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2009年7月 1日 (水)

ベトナムでスクーターが販売好調:都市部の高額品に需要が拡大

 『日本経済新聞』(2009年6月27日)では、ベトナムの高度経済成長に陰りが見られると「暗い」報道があったが、その2日後の同紙(6月29日)では、ベトナムで「都市部を中心に所得水準が向上し、高額だが運転操作が楽なオートマチック型(引用者注:スクーター)の需要が増加している」と「明るい」報道がされた。

 一般に賃金上昇は2つの効果をもつ。一つはコスト効果であり、もう一つは需要効果である。

 最近の賃金上昇はベトナム進出企業にとってコスト増加を意味するが、それは短期的な企業レベルでの認識である。これに対して長期的には、賃金上昇は労働者の所得向上を意味し、それは全体として需要を拡大する。

 スクーター販売好調という報道は、賃金上昇の需要効果の具体的な表現である。ここで注意を要することは、賃金上昇が需要効果を経済全体に及ぼすためには、一定数の賃金労働者の存在が前提になるということである。たとえば自給自足的な農業従事者は、賃金上昇しても、その恩恵をうけない。

 ここでベトナムが農業国であることを想起すれば、農業分野において世界不況の影響が最も大きいと言えるかもしれない。農産物の輸出が停滞するからである。また、農村からの海外への出稼ぎ労働者の帰国が目立っているそうである。出稼ぎのために借金をしている場合は、その借金だけが残ることになる。

 このような農村の困窮対策が政府には緊急に求められる。ただし農村の労働力が都市部に異動すれば、農村部にも賃金上昇の効果が及ぶ。かつての高度成長時代の日本と同様である。

 それぞれの局面で経済的な困難があって当然であるが、全体としてベトナムの経済成長の潮流は不変である。こういった観点からの個々の事実の紹介が、報道機関には求められる。そうでねければ、一般読者をミスリードすることになるからである。深いまた広い事実認識のためには、大局観が必要であるということが私の主張である。

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