「今こそ原点に立ち返る」(上):証券会社の社会的使命とは?
「本来、銀行の社会的使命とは、実需のあるところに血液を送ること。マネーゲームに興じて大けがをした金融機関は、今こそ原点に立ち返るべきです。」
これは、『日本経済新聞』(2009年10月30日、夕刊)におけるマイクロファイナンス・インターナショナル・コーポレーション(MFIC)社長・枋迫篤昌(とちさこ あつまさ)氏の言葉である。枋迫氏は、東京銀行に勤務後、発展途上国の貧困を解消するためにマイクロファイナンス(少額金融)の事業を立ち上げた。
この記事は「銀行の社会的使命」を指摘しているが、それは「証券会社の社会的使命」でもある。間接金融を銀行が担うのに対して、証券会社は直接金融の原点に立ち返るべきである。
証券会社には4つの機能がある。①引き受け(アンダーライティング)業務、②売り捌き(セリング)業務、③委託売買(ブローカー)業務、④自己売買(ディーラー)業務である。これら4業務すべての認可を受けた証券会社を総合証券と呼んでいる。
また証券市場には2つの機能がある。発行市場と流通市場である。発行市場において証券会社は引き受け業務と売り捌き業務を担当し、流通市場において証券会社はブローカー業務とディーラー業務の担い手である。
これこそが証券会社の社会的使命にほかならない。これが直接金融の具体的な内容であり、その経済的な役割は重要かつ恒久的である。それにもかかわらず、証券会社が投機やマネーゲームを助長し、証券市場の本来の機能をゆがめてきたことも事実である。
米国における不動産市場のバブル崩壊、サブプライムローンの不良債権化、そしてリーマンブラザーズの経営破綻を一連の契機とした世界同時不況は、投機とマネーゲームを扇動(先導)した米国の投資銀行(日本で言う上記の①と②の業務を担当する)や商業銀行(日本で言う銀行)が主犯であることは一般に認識されている。
それだからこそ銀行については、冒頭のような反省の指摘がある。それでは証券会社については、どのように考えればよいのか。どのような反省もしくは教訓を引き出すべきなのか。(以下、続く)。
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