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2009年1月29日 (木)

ベトナム報道の偏見と先入観:『朝日新聞』の記者に問う(4)

 「ベトナム投資 黄信号」についてコメントを継続する。この記事の「cloud黄信号thunder」の根拠が4点あった。以下では、それぞれ順に検討する。

 (1)「投資ブームの定着を背景に、ベトナム政府が税収増を図ろうと優遇税制の撤廃にカジを切ったのだ。新たに工場をつくる海外メーカーに対して、事業開始から12年間認めていた法人税の優遇税率15%を見直し、原則として、1月から一律25%に改めた。」

 日本の法人税率はいくらか? 『日経ビジネス』(2008年12月22ー29日)の特集「こんな税制いらない:先送りの罪、日本が沈む」によれば、日本が40.7%、米国が40.8%。韓国が27.5%、中国が25.0%、シンガポールが18.0%である(30頁)。

 このような数字を並べれば、ベトナムの25%が異常に高い数字とは思われない。税金は安ければ安いほどよいに決まっている。現地の企業経営者にインタビューすれば、だれもが税率引き上げに文句を言うに決まっている。それだからといって「黄信号」とはならない。法人税率が中国と同じとしても、まだまだベトナムの人件費は安いし、インフラ未整備とは言うものの、それは今後の成長の好機でもある。

 前述の『日経ビジネス』によれば、「世界では法人税引き下げ競争が再び本格化」(31頁)と指摘されている。「投資呼び込み競争」が2000年代後半に始まっている。たとえば1998年にドイツは57%から39%、さらに2008年に39%から30%に引き下げた。同誌は、この競争に日本が乗り遅れているという趣旨である。中国ですら2008年に33%を25%に引き下げている。

 このような「引き下げ競争」の中でベトナムが「引き上げ」だから、そのことだけを見れば、ベトナムはどうなっている?ということになる。ここで想起してほしい。2007年1月にベトナムはWTO加盟を果たし、国内外の差別的な制度は解消されることになっている。このことは、ベトナム企業も同率の法人税を支払うことを意味する。

 「安い方がよいに決まっている」税金であるが、それはベトナム企業と同じ条件であり、しかも中国と同水準である。冷静に考えて、今回の税率の引き上げは甘受されるべき内容であると思われる。ただし柔軟なベトナム政府の姿勢を考慮すれば、直接投資の下落や経済減速の程度に応じて、さらに外国企業のみならずベトナム企業からも「不満の声」の程度に応じて、さらなる税制の変更の可能性もありうる。

 外国企業の既存の優遇税制が撤廃されるのであるから、進出当時の「約束が違う」という不満や苦情は理解できる。この記事の「黄信号」よりも過激に言えば、国家的な「進出企業の取り込み詐欺」と言ってもよいかもしれない。かつての古森義久氏の論調である。しかし、WTOに加盟したのだからしかたがない。外的要因である。「詐欺」とは言い難い。(以下、続く)

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