ないことです。しかしラオスの人口増加率は、ベトナムやカンボジアを上回っており、平均年齢は、日本が42歳、ベトナムが27歳、カンボジアが22歳であるのに対して、ラオスは19歳です。また、これまで仕事がなくてタイに出稼ぎに行っているラオス人が数十万人と言われていて、それらの人々が自分の国に帰国するということも指摘されています。ラオスの製造業は、これから本格的に発展するでしょう。

5.中国のラオス進出
 今、ラオスの首都ビエンチャンに住んでいるラオス人が心配していることは、中国人の移住が増えていることです。ビエンチャン市の人口は60万人ほどですが、数万人規模で中国人が移住してくるという話があります。また、これまでメコン川を挟んでタイからの日用品が大量にラオスで販売されていましたが、次第に中国製品も増えてくるでしょう。大規模な中国人のショッピングモールが建設されおり、そこから中国の雲南省の都市クンミンまで国際バスが往復しています。

 しかし、このようにラオス経済の依存が中国を始めとする国々と深くなれば、ラオス人にも仕事のチャンスが生まれますし、経済の相互関係が政治的な安定を増加させる効果もあります。また、ある日突然に中国人がやってくるのではなく、すでにラオスに定住の中国人が公式に1800人います。このようなラオスの事情をよく知っている中国人がいるからこそ、中国人の今後の移住が進んでも、大きな社会混乱が起きないと思います。

6.カンボジアと私
 さて、私が初めてカンボジアを訪問したのは2003年です。その後、2008年に平穏に総選挙が行われ、政治的な安定を内外に示しました。現在のカンボジアは、日本のODA事業によってシハヌークビルの港が建設され、さらに隣接の経済特別区の整備が進んでいます。また民間のプノンペン経済特区にも入居が順調に進んでいます。また来年のカンボジア証券市場の開設に備えて、日本の証券会社の進出も決まりました。これからようやく、日本企業がカンボジアにも目を向けるようになっています。

 この主な理由は、ラオスと同様に安い人件費です。最低賃金は毎月55ドルですから、約 4500円です。また、カンボジアの人口は1400万人です。カンボジアに進出した日本の婦人靴メーカーの経営者は、カンボジア人労働者のことを「愚直なまで勤勉」と表現しています。私も何人かのカンボジア人の友人がいますが、誠実で信頼できるという印象をもっています。

7.カンボジアの経済発展
 このカンボジアにも中国の進出は顕著です。中国縫製業がアメリカ輸出のためにカンボジア移転しましたが、現在はアメリカ向け輸出からEU輸出へ転換しています。中国の直接投資で昨年には水力発電所が建設中です。また南部のカンポットには巨大な港を建設しています。このように韓国と並んで中国のカンボジア進出も目立っています。

 ベトナムとラオスとカンボジアのネットワークを支えるのが物流です。日本政府やアジア開発銀行が支援する東西経済回廊、南部経済回廊、南北経済回廊などが、これらのメコン川流域の国々の結びつきを強めています。特に日本のODAで建設されるネアックルン橋が2015年に完成すれば、ベトナムのホーチミン市とカンボジアのプノンペンは陸路で4時間ほどで結ばれるようになるでしょう。

 このようにラオスとカンボジアはベトナムと一体となって成長していることを今夜は理解していただきたいと思います。では、来週、もう少し視野を広げて、ASEANつまり東南アジア諸国連合の全体を見渡した経済成長について考えてみましょう。

|

« NHK「ラジオ深夜便・ないとエッセー」の要約:11月5日放送分 | トップページ | 石山寺の紅葉 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/7888/37927763

この記事へのトラックバック一覧です: NHK「ラジオ深夜便・ないとエッセー」の要約:11月12日放送分:

» 太陽光発電価格 [太陽光発電価格]
エコポイント申請書が匿名、無料でできる。今なら国や市町郡が日本の二酸化炭素を減らす為に補助金を出しているので今がチャンスです。 [続きを読む]

受信: 2010年12月 5日 (日) 19時45分

« NHK「ラジオ深夜便・ないとエッセー」の要約:11月5日放送分 | トップページ | 石山寺の紅葉 »