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2010年12月 4日 (土)

NHK「ラジオ深夜便・ないとエッセー」の要約:11月5日放送分

 NHK第1放送「ラジオ深夜便」に出演しました。午後11時35分頃から10分間、「ないとエッセー」というコーナーです。その内容の要約を紹介します。

 週1回、3週間に渡る放送の統一テーマは「変貌するメコン川流域の国々」。第1回は「変わるベトナム、変わらないベトナム」です。

1.中国プラスワン
 アジアと言えば、最も頻繁に報道される国は中国ということになるでしょう。歴史的にも経済的にも、また好むと好まざるにかかわらず、私たち日本人は中国と今後もつき合わざるをえないのが現状です。

 現在、尖閣諸島事件や、それを契機とした反日運動のために、中国に対する日本人の感情は非常に悪くなっていると思います。しかし大学の講義で学生に話すのですが、日本から中国製品がなくなると、たちどころに着る物がなくなったりするでしょう。同時に中国人の留学生にも話すのですが、もし日本企業が中国から撤退すれば、中国の経済の発展が滞ってしまうでしょう。

 このように日本と中国の政治的な関係が悪くなれば、経済の関係が悪くなり、それは日本と中国の両国にとって利益になりません。このことを逆に言えば、経済の相互の関係が深くなれば、その利益を失わないために政治が安定し、平和が維持されるということを意味しています。日本と中国の経済協力の発展が、日本にとっても中国にとっても利益になるということは間違いありません。

 しかし、これは長期的な話であって、短期的に見れば、「中国リスク」を分散するために、中国にプラスしてもう一国と日本は経済関係を深めておく必要があります。この国のことを「中国プラスワン」の国と呼んでいます。そして、その国こそがベトナムと見なされます。さらにベトナム周辺国であるラオスとカンボジアもベトナムと同様に高い経済成長を達成しています。

 事実、2005年から2009年まで5年間のアジアの経済成長率を見れば、中国が10%台、インドが8%台となっており、その次にカンボジア・ラオス・ベトナムと7%台が続きます。そこで今回は最初に、ベトナムについて、お話しようと思います。

2.戦争から平和へ
 ベトナムと言えば、私と同じ現在50歳以上の方々は「ベトナム戦争」を直ちに連想されるでしょう。しかし現在のベトナムは、かつての戦争のイメージから平和のイメージに変貌を遂げています。

 それはベトナム政府が、かつての戦争を教訓にして、すべての国々との平和外交の方針を採っているからです。私が初めてベトナムを訪問したのは、15年以上前の1994年ですが、その翌年の1995年に、かつての戦争の相手国であったアメリカとの国交を回復しています。そして現在、ベトナム全土にケンタッキーフライドチキンがお店を展開し、半導体の世界最大のメーカーであるアメリカのインテルがベトナムで生産を開始しています。

3,優秀なベトナム人
 「数学のノーベル賞」と言われる「フィールズ賞」を今年8月に初めてベトナム人が受賞しました。「ベトナム人の誇りである」という評価がベトナムでは一般的です。しかし、ベトナム人の別の友人は「ベトナム人固有の能力というよりも、教育の環境が重要だと思う。受賞したベトナム人はハノイで子どもの頃は過ごしたけれど、その後にカナダに移住している。そして現在はフランスの大学教授だ」と指摘しています。こういう冷静な分析をするベトナム人がいるからこそ、やはりベトナム人は優秀だと私は思ってしまします。

4.日本とベトナムの関係
 「天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも」・・・これは百人一首にも納められている遣唐使であった阿部仲麻呂の和歌です。この阿部仲麻呂は、西暦761年から767年まで中国から派遣された役人としてベトナムのハノイに駐在していました。

 現在のベトナムの首都ハノイは1010年に定められ、ちょうど今年が千年目になり、10月の最初に記念事業が次々に行われました。このハノイが最初に外国軍に占領されたのは、モンゴル帝国によってでした。この時期の日本は鎌倉時代ですが、同じモンゴルから日本も2回の攻撃を受けています。いわゆる「元寇」です。モンゴルは日本に対して3回目の攻撃を計画していましたが、その前に攻撃したベトナムから手痛い反撃を受けて、日本の攻撃を諦めたと言われています。この意味では、日本はベトナムに助けてもらったことになります。

 第2次世界大戦で日本はフランスに代わってベトナムに攻め入り、ベトナム国民に被害を与えましたが、一部の日本人は終戦後もベトナムに残り、フランスからの独立のために戦っています。このことをベトナムは今でも感謝しています。

5.日本とベトナムは相思相愛
 このように日本とベトナムの間には現在、深刻な対立感情はありません。むしろアジアの中で日本に最も親しみを感じている国はベトナムなのです。日本の外務省の調査の中に、「ベトナムも含まれるアセアン、つまり東南アジア諸国連合10カ国について、その国にとって最も重要なパートナー国をアメリカ・中国・日本の中から選ぶ」という問題があります。その答えを見れば、日本が最も重要なパートナーと選択した国はベトナムが最高で42.7%に達しています。ベトナムは次にアメリカを選択し、27.5%、中国は16.5%となっています。

 以上のようにベトナムは、日本を最も重要なパートナーとして考えています。それに応えるように、日本もベトナムに対して最大の支援をしてきました。たとえばODA、すなわち政府が途上国の開発を援助するための資金は、ベトナムに対して2008年にイラクに次いで第2位で、約6億2千万ドルです。現在の価値で約500億円を毎年、日本はベトナムに提供してきました。

 儒教的な精神をもったベトナム人に接すると、普通の日本人は感激してしまします。また「お金は大事ですが、人生はお金がすべてではないですから」というようなベトナム人の青年に出会うと、これまた感心してベトナム人が好きになります。

 私は、日本人とベトナム人は「相思相愛の関係」になると思います。また、そうなるように努力することだと思います。今後のベトナムは「エネルギーと食糧を自らまかなえる少数の国」と見なされています。コメは世界第2位の輸出国ですし、石油・石炭・レアアースが産出されます。こういった国と親しくしておくことが、日本の国の利益にも合うでしょう。

6.ベトナムのビジネスパーソンの人材育成
 私は、ベトナム人の企業経営者や経営幹部の人材育成に関係してきました。そこで気がつく彼または彼女の特徴は次のようなことです。

 第1に、企業経営者が、「率先垂範」できないことです。経営者が自ら模範を示して、従業員を指導するという姿勢がベトナム人経営者は、なかなか持てないようです。

 第2に、多くのベトナム人経営者は「ええカッコしい」です。また、もしできなかったら恥ずかしいので、「できることをできない」と言ったり、また逆にええカッコして、またはお客に対するサービス精神で「できないことをできる」と言ったりします。もっと客観的で合理的な経営判断をすることが求められます。

 第3に、これは従業員についてですが、もっと創造性や主体性を出してほしいと思います。これは自分の上役からの指示にしたがっていれば、それで問題ないという意識が底辺にあります。総じてベトナム人は優秀なのですから、その能力を会社のために集約できれば、ベトナム企業はさらに成長できるでしょう。

7.終わりに
 もう、そろそろ時間になりました。今夜はここで終わります。来週は、ベトナム周辺国であるラオスとカンボジアについて、その観光そしてビジネスの魅力をお話したいと思います。また、今回、ベトナムの経済については十分にお話できませんでしたが、それも来週にお話しましょう。

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