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2010年6月23日 (水)

これだけは言いたい(2):カンボジア・シハヌークビル港の民営化の問題点

 日本のODA(政府開発援助)の対象であるカンボジアのシハヌークビル港公社が株式会社化され、その株式が一般に公開されようとしている。その場合、たとえば中国がその株式取得に関心をもっても不思議ではない。事実、すでにシハヌークビル港近郊に広大な工業団地を中国が建設しており、同港が将来に深水港となれば、その軍事利用の可能性もある。

 中国の活発なカンボジア民間投資の現状を見聞すればするほど、最大のODA供与国である日本の「お人好し」ともみなされる無策が懸念される。そこで私は、官から民に連携したODAの「出口戦略」を提案したい。

 2000年7月に開設されたベトナム株式市場に続いて、隣国のカンボジア・ラオスにおいても来年に株式取引が開始される予定である。新興国における株式市場は、間接金融に加えて直接金融による企業の資金調達を可能にするものであり、発展途上国の経済成長を加速させる意義がある。さらに株式市場の開設は国営企業の民営化を促進し、その経営効率を高めるという効果も期待されている。

 カンボジアでは上場候補の国営企業として、シハヌークビル港公社そしてプノンペン上水道公社・カンボジア通信の3社の名前が上がっている。事実、IPO(新規株式公開)のための覚書をカンボジア経済財務省は駐在員事務所を最も早くに設置した韓国の証券会社と締結した。これらの国営企業が日本のODAの対象となっているのである。

 港湾・上水道・通信などのインフラ整備はODA本来の趣旨に合致している。しかし、その事業が株式会社となり、その株主が支援対象のカンボジア人ではなく、たとえば中国や韓国などの外国人になることは想定されていない。初回の株式売出しは株式総数の20%程度と言われているが、それがカンボジア人以外の外国投資家の手に渡る可能性が大きい。そうなれば、第三国の株主の利益のために日本のODAが利用されることになる。

 従来の一般的な見解では、それが市場原理に基づいており、カンボジアの国営企業の経営は同政府の自由であるから支援国の日本が口出しするべきではない。また、これらのODAは無償ではなく、民間よりも低利としても有償資金協力であり、返済が義務づけられているというものである。

 しかし現在の日本は、このような税金の寛容な使途が許容される財政状況ではないと思われる。さらに将来にシハヌークビル港の軍事利用の可能性もなくはない。このように考えれば、シハヌーク港公社の株式公開は日本そしてアジア諸国の安全保障にも関わる問題とみなされる。

 そこで日本のODA事業の株式会社化では、当初は日本の民間資本が「受け皿」となることを提案したい。その候補として郵便貯金や投資信託の資金が考えられる。これら日本の機関投資家が第三者割当を通して株式を取得する。そして長期的な利益を期待する安定株主としてODA事業を継承する。さらなる株式の一般公開はその後の市場環境や経営状況に応じて徐々に進めればよい。これを官民連携によるODA事業の「出口戦略」と呼ぶことができるかもしれない。この問題についての検討を関係当局に期待したい。

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