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2009年2月28日 (土)

チューバンアン高校を訪問:日本に留学したいベトナム人高校生

 『日本経済新聞』(2009年2月6日)によれば、次のような報道があった。そこでハノイ滞在の機会を利用して、チューバンアン高校を訪問した。該当の記事は、次のウェブサイトから引用した。 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090206AT2M0402V06022009.html

 (引用開始)「第一外国語は日本語 ベトナムのモデル高校で9月から

 ベトナムで今年9月、教育・訓練省と日本政府の共同プロジェクトの一環として、日本語を第一外国語にする高校が登場する。同国では日本企業の進出や日越経済連携協定(EPA)締結などで日本語への関心が高まっており、来年末までに首都ハノイなどの8校で授業が始まる予定。早期教育が重要との指摘もあり、同省は小学校の正規科目に日本語を加える案も検討しているという。

 海外の高校が日本語を正課の主要科目とするケースは「非常に珍しい」(在ベトナム日本大使館)。最初に導入するのは日越共同プロジェクトのモデル校に選ばれたハノイの進学校、チューバンアン高校。2010年9月に南部の商都ホーチミンのレークイドン高校でも履修が可能になる。日本の国際交流基金が教師派遣や現地での教員研修、教科書製作で協力する。 (16:01) 。」(引用終了)

Dsc02286  さて実際にハノイの同高を訪問して、副校長のタオ先生(教育・学習担当)にお話を伺ってみれば、上記の記事は正確でないことがわかった。チューバンアン高等学校では、すでに1年生と2年生に日本語クラスがあり、合計90人の学生が日本語を1週間に2コマ学んでいる。

 今年9月の新学期に1年生が入学すれば、1年生から3年生までの全学年で日本語教育が行われる。さらに来年度から1週間に3コマから4コマのカリキュラムに変更されるということであった。

 上記の新聞報道は、明らかに誤りである。この文面を素直に読めば、これから新しく日本語を学ぶ学生を募集するように表現されている。おそらく記者が直接に取材したのではなく、発表または伝聞の情報を記事にしたのだと思われる。

 なお記事の中にあるホーチミン市のレークイドン高校は、高校ではなく中学校ではないか。この中学でも、すでに日本語を正規の科目として教育している。これも確認してみなければならない。(以下、続く)

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2009年2月27日 (金)

戦時下に強いベトナム:「元気」の秘密は何か?

 ホーチミン市からハノイに移動した。世界同時不況であるにもかかわらず、ベトナムは依Dsc02247 然として元気だ。不況の影響が顕著なのは、韓国企業のプロジェクトであろう。写真は、ホーチミン市のDAEWONの建設現場である。平日であるにもかかわず、工事は静止状態であった。

 この「元気」は、ハノイ在住の小松さんによれば、無法・無秩序・未経験の状態の中で自分が生きていくために、なりふり構わずに動き回っている様子が、外国人から見れば「元気」に見えるのだと言う。

 これは当たっていると思う。さらに私見では、この無秩序で混沌とした状態は「戦争状態」に似ている。そもそも市場経済を導入したこと自体が、貧しくとも安定的な計画経済の世界から、不安定・不確実な世界に移行したことである。少なくとも平和ではない。企業倒産もあれば、失業もある。

 さらにWTO加盟後のベトナム企業は国際市場競争に出陣である。その最初の洗礼が世界同時不況であった。国内市場における急激なインフレそして株価と不動産のバブル崩壊の国内状況において、さらに米国が「世界同時不況」の「爆撃」を突然に始めたようなものだ。

 ベトナムがこのような戦時下にあると考えれば、それに対してベトナム人は対応の「心構え」もしくは「精神力」をもっている。信念をもって堪え忍ぶことは、若いベトナム人であっても、ベトナムの歴史から学んでいる。さらに戦時下に相互に助け合って生きる方法を理解している。これらのことが、世界同時不況における国民や企業経営者にも活用されているのではないか。

 外国人から見て、ベトナム経済やベトナム企業が破綻すると思われても、それは、かつてのベトナム戦争でベトナムが簡単に負けると思われたことと同じだ。戦時下に強いベトナム。この伝統が「ベトナム経済の優位性」なのだと思う。

 より具体的に言えば、経済統計や財務諸表に表示されない「地下経済」の存在や、それを可能にする人間的な濃密な関係がベトナムで維持されている。これは経済の不透明性を意味し、国際的には改善されるべきこととして指摘されるが、不況期には「強さ」となって現れる。それに加えて忍耐力・辛抱強さ・信念などの国民の気質も不況期には強さを発揮する。

 不況期こそベトナム経済の真価が発揮される。このような視点からベトナムを見ることが必要であろう。

 

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2009年2月26日 (木)

皇太子殿下のベトナム訪問:ベトナム人は本番に強い

 ベトナム日本人材協力センター(VJCC)を皇太子殿下が2月13日に訪問されたことは日本のテレビニュースですでに報道された。

Dsc02249  VJCCの藤井所長は「ベトナム人は本番に強い」という感想を述べられた。このベトナム人とは、皇太子殿下が授業風景を見学されたVJCCベトナム人学生のことである。おそらく日本人学生なら殿下から質問されるとなると緊張するであろうし、たとえ外国人であっても周囲の日本人の様子から通常ではない雰囲気を感じ取るに違いない。

 「殿下のご質問にベトナム人学生が上手く答えることができるのか」。これは藤井所長のみならずだれもが心配することであろう。このハラハラする気持ちに対して、実際のご訪問の本番では、どのベトナム人も失礼なくまた笑顔で的確に答えたということであった。

Dsc02250  VJCCは貿易大学ホーチミン市分校の敷地の中に位置しているから、ほかのベトナム人大学生も多数集まった。手を振っての歓迎に対して殿下も手を振って答えられたそうである。日本政府のODA(政府開発援助)による人材育成や文化交流の最前線の様子を十分にご理解されたことと思われる。

 「いざと言うときにベトナム人はちゃんとする」。これは私も何度か経験したことがある。もちろん裏切られることもあったのであろうが、その大部分は忘れてしまった。そうだからベトナムを何度も訪問しているのだ。

 なお、藤井所長と初めてお目にかかったのは1998年である。当時は松下電器(現:パナソニック)ベトナムの社長をされていた。ベトナムビジネスについて教えを受けた私の恩師のお一人である。今でこそ私もベトナムについて語れるようになったが、当時はベトナムについて勉強する学生のようなものであった。恩師に何度もお会いして自分の理解度を確認する。私が藤井所長にお会いする理由の一つである。

 こういったベトナム人の態度は、どこから来るのであろうか。今回の場合、私見では、これまでのベトナム政府要人の気さくな態度が、ベトナム人学生を過度に緊張させないのかもしれない。「ベトナム建国の父」と言われるホーチミンですら「おじさん」である。どこかの国であるなら「お父様」とか「将軍さま」と呼ばれているのではないか。

 社会主義を指向する国として「人間は平等」という意識の下であっても、社会的・国際的な儀典・儀礼に従い、人間的に敬意や敬愛の感情を払う。さらに今回、日頃お世話になっている藤井所長に恥をかかせてはいけないと大学生は考える。ベトナムは外交面で「大人」というのは言い過ぎであろうか。

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2009年2月25日 (水)

ホーチミン市で考えたこと(2):新婚さんいらっしゃーい!

 日本ベトナム経済交流センターのホーチミン代表のタムさん夫妻に会った。12月に結婚したばかりである。一緒に夕食をしたが、料理も美味しく楽しい時間を過ごした。

Dsc02235_10  レストランは海鮮料理のNgoc Suong(ゴック=スォン)。日本語のガイドブックに必ず出ている安くて美味しい店である。午後7時くらいになると、ほぼ満席になり、外国人よりもベトナム人家族が多かった。日本では新婚さんと食事する機会はないが、ベトナムでできるところが嬉しい。

 注;日本人の間では遠慮?があるのかな・・・。これは、ベトナム人に対して遠慮しないという意味ではない。私は、こういう雰囲気が大好きだからベトナムも好きである。若い人々が成長していくのは微笑ましいし、こちらも元気が出てくる。

Dsc02236  生牡蠣を食べた。その後も元気だ。もっとも胃腸の調子は個人差があるから、同じ食事でも当たり外れがある。この牡蠣はニャチャンから運ばれており、新鮮なことは間違いない。日本製のチューブ入りのワサビも出てくるが、私はレモンと塩で食べた。これも美味しい。ベトナム製の醤油は、以前に人工醤油ということを聞いたので遠慮している。天然醸造の醤油はベトナムで生産されていない。その代わりに様々な種類のニュクマム(魚醤)がある。国によって「こだわり」の味が違うのだ。

Dsc02240  最後は、日本でも冬に恒例の「鍋」だ。この魚を料理しますということで生きた魚を見せてくれたが、川魚である。普通は臭みがあると思われるのだが、まったく問題なかった。もっとも最近、彦根(滋賀県)で琵琶湖名産の「フナ鮨」を初めて食べたが、これも美味しかった。家族は変な味という反応であったから、私の「問題ない」は、普通の人からは「問題ある」のかもしれない。

 注:「フナ鮨」と言うから、寿司米を使った押し寿司を想像していたが、まるで「味噌漬け」であった。これは珍味。日本酒のアテに最高。もっと人気があってもよいはずなのに、どうしてなんだろう?

Dsc02243  ホーチミン市のレストランは増加する一方であるが、やはり潰れる店もある。「スクラップ&ビルド」である。理由は簡単。国民の所得水準が上がっているのだ。この動向に適応しなければ、お客は逃げていくだろう。当然「安くて汚い店」よりも「安くてキレイ店」が世界に共通して好ましい。何も自分から好きでベトナム人が「安くて汚い店」で食事しているわけではない。その「安い」感覚が時間とともに変化する。これに注意しなければならない。

 ベトナムにおける顧客分析・消費者分析は、国内市場で仕事をする場合に不可欠である。ただし通常のアンケート調査や聞き取り調査を過信することは禁物である。

 ベトナム人は変に「気遣い」して、美味しくなくても美味しいと言ったり、実際には高いと思っても「買う」といったりする。このバイアスを防ぐためには、やはり最終的には会社側の日本人経営者やベトナム人スタッフの「顧客を見る眼」が必要なのだ。言い換えれば、国内市場での成功の秘訣は、顧客や消費者を観察する力が売り手側にあるかどうかであると思う。

 

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ホーチミン市で考えたこと(1):NHK衛星放送の変化

 NHK衛星放送が変わった。この変化は昨年からだと思うが、今回、比較的ゆっくりテレビを見ていて(正確にはテレビを聞きながら仕事をしていて)、この変化に納得できた。

Dsc02244_2  (ビフォー):外国在住の日本人向けの放送が重点
 (アフター):外国人向けの放送が重点

 日本発の最有力コンテンツであるゲームアニメの人気ランキングが放映されていた。また京都や新宿の「思い出横丁」など日本の生の情報も紹介されている。注:写真は私の常宿「リン=ホテル」室内である。安くて便利。

 日本の文化や生活について英語で発信することは、日本の認知度を世界に広める意味で有意義である。確かに、NHK衛星放送を見た外国人が日本に行ってみたいと思ったり、さらに、あの番組に出ていた日本人や店に行ってみたいと思ったりするかもしれない。

 ここで困った問題は、日本語よりも英語の比重が大きくなったことである。日本語を懐かしいと思ってNHKを視聴している外国在留邦人や、NHK番組を教材にして外国人学生に教えている日本語学校などは、この変化に当惑しているはずである。英語ばかり聞かされたのでは日本のNHK放送の意味がない。

 このNHK放送の変化は、日本の政府関係者の意見があったからだと記憶している。この変化に私は賛成だが、上記の困った問題もあると思う。こういった意見を受信できる機会や制度がNHKによって、もっと整備されなければならない。視聴者はお金を払っているのだから当然である。

 NHK受信料を払うことは、たとえ自分が視聴しなくても、この国際放送のように日本の情報を世界に発信するという国益的な意義をもっている。だから「払う」意義があると考える人もいるが、それほど国益に重要であれば、NHK受信料に依存するのではなく、政府が「国際放送」として積極的に予算を組んでもよい。

 日本経済の成長にとって切実な課題として外国企業の誘致がある。たとえば観光情報に加えて、地方自治体が開発した工業団地、不動産オフィス情報、新商材情報などが世界にテレビで発信されると、その経済的効果は大きい。現在、こういった情報はインターネットに依存しているが、テレビ番組として放映されてもよい。しかし利益目的の番組はNHKには適当でない。また政府の仕事でもない。そうなると、民間放送の国際放送への進出である。

 以上の結論は、当面の私見では、日本発の外国向け衛星放送の自由化である。このためには日本国内の法制度、各国の法制度など超えるべき課題は多いと思われる。あくまでも私の素人としての愚見である。

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2009年2月24日 (火)

関空でブログを書く楽しみ

 今、関空です。ベトナム・ラオス・カンボジアに行きます。

 搭乗までの時間に生ビールを飲みながら、ブログを書く。この至福の時間のために働いているようなものです。

 相変わらず、日本の仕事を持ち出しての海外出張です。これは、なまけ者の宿題です。

 これから、しばらく現地報告を続けます。ご期待ください。

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2009年2月23日 (月)

ロータス投資運用会社提供「ベトナム経済ニュース(25)」:2009年1月の株価レポート

 これまで連載してきた「経済収縮時の雇用受け皿:サービス産業の重要性(4)」をしばらく中断する。より最新情報を付加するという趣旨である。ともかく忙しい。

 ここでは、ハノイのロータス投資運用会社から届いている株式市況のレポートを紹介する。

 2009年1月の市場コメント(ハノイ、2009年2月5日)

 1月には、Vn-index が3.93%、Hastcが4.94%下がりました。OTCとIPO市場は引き続き静かです。

 すべての統計数値や出来事はベトナム経済と企業の大部分が困難な時期に遭遇していることを示しています。たとえば1月の輸出金額は38億USDで、昨年同時期より24.2%下げました。輸入金額は41億USDで、昨年同時期より44.8%下げました。

 上場・未上場企業は、すでに何社かが昨年第4四半期の業績を公開しています。それらによれば、世界同時不況から派生する国内と外国の負の影響を自社が受けていると述べていますが、その会社自身もその全体状況に負の影響を与えています。

 お互いに負の影響を及ぼし合う消極的な要素の「悪循環」から脱出するためには、各企業の積極的で大胆な行動が求められます。リスクに対する恐怖心とその拡大は市場好転にとって大きな障害になりました。

 しかし、各企業が困難に遭遇していることが、その証券価格の下落を意味しないということは繰り返し指摘したいと思います。たとえば、もし法律が一律に規定するとすれば、弊社を含む投資家の合理的な現在の行動は、すべての保有証券を売却して各企業の業績と経済が回復する時点まで現金保有することです。これは市場機能を否定することになります。

 証券価格は企業の将来のイメージを反映しています。各企業の将来のイメージについて、それぞれの投資家の認定は常に変更されています。このイメージが好転すれば、その証券価格は上昇することを意味します。ベトナム全体として、この将来のイメージは悪いものではないと弊社は確信しております。

 弊社は、2009年が2008年と同様に望ましい投資機会が待ち受けているものと考えております。その何かの好機を獲得するために弊社は、できる限りの努力をいたします。

 以上、ベトナムのテト(旧正月)明けのご挨拶として報告いたします。本年もよろしくお願い申し上げます。

flair私のコメントflair
 
以上のレポートは、ロータス投資運用会社のタイ社長(ファンドマネージャー兼務)が執筆した内容を同社の日本語スタッフが翻訳している。タイ社長の株式市場感を示すものとして興味深い。私は的確な指摘であると思う。昨年度の各企業の決算が発表され、それによって悪材料が全部開示されることが必要である。ベトナム株式市場の反転は、その時からであろう。

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2009年2月22日 (日)

経済収縮時の雇用受け皿:サービス産業の重要性(4)

 ベトナムにおけるサービス業・小売業の現状はどうなっているのであろうか。

 その発展が、中国と同様にベトナムにおける雇用機会の創出につながると考えられる。そのために中国の場合は、さらなる規制緩和が必要と指摘されていた。

 The Sigon Times Weekly, November 29, 2008は、ベトナムの小売業・流通業について特集記事を掲載している。ここで簡単に内容を紹介してみよう。(以下、続く) 

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2009年2月21日 (土)

経済収縮時の雇用受け皿:サービス産業の重要性(3)

 カ=リュウ氏(富士通総研経済研究所主席研究員)は次のように指摘している。

 中国の景気対策の「7割は鉄道や高速道路といった公共投資である。・・・・・・現在、東部沿海部で6万5000社もの中小企業が倒産したといわれている。その結果、推定で最大2500万人もの出稼ぎ労働者が職を失った。しかし、玩具や100円ライターなどを作っていたこれらの出稼ぎ労働者を鉄道や道路の建設にシフトするのは明らかに無理がある。

 現段階で中国にとって最も必要な政策は流通を中心とするサービス業の育成である。職を失った出稼ぎ労働者に対して簡単な職業訓練をすれば、サービス業にシフトすることが可能である」(29頁)。

 このためにサービス業を育成し、さらに規制緩和を進めることが中国で必要とされるとされる。規制緩和によるサービス業を始めとする新しいビジネスの育成が雇用創出に貢献するとみなされる。

 カ=リュウ氏は、中国の景気対策がオーソドックスな財政出動であり、それが景気対策には効果が上がらないと指摘する。そうであるなら、中国の巨額の景気対策は非効率的であるという結論になる。

 以上、世界最大の財政出動をしている日本・米国・中国の景気対策を比較すれば、「日本の非効率的な現状」、「米国の中途半端の懸念」、「中国の非効率性の懸念」と要約できる。それでは、ベトナムの景気対策はどうなっているのであろうか。(以下、続く)

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2009年2月20日 (金)

経済収縮時の雇用受け皿:サービス産業の重要性(2)

 世界同時不況は、各国政府の財政金融政策を比較する学問的な好機であると以前に指摘した。ここでは簡単に、景気対策の国際比較を紹介する。

 酒向浩二「米国依存のツケが一気に露呈 設備と雇用の過剰がアジアを苦しめる」『週刊エコノミスト』(2009年2月10日号、25頁)によれば、中国政府の景気浮揚対策はアジア各国の中では巨額である(表1)。

 表1 アジア各国の景気対策
 国  金額(円換算)  景気刺激策内容

中国          52兆円 インフラ整備・住宅建設など
韓国           2兆円 インフラ整備・減税など
タイ      8000億円 インフラ整備・農作物価格支援など
マレーシア  2000億円 住宅建設・企業融資拡大など
インドネシア 4000億円 インフラ整備・補助金拡大など
フィリピン   5000億円 公務員雇用拡大・減税など
ベトナム   1000億円 インフラ整備・住宅建設など
インド     3600億円 インフラ整備・減税など
(出所)各国政府発表をベースにみずほ総合研究所作成。

 同じく景気対策の規模に関する国際比較が、「米景気対策 ここがポイント①」『日本経済新聞』(2009年2月19日)に掲載されている。表2の数値の日本は、08年度の第1次・第2次補正予算と09年度予算を引用者が合計した。また各国の規模は現地通貨を省略し、円換算のみを示した。

 表2 主要国の景気対策の規模
 国   規模   名目GDP比

米国  72.4兆円  5.5% 
英国   2.6兆円  1.4%
ドイツ   9.4兆円  3.3%
フランス 3.0兆円  1.3%
中国  54.0兆円 13.3%
日本  75.5兆円 14.9%
(出所)『日本経済新聞』2009年2月19日。

 表2の数字を見れば、日本の景気対策は、金額で米国を上回り、GDP比率で中国よりも大きな数値である。これで世界最初に景気回復ができないとすれば、日本政府の財政出動の効率性が低いことを意味する。このような観点から現政権を見れば、前担当大臣が世界に醜態をさらしている場合ではない。

 次に直感的に言って、米国の景気対策の規模は中国や日本に比べて小さい。昨日は、米国が主張する市場経済が「ご都合主義」と指摘したが、他方、「米国=市場経済の本舗」を堅持しようとすれば、財政出動は最小限にしなければならない。このような躊躇があるから、景気対策の規模が中途半端になっているのではないか。

 そうであるとすれば、米国経済の回復は時間がかかる。それは世界同時不況の長期化を意味する。最悪のシナリオである。他方、この金額が米国にとって必要最小限の景気対策の規模であり、景気回復を達成できたとすれば、さすがに財政を効率的に運用する米国ということになる。最善のシナリオである。米国の真価が問われている。

 さて中国は、アジア諸国の中で圧倒的な金額である。GDP比も日本に次いでいる。この中国の景気対策に注目した論文が、前掲のカ=リュウ氏である。 (以下、続く)

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2009年2月19日 (木)

経済収縮時の雇用受け皿:サービス産業の重要性(1)

 経済学では、労働市場における需給関係で雇用量や賃金が決まるという話になっている。しかし雇用の需給調整が簡単にできないことは当然である。最近の「派遣切り」や正規従業員の解雇は、経済学の理論と現実経済の乖離を実感させられる。

 たとえば「介護士」が不足しているので失業者が「転職」しようとしても、それには資格が必要であったり、また職業的な適性の適否もある。失業者が職種を選り好みしないとしても、労働移動が容易でないことが、失業率を増加させる。どうすればよいか?

 政府規制を強化して、企業に雇用を維持させるという主張はありうるが、それが唯一の対策ではない。国際競争力が劣化するという企業の反論も理解できるし、自覚的に国民が政府に要求・要望して実現する政府規制ならよいが、日本人の「他者依存」精神を助長する政府規制であるとすれば、それに私は賛成できない。

 「誰かがやってくれる」。「政府に任せる」。「お上(かみ)の言うことに従う」。「長いものに巻かれろ」。この延長上に政府規制に依存する国民の体質があるとすれば、日本経済の成長に悪影響である。自己責任で自主的に意思決定できる経済主体の存在が、市場経済には不可欠である。そこに緊張感があり、それが経済や社会発展の原動力になる。

 この観点から言えば、今回の世界同時不況の米国の対応を見ていると、米国主導の「市場経済」の理念は信用できない。政府に救済を求める自動車企業や「バイ・アメリカ(=米国製品を買う)」の保護主義を導入する政府は、明らかに「市場経済」の原理から逸脱している。市場経済の「御本尊」であるはずの米国がこのような状況では、その「市場経済」は「ご都合主義」の「強者の論理」であったことを証明している。

 自分が市場経済で勝てる時は、市場経済を他国に流布・強制し、自分が負けるようになると、市場経済を投げ捨てる。これこそが「ご都合主義」である。米国にとって自国が強者の立場でいるときの自分に都合のよい論理が市場経済である。今日の米国を見ていると、このような批判があっても不思議でない。

 さて前述のように市場経済の原理に立ち戻って、雇用調整すなわち労働移動を円滑にするためにどうするか。中国の場合、規制緩和によってサービス業を育成することだと指摘されている。カ=リュウ「中国:8%以下なら資質的にマイナス成長 実態に合った景気対策がカギ」『週刊エコノミスト』2009年2月10日号(28-29頁)。

 この事情はベトナムも同様であると考えられる。この点を検討する。(以下、続く。) 

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2009年2月18日 (水)

中越戦争開始30周年:1979年2月17日

 ベトナム人の友人に日本ベトナム経済交流センターで会った。久しぶりだが、10年来の知人だから違和感はない。すっかり日本語も上達し、半分近くは日本人の感覚になっているように思われた。それだけ彼が成長したということである。

 その彼から、昨日が中越戦争開始30周年という話を聞いた。やはり彼はベトナム人である。当時は小学生であり、この中国との戦争について記憶に残っているという。この戦争の原因は、簡単に言って、ベトナム軍がカンボジア侵攻したので、その懲罰として中国軍がベトナムに攻め込んだということである。

 このように書くと、ベトナム軍が最初に悪いということになるが、その前にカンボジアではポルポト政権がベトナム人を含むカンボジア人を虐殺していたという事実がある。この事実が本当かどうか。ベトナム軍の侵攻を正当化するために政治的に誇張されていないのか。こういった疑問も一部にあると思われる。

 他方、日本を始めとする国際社会の大部分はベトナムのカンボジア侵攻を非難し、戦後復興のためのベトナム援助を中止した。このためにベトナム経済成長は大きく後退した。ベトナムにとってカンボジア侵攻の代償は深刻であった。この観点から言えば、この当時の「国際社会」のベトナムに対する対応が正しかったのかという疑問もある。少なくともベトナムは虐殺政権打倒のための自衛的な正義の戦いであったと考えていたはずである。

 そして今、カンボジアでは特別法廷が開廷されている。ポルポト政権の虐殺について事実を明示し、その関係幹部の責任を問う目的である。現在のカンボジア政府は安定化しており、忌まわしい過去を自らで清算する余裕が出てきたと理解できる。政権が安定していないと、被害者と加害者の対立が加熱・再燃する可能性がある。

 ベトナム・中国の戦争30周年の時期に、その原因となったカンボジアで特別法廷が開廷されている。これは偶然と思われるが、深読みすれば、このこと自体が政治的であると言えないこともない。いずれにせよ、特別法廷で真実が明らかにされることを期待したい。そのことを通して、前述のような疑問が少しでも解明されるとよい。

 なお、この裁判の開催は国連とカンボジアの合議制となっており、日本が資金的に支援している。日本人として無関係でよいという出来事ではない。それと同時にカンボジア虐殺政権の真相解明が、今後の歴史の教訓にもなるであろう。

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2009年2月17日 (火)

個性を発揮するために注意すること:就職活動中の3回生に贈る

 大学の期末試験も終わり、3回生の就職活動が本格化している。以下では、その留意点を1つ明示しておきたい。

 一昨日に紹介した山内太地『下流大学に入ろう!:一流大学より未来が開ける』(光文社)に次の文章があった。玉川学園の創始者である小原國芳氏の指摘である。

 「個性とは、単に人と違うことをすることではありません。人は組織集団のなかで、ある程度同じことをする。そのなかで社会から評価される面で違いを出す。人の嫌がるところで、あえて手をあげる。これが個性なのです」(121頁)。

 このことは、個性を発揮するのはよいが、それが「変人」とみなされるようではダメという意味である。これまでの私のゼミ学生の中で、特別に「個性的」な人間がいた。彼は自分で「私は変わった人間です」と就職活動でも自己アピールしていた。それが成功したのか、京都に本社がある大手企業に本学から初めて就職することができた。現在の彼は結婚して父親になっている。久しく会っていないが、年賀状を毎年頂戴している。

 彼は、私と一緒にベトナムのフィールドスタディに参加したし、ベトナム語を学ぶために大阪外大(当時)の富田教授が主催する「ベトナミスト・クラブ」にも顔を出していた。今から考えても確かに変わった学生であったが、私に対する礼儀や言葉遣いは、むしろ他の学生よりも丁寧で好感がもてた。

 個性的で変人のように思われるが、社会的な常識や協調性が重要なことを体得し、それに基づいて行動できる。個性と常識のバランスが取れた人間。こういう人材は企業にとって魅力的であろう。

 以上は、就職活動における先輩の成功事例である。まだまだ3回生は自己成長のための時間がある。就職活動を経て大きく成長してほしいと願っている。

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2009年2月16日 (月)

ベトナムなら・・・:日本人として恥ずかしい

 日本の政治が変だ。総理大臣を元総理大臣が批判する。それ自体が問題だが、さらに批判する内容も納得できてしまうから、それも問題だ。G7に出席した大臣の記者会見も大問題だ。問題というよりも醜態である。

 おそらく間違いなく、これと同じ出来事がベトナムで発生すれば、国民とマスコミの批判が集中し、一党独裁のベトナムで政権交代はできないものの、当事者である閣僚は確実に辞任に追い込まれる。私見ではベトナムには、かつての日本の特徴であった「名と恥の文化」(ルース=ベネディクト『菊と刀』)が存在している。これについては、森三樹三郎(大阪大学名誉教授)が詳しい。

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「名」と「恥」の文化 (講談社学術文庫) 「名」と「恥」の文化 (講談社学術文庫)

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 たとえば、かつてのベトナムの英雄や文化人がベトナムの通りの名前になってることから考えても、名前を残すことをベトナム人が大切にする。自分の名誉を大事にし、失敗して「恥ずかしい」から失敗を認めなかったり、無理な言い訳をしたりすると考えることもできる。

 もちろん今でも、ベトナム人の中年女性がパジャマ姿で街を歩いたり、上半身裸やランニングシャツ姿の男性がウロウロしたりしていることがあるが、それは生活習慣と所得多寡の問題であって、ベトナム人の精神=思考様式の中に「恥ずかしい」という「恥の文化」があるように思われる。

 かつて日本は「名と恥の文化」と言われたが、もはや国家を指導する国民の代表である政治家が恥を忘れたのであろうか。海外旅行する日本人が恥ずかしい。日本人であることで肩身が狭い。特に「恥を知る」ベトナムで日本人が恥を知らなければ、信頼関係も生まれないだろうし、ベトナムで仕事もできないであろう。これは困った。

 ベトナム初訪問の皇太子殿下の「凛」とした風格がベトナム人を魅了したに違いないと思うのだが、この政治家の態度は何だろうか。日本語を学ぶベトナム人の意欲も減退するのではないか。日本の改革。もう他者に任せておけない。われわれ一人ひとりから。怒り爆発。恥を知れ・・・。

  

 

 

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2009年2月15日 (日)

山内太地『下流大学に入ろう!:一流大学より未来が開ける』(光文社)を読む(2)

 表題の著書で私が最も共感したのは、次のような論点である。

 「下流大学」という評価は、既存の価値観に基づいている。より具体的には予備校の偏差値である。この偏差値は、大学入学の難易度を意味するから、大学のそれ自体の評価と結びつかない。「下流大学」であっても「上流大学」よりも教育熱心で教育効果の高い大学がたくさんある。下流大学で個性を発揮し、自分の人生を自分で切り開く人材が育っている。

 わずか5%の「上流大学」が日本の将来を変革できない。それらの大学と卒業生は一般に、その権威や既得権益に拘泥(こうでい)しているからである。一般に評価されるエリートが自らのエリート意識を満足させ続け、その特権を維持するためには、そのエリート体制を維持させなければならない。その価値観を維持しなければならない。世界が変化・変革している時代に、既存のエリートに日本の将来を任せるわけにはいかない。

 下流大学の問題点は、その教職員が上流大学を卒業しているということであろう。下流大学の教職員が、どこか学生をバカにしながら、給与のために勤務している。これが、下流大学を下流大学のままにしている最大のガンである。教職員が本気で学生に立ち向かわなければならない。まず教職員が自ら既存の意識や価値観から脱却(=解脱)しなければならない

 その解消のためには、経営危機を経て教職員が一丸となった大学が紹介されている。学生不足で大学経営は赤字であるにもかかわらず、教員の意欲を高めるために研究費を増額した大学がある。下流大学での教育が成功するためには、全教職員の意識改革や大学経営者のリーダーシップが不可欠である。このことは、もちろん下流大学に限ったことではない。上流大学でもそうであるし、企業経営でもそうである。

 世界に通用する社会人を養成するために下流大学の役割は重要である。明治時代なら世界に通用する人材は少数のエリート教育に依存してもしかたがなかったのだろうが、現代のようなグローバル化の進展した時代は、エリートではなく普通の人々が世界に通用する人材として社会に輩出されなければならない。その役割の大部分は大学「全入時代」における下流大学が担っている。

 下流大学の将来は、日本の教育全体の将来を左右する。これは大企業の中小企業の関係にも似ている。中小企業あっての日本経済であるにもかかわらず、その評価は一般に低い。大学も企業も大きな変革を本気で早急に考えなければならない。変化を迫られる状況に日本が置かれているからである。変革のためには、まず自分から変える

 自己変革のためには、人と違ったことをする。人の嫌がることを率先してやる。たとえば駅や大学にゴミが落ちていれば、さっと拾ってゴミ箱に入れる。くわえタバコの学生がいれば注意する。学生にはこちらから挨拶する。同書にも紹介されていたが、「教室の後ろ5列に座ることを禁止する」(96頁)。机の上にカバンを置かせない。こういった学生に対する働きかけが、すでに私が実践している自己変革の第一歩である。

 同書を読んで、以上のようなことを考えさせられた。大学教育の改革に対する山内氏の情熱が伝わってくる。懸命に教育に取り組む教職員や、将来の日本を担う青年に対する敬愛や愛情を同書から感じる。多くの大学関係者に一読を勧めたい。

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2009年2月14日 (土)

山内太地『下流大学に入ろう!:一流大学より未来が開ける』(光文社)を読む(1)

 以前に『下流大学が日本を滅ぼす!』(三浦展、ベスト新書)を紹介した。この内容に私は納得できる部分が多々あった。この著書に対して反論の書が出版された。『下流大学に入ろう!:一流大学より未来が開ける』(山内太地、光文社)である。この本は、下流大学の「頑張り」を紹介している。これにも私は共感できた。

下流大学が日本を滅ぼす! ひよわな“お客様”世代の増殖  /三浦展/著 [本] 下流大学が日本を滅ぼす! ひよわな“お客様”世代の増殖 /三浦展/著 [本]
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下流大学に入ろう! 下流大学に入ろう!

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 これら2冊の本は、「下流大学」(=偏差値の低い大学)を題材に取り上げているが、その執筆の趣旨が異なっている。つまり著書を公刊する目的が異なっている。

 前者は、問題提起の書である。下流大学の否定的な側面を摘発し、このままでよいのかという問題を国民に提起している。私は、その現状分析に納得し、その批判に耳を傾けなければならないと思った。自分で何かをしなければならないという気になった。

 後者は、下流大学の肯定的な側面に光を当てている。下流大学でも教育熱心な大学があり、教員がいる。それに応えて大きく成長する学生がいる。その熱意や努力に焦点を当てて、その動きが拡大することを著者は期待している。そのことが日本の未来を拓くとも述べている。私は、本書で紹介されている大学や教員の努力に感心し、そして刺激を受けた。やはり、自分で何かしなければならないという気になった。

 上記の著書2冊は、立場が違うのだが、日本の高等教育の現状を改革・改善しなければならないという意欲や熱意は共通している。この点で、私は両書に共感できる。

 大学の経営者・教職員・学生が共通して両書を教科書として、そこから全学的な方針を提起しても良いと思われた。本来なら、こういう著書を大学教員自らが執筆するべきであったと思うのだが、なかなか現役教員が自分の勤務大学を含めた「自己批判」をすることは難しい。この意味で、表題の山内太地氏のような「大学評論家」ともいうべき職業が存在しても不思議でない。

 この山内氏の主張に共感したことの一部を紹介する。(以下、続く)

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2009年2月13日 (金)

第一外国語で日本語を学ぶ高等学校:ベトナムとモンゴル

 ベトナムで第一外国語として日本語を学ぶ高等学校が本年9月から設置されるそうである(『日本経済新聞』2009年2月6日)。さらにテレビニュースによれば、モンゴルで日本語を第一外国語としている高等学校は30校あるそうである。

 こういった高等学校に日本の大学や企業は注目すべきである。日本語を学ぶなら、日本を訪問したいと思うだろうし、日本で働きたいという夢をもつであろう。その希望の実現を支援できれば、日本に対する信頼や愛着は深まるにちがいない。

 もちろん日本における大学の受験生不足や企業の人材不足を補うことにもなる。さらに私が提言する日本企業の「人材合弁会社」の相手として、これまでベトナムを考えていたが、モンゴルも注目してもよい。

 日本のODAとして人材育成の支援は重要である。日本の「ファン」を養成することになるからである。このような観点からも、日本語を学ぶ外国人青年のODA支援を重視・強化するべきである。

 経済力から見れば、アジアにおける日本の地位は劣化している。外貨準備高は中国を下回り、1人当たり国内総所得はシンガポールに昨年に抜かれた。それでも日本が「アジアの大国」としての地位を維持するためには、私見では、技術力や創造力といった知的側面と、国民性を含む文化的側面である。けっして軍事力の強化ではないと思う。

 ODA資金による人材育成政策に大学と企業が呼応する。このような官民連携の人材交流構想と実施要領が検討されてもよいと思う。

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2009年2月12日 (木)

皇太子殿下のベトナム訪問とPCI事件のベトナム人逮捕

 現在、皇太子殿下がベトナム訪問中である。テレビでハノイの様子が放映されていたが、日本とベトナム双方の特命全権大使が同席し、杉良太郎ベトナム友好親善大使が日本語教育施設などの説明をしていた。

 これまでに秋篠宮殿下夫妻はベトナム訪問されているが、皇太子殿下は初めてである。秋篠宮殿下が1999年にハノイの日航ホテルに宿泊される直前に、私は日本とベトナムの親善サッカー試合の準備のためにハノイ滞在していたことがある。また皇太子妃・雅子さまの妹は、確かUNDPかのハノイの国連機関に勤務されていたと記憶している。このように皇室とベトナムの関係は今回が初めてではない。

 果たして殿下にベトナム料理がお口に合うのかどうか? ベトナム関係者として気になることである。日本人が外国人に勧める「納豆」に匹敵するベトナムの「チュン=ヴェット=ロン」などは御食卓に絶対に出ないであろうが、あれはベトナム庶民の正真正銘の健康食品である。お見せするだけでも、ベトナムは印象深い国になるであろう。こんなことを考えながら、ベトナムに好印象を殿下に持っていただければと祈念している。

 他方、ちょうど2月12日の新聞各紙の朝刊によれば、PCI贈収賄事件の収賄側のホーチミン市幹部2名が逮捕されたという報道があった。この贈収賄事件は日本のODA資金が原資であるから、民間資金よりも重大な犯罪性を持っている。そのベトナム側の責任追求や再発防止策を求めて、日本の対ベトナムODA資金供与は停止されている。

 同日の『日本経済新聞』には、ベトナム人2名の逮捕によって日本のODAが再開されるというような観測記事が掲載されていた。それに私も同感である。皇太子殿下のベトナム訪問というような慶事があり、友好促進のムードが盛り上がっている。それに対応してベトナム側もベトナム人の逮捕に踏み切った。この局面で日本がODAを再開し、今後の収賄に対してより厳しく対応するとベトナム政府が約束する。このシナリオで一件落着となる。

 われわれ納税者としてODA資金の厳正な使用は一般に当然の要求である。日本は財政赤字や国内景気の悪化にもかかわらず、ODA資金を支出している。日本のODA受給国の汚職に日本が厳しく対応しなければ、その国との友好関係が損なわれる。これはベトナムも例外ではない。犯人の量刑の軽重にまで内政干渉できないが、再発防止が約束されない限り、新規のODAは提供しないということぐらいは納税者の感情として当然である。

 このような日本国民の感情をベトナム人に伝えることを親日・知日のベトナム人にも期待したい。ベトナムと日本の友好親善の「橋渡し」は、それぞれに耳の痛いことも言わなければならない辛い役割も含まれている。

 以上、日本独特の「皇室外交」が貴重な役割を果たしていることが、ベトナムの事例で私は実感できた。さらにPCI事件については、「雨降って地固まる」という帰結になることが望ましい。これらの出来事を通して、さらなる日本ベトナムの友好関係の発展を期待したい。

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2009年2月11日 (水)

「2009アジアビジネス交流会 in 大阪」の開催(3):留学生のビジネス交流

 表題の「ビジネス交流会」の一般参加は有料(1万円)であったが、学生には割引(3千円)があった。それでも中国人・ベトナム人留学生それに日本人学生(アイセック部員)が合わせて10名ほど出席した。
 注:アイセックは、私の学生時代からの長い歴史を誇る「国際学生団体」であり、今回は大阪大学の学生が参加してくれた。http://www.aiesec.jp/

 学生が有料でも参加するということは、通常の学生より以上にアジアビジネスに関する目的意識が高いことを意味している。それぞれが、その後の交流会で名刺交換を頻繁にしていたように思われた。

 桃山学院大学の私の非常勤講義の中国人大学院生は、先週土曜日の最終講義で「先生のおかげで楽しかった」と感想を聞かせてくれた。日本人・外国人を問わずに大学院生が増加している現状では、大学院の卒業生の就職先も大学や研究機関では量的に不十分である。当然、大学院生も企業やビジネスに関心をもっているのだが、それに対応する具体的な機会がないように思われる。大学院生の就職対策やビジネス創業支援に関心がもっと払われてもよい。

 神戸大学のベトナム人留学生は、「先生のブログはよく読んでいます」と嬉しいことを言ってくれる。その後にメールが来て「何か役に立てることがあれば言ってください」ということであった。「留学している私たちは、自分の国ために意味ある研究や活動をしようと考えています」。こういうセリフに私は弱い。「それでは・・・」ということになっていまう。 

 私の勤務先である流通科学大学の中国人留学生は、卒業後に起業することを考えている。そのための準備という目的である。人と人の出会いから情報が交換され、そればビジネスに発展する。この発展の契機は、お金儲けという欲望ではなく、つき合って楽しいという相性であると思う。いろいろな人と会って相性の良い相手を探す。それがビジネスに発展する。

 大学院生や留学生が、日本の企業経営者と交流する機会が増えれば、相互に有益であると実感した。交流会の主催者であるブレインワーク社の今後の企画に期待したい。また他人まかせにしないで、自分でできることをやってみようとも考えている。 

 

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2009年2月10日 (火)

「2009アジアビジネス交流会 in 大阪」の開催(2):ベトナムの「アラフォー」と「アラサー」

 何か新しいことを言わなければ、リピーターの参加者に申し訳ないということで、今回の講演会ではベトナムの「アラフォー」(40歳付近)と「アラサー」(30歳付近)の役割といったお話をした。

 内容は目新しいものではない。ベトナムのアラフォーは、1970年前後に生まれている。1975年のベトナム戦争終結の記憶をもっているはずである。その後のカンボジア紛争や中国の国境侵犯の時期は小学生くらいである。経済開放や市場経済の導入が開始された「ドイモイ」時代は大学生を過ごす。

 アラフォー世代以上は、ベトナムの戦争・貧困・危機の時代を体験している。そしてその後の経済発展を実感している。この結果、それを推進・指導してきたベトナム共産党や現政権を支持する保守層を形成している。また、たとえ積極的な体制支持をしなくても、平和の重要性、政治的安定の重要性を体感的に理解している。

 現在のアラフォー世代が健在である限り、ベトナムの政治的安定が期待できると思われる。さらに戦争を知らないより若いアラサー世代は、今後のベトナム経済の推進力になる世代である。また現在も経済成長を牽引している。この世代は英語ができて国際感覚がある。経営理論の学習もできている。残されたことは経験を積むことである。このベトナム側の経験不足を日本側が補足・助言する。これも、昨日指摘した「人材合弁会社」の内容である。

 ベトナムで仕事をするなら、アラサー経営者に注目である。これは間違いない。もちろんビジネス相手を選択するのは日本側である。このことは、ベトナムビジネスにおける成功のためには、日本の企業経営者の「選択眼」の力量と質量が問われていることを意味する。

 このような意味で、昨日に紹介した中農製作所では、日本で時間をかけて「アラサー」のベトナム人を選択できるのだから、大きな失敗はありえないという結論になる。

 

 

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2009年2月 9日 (月)

「2009アジアビジネス交流会 in 大阪」の開催(1):「人材合弁企業」の誕生

 2月6日(金)に株式会社ブレインワークス(http://www.bwg.co.jp/)が主催する「アジアビジネス交流会」が開催された。

 同社CEOの近藤昇社長に続いて私が話をさせていただいた。アジアビジネスにご関心の方々ばかりなので気持ちは楽であったが、アジアの中級から上級の話をしなければならないという難しさがある。また私の講演に何度も参加して下さる本邑さんや中谷さん(流通科学大学「生涯学習の会」)がおられて、これも話づらい。同じネタを何度も使えないからである。

 まず私は、前日に訪問した中農製作所の事例をお話しした。中農製作所では、ベトナム人研修生とベトナム人正規従業員を数名採用している。いずれも日本人授業員の中に混じって5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾け)を普通に実行しているし、作業も熱心している。しかし同社では特にベトナムに進出するという具体的な計画はないそうである。しかし将来は考えたい。

 通常は、ベトナム進出⇒ベトナム人幹部候補生の日本研修というステップが一般的であるという先入観があったが、上記の場合は、ベトナム人従業員採用⇒ベトナム進出という逆のステップである。日本の人材不足を補填するためにベトナム人の工科大学卒業生の優秀な学生を採用する。これは何も新卒学生に限らない。

 すでにベトナム進出した日本企業は注意したほうがよい。十分なやり甲斐のある仕事を提供しないと、十分な給与を支払わないと、ベトナム国内での企業の移動ではなく、日本国内企業に従業員が移動することもありうる。ベトナム人を安い労働力と見るのではなく、優秀な人材と考える。この発想による人材獲得が日本企業には必要ではないか。「モノ作り」に国籍は関係ない。さらに言えば、企業経営や金儲けに国境はない。

 私の経験もお話しした。たとえば私が顧問をしているロータス投資ファンド運用管理会社のタイ社長は、知能指数(IQ)で言えば、おそらく最低200はあると思われる。「ベトナム数学オリンピックで第2位」という彼の経歴は水増しではない。はるかに私よりも英語は上級である。このような優秀な人材との出逢いはベトナムビジネスの醍醐味である。

 話は戻るが、日本で働くベトナム人が研修目的なら期限があるが、ベトナム人正規雇用なら特に期限はない。5Sを始め、品質に対するこだわり、短納期または無在庫生産、単品大量生産から多品種少量生産、さらに経営理念や社風まで、本人が望む限り学習できる時間がある。こういった人材を持った企業がベトナム進出すれば、その後の展開は早い。

 これは、日本とベトナムの「人材合弁企業」の誕生である。日本で働いたベトナム人に、本人が望むなら「のれん分け」の感覚でベトナム工場を任せればよい。

 冒頭の「アジアビジネス交流会」の講演では時間の制約があったが、このようなことを新たに私は考えた。(以下、続く)

 

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2009年2月 8日 (日)

東大阪市「モノ作り」の現場を訪問(2):感謝の気持ちから生まれるもの・・・

 大人気コミック・富樫義博『ハンター×ハンター』で「感謝の正拳突き:1日1万回」(第25巻、N0.265)という話が出てくる。「感謝」は若者の中で「死語」にはなっていない。 

 東大阪市の中農製作所の中農社長は、次のように述べられた。日常生活のすべてのモノは人間が作ったもので、それも1人の人間が作ったわけではない。しかし1人の人間でモノは簡単に壊すことができる。多くの人々の手を通して作られたモノを大切にする気持ちは、ほかの人間に対する感謝の気持ちから生まれる。

 こういった感謝の気持ちは、モノ作りの原点であると思う。つまり自ら感謝するから、逆に感謝される仕事に誇りをもてるということである。モノ作りについて自信と誇りをもつ。この気持ちがあればこそ、品質向上やコスト削減に向けた改善ができる。ただし私見では、そういった仕事に対して、より多くの報酬が伴ってもおかしくない。

 たとえばベトナムで「すそ野産業」の育成といっても、そこで生産された部品が組み立て大企業から「買いたたかれる」ことがあれば、だれも好き好んで部品生産をしないだろう。こういった労働・生産システム全体の将来を見据えた構想の構築が、ベトナムのすそ野産業の育成では留意されるべきである。

 中小企業で働く魅力についても、中農社長は指摘された。大企業と違って従業員一人ひとりがわかっている。お互いの個性を尊重しながら共に成長できる。いわば全員参加の経営ができる。これは人間としてやり甲斐のある仕事である。

 クリエーション・コア東大阪では、東大阪市を中心とする企業の最新技術や製品の常設展示場を見学した。この展示場から商談に発展することもあるのだから、外国からの訪問者も多いそうである。中小企業の街といえば、東京都・大田区が思い浮かぶが、そこでは主に下請け企業の性格が強い。これに対して東大阪市は独自技術をもった「オンリーワン」の中小企業が多いそうである。

 産学連携オフィスには、15大学・1高専(大阪工業大学・大阪産業大学・大阪大学・大阪商業大学・神戸芸術工科大学・大阪電気通信大学・大阪府立大学・東北大学・関西大学・近畿大学・関西学院大学・同志社大学・龍谷大学・奈良先端科学技術大学院大学・立命館大学・国立奈良高専)が、産学連携のためのオフィスを構えている。

 私の提案であるが、東大阪市そしてクリエーション・コア東大阪が、ベトナムの「すそ野産業」育成支援に連動して技術移転・生産移転の指導力を発揮できないのであろうか。それが積極的にできない理由は、それが実現すれば、東大阪市に「産業空洞化」が発生するからである。それでは、そうならないように東大阪市が工業団地をベトナムに建設し、その売却益と管理料を市の収入にすればよい。東大阪市にベトナム人従業員の研修施設を建設すれば、それは人口増加にもなる。

 学生と共に2つの企業と施設を見学させていただき、こんなことを考えながら帰宅した。率直に言って、せっかく優良な企業があり、立派な施設があるのに、それがもっと評価され、もっと成長拡大してもよいと思った。

 一般に、今回のような世界的な経済不況時には、既存の施設・技術・人材・資金を最大限に効率的に活用するという視点が不可欠であると思う。そのために必要があれば、法律や規制や慣行を変更する。こういった大胆な変革を早急に実行しなければ、日本経済の劣化は回避できないであろう。

 以上のような大胆な改革の期待が、大阪府の橋元知事の高い支持率に表現されていると思われる。ただし同様に、政治改革に対する期待によって人気の高かった小泉元総理大臣からの教訓を忘れてはならない。

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2009年2月 7日 (土)

東大阪市「モノ作り」の現場を訪問(1):製造業の系譜と中内功の「革命」

 2月5日(木)に私のゼミ学生10名を同行し、東大阪市の株式会社・中農製作所クリエイション・コア東大阪を訪問した。そこで学生に伝えたかったことをここで述べる。
 http://www.nakanoss.com/index.htm
 http://www.m-osaka.com/jp/index.html

 これまでに日本経済が成長してきた原動力は製造業であるし、その基盤を中小企業が構成してきたことは間違いない事実である。明治時代からの日本の経済発展を振り返れば、繊維・縫製、軍需、造船・鉄鋼、自動車・家庭用電機という系譜がある。これらは国際競争力という観点から見て、その時々で「世界一」の品質や技術を達成してきたとみなされる。

 経済発展や国際競争力の文脈の中で「軍需産業」を語ることに批判があると思われるが、たとえば第二次世界大戦におけるゼロ戦や戦艦大和は少なくとも当時の製造業の最高技術を結集した「世界一」の製品であろう。こういった歴史の流れを見ると、その時代時代において日本が世界に輝いた主要産業がある。その中で共通している産業は製造業である。

 数年前から「金融立国」と言われたが、それが実現できるかは今日の世界不況の中で極めて疑問である。日本の小売業・サービス業において養われた「おもてなし」といった顧客満足サービスは「世界一」であると思うが、日本の小売企業が世界を席巻するという状況ではない。日本で開発されたゲームやマンガが世界的に人気であるが、それが持続的・主導的になるかどうかは今後の課題であろう。

 自動車・家電に次ぐ新しい製造業の動向を見れば、日本が「省エネ技術」で「世界一」になれるかであろう。これら製造業の「世界一」の基礎を支えてきた主役は、精密・高品質の部品産業であり、それが中小企業である。日本の中小規模の製造企業は以前に「下請け産業」と言われてきたように思うが、最近は「すそ野産業」と呼ばれるようになっている。私は、その英語訳である「supporting industry」がより適切な表現であると思う。これは、「組み立て産業」を支援するという狭い意味だけではなく、「日本経済を支持する産業」という意味が含まれているからである。

 フリーターとしてコンビニで働くことが、中小企業の「モノ作り」よりも魅力的に思われる。私の勤務先の流通科学大学は、このような意識の社会人を育てる大学ではない。私は、経済活動の基本である製造業に対して消費者・顧客のニーズを届けられる学生を育てたいと考えている。

 製造企業が自己本位で開発製造した製品を定価で販売するシステムに対して、消費者に直結した小売業の立場から異議を申し立て、それに「反逆」し、そして「革命」を志し、それを達成させた人物が中内功(流通科学大学創設者・ダイエー創業者)にほかならない。

 その「革命」の精神は、けっして製造業を軽視するものではない。製造業あっての流通業・小売業である。製造あっての営業やマーケティングである。中内功は、日本の製造業における「旧体制」を批判したのであって、製造業それ自体を批判したのではない。このことを学生に伝えたい。そのためには日常に接することができる小売業よりも、時間と交通費をかけて製造業を見学することが効果的ではないか。私には、このような訪問の意図があった。
(以下、続く)

 

 

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2009年2月 6日 (金)

大阪府と(財)大阪産業振興機構が「タイ・ベトナム経済交流ミッション」を募集中

 大阪府と(財)大阪産業振興機構は、以下の要領で「タイ・ベトナム経済交流ミッション」の参加企業を募集中である。

旅行期間:2009年3月10日(火)~14日(土)5日間

旅行代金:179,000円

訪問地:ハノイ、ホーチミン、バンコク

趣旨:
 日本との経済連携協定(EPA)が締結・発効し、世界的な景気低迷の中にあっても、製造拠点として、また市場として、依然注目を集めるASEAN(東南アジア地域)。
 大阪府、(財)大阪産業振興機構では、ASEAN地域のうち、タイとベトナムに府内中小企業者から成る経済ミッション団を派遣し、現地企業との商談の機会を参加企業の皆様にご提供するとともに、両国における進出可能拠点等を視察します。ぜひご参加ください!

問い合わせ:双日ツーリスト㈱大阪支店「タイ・ベトナム経済交流ミッション」宛て
 FAX:06-6206-2061

 私見では、ベトナムとタイの両国を訪問することが、この経済ミッションでは興味深い。タイのバンコックの発展にホーチミン市が追いかけている現状がある。スポーツ分野では昨日に指摘したように、サッカー試合でベトナムがタイに勝っている。この両国に挟まれた国が、カンボジアとラオスである。

 もっと時間に余裕があれば、これらカンボジア・ラオスを訪問すれば、インドシナ半島=メコン川流域国の発展が理解できるであろう。実際にラオスやカンボジアを訪問してみれば、タイとベトナムの影響が大きいことが実感できるであろうし、さらに両国に対して中国が投資拡大していることが見聞できる。

 インドシナ半島のゲートウェイとして、ハノイ・ホーチミン市・バンコックのいすれを拠点にするか? こういった視点が、今回のミッションのの一つの目的である。すでにいずれかに拠点をもっている企業は,戦略的には出口を見ておく必要がある。ホーチミン市が入り口なら、その出口はバンコックと想定する。その間のカンボジアで儲けることを考える。バンコクが入り口なら、ホーチミン市に抜けるか、ハノイに抜けるか。これらの拠点を設営して、その間を結び付けて生産ラインを構築する。

 この経済交流ミッションでは、主催団体と委託契約している総合商社・双日が現地におけるビジネス=マッチングに協力する。

 中小企業の経営者は一般に総合商社を敬遠する。「敷居が高い」という印象があるのだろう。私はホーチミン市の双日の藤田さんに昨年お目にかかったが、「中小企業は大歓迎」と言われていた。ともかくベトナムに来ていただいたら、そこで何らかのビジネスが生まれるという発想が総合商社にあるようである。

 さらに上田曜子教授(同志社大学)と私が訪問前の研修でお話することになっている。同志社大学経済学部・上田曜子教授は、かつて流通科学大学で私の同僚教授であって、タイ研究の専門家である。タイとベトナムに関するhappy01「ダブル上田」happy01の事前研修である。ぜひ、多数の参加をお願いしたいと思う、なお上田曜子教授と私に縁戚関係はない。共通点は「名前」と「愛犬家」ということである。

 景気後退の時期だからこそ将来の布石を打つ。中小企業にとっては年度末の多忙な時期と思われるが、それだからこそ、ぜひ私は会社の将来を担うことが期待される若い幹部候補生の従業員の方々に参加を勧めたい。

 日本国内の市場だけを見て「視野狭窄」になっていては、自分の会社の夢や将来を語ることはできないと思う。そのことを企業経営者の方々は、すでに理解されていると思う。このミッションを通して、その思いを共有できる若手の幹部候補の方々を社内でお持ちになられるとよい。おそらく、その会社はかなり元気になるはずである。

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2009年2月 5日 (木)

ベトナムの熱気を体感せよ

 手元にSaigon Times Weekly, January 3, 2009がある。この40~41頁は、アジアサッカー連盟(Asian Football Federation Cup)が主催する第7回大会において、ハノイのミーディン競技場でベトナムがタイに3対2で勝利し、金メダルを獲得した風景を紹介している。

 この優勝に興奮したベトナム人が交通事故で何人か死亡したという報道もあった。この写真を鮮明にお見せできないのは残念であるが、この熱気はすごい。

090204_15330001  この騒乱状態を一見すれば、かつての日本の安保闘争や学園紛争を想起する。群衆の大半が「赤旗」を掲げているが、それは正確には「金星紅旗」である。赤い生地に金の☆(星)が1つ。ベトナム国旗にほかならない。なお、幸か不幸か、私は日本における闘争や紛争を直接経験していない。その世代よりも私は少し若い昭和30年生まれである。

 このようなベトナムと日本を考えると、国家の成長期には、国民が熱狂する「何か」が必要なのかもしれないと思わせる。国民全体が「何か」で熱くなることを経て、国家の統一感や国民の連帯感、さらに愛国心が喚起・醸成される。それが経済発展に邁進する原動力になるのではないか。

 ベトナムでは反体制の政治運動はありえないから、国民の熱気はサッカー試合に向かうのではないかという仮説も考えられる。少なくとも愛国心がなければ、国家の発展はありえない。また政府も、その熱気をサッカー試合でコントロールしているようにも感じられる。ベトナムの熱気を見るとき、ベトナム経済の停滞はありえないと私は確信できる。

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2009年2月 4日 (水)

2月6日(金)に「ビジネスビジネス交流会 in 大阪」が開催

 ブレインワークスグループが主催する「2009アジアビジネス交流会 in 大阪」が、以下の要領で開催されます。私もお話します。現在80名ほどの出席者です。いくつか席に余裕がありますから、ぜひご出席下さい。以下は、ブレインワークス社(http://www.bwg.co.jp/)からのご案内を抜粋しています。

flair趣旨: 日本は、マーケットが成熟・縮小している一歩、東南アジアの国々を中心に、アジアは急成長しています。巷では不況風が吹いているようですが、こんなときこそ、におhんだけに閉じこもらずに元気にビジネスを展開していきたいものです。

 そこで、アジアでのビジネスにご関心のある企業経営者の方にお集まりいただき、お互いに有意義な情報交換を行っていただく場を企画いたしました。

 ・すでにアジアに進出してご活躍されている方
 ・今まさにアジアへの進出をご検討されている方
 ・日本と出身国の両方で事業展開されている外国人経営者の方
 ・新規事業を考えているが日本では次の一手が見当たらない方

 このような方々にアジアビジネス交流会にお集まりいただき、この場で掴んだビジネスチャンス、人脈により、皆様のビジネスをますます発展させていただくことを願っております。

shine日時:2009年2月6日(金) 15:30~20:00(※14:50 受付開始)

happy01参加費:10,000円(税込み)

heart04プログラム:
☆15:30~17:30 講演会「中小企業こそアジアでビジネスチャンスを掴め
☆講演者 ブレインワークスグループ CEO 近藤昇
       流通科学大学 教授 上田義朗
☆17:30~20:00 交流会

coldsweats01会場:アーセンティア迎賓館
大阪市西区江戸堀1-5-13 電話 06-6225ー9862
地下鉄四つ橋線肥後橋駅8番出口すぐ 徒歩2分(四つ橋筋沿い)

heart01お申し込み:
電話 078-325-3303 FAX 078-325-3301 
Eメール public@bwg.co.jp

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2009年2月 3日 (火)

能勢で温泉と「ボタン鍋」を楽しむ:汐の湯温泉

 箕面船場ライオンズクラブと能勢ライオンズクラブの合同例会が、能勢の「汐の湯温泉」で開催された。恒例の「ボタン鍋」が最大の楽しみである。昨年は大学行事のために欠席であったが、一昨年の味が忘れられないでいた。

 「ボタン鍋」と言えば、そのメインの食材はイノシシの肉である。同席した料理旅館「錦亭」のご主人である谷川さん(ライオンズ会員)からお話を伺った。この「錦(にしき)亭」は創業100年になり、やはり「ボタン鍋」が名物である。そのほか「松茸狩」と「クリ拾い」で人気がある。

090203_19410001  猪肉(シシニク)には3種類ある。野生・養殖・イノブタである。猪肉を嫌う人の理由は、その「臭い」である。イノブタは臭いがないが、それは正統の猪肉ではないので除外するとして、養殖の猪肉は臭いのない時期に食肉処理するので、やはり臭いが気にならない。一番美味しい猪肉は野生だが、それには繁殖期のオスの強烈な臭いがある。しかし、そうでない時期は臭いがない。また米やイモを食べる害獣としてのイノシシは、人間に迷惑をかけたのだから、それだけ味はよい。(写真:すでに猪肉の半分は鍋の中。その後に追加した。確かに「ボタンの花」の華やかさがある。)

090203_19420001  この「錦亭」の「ボタン鍋」は味噌鍋をポン酢で食べるそうであるが、「汐の湯温泉」では薄味の味噌鍋を特製の「味噌だれ」で食べる。この「味噌だれ」が絶妙の味である。この味噌は、やはり能勢の名産である「田楽味噌」を使用している(遊留里(ゆるり)が製造販売)。この味噌に、おそらくお酒や味醂が混ぜられた秘伝の「味噌だれ」と、やや甘みがある猪肉が実に美味しい。(写真:参照。)

090203_19410002 牛肉や豚肉と違って猪肉は油が出なくて煮れば煮るほど美味しくなる。コラーゲンがたっぷりということであった。早く食べないと肉が固くなるということは猪肉には当てはまらない。こんなお話を谷川さんから伺った。次は谷川さんの「錦亭」で「ポン酢だれ」を試してみたくなった。「ぜひ家族で伺います」と約束して別れた。こういう出逢いが、ライオンズクラブでは食事以上に楽しい。(写真:猪肉の「石焼き」。これを塩と胡椒で食べる。もちろん「味噌だれ」で食べても美味しい。この「焼き猪肉」は香ばしく、少し歯ごたえがあっても柔らかい食感が新鮮である。)

 なお、夕食前に「汐の湯温泉」に入浴したが、やや赤みがかったお湯は、おそらく鉄分が含まれている。有馬温泉の「金泉」と同様のように思われた。

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2009年2月 2日 (月)

ベトナム報道の偏見と先入観:『朝日新聞』の記者に問う(7・最終回)

 以下では、これまでに紹介した『朝日新聞』の論点の残りの部分についてコメントする。

 sad「世界銀行や仏などが09年に総額約50億ドルの支援を決めた昨年12月上旬の対ベトナム支援国会議で、日本政府は新規の円借款を凍結する方針を表明した。」「凍結中の円借款約650億円は、15年開業を目指すハノイの地下鉄建設などにあてられる計画だった。凍結が長引けば、開業時期がずれ込む可能性もある。」

  この凍結の原因は、日本側の英断と評価されるべきことである。ODA資金の贈収賄についてベトナム側の厳しい対応を求める意図があるとみなされる。

 日本の大手建設コンサルティング会社PCIが、ホーチミン市人民委員会幹部に82万ドルを提供したという内容である。2009年1月30日に判決があり、裁判長は判決理由で、「国際商取引における競争の公平性を害した。わが国のODAや海外コンサルタント業界に対する信頼を損ないかねず、結果は重い」と批判。一方、「高額な現金供与は(現地高官の)法外な要求による面が大きかった」とした(『産経新聞』2009年1月30日)。
 http://news.nifty.com/cs/headline/detail/sankei-m20090130014/1.htm

 この日本の判決より以前にベトナム側の担当者の処分は終わっているが、再発防止の対処を日本側が求めている。それまではODAを凍結するという立場である。これに対してベトナム側も真剣に対応し、さらに友好関係に支障がないように日本側も配慮している。今週に予定されている日本の皇太子のベトナム訪問もその一環とみなせないこともない。

 ODAの凍結という深刻な問題ではなく、再開のタイミングの問題であると私は理解しているが、もちろん贈収賄に厳しく対処することは当然である。日本の血税による贈収賄は世論が許さない時代になっている。友好関係に重大な影響を与える可能性がある。

 wobbly「世界金融危機の影響も懸念される。・・・『海外からの直接投資やODAは減る』と予想する。j実質GDP(国内総生産)の成長率は、07年の8.5%から08年は6%台前半に減速する見通しだ。」

  これは指摘の通りである。私見では、そうだからと言ってベトナム経済の成長力が衰退するとは思われない。たとえば身近な例で言えば、今でも日本の不動産や株式を購入する日本企業・日本人がいる。企業全体が悪い悪いと言っても、個々では儲かっている企業がある。これは日本もベトナムも同様である。

 happy02「『成長を続けるには、外需頼みから脱し、貯蓄を殖やし国内投資を担う金融面での体制を整える必要がある』。ベトナム国家銀行のチーフアドバイザーを務める日本銀行の鉢村健参事役は指摘する。」

  私見では、ベトナムが「インフラ未整備」と言われる限り、内需拡大の傾向は続くであろう。また株式市場の黎明期の「バブル崩壊」の経験は、新しい成長期の準備であるとみなされる。残念ながら私の記憶に頼るしかないのだが、2000年初頭に導入された郵便貯金は健全に発展していると想像される。政府による銀行や証券会社・証券運用会社の管理も厳格化されている。時間は必要であろうが、ベトナムの金融市場は良い方向に向かっていると判断される。

 以上、やや長期の連載であったが、ベトナム投資の「黄信号」についてコメントした。自動車法規と違って投資の場合は、「黄信号」は「停止」ではなく、「注意して進め」である。これが私の見解の要点である。

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2009年2月 1日 (日)

ベトナム報道の偏見と先入観:『朝日新聞』の記者に問う(6)

  一般に、否定的な論点を集めれば「暗い話」が出来上がるし、その逆に肯定的な論点を集めれば「明るい話」になることは当然である。『朝日新聞』の記事は、その両方を取り上げてバランス良く紹介しているように思われるが、その見出しが「黄信号」となれば、その否定的な影響は大きい。

 昨年からのバブル崩壊、さらに賃金上昇・インフレと続いて、さらに世界同時不況の影響を受けるベトナム経済に対して「黄信号」と書かれると、読者は「ああ、やっぱりか」という判断になる。その結果として「暗い話」になる。こうした「暗い話」を強調して、発展途上国の発展の足を引っ張ることが「ジャーナリストの批判精神」の反映なのであろうか。

 『朝日新聞』の掲載前に『日経ビジネス』(2008年12月15日)が、「『35%賃上げ』」の大逆風:人手不足、優遇税制廃止…もう「安さ」に頼れない」と書いている。同じ事実を重複して紹介しているが、「もう「安さ」には頼れない」の一言に共感できる。

 「ベトナムが大変だ。もう安くない。それではどうするのか?」という読者の自然の疑問に対して、その直後の記事で的確に解答している。エースコック・広島アルミニウム工業・土佐電子の成功事例からの教訓が紹介されている。①現地化経営、②高付加価値生産、③家族主義的経営。いずれも私には納得できる内容である。これは別途に紹介・コメントしたい。(以下、続く)

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