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2010年10月31日 (日)

国際シンポジュウム:日本とメコン川地域―歴史的関わり

 現在、ベトナムのホーチミン市に滞在中です。10月29日と30日に開催された表題の会議で報告するためです。この会議は、日本の国際交流基金が支援し、ホーチミン市人文社会科学大学・日本研究センターが主催しました。

 この人文社会科学大学には、2008年にも兵庫県が主催する「ひょうご洋上大学セミナー」の参加学生と一緒に訪問したことがあります。

Cimg2456  今回、私は「メコン川流域3国の経済発展―日本からの視点―」というテーマで報告しました。そのほかに、たとえば白石昌也教授(早稲田大学大学院)は「日本と「メコン」サブ地域」というテーマでの報告でした。

 事前に論文集が作成されましたが、報告論文数は45本、そのページ数は549頁に達しています。このシンポジュウムの盛況が、これらの数字で示されています。

 このような国際会議の私のデビューは、インドのニューデリーで開催された「社会学世界会議」でした。もう20年以上も前になると思います。それ以降の国際会議での私の報告は、たとえば日本の株式相互所有であるとか、日本の役員兼任ネットワークの実態など日本企業を対象にしてきました。しかし今回は初めて、ベトナムのテーマをベトナム人研究者の前で報告することになりました。

 この報告の概要は次の通りです。ご参照ください。なお、写真はラオス国立大学サイナシン副学長の報告です。「10-28-summary.docx」をダウンロード

 

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2010年10月24日 (日)

就職難の原因:「若い人の能力が落ちている」

 大阪商工会議所の町田勝彦副会長(シャープ会長)は、現在の就職難の原因を表題のように述べている(『日本経済 新聞』2010年10月16日、近畿版「エコー」欄)。

 同紙によれば、町田氏は「海外市場の開拓を急ぐ製造業は「海外の優秀な人材の採用を増やしている」。海外への留学や駐在をためらう日本の若者が増えていることを念頭に、「(企業が求める人材が減っていることこそ)日本にとって最大の問題点なのでは」と厳しく指摘した」。

 上記の「企業が求める人材が減っていること」の原因は、現在の大学にも責任があると実感している。たとえば私が毎年指導している「ラオス清掃ボランティア活動」について言えば、今年の応募学生は1名だけであった。最盛期には10名の参加学生があった。このことを考えれば、学生の海外志向は確かに減少している。

 しかし3回生の学生に聞いてみると、夏休みにインターンシップがあって、なかなか海外に行く余裕がないという返事であった。また外国留学するにも、就職活動の早期化を考えれば、そういった時間的余裕がないという事情もある。

 ベトナム・ラオス・カンボジアなど海外での研究・調査・ビジネスを「飯の種」にしている私は、町田氏の主張に納得できる。しかし町田氏にも、海外志向の人材を育成するための工夫をお願いしたいと思う。たとえば海外インターンシップの拡充であるとか、外国留学経験者の就活のための特別選考を実施するなどである。

 大学でも少なくとも私は、学生に対して「大サービス」して海外訪問を勧めている。産業界と大学の連携、さらに政府も支援する「産学官連携」の海外志向学生の育成戦略が求められると思う。この連携の推進について政府レベルで時間を要するとすれば、たとえば大阪商工会議所や大阪府でも可能であろう。

 韓国や中国の若い人々に海外で接することが多くなり、めったに日本人に会わなくなった。この8月にカンボジアのプノンペンで日本人の若者2人と中華料理店で一緒になって久しぶりに嬉しくなったが、彼らは宗教団体から布教のために派遣されていた。

 私も微力ながら「企業が求める人材」のために努力している。ぜひ企業側も、以上のような事情を考慮して、海外志向をもった学生を増やすような施策を積極的に検討してほしいと思う。政府や大学を批判するだけの「他力本願」には無理がある。

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2010年10月23日 (土)

中国の「南進政策」の内実:ラオスと中国の国境を越える(2・完)

 この9月にラオスと中国の国境を越えて両国を往復した。この様子は、岩井証券の「週刊ベトナムレポート」で報告した。また、本ブログでも9月17日に速報している。ここでは、その付録を紹介しておこう。

Cimg2283  ラオスの首都ビエンチャンにおける中国系の大規模商業センターは、すでに本ブログ(2009年12月30日「ラオスで中国『脅威論』を再考:新しい知見」)で紹介したが、同じ場所を9月に再訪した。このような「定点観察」は変化の激しい途上国の実態を理解するために有効であるし、私の研究方法のひとつでもある。

 今回は、中国語専攻の神戸市外国語大学4回生の西村くんが同行してくれたので、お店の人々にインタビューすることができた。私自身、カバンを買うつもりでいたので、カバンを取り扱っている2店舗で商品を眺めながら話を聞いた。いずれの店主も「中国では商売が厳しくなって、ラオスに来た。それほど儲からないが、中国よりはましだ」という回答であった。

Cimg2278  これらの店舗には、いわゆる「ブランド商品」が並んでいた。値段を聞くと日本円で千円や2千円のレベルなので、その低価格から判断して模造品である。正規の製品が輸出用に生産され、その一部もしくは不良品が国内市場に出回ることもありうるが、これも広義の不法商品である。模造品=海賊版の製造工場があり、その販売網があると考えるのが普通である。

 このような問題については、日本では経済産業省・特許庁に「政府模造品・海賊版対策総合窓口」があるので、参照されたい。http://www.meti.go.jp/policy/ipr/

 以上のことから推理すれば、WTO加盟後の中国では模造品・海賊版の製品販売が難しくなり、その販売に組み込まれた末端の小売店がWTO未加盟のラオスに進出してきたというシナリオが考えられる。これは、あくまでも私見である。

 しかしラオスもWTO加盟は年内または来年と言われている。おそらくラオスからも模造品・海賊版は一掃されるであろう。そうなれば、こういった中国からの小売店は今後どのような展開を考えているのであろうか。さらに想像すれば、ますます中国人のラオス移住が進展するというシナリオが考えられる。今後の経緯に注目したい。

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2010年10月18日 (月)

ベトナム進出企業の「技術流出」をどう防ぐか?(完)

 「技術流出」の防止策として、一般的な対策とベトナム固有の対策が考えられる。また、それらがすべて適応できるかどうかは個々の企業の事情によって異なる。

 たとえばベトナム人の性格として10項目を指摘しても、個々人の多様性によって10項目すべてに妥当する人もいれば、10項目の中の1項目しか妥当しない人もいるだろう。また、複数の項目が相互に矛盾していることもある。これは企業についても同様であって、それぞれに個性のある対象を一般化することには無理があるし、その適応に注意しなければならない。

 このような点に予め留意して頂くこととして、以下では防止策を思いつくままに列挙する。私は「技術」については素人同然である。技術の水準や質によって「技術流出」の形態や防止策は多様であると想像される。以下は、単なる私的な覚書にすぎない。

 1.技術やノウハウを1人に集中して教えない。中核となる情報は日本人が保持する。この原則は絶対ではない。ただし情報や知識の量や理解度について日本人がベトナム人に対して余裕を感じるようであれば、どんどん教えてあげればよい。情報の「出し惜しみ」や不十分な指導は、ベトナム人との信頼形成には負の効果である。

 2.鍵となる人物を十分に観察し、その性格・家族・人間関係などを把握しておく。その人物が退職となると企業にとって損失という場合、その人物に対する処遇に最大の注意を払う。また個人的な人間関係を深く構築する。こういった人間関係はベトナム人にとって重要である。少なくとも家族ぐるみの交流をする。食事を一緒にすることはもちろん、日本に招待して自宅で接待する。こういう関係ができれば、おそらくベトナム人は「裏切る」ことはしないであろう。こういう「裏切り者」はベトナム人社会からも逸脱した人物とみなされるであろう。

 3.法的な対応を事前に準備しておく。ベトナムはWTO加盟国であるから「知的所有権」については厳格に管理されている。「流出防止」の事前応策や事後対策を想定することが望ましい。このために法律事務所などを利用することになる。外資系が安心と思われる方も多いが、実際に活動するスタッフはベトナム人である。ベトナム人の法律事務所との相違は、安心のための割高な料金と考えておけばよいと思う。

 4.ベトナム人を味方に付ける。同じ会社に属する同僚としての意識が経営者から従業員まで共有されれば、技術流出は防止できる。ベトナム人も市場競争の熾烈さは十分に理解しているので、競争優位性を維持するために技術が重要なことは容易にベトナム人は納得する。そのために社内の信頼関係の形成に努力することが重要である。そういったリーダーシップをもった日本人経営者の現地投入が不可欠である。中小企業の場合、こういった人材不足が考えられるが、ベトナム進出を本気で考えれば、自然に方策は見つかるものである。

 5.技術流出の場合を想定した対応を考える。上記3は、法的な対応であるが、ここでの対応は、流出した技術より以上の高度な技術を常に研究開発することや、次の新製品の投入などを検討しておくことが必要であろう。長期的に見て技術流出は不可避である。それに対応した長期戦略の策定が準備されなければならない。

 6.日本の先端技術を部分的に逐次提供し、それに応じた報酬を確定する仕組みを考える。すべての技術を最初から投入することは控えることである。たとえば次のようなアイデアはどうだろう。いくつかの技術の中の1つの技術を提供してベトナム企業と合弁企業を設立したり、技術協力契約を締結する。その技術でベトナム企業は発展し、日本企業は配当金や技術提供料を受け取ることができる。さらに次の技術を提供する場合、同じベトナム企業でもよいし、ほかのベトナム企業でもよい。また別の外国企業でもよい。

 7.「技術流出」とは意味が異なるが、ベトナムでも「模倣」はありうる。ベトナムで喫茶店が儲かるとなれば、喫茶店が乱立する。それは日本でも同様であって、たとえば「ラーメンブーム」となれば、ラーメン屋が乱立する。こういった模倣品は、ベトナムでは従来は中国からの輸入品であった。このような対策は、中国の場合と同様であって、法的な対抗処置を採ることは当然であるし、相手先との直接交渉もありうるだろう。こういった場合のためにも、信頼できるベトナム人を多数動員できるように日々の努力が求められる。

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2010年10月16日 (土)

ベトナム進出企業の「技術流出」をどう防ぐか?(中)

 20年ほど前、私が助教授の時に学生を同行して台湾を訪問した。そこで日系大手の製造企業で「技術流出」ではなく「技術消失」という話を聞いた。

 企業内教育によって立派に成長した技術者が退職した。他社に移動したり、自分で同業の会社を始めたりすれば、それは「技術流出」として残念であるが、百歩譲って日本から台湾に対する「技術移転」として諦めることもできる。台湾の経済成長に貢献したと考えられる。

 しかし退職した技術者が「中華料理店」を始めたと聞かされた。今まで技術を指導してきた時間と努力がムダになってしまう。せっかく指導した技術が消失してしまう。これが本当に残念だ。

 中国における日本企業の「技術流出」は、以上の「大らかな時代」と違って生存をかけた日本と中国の企業間競争の中での問題点と考えるべきであろう。そうであるとすれば、まず必要なことは日本企業の自覚もしくは緊張感である。

 中国や韓国の技術力は自社を脅かすほどに向上していると認識しなければならない。それだからこそ「技術流出」の防止に最大限の注意を払う。この自覚や緊張感を日本企業がもたなければ、どのような防止対策も有効に機能しないであろう。

 この意味でベトナムも、1人あたりのGDPは2008年に1000ドルを超え、もはや発展途上国から「中進国」の仲間入りを果たしている。現在、ベトナムで「技術流出」が大問題とは寡聞であるが、 日本企業とベトナム企業が競争するという状況が、もう目前に迫っていると考えなければならない。

 「ベトナムのためなら『技術流出』は結構なことだ」というような「大らかな」気分を一新することが近々に必要になってくるだろう。ではベトナムで具体的にどうすればよいか。いくつか私見を述べてみよう。(続く)

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2010年10月13日 (水)

ベトナム進出企業の「技術流出」をどう防ぐか?(上)

 日本企業の「モノづくり」の技術は世界的な競争優位性をもっている。この意味は、資本集約的な先端技術のことであってほしいが、その競争は激烈と思われる。これに対して、工場現場での日々の創意と工夫から生まれる熟練した技術は依然として日本では健在であると私は理解している。

 従業員の繊細な感覚や気配り、従業員間の仲間意識や思いやりといった日本人の特徴的な性格が、日常の生産技術の工夫や改良に反映されていると考えられる。

 また、日本における企業と日常生活が一体化・融合してきたことも、企業内の「モノづくり」に反映されてきた。この「一体化・融合」とは、人生や生活の生き甲斐が企業内の評価と重なり合っていることである。会社経営に「家」の論理が持ち込まれていると、かつての「日本的経営論」で説明されてきた。

 しかしながら現在の日本社会を見れば、「モノづくり」における優位性の基盤となってきた以上のような条件が喪失しつつあると見なされる。それらの状況は具体的には、「個人主義の台頭」、「終身雇用の崩壊」、「競争原理主義の強化」、「価値観の多様化」として表現されるであろう。

 次に紹介するような外国における「技術流出」は重要課題であるが、上述のような「技術喪失」が、それ以上の懸念材料であると思われる。これについては別途に検討したい課題である。

 さて、『日本経済新聞』(2010年10月13日)は、「中小もアジア生産加速:円高の影響回避」、「独自進出企業めだつ:最先端品も・技術流出が課題」という見出しを掲載して、特に中小企業における海外「進出先での技術流出を防ぐ必要性」を指摘している。

 この指摘の趣旨は、記事の文脈から想像すれば、中国における日本の最先端の金型製造技術の流出の懸念があるということである。しかし同様の懸念をもつ中小企業は多数あるだろうし、それは中国に限ったことではなく、ベトナムなど他のアジア諸国についても技術流失の防止は重要な問題である。

 それではベトナムにおける技術流出の問題をどのように考えればよいか。次回では、それについて検討することにする。(続く)

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2010年10月10日 (日)

味の素のカンボジア進出

 『日本経済新聞』(2010年10月6日)の「人こと」欄に味の素・伊藤社長のカンボジアについての印象が紹介されている。 

 「若年層に活気があり、市場の店員の反応も明るい」。「人口1300万人の小国だが、「味の素」の1人あたり年間消費量はタイ、ベトナムに比べ1~2割多く人口以上に成長が見込めると期待」されている。

 「同工場は日本人1人と隣国から派遣したタイ人6人が立ち上げに汗を流した。すでに食品部門の営業利益の3分の2を海外で稼ぐ同社」。

Dsc01432  今年8月に味の素が立地するカンボジアの「プノンペン経済特区」を訪問し、偶然に同社の外観を撮影した。

 味の素は、外国市場開拓の先陣を切る会社であり、かつてミャンマーの同社を見学したが、その後に撤退をしている。私は、それ以来ミャンマーには余りよい印象をもっていない。味の素が撤退するくらいなのだから、その国のビジネス環境は良好ではないということだ。この意味で、味の素が進出するくらいなのだから、カンボジアのビジネス環境は整備されてきたという判断ができる。

 同社の今後の展開に注目したいと思う。なお味の素はベトナムにも進出しており、うまみ調味料のほかに新商品の発売に積極的である。ベトナム人ではなくタイ人によってカンボジア進出を果たした理由は何か? これは私の疑問である。

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2010年10月 5日 (火)

ハノイ遷都1000年のイベント映像

 お久しぶりです。ブログの更新ですが、なかなか十分な時間がありません。大学が始まると目が回るように講義に振り回されています。それが仕事ですから当然と言えば当然ですが・・・。

 さて、元三洋アプライアンス・ベトナム社社長の竹岡さんから、ハノイ遷都1000年祭のサイトをご教示いただきました。この映像提供の『トイチェ』(青年)は、ベトナムでも人気のある新聞社です。

http://media.tuoitre.vn/TVO.aspx#Media,40037 

 ハノイのホアンキエム湖を中心にしたイベントのようです。レーザー光線や花火など、ベトナムのイベント企画力もなかなかのものです。ダウンロードに時間がかかるかもしれませんが、ぜひ、ご覧ください。

 早く早くと著書の執筆が気になっています。ご期待とご忍耐を頂戴したく存じます。なお、岩井証券のHPの「週刊ベトナムレポート」には、ラオスと中国の国境の様子を連載中です。それもご笑覧ください。

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