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2010年8月 8日 (日)

これだけは言いたい(9):多彩な「外交カード」を日本は持っているか?

 『産経新聞』(2010年8月3日)の東京版では「インドシナに回帰する米国」、大阪版では「米中、南シナ海で火花」という同内容の記事を掲載している。

 1995年当時にハノイのメトロポールホテルで私は、当時の米国クリストファー国務長官を偶然に見たことがある。米国とベトナムの国交回復の調印のための来越であったと記憶している。それから15年が経過した。

 記事によれば、この国交回復15周年の祝賀の昼食会で、ヒラリー=クリントン国務長官が、南シナ海の領有権問題について米国も積極的に関与するという発言をして、二国間協議を主張してきた中国が反発した。

 また記事は、「米国は他のインドシナ諸国との関係強化にも動いている。ラオスのトンルン副首相兼外相が先月、訪米したが、ラオス高官を米国が受け入れるのはベトナム戦争終結後、初めてだ。両国はこれに合わせて航空協定に調印した。カンボジアとの間では先月、初の大規模な合同軍事演習米国は実施している」と述べている。

 私見だが、ラオスはWTO加盟のために米国の合意が必要であろうし、カンボジアのフンセン首相の息子は米国の陸軍士官学校の卒業であり、対テロ対策の責任者であると聞こえている。カンボジアと米国の軍事関係が強化されても不思議でない。しかし他方、カンボジアでは中国から武器を購入している情報もあり、その多彩な「政治外交カード」に驚かされる。

 これらの国々に比べての日本の外交下手が痛感させられる。米国にしてもベトナム・カンボジア・ラオスにしても、けっして中国と敵対することを表明していない。また今回の米国も、何らの軍事行動も財政支出も約束したわけではない。単なるメッセージを発するだけで、それが「外交カード」になる。

 幾多の国際紛争を経験した米国やインドシナの国々に比較して、「米国の忠実な僕(しもべ)」である日本は、その外交カードが余りにも貧弱である。同時にカードの作り方が下手である。在日米軍の駐留やODA(政府開発援助)のために多額の財政支出をしている日本は、さらに国際社会で存在感を発揮することが国民として期待される。

 このような場合、日本の軍事力強化(核兵器の保有)が外交力を増強するという論調も一部にある。これは、時代錯誤・アナクロニズムである。経済力も軍事力も貧弱なカンボジアですら、その「外交カード」は多様である。タイ・中国・ベトナム・米国・韓国・北朝鮮そして日本さらに国連を翻弄するかのような外交手腕をフンセン首相は見せてきた。要するに日本の外交力が無能なのである。

 同記事は「ベトナムの大勝利」という米国の報道を引用した小見出しを付けているが、ベトナムには、米国の発言を100%信じるようなお人好しさはないであろう。中国に対する米国の「外交カード」の1枚として利用される程度のことと理解していると思われる。米国ベトナム戦争の和平交渉で米国と熾烈にやり合ったベトナム外交の経験は現在も生かされているはずである。

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