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2009年5月23日 (土)

「社会主義の初期段階」中国の立場はベトナムと違う

 ベトナムは社会主義を指向する国であるが、現状は社会主義国ではない。社会主義に向かう過渡期として現状を認識している。

 これに対して中国は「社会主義の初期段階」であると明確に自国を規定している。このように明言してしまうと、中国共産党の現体制の崩壊は、そのまま社会主義の初期段階の崩壊を意味することになる。これは、これまでの中国現代の歴史を全面否定することと同じである。このように考えれば、中国共産党が現体制を維持することを最優先にすることは理解されうる。

 以上は比喩的に言えば、次のように理解できる。ベトナムは「社会主義」と婚約しているが、正式の結婚までに至っていない。ベトナム経済の発展という観点から、「社会主義」の固定観念となっている諸要件の変更も迫っている。たとえば計画経済よりも当面は市場経済の発展を優先するといったことである。

 おそらくベトナム型の「社会主義」になった時点で結婚することになるのであろう。「ベトナム社会主義共和国」の成立である。これに対して中国は、社会主義の初期段階と宣言してしまった。こうなると社会主義=現体制という意味になる。現体制の発展が社会主義の発展ということを意味する。これは、ベトナムと比較して社会主義の体制や運動に関して柔軟性に欠ける。もはや正式結婚を宣言したからには、簡単に離婚したり、相手の既存の 「社会主義」に注文を付けることは難しい。これは、自分で自分の手足を束縛したという印象を受ける。

 私の周囲のベトナム人は、中国が「社会主義の初期段階」と規定していることについて「へーぇ、それはチョット・・・???」という反応である。中国が「社会主義の初期段階」という規定は時期尚早という見解がベトナムでは一般的であるように思われる。

 政権を担う一党独裁の共産党の考え方が中国とベトナムで相違している。中国よりもベトナムが柔軟な思考と施策を採用できると私には思われる。「社会主義の初期段階の中国」と「社会主義に向かう過渡期のベトナム」を比較することは、社会主義の現代的な意義や内容を検討することに連結している。

 両国の社会主義理論の到達点はいかほどのものなのか。それらのことをビジネスの観点から見れば、中国とベトナムの「カントリーリスク」の評価と同じである。じっくり考えてみたい課題である。こういう思索ができる国としてベトナムは魅力な国家である。

 ただ儲かればよいという単純な目的を達成するだけの国では、おそらく世界史的には軽視されるであろう。この意味でベトナムは興味深い。振り返って同様に、今後の日本の国家的な理念が検討されてもよい。「経済大国」を実現した次の日本の世界の中での存在意義は何か? ベトナムを見ていると、どうしても日本を考えてしまう。日本人とベトナム人の気質が似ているからであろうか。 

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