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2010年6月30日 (水)

これだけは言いたい(4):森嶋通夫『日本にできることは何か:東アジア共同体を提案する』を推薦する

 民主党政権になって「東アジア共同体」が積極的に主張され、また、それに対する批判も目立っている。その批判の代表は、以前にも指摘したが、「東アジア共同体」よりも「日米同盟」を優先すべしという考え方である。

 現在、私は表題の故・森嶋先生の著書(岩波書店、2001年)を読んでいる。森嶋先生は、ノーベル経済学賞の受賞に最も近い日本人と言われ、ロンドン大学と大阪大学の名誉教授であった。

 私は大学院生時代に神戸大学で講演会に出席したことがある。当時、マルクス経済学を数理経済学の手法を用いて世界で初めて分析した故・置塩信雄先生が神戸大学におられ、それに対して『マルクスの経済学』を出版されていた森嶋通夫先生が講演するということで、大いに知的な好奇心と興奮を覚えた。しかし実際の森嶋先生は統計的な事実を淡々と述べられ、やや肩透かしの講演をされた。

 さて、表題の著書が何と言っても面白い。やはり「世界の森嶋」は没後も健在である。今後の「東アジア共同体」議論における原点にもなりうる内容である。

 特に注目すべき点は、日本や中国の歴史的な分析の部分、また社会学の教科書では最初に出てくるゲゼルシャフト(利益社会)とゲマインシャフト(共同社会)の観点から国家と国家共同体を分析している点である。前者を「水くさい関係」、後者を「水いらずの関係」と特徴づけていることもわかりやすい。

 要するに共同体の形成は、「水くさい関係」の国家間が「水いらずの関係」を作っていく過程であると森嶋氏は述べている。

 この著書は、森嶋氏が1997年に中国の南開大学(天津)で英語で行った講演の日本語版である。英語の原題は、COLLABORATIVE DEVELOPMENT IN NORTHEAST ASIA である。英語では「北東アジア」となっているが、東南アジアを含む今日に議論されている「東アジア共同体」にも十二分に適応できる。

 森嶋氏が存命なら、今日の似非学者や声の大きい評論家の元気もなくなると思われる。私自身、30年前の若い学生時代を思い出して本書の主張を少しでも継承・発展・具体化できればと思っている。久しぶりに知的に興奮した1冊である。

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