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2010年10月18日 (月)

ベトナム進出企業の「技術流出」をどう防ぐか?(完)

 「技術流出」の防止策として、一般的な対策とベトナム固有の対策が考えられる。また、それらがすべて適応できるかどうかは個々の企業の事情によって異なる。

 たとえばベトナム人の性格として10項目を指摘しても、個々人の多様性によって10項目すべてに妥当する人もいれば、10項目の中の1項目しか妥当しない人もいるだろう。また、複数の項目が相互に矛盾していることもある。これは企業についても同様であって、それぞれに個性のある対象を一般化することには無理があるし、その適応に注意しなければならない。

 このような点に予め留意して頂くこととして、以下では防止策を思いつくままに列挙する。私は「技術」については素人同然である。技術の水準や質によって「技術流出」の形態や防止策は多様であると想像される。以下は、単なる私的な覚書にすぎない。

 1.技術やノウハウを1人に集中して教えない。中核となる情報は日本人が保持する。この原則は絶対ではない。ただし情報や知識の量や理解度について日本人がベトナム人に対して余裕を感じるようであれば、どんどん教えてあげればよい。情報の「出し惜しみ」や不十分な指導は、ベトナム人との信頼形成には負の効果である。

 2.鍵となる人物を十分に観察し、その性格・家族・人間関係などを把握しておく。その人物が退職となると企業にとって損失という場合、その人物に対する処遇に最大の注意を払う。また個人的な人間関係を深く構築する。こういった人間関係はベトナム人にとって重要である。少なくとも家族ぐるみの交流をする。食事を一緒にすることはもちろん、日本に招待して自宅で接待する。こういう関係ができれば、おそらくベトナム人は「裏切る」ことはしないであろう。こういう「裏切り者」はベトナム人社会からも逸脱した人物とみなされるであろう。

 3.法的な対応を事前に準備しておく。ベトナムはWTO加盟国であるから「知的所有権」については厳格に管理されている。「流出防止」の事前応策や事後対策を想定することが望ましい。このために法律事務所などを利用することになる。外資系が安心と思われる方も多いが、実際に活動するスタッフはベトナム人である。ベトナム人の法律事務所との相違は、安心のための割高な料金と考えておけばよいと思う。

 4.ベトナム人を味方に付ける。同じ会社に属する同僚としての意識が経営者から従業員まで共有されれば、技術流出は防止できる。ベトナム人も市場競争の熾烈さは十分に理解しているので、競争優位性を維持するために技術が重要なことは容易にベトナム人は納得する。そのために社内の信頼関係の形成に努力することが重要である。そういったリーダーシップをもった日本人経営者の現地投入が不可欠である。中小企業の場合、こういった人材不足が考えられるが、ベトナム進出を本気で考えれば、自然に方策は見つかるものである。

 5.技術流出の場合を想定した対応を考える。上記3は、法的な対応であるが、ここでの対応は、流出した技術より以上の高度な技術を常に研究開発することや、次の新製品の投入などを検討しておくことが必要であろう。長期的に見て技術流出は不可避である。それに対応した長期戦略の策定が準備されなければならない。

 6.日本の先端技術を部分的に逐次提供し、それに応じた報酬を確定する仕組みを考える。すべての技術を最初から投入することは控えることである。たとえば次のようなアイデアはどうだろう。いくつかの技術の中の1つの技術を提供してベトナム企業と合弁企業を設立したり、技術協力契約を締結する。その技術でベトナム企業は発展し、日本企業は配当金や技術提供料を受け取ることができる。さらに次の技術を提供する場合、同じベトナム企業でもよいし、ほかのベトナム企業でもよい。また別の外国企業でもよい。

 7.「技術流出」とは意味が異なるが、ベトナムでも「模倣」はありうる。ベトナムで喫茶店が儲かるとなれば、喫茶店が乱立する。それは日本でも同様であって、たとえば「ラーメンブーム」となれば、ラーメン屋が乱立する。こういった模倣品は、ベトナムでは従来は中国からの輸入品であった。このような対策は、中国の場合と同様であって、法的な対抗処置を採ることは当然であるし、相手先との直接交渉もありうるだろう。こういった場合のためにも、信頼できるベトナム人を多数動員できるように日々の努力が求められる。

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