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2009年1月30日 (金)

ベトナム報道の偏見と先入観:『朝日新聞』の記者に問う(5):優遇税制の概要

 前回は、ベトナム優遇税制の廃止に関する「総論」を述べたが、今回は、より具体的な「各論」の述べてみよう。

 ベトナム法人所得税および個人所得税については、日越経済交流センター創立15周年(2008年)記念出版『最新ベトナム経済関係法規集(下)』を参照した。
 上巻には、企業法、企業法施行細則政令、競争法、破産法、労働法一部条項修正補足法。
 下巻には、投資法、投資法一部条項の施行細則政令、投資法政令付録、証券法、証券法一部条項の施行細則政令、個人所得税法、企業所得税法、付加価値税法が収録されている。上巻・下巻ともに頒布価格5千円である。

 happy01購入を希望される方は、日越経済交流センターにご連絡くださいhappy01
事務局: 〒530-0012 大阪市北区芝田2丁目1-18 西阪急ビル8階 電話:06-6359-5071 FAX:06-6359-5072 Eメール info@j-veec.jp 

 ベトナム記事を掲載した『朝日新聞』記者は、現地の取材先からの苦情を鵜呑みにするのではなく、同時にベトナム投資に「黄信号」という先入観をもった取材をするのではなく、少なくとも日本語で読める上記のような資料を参照するべきである。独立した国家政策について批判するからには、それなりの準備が必要である。ましてや「ジャーナリスト」なのだから・・・。

 企業所得税法の第10条は、次のように税率を定めている。
 第10条 税率
 1.企業所得税の税率は、この条項第2項およびこの法律第13条に定める場合を除き、25%とする。
 2.石油・ガスおよびその他の貴重資源の探査・探索・開発活動については、企業所得税の税率はそれぞれのプロジェクト・経営事務所に応じて32%から50%とする。

 上記の第10条では、天然資源の保護の観点からの「割増税」が明記されているが、第13条には優遇税制が規定されていることが指摘されている。『朝日新聞』によれば、すべての優遇税制が削除され、ベトナム政府が税収増を目的とした強欲な政策を採用している印象を読者に与えるが、そうではないことを指摘しなければならない。

 第3章は「企業所得税の優遇措置」として、第13条から第18条までの規定を含んでいる。通常の税率25%に対して、次の6種類の優遇税率が定められている。

 1.免税(最大4年間、それに続く最大9年間は50%減税):①特別に困難な経済社会的条件を抱える地域、経済区、ハイテク団地における投資プロジェクトにより新設された企業。②高度技術・科学研究・技術開発の分野の投資プロジェクトにより新設された企業。③国家の特別に重要なインフラ開発に投資する新設企業。④ソフトウェア生産に投資する新設企業。⑤教育ー養成、職業教育、医療、文化、スポーツ、環境の分野で活動する新設企業。

 2.免税(最大2年間、それに続く最大限4年間は50%減税):困難な経済社会的条件を抱える地域における投資プロジェクトにより新設された企業。

 3.税率10%教育ー養成、職業教育、医療、文化、スポーツ、環境の分野で活動する企業。

 4.税率10%(15年間):①特別に困難な経済社会的条件を抱える地域、経済区、ハイテク団地における投資プロジェクトにより新設された企業。②高度技術・科学研究・技術開発などの分野での投資プロジェクトにより新設された企業。③国家の特別に重要なインフラ開発に投資する新設企業。④ソフトウェアを生産する新設企業。

 5.税率20%農業サービス協同組合および人民信用金庫。

 6.税率20%(10年間):困難な経済社会的条件を抱える地域における投資プロジェクトにより新設された企業。

 これらの適用時期は、売上高を最初に計上した時点もしくは課税収入を獲得した時点から算出される。より詳細は条文および施行細則を参照することを勧める。

 以上の優遇税制は、国内・外国企業に関係なく適応される。経済発展の遅れた地方都市への企業進出や、より高度な技術の発展をベトナム政府が期待していることが、この優遇条件から理解できる。ベトナムのような途上国から中進国に向かう国家にとって、極めて妥当な政策と私は思う。

 ただし私見では、いわゆる「すそ野産業」に属する精密部品などの製造企業に対して優遇税制が適用されるかどうかが明記されていない。上記の条文における「高度技術」・「技術開発」・「国家の特別に重要なインフラ開発」の中に、日本企業の「すそ野」産業の分野が含まれるかどうかである。今後の進出が期待される日本の中小中堅企業にとって、これが最も重要な注目点である。これこそが取材の焦点とされるべきであった。私の調査課題としたい。

 

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