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2009年1月31日 (土)

「堂島ロール」とは何か?:モンシュシュ人気

 土曜日の午後は、大阪中之島の「大阪大学中之島センター」の桃山学院大学大学院リエゾンオフィスで講義している。受講生は中国人院生2名であるが、熱心な学生なので充実した時間を楽しんでいる。

090131_15350001  講義修了後に中之島の渡辺橋で、橋の半ばまで続く長い行列に遭遇したケーキ屋さん・モンシュシュの顧客の行列である。http://www.mon-chouchou.com/index2.html この店は「堂島ロール」で有名である。

 その後に阪神百貨店の「デパ地下」を歩いていると、「バウムクーヘン」の090131_15360001 店や「いか焼き」の店に行列ができていた。これらの店の商品は必ずしも低価格ではない。そのような店に行列ができる理由は何か? どの程度なら行列を我慢できるのか。このような行列の意味や背景を深く研究することが可能である。その国際比較も興味深いテーマである。

090131_15370002  店側から見れば、顧客の行列ができるということは、顧客に多大の迷惑をかけていることを意味する。生産量を増やしたり、販売方法の再検討が必要である。もちろん行列には宣伝・広告効果があるから、あえて行列を作るようにする店側の意図(下心=したごころ)があっても不思議ではない。

090131_15380001  行列を解消するための販売方法には予約販売、引換券による販売、通信販売などがありうる。ただし、このような販売方法にすれば、売り上げは現在よりも低下することが十分に想像できる。顧客は行列に並んでようやく商品を入手できることに意義や満足感を見いだし、お店は行列ができるほどの人気を誇示できる。これらは行列の効用もしくは付加価値である。

090131_15380002  このように考えれば、顧客の不便を解消するために、行列を解消する対策を立てれば、それは逆効果になる場合もあるということを意味する。顧客に対する店側の過剰な親切を双方が望んでいない。ほどほどの親切。ちょうど子どもの教育と類似しているのかもしれない。過保護は子どものためにならない。

 日本人の顧客は世界で最も難しいと言われるが、その秘密を多面的に分析することが必要であろう。

 

 

   

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2009年1月30日 (金)

ベトナム報道の偏見と先入観:『朝日新聞』の記者に問う(5):優遇税制の概要

 前回は、ベトナム優遇税制の廃止に関する「総論」を述べたが、今回は、より具体的な「各論」の述べてみよう。

 ベトナム法人所得税および個人所得税については、日越経済交流センター創立15周年(2008年)記念出版『最新ベトナム経済関係法規集(下)』を参照した。
 上巻には、企業法、企業法施行細則政令、競争法、破産法、労働法一部条項修正補足法。
 下巻には、投資法、投資法一部条項の施行細則政令、投資法政令付録、証券法、証券法一部条項の施行細則政令、個人所得税法、企業所得税法、付加価値税法が収録されている。上巻・下巻ともに頒布価格5千円である。

 happy01購入を希望される方は、日越経済交流センターにご連絡くださいhappy01
事務局: 〒530-0012 大阪市北区芝田2丁目1-18 西阪急ビル8階 電話:06-6359-5071 FAX:06-6359-5072 Eメール info@j-veec.jp 

 ベトナム記事を掲載した『朝日新聞』記者は、現地の取材先からの苦情を鵜呑みにするのではなく、同時にベトナム投資に「黄信号」という先入観をもった取材をするのではなく、少なくとも日本語で読める上記のような資料を参照するべきである。独立した国家政策について批判するからには、それなりの準備が必要である。ましてや「ジャーナリスト」なのだから・・・。

 企業所得税法の第10条は、次のように税率を定めている。
 第10条 税率
 1.企業所得税の税率は、この条項第2項およびこの法律第13条に定める場合を除き、25%とする。
 2.石油・ガスおよびその他の貴重資源の探査・探索・開発活動については、企業所得税の税率はそれぞれのプロジェクト・経営事務所に応じて32%から50%とする。

 上記の第10条では、天然資源の保護の観点からの「割増税」が明記されているが、第13条には優遇税制が規定されていることが指摘されている。『朝日新聞』によれば、すべての優遇税制が削除され、ベトナム政府が税収増を目的とした強欲な政策を採用している印象を読者に与えるが、そうではないことを指摘しなければならない。

 第3章は「企業所得税の優遇措置」として、第13条から第18条までの規定を含んでいる。通常の税率25%に対して、次の6種類の優遇税率が定められている。

 1.免税(最大4年間、それに続く最大9年間は50%減税):①特別に困難な経済社会的条件を抱える地域、経済区、ハイテク団地における投資プロジェクトにより新設された企業。②高度技術・科学研究・技術開発の分野の投資プロジェクトにより新設された企業。③国家の特別に重要なインフラ開発に投資する新設企業。④ソフトウェア生産に投資する新設企業。⑤教育ー養成、職業教育、医療、文化、スポーツ、環境の分野で活動する新設企業。

 2.免税(最大2年間、それに続く最大限4年間は50%減税):困難な経済社会的条件を抱える地域における投資プロジェクトにより新設された企業。

 3.税率10%教育ー養成、職業教育、医療、文化、スポーツ、環境の分野で活動する企業。

 4.税率10%(15年間):①特別に困難な経済社会的条件を抱える地域、経済区、ハイテク団地における投資プロジェクトにより新設された企業。②高度技術・科学研究・技術開発などの分野での投資プロジェクトにより新設された企業。③国家の特別に重要なインフラ開発に投資する新設企業。④ソフトウェアを生産する新設企業。

 5.税率20%農業サービス協同組合および人民信用金庫。

 6.税率20%(10年間):困難な経済社会的条件を抱える地域における投資プロジェクトにより新設された企業。

 これらの適用時期は、売上高を最初に計上した時点もしくは課税収入を獲得した時点から算出される。より詳細は条文および施行細則を参照することを勧める。

 以上の優遇税制は、国内・外国企業に関係なく適応される。経済発展の遅れた地方都市への企業進出や、より高度な技術の発展をベトナム政府が期待していることが、この優遇条件から理解できる。ベトナムのような途上国から中進国に向かう国家にとって、極めて妥当な政策と私は思う。

 ただし私見では、いわゆる「すそ野産業」に属する精密部品などの製造企業に対して優遇税制が適用されるかどうかが明記されていない。上記の条文における「高度技術」・「技術開発」・「国家の特別に重要なインフラ開発」の中に、日本企業の「すそ野」産業の分野が含まれるかどうかである。今後の進出が期待される日本の中小中堅企業にとって、これが最も重要な注目点である。これこそが取材の焦点とされるべきであった。私の調査課題としたい。

 

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2009年1月29日 (木)

ベトナム報道の偏見と先入観:『朝日新聞』の記者に問う(4)

 「ベトナム投資 黄信号」についてコメントを継続する。この記事の「cloud黄信号thunder」の根拠が4点あった。以下では、それぞれ順に検討する。

 (1)「投資ブームの定着を背景に、ベトナム政府が税収増を図ろうと優遇税制の撤廃にカジを切ったのだ。新たに工場をつくる海外メーカーに対して、事業開始から12年間認めていた法人税の優遇税率15%を見直し、原則として、1月から一律25%に改めた。」

 日本の法人税率はいくらか? 『日経ビジネス』(2008年12月22ー29日)の特集「こんな税制いらない:先送りの罪、日本が沈む」によれば、日本が40.7%、米国が40.8%。韓国が27.5%、中国が25.0%、シンガポールが18.0%である(30頁)。

 このような数字を並べれば、ベトナムの25%が異常に高い数字とは思われない。税金は安ければ安いほどよいに決まっている。現地の企業経営者にインタビューすれば、だれもが税率引き上げに文句を言うに決まっている。それだからといって「黄信号」とはならない。法人税率が中国と同じとしても、まだまだベトナムの人件費は安いし、インフラ未整備とは言うものの、それは今後の成長の好機でもある。

 前述の『日経ビジネス』によれば、「世界では法人税引き下げ競争が再び本格化」(31頁)と指摘されている。「投資呼び込み競争」が2000年代後半に始まっている。たとえば1998年にドイツは57%から39%、さらに2008年に39%から30%に引き下げた。同誌は、この競争に日本が乗り遅れているという趣旨である。中国ですら2008年に33%を25%に引き下げている。

 このような「引き下げ競争」の中でベトナムが「引き上げ」だから、そのことだけを見れば、ベトナムはどうなっている?ということになる。ここで想起してほしい。2007年1月にベトナムはWTO加盟を果たし、国内外の差別的な制度は解消されることになっている。このことは、ベトナム企業も同率の法人税を支払うことを意味する。

 「安い方がよいに決まっている」税金であるが、それはベトナム企業と同じ条件であり、しかも中国と同水準である。冷静に考えて、今回の税率の引き上げは甘受されるべき内容であると思われる。ただし柔軟なベトナム政府の姿勢を考慮すれば、直接投資の下落や経済減速の程度に応じて、さらに外国企業のみならずベトナム企業からも「不満の声」の程度に応じて、さらなる税制の変更の可能性もありうる。

 外国企業の既存の優遇税制が撤廃されるのであるから、進出当時の「約束が違う」という不満や苦情は理解できる。この記事の「黄信号」よりも過激に言えば、国家的な「進出企業の取り込み詐欺」と言ってもよいかもしれない。かつての古森義久氏の論調である。しかし、WTOに加盟したのだからしかたがない。外的要因である。「詐欺」とは言い難い。(以下、続く)

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2009年1月28日 (水)

ロータス投資運用会社ソン会長からメッセージ

 ハノイのソンさんは、日本ベトナム経済交流センターのハノイ代表をお願いしている。同時に、いくつかの会社を経営されている。ロータス投資運用会社もその中の1社である。テト(旧正月)の挨拶で次のようなメッセージが届いた。

 一番良い結果は、いつも道の最後の所なので自信を維持しましょう。

 これは英語で言えば、All’s well that ends well. シェークスピアの引用である。新年に当たって励まされる言葉である。この「自信を維持する」という部分が独特である。自らの信念を貫けということである。こういうことが言える経営者は日本人でも多くないと思われる。

 ベトナム人企業経営者の「経営理念」の欠如が指摘されることがあるが、ソンさんについては大丈夫であろう。私も全力で仕事に取り組みたいと思う。

 ベトナムに限らず、外国ビジネスの成功はパートナーの優劣で左右される。今さらながら、このことを痛感する。

 

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2009年1月27日 (火)

注目:「不況に強い大阪」で行こう!

 昨日のPREX祝賀会では、井上義國PREX会長(元ダイキン副会長)が、現代の日本経済を見れば、最も落ち込んでいるのは名古屋、その次は東京。大阪の企業や経営者は日本で一番元気と指摘された。

 今年は、全国的に注目度の高い橋下知事とともに「大阪の年」になるように思う。確かに、これまで急成長している地域ほどその落ち込みは激しい。経済停滞と言われている大阪が、逆に今まは元気なように見える。この意味で「不況に強い大阪」と言えるのかもしれない。これが、大阪の中小企業経営者の「底力」もしくは「したたかさ」である。(まるでベトナムのように・・・。)

 同様の視点で世界を見れば、世界同時不況の影響から遠い国ほど元気である。その発祥の米国が最も深刻な景気後退は当然である。「中国のリスクヘッジとしてのベトナム」というような指摘があるが、同様に「米国のリスクヘッジとしての×××」という発想があってもよかった。おそらく「米国=無リスク」(米ドルに対する信頼感)の意識のために、「米国のリスクヘッジ」は思いもつかない。

 この意味で、アセアン諸国において元気な国はラオスとカンボジアである。今年から来年にかけて証券取引所を開設しようとしているのだから、まさに無傷・未踏・バージン市場である。すでにベトナム証券市場は歴史になった。歴史の逆行はありえない。それでは、そういった歴史が繰り返す国はどこか。それがラオスとカンボジアにほかならない。

 それだからこそ「メコン川流域国」に注目である。今年の私は現地に2月に動く。

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2009年1月26日 (月)

PREX「外務大臣表彰」受賞記念のフォーラムと祝賀会

 本日26日は、ベトナムのテト(旧正月)である。さらに上記のフォーラムと祝賀会が、大阪リーガロイヤルNCBであった。今日は二重におめでたい日である。

090126_19080001  PREXは(財)太平洋人材交流センター(Pacific Resource Exchange Center)の略称であり、創設は1990年。関西財界の支援で設立された。井上義國PREX会長によれば、新たな中長期の戦略として「途上国として関西にとって、なくてはならない存在になることをめざす」という目標を設定されたそうである。

090126_18220002  フォーラムでは、基調講演として山崎隆一郎・前外務省関西担当特命全権大使が、日本のODA大綱について現状を説明された。その後は発言者のコーディネーターをされ、私は、ベトナム人研修の経験に基づいた「応用力」の養成について話をした。

090126_19050001  一般に教育の目的には、①知識の提供、②理解力の養成、③応用力の伝授の3段階のレベルがある。実務研修では③応用力の伝授が重要であるが、そのためには教える側の忍耐力が求められる。

 最近の日本の大学生では、インターネットの利用によって②理解力が衰退090126_19050002 しているのではないか。ベトナム人は総じて優秀で①と②は十分であるが、③応用力が不足している。それは実体験が不足しているからである。以上のような話を10分間で話した。

 フォーラム後の祝賀会で何枚かの写真を撮らせていただいた。PEREX職090126_19310001 員の皆さまを始め、関係者の皆さまの善意とご厚情に触れながら、国際協力に貢献したいという気持ちを新たにした。

 写真は上から、外務大臣表彰状とピアノ・歌唱のお嬢さん。懇親会の会場。元PREX職員の南木(田中)さん。元神戸大学学長の新野先生(大学時代に「経済原論」の講義を受けた)。大阪国際会議場の萩尾社長。そのほかにも龍谷大学の松岡教授、阪南大学の大槻学長、そして旧知のPREX職員の方々とお話をした。有意義で楽しい半日であった。

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2009年1月25日 (日)

Chuc Mung Nam Moi

旧正月(テト)、おめでとうございます。

今年は「メコン川交流年」です。

私は、ベトナム・ラオス・カンボジア・タイが、新しい発展の段階を迎えるのではないかと予想しています。アセアン(東南アジア諸国連合)の後発国と言われたベトナム・ラオス・カンボジアが経済的に離陸しつつあるからです。

本年も、よろしくお願いいたします。

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2009年1月24日 (土)

在大阪ベトナム総領事館主催:テト・パーティの開催

 1月26日(月)はテト(旧正月)である。それを前にして在大阪ベトナム総領事館は、旧正月を祝うパーティを開催した。私は、日越経済交流センターの副理事長として出席した。

090124_11200001 総数で300人を超えていると思われる多数の人々で賑わった。ベトナム人留学生も多数出席し、ベトナム国歌の演奏では歌詞が歌われていた。これは珍しい。 

 旧知の方々とお目にかかり、お話しできたことがよかっ090124_11240001た。大阪大学大学院の桃木先生とはベトナムの現状についてお話できた。エースコック海外事業部の三谷さんには、『日経ビジネス』(2008年12月15日)に掲載されたベトナムの浪江社長についての話が弾んだ。

 日本ベトナム友好協会兵庫県連合会の中村さんもお見えであったし、堺市市会議員の加藤先生、大阪府府会議員の090124_11210002河合先生にもご挨拶できた。
 ベトナム料理と日本料理が出されたが、ともかく人数が多くて、ゆっくり食べる余裕はなかった。
 
 神戸市外国語大学大学院を卒業したフンさんは、このパーティのための準備をしたということであった。またハノイ在住で一時帰国されている和津田さんもご出席されていた。

 日越経済交流センターからは理事長代行の織田さん、顧問の大野尚子さんが参加。また大阪大学非常勤講師でセンター事務をお手伝いいただいているウェンさんご家族も出席された。私は午後に、大阪中之島の桃山学院大学のサテライト事務所で大学院の講義があったので早々に退席したが、エレベータホールでは、偶然に桃山学院大学学長の松浦先生にご挨拶できた。

 いろいろな方々とお目にかかり、お話できた。これこそパーティ本来の目的である。ベトナムの発展について自信をもてた活気ある集まりであった。

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2009年1月23日 (金)

企業論の後期試験:試験問題を一緒に考えて・・・

 23日(金)は私が担当する「企業論」の後期期末試験の日であった。その中の問題の一部を紹介する。『日経ビジネス』(2009年1月5日号、45頁)を教材に使用し、それを試験問題のために編集した。問題は全部で50問。時間は60分。教科書・資料・ノートの持ち込みは禁止である。教科書は、佐久間信夫編『よくわかる企業論』ミネルヴァ書房(2006年)を使用している。

 解答はマークシート方式。以下の問題に挑戦してみてください。

 問題: 二宮尊徳は、経済的な利益と道徳を不可分のものとする思想を提唱し、それが北京大学の日本文化研究所でも注目されている。(43)~(46)に該当する適当な言葉を①~⑤の中から選択して解答欄にマークしなさい。

 19世紀のドイツの社会学者マックス・ウェ-バーは、ドイツに比べて英米の資本主義への移行と経済発展が早かった理由として、(43)に由来する合理性と、その合理精神に支えられた(44)があることを指摘した。

 これに対して、日本の経済発展の原動力や日本人の勤勉性の理由は、二宮尊徳の思想であると考えられる。松下幸之助が「道徳は実利に結びつく」と述べ、それ以前に二宮尊徳が「道徳なき経済は(45)であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉を残した。

 最近の世界同時不況の原因が、米国の実体経済から乖離した(46)によって発生した「バブル」の崩壊であることを考えれば、これらの指摘は今後の企業経営のあり方を考える場合に傾聴に値する。

(43)①カソリック信仰 ②プロテスタント信仰 ③利己主義 ④株式会社制度 ⑤フロンティア精神
(44)①人材育成 ②経営戦略 ③官僚制 ④職業倫理 ⑤経営者支配論
(45)①理想 ②犯罪 ③空虚 ④騒音 ⑤煩雑
(46)①M&A ②コラボレーション ③イノベーション ④マネーゲーム ⑤コンプライアンス

flair解説flair こういった道徳=経営倫理が企業経営者に欠如すれば、市場経済の暴走を管理するための規制が必要となる。この規制は各国の自由裁量ではなく、経済がグローバル化している現状を考慮すれば、世界共通の規制が必要となるであろう。

 たとえばWTO(世界貿易機関)・IMF(国際通貨基金)・世界銀行などの国際機関が、市場メカニズムの世界的な規制・監視機関に進化・転化することを期待したい。しかし、その規制内容が各国の利害に直接関与するので、すべての国が合意することには困難が伴う。

 そうであるなら、現在の世界同時不況は今後も再発することを意味する。それでは「人類の進歩」は幻想である。市場経済の暴走を制御することは不可能なのであろうか。上記の「道徳」は、ひとつの有力なアイデアである。二宮尊徳は過去の人と思われるかもしれないが、そういった歴史から学ぶことなしに未来の展望は見えてこない。

 

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2009年1月22日 (木)

ベトナム報道の偏見と先入観:『朝日新聞』の記者に問う(3)

 22日(木)、元毎日新聞・編集委員の小嶋康生さんが主催する「無葉会」に久しぶりに出席した。小嶋さんは、私が日本経済研究所の研究員をしていた20数年前、経済部の記者をされていた時からの旧知の間柄である。無葉会は、大手新聞や放送局のOBの方々や現役の方々が主な会員である。また経済評論家の奥村宏さん(元・中央大学教授)も私の隣席であった。

 この日のゲストスピーカーは、元東京大学教授・桂敬一氏(現・立正大学講師)。テーマは、「文明の危機としてのメディアの変化―いかにしてジャーナリズムとメディア文化を復権するか―」。

 桂先生は、ジャーナリズムには批判精神が必要なことや、インターネットにはマネのできない新聞の役割の重要性を指摘された。新聞は、単体の孤立した情報ではなく、紙面全体から提供される総合的な情報提供が特徴と説明された。

 私は、桂先生のお話を聞きながら、このブログの表題のことを考えていた。批判精神とは何か。

 ベトナム投資の過熱気味の風潮に対して、それを「黄信号」と記事にすることで冷水をかける。これが批判精神と記者は勘違いしているのではないか。これは1998年の古森義久氏のベトナム論評と共通している。その後の10年の歴史が、古森氏の批判が的外れであったことを証明した。ベトナムは中進国になりつつあるとは言うものの、まだまだ貧しい国である。そんな国を批判して何が楽しいのか。

 こんなことを考えながら、最近のベトナム経済の現状を検討してみよう。(以下、続く。)

  

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2009年1月21日 (水)

ベトナム報道の偏見と先入観:『朝日新聞』の記者に問う(2)

 朝日新聞の記者は、「ベトナム投資 黄信号」と3段の見出しを付けて、「税制優遇廃止・支援凍結」という副題を付けている。これを見ただけで、もうベトナム投資はダメだという印象を与える。以下では、そのダメな理由を記事の中から列挙する。

wobbly(1)「投資ブームの定着を背景に、ベトナム政府が税収増を図ろうと優遇税制の撤廃にカジを切ったのだ。新たに向上をつくる海外メーカーに対して、事業開始から12年間認めていた法人税の優遇税率15%を見直し、原則として、1月から一律25%に改めた。」

happy02(2)「世界銀行や仏などが09年に総額約50億ドルの支援を決めた昨年12月上旬の対ベトナム支援国会議で、日本政府は新規の円借款を凍結する方針を表明した。」「凍結中の円借款約650億円は、15年開業を目指すハノイの地下鉄建設などにあてられる計画だった。凍結が長引けば、開業時期がずれ込む可能性もある。」

sad(3)「世界金融危機の影響も懸念される。・・・『海外からの直接投資やODAは減る』と予想する。j実質GDP(国内総生産)の成長率は、07年の8.5%から08年は6%台前半に減速する見通しだ。」

weep(4)「『成長を続けるには、外需頼みから脱し、貯蓄を殖やし国内投資を担う金融面での体制を整える必要がある』。ベトナム国家銀行のチーフアドバイザーを務める日本銀行の鉢村健参事役は指摘する。」

 これらの「黄信号」の根拠の4点について次に検討する。(以下、続く。)

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2009年1月20日 (火)

ベトナム報道の偏見と先入観:『朝日新聞』の記者に問う(1)

 『朝日新聞』(2009年1月16日)に「ベトナム投資 黄信号」という記事が掲載された。

 すでに紹介したように、去る1月14日に大阪ヒルトンホテルでベトナム投資セミナーが開催されたばかりである。そのセミナーでは、ベトナム経済が健在であることをジェトロハノイセンターの荒川研・投資アドバイザーが指摘した。それに対して、まるで「冷や水」を浴びせるように、この記事が掲載された。

 全国新聞の影響力を考えれば、この記事の見出しは問題である。ベトナム投資の不安を扇動して、この朝日新聞の記者は何を意図しているのであろうか。ベトナムに関係して30年にもなろうとする荒川さんに対して、私でもベトナムと関わって今年で15年になるが、この記者は、どれほどベトナムについて熟知しているというのか? 

 もっとも、こういった批判は感情的である。研究者はもちろんジャーナリストであるとすれば、少なくとも事実と論理に基づいた議論の展開が不可欠である。徹底した事実と論理の追究が、物事の真実に迫る。先入観に基づいた偏や、結論先にありきの議論は「真実」を曲解することになる。

 ベトナムについての代表的な先入観は、「ベトナム=共産党一党独裁=非民主国家」という論理である。この先入観の誤りについては、本ブログで何度も紹介している。ベトナムの民主主義は確実に着実に拡大している。

 さらにベトナムに対する典型的な先入観としては根強い「反共主義」がある。「共産党」という名称を聞くだけで拒否感・嫌悪感・反感を抱く人々が依然として多数存在している。これも「事実と論理」から逸脱した議論や結論を生み出す懸念材料である。

 せっかくのビジネス好機がベトナムにあるにもかかわらず、経営者の先入観や偏見によってそれを見逃すことは、株主から経営責任を問われる問題である。すべての利害関係者に対して説得力をもった事実と論理に基づいた意思決定が企業経営に求められている。

 もちろん「リスク」に対する客観的な認識は不可欠である。しかし、これまでベトナムについて10年以上見てきたが、リスク、リスクと言われながら、それを切り抜けてきた柔軟性がベトナムにある。

 このような観点から、上記の『朝日新聞』の記事を検討することにしよう。(以下、続く)

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2009年1月19日 (月)

ベトナムの経済危機は本当か?:大阪のベトナムセミナーから(2)

 今回のセミナーの注目点は、配付資料を見る限り、昨年のベトナム経済に関する否定的な一連の報道が、果たして本当かどうかということであった。これについて荒川研・ジェトロ投資アドバイザーが次のように説明されているので紹介する。

 昨年のベトナム経済に関する報道は次の3点に要約される。注:以下は、荒川研氏の資料に基づくいて、筆者が敷衍したものである。

(1) 株式の暴落、貿易赤字の拡大、インフレの進行等でベトナム経済は変調をきたしている?
(2) ベトナム発の経済危機の可能性?
(3) ベトナムは未曾有の経済危機?

 これらに代表される報道は、果たして本当なのか?荒川さんは次のように反論される。

 株式の暴落:ベトナム株式市場は、先進国の株式市場とは全く比較できないほど、その規模は小さい。ハノイ証券市場・ホーチミン証券市場と合わせても約300銘柄である。したがって金融経済が実体経済に及ぼす影響は小さい。

 私見では、ベトナム株式市場の設立は2001年。民間の金融機関が本格的に活動を始めたのもその時期である。それ以前は、「タンス預金」と民間・親族の資金融通であった。金融機関に対する信頼が低いことが理由であった。これは、表面的な金融動向の背後にある「奥深い」金融制度が依然として存在していることを意味する。その代表は「越僑」(海外在住ベトナム人)からの送金であろう。

 貿易赤字の拡大は鈍化し、しかも外貨準備によって対応可能な水準である。実際、2008年1~5月の貿易赤字が144億ドルで、2007年通年の貿易赤字141億ドルを超えた。その大部分は発展途上国では当然ともいえる機器・資材の輸入分であり、さらに外貨準備高が212億ドルを考慮すると、問題とならない。さらに1~12月の貿易赤字は175億ドルであり、赤字幅の増加額は鈍化している。

 インフレは抑制されつつある。2008年9月の消費者物価指数は前年同月比27.9%であったが、12月には19.89%に低下した。主な内容は、食品・食糧である。ハノイ市やホーチミン市等の大都市では、流通革命が始まり、卸や仲卸業が出現したことが主要因である。単純に市民生活が逼迫しているというよりは、市場経済、とりわけ流通分野の発展を意味している。

 世界経済危機の影響は、より具体的には米国・日本・EU等の景気悪化によってベトナムの輸出額が減少することである。この影響は存在するが、私見では、ベトナムの内需拡大と周辺国(ラオス・カンボジア)投資によって輸出減少は補填できると思われる。

 私見では、ベトナム経済は成長率8%台から6%台に低下すると言われているが、けっして成長率6%台は低い数字ではない。世界経済危機に巻き込まれた日本は、このベトナムの成長率と連動することを考えればよい。円高・ドン安は投資の好機である。ベトナムと共に成長する。この判断と決断が求められる。

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2009年1月18日 (日)

ベトナムの経済危機は本当か?:大阪のベトナムセミナーから(1)

 去る14日に大阪のヒルトンホテルで次のベトナムのセミナーが開催された。

テーマ:踊り場のベトナムビジネス~ベトナム経済は堅調なのか?!現地経済状況報告~
 
主催:日本貿易振興機構(ジェトロ)大阪本部、大阪市、(財)大阪国際経済振興センター(IBPC大阪)、関西経済連合会、近畿経済産業局

講演①「ベトナム概況 2009」ジェトロハノイセンター海外投資アドバイザー・荒川研氏

講演②「ベトナム―日本 農産物におけるビジネス協力機会」南部協同中小企業促進センター代表取締役・レ=ビン=フン氏

講演③「事業内容とベトナム産食材を使った商品の紹介」株式会社ロックフィールド執行役員購買部長・田中秀幸氏

 残念ながら私は大学業務のために出席できなかったが、セミナー前のヒルトンホテルで旧知の荒川さんとフンさんにご挨拶した。また偶然に、計画投資省の副大臣を同行されていた市川匡四郎JICA専門家にもお目にかかることができた。

 このセミナーでは、フン氏と田中氏がベトナムの農産物・食品ビジネスの可能性を話されたことが注目される。信用失墜の中国産の食品に対して、それに代わるベトナムの食の安全はどうなっているか。

 昨年末に締結された日本とベトナムのEPA(経済連携協定)において、食品安全について日本が支援することが含まれている。この進展によってベトナム食品の安全確保が望まれる。それは、ベトナム食品を輸入する日本人の願いであるのみならず、ベトナム人自身の願いでもある。

 注:中国食品の汚染問題が日本で注目されているが、それ以上に中国人自身がそれを懸念している。日本も中国も食の安全については共通の認識があることを理解するべきである。それはもちろんベトナムでも同様である。

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2009年1月17日 (土)

少し風邪

 風邪でお休みします。

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2009年1月16日 (金)

日本企業における「株主重視」経営の意味:企業が「企業重視」の経営をする?

 日本経済のグローバル化の進展によって、また1990年代のバブル崩壊後の株価低迷によって、日本企業において外国人株主が急増してきた。また最近では、投資ファンドが株式取得を通して企業経営に対して「発言」するようになってきた。このような状況になって、日本の企業経営者は株主を重視した経営に舵を切るようになったと言われている。

 この「株主重視」の経営とは、具体的に言えば、配当金を増やしたり、株価を高く維持したりすることである。そのために企業業績が最優先されるために、コスト削減が求められる。その方法の一環として人件費の削減が企図され、中高年従業員の人員削減(早期退職=「リストラ」)が実施され、さらに今日の社会問題となっている派遣・非正規の従業員を増加させることになった。

 ここで具体的な事実を見れば、日本の株式市場における過半数の株主は法人である。その中には事業法人と機関投資家が含まれているが、そのいずれもが安定株主として企業経営者の地位を安定化する機能を果たしている。株主総会で賛成票を通常は投じる役割を果たしている。その典型は株式相互持ち合いである。お互いに賛成票を投じて、経営者の地位を相互に保全する。これは「なれ合い経営」・「無責任経営」の温床である。

 このような日本の現状を考慮すれば、日本企業における「株主重視」の経営とは、その主要株主が法人であるから、「法人株主重視」の経営である。より簡単に言えば、「法人株主重視」の経営とは「企業重視」の経営に他ならない。

 より端的に言えば、オーナー経営の会社が「株主重視」の経営を主張していることに似ている。経営者が、その会社の株主でもある自分を重視する経営をする。こんなことを公言すれば、従業員の反発は必至である。日本の大企業で「株主重視」と言えば、これに類似したことを意味するのではないか。ただし相違点は、ある企業の経営者と、その企業の大株主である企業の経営者が別人ということである。しかしこの場合でも「経営者がほかの経営者を重視する」と言うことができる。

 企業が「企業重視」の経営をする。経営者がほかの経営者を重視する。その論理の中には、従業員・消費者・顧客・地域住民といった利害関係者は含まれない。派遣・非正規従業員の解雇は当然という帰結になる。さらに言えば、企業重視の経営であるから、たとえば食品業界における「食の安全」といった消費者の観点も欠落する。

 私は「株主重視」の経営に反対するわけではないが、より正確に「個人株主重視」の経営を推進してもらいたいと思う。法人株主は、その保有株式を売却して、その資金を本業に使用するべきである。会社が会社の株式を所有する。この意味が不明である。企業グループの形成のためなら、その中核に持株会社を設置すればよい。現代企業において、こういった問題が問われているのではないか。

 以上は問題提起である。私自身が今後も検討したい課題である。

  

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2009年1月14日 (水)

ベトナム石炭資源の共同開発:今こそ日本の好機なのだが・・・

 『日本経済新聞』(2009年1月15日)によれば、明日15日に「ベトナム北部ハロンで、石炭と鉱物資源に関する政策対話を開く。両国はベトナムでの石炭の地質構造調査や技術協力などで合意する見通し」と指摘されている。

 ベトナム側からすれば、昨年の資源価格の高騰と下落からの教訓として、長期的な資源開発によって今から安定的な資源供給の計画ができるようにしたい。また国内での鉄鋼一貫生産の計画もあり、そのためにも石炭の供給を増加させたい。

 他方、日本側について言えば、エネルギー資源の共同開発などによって利権を確保することは国益に合致している。さらに言えば、カンボジアやラオスの鉱物資源の開発は、中国や韓国に先行されている。これらの国における今からの資源開発は、やや遅いという印象である。せめてベトナムでは日本が先行して資源を確保しておきたい。当然の戦略であろう。

 昨年から「世界同時不況」の最中であり、日本の大企業はトヨタ・ソニー・東芝というように赤字決算となっている。しかし総体として日本経済は悪くない。中国経済の停滞や韓国通貨の暴落に対して、日本の円高は海外進出の好機である。今こそ、ベトナムのみならず日本の出番であると思う。

 上場企業の経営者は、株主からの批判を意識して、この経済環境下での新規投資を凍結する傾向がある。新規投資をするくらいなら、株主配当を維持せよと株主から批判されることを恐れるのである。しかし本来、企業の長期成長を考えれば、この好機を逃すことこそ株主から批判されるべきことである。

 このような景気後退の時期こそ、企業経営者の手腕・能力・理念・哲学・・・、企業経営者の器量が問われると思われる。今日の多数の企業情報の中から、こういった企業を検索することが株式投資の成功の秘訣であると思う。

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2009年1月13日 (火)

松尾康憲氏に敬意を表する:『現代ベトナム入門・増補改訂版』に寄せて

 本ブログで以前にも紹介したが、松尾康憲『増補改訂版・現代ベトナム入門』日中出版、2008年を再び紹介する。ジャーナリストとして松尾氏に敬意を表したいと思う。

 

 現代ベトナム入門 ドイモイが国を変えた 現代ベトナム入門 ドイモイが国を変えた
販売元:セブンアンドワイ
セブンアンドワイで詳細を確認する

 松尾氏の著書の中に次の文章がある。これらが、同書の鋭い論調の象徴のように私には思われた。

 「何よりも紙面汚しで本の格調を下げるから削ってしまおうかと何度も考えたのだが、・・・・・・やはり国民の公僕の実態から目をそらさず、正確に伝えるのはジャーナリストの責務だと考え直し、掲載した次第である。」(296頁)。

 「・・・・・・新しい認識が、中国政府の変化を誘発する日が来るかもしれない。『ベトナム人がしていることを、中国人もますやってみよう』と・・・・・・・。」(325頁)。

 前者は、日本の外務省に対する論評であり、後者は、ベトナムの政治改革が中国よりも先行していることを指摘した文章である。これらの指摘は、私にとって初めての情報である。さらにベトナム共産党の一党独裁から多党制に移行する政治改革にまで言及されている(326頁)。

 この最後の点については、自由民主党の長期政権維持のノウハウを学ぶ目的でベトナム共産党が日本に関心をもっている。自由民主党は、かつての天敵であった社会党とまで連立して政権を維持してきた歴史がある(村山内閣)。この自由民主党の「したたかさ」はベトナム共産党にも共通した資質であると私は思う。

 以上の詳細は、ぜひ同書を読んでいただきたい。勇気ある大胆で具体的な指摘を頂戴した松尾氏に感謝を申し上げたい。

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2009年1月12日 (月)

ベトナム企業を買収する:「大バーゲンセール」が継続中

 株価と不動産価格の下落、輸出減少などに伴って、業績不振に悩むベトナム企業が少なからず存在する。先日も実例を指摘したが、個人投資家の場合は、投資に失敗すれば、自宅や保有資産の売却によって損失補填や借金返済をする。株式会社の場合は、緊急の資金調達手段として、その自社株式の売却という方法がある。

 現在、余裕資金があれば、ベトナム企業買収の絶好の機会である。ほとんど額面に近い価格で企業を買収できる。とりあえず企業株式を安価で取得して、その企業の利用を考える。このような状況が続いている。シナジー効果・将来性・ブランド価値などは無関係だ。「とりあえず安く買う」。これが基本方針である。

 こういった情勢の中で、買い手側でベトナムや韓国の企業名を聞くことがあるが、日本企業の名前は寡聞である。現在の不況下で「投資は凍結」という日本企業が多い。本当は、今こそ「買い」である。絶好の投資の好機である。それができない日本企業は、臆病なのか、慎重なのか。

 ベトナムのような途上国(最近は「中進国」とも言える)では、おそらく本年のような世界不況期であっても経済成長は6%以上を達成するであろう。マイナス成長の先進国とは状況が相違する。成長国の企業を格安で取得できる。この好機を活用できた企業の成長は間違いない。

 韓国企業は一般に、通貨ウォン安で苦境のように言われているが、それほど韓国企業は脆弱ではないように私には思われる。企業のグローバル化が進展しており、1997年の「アジア通貨危機」の教訓によって普段から為替リスクにも対処している。この時期における韓国企業によるベトナム企業買収の大胆な戦略は、日本企業に真似できない決断力である。これまでの日本人の先入観や既存認識より以上に、韓国企業は成長しているとみなされる。

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2009年1月11日 (日)

稲盛和夫のビジネス論:日本から中国・ベトナムへ

 土曜日の午後、桃山学院大学大学院・経営学研究科の「日中連携ビジネスコース」の非常勤講師として「インドシナ半島の企業経営」を講義している。このコースは、中国ビジネスに特化した専門職指向大学院と特徴づけられており、大阪の中之島で開講されている。

 本年度の受講生は中国人の院生であり、中国とベトナムの比較などを中心にして講義と対話している。社会人学生であるために「実務」に基づいた意見を聞かせてもらえるので私も勉強になる。「今度、機会があればベトナムに連れて行って下さい」と言われると嬉しくなってしまう。

 昨日の講義では、京セラの創業者である稲盛和夫氏の自伝の話題が出た。稲盛氏の伝記は、ベトナム語でも翻訳され、日越経済交流センター・ハノイ代表のソンさんとホーチミン市代表のタムさんに贈呈した。いずれの感想も面白いということであった。

 その中の注目は、「天国」と「地獄」の分岐点は、その人間の心構えということである。自我が強い。利己心が強い。自己中心的。これでは「天国」に行けない。「天国」への途は、WINーWINの関係を追求することである。お互いに譲り合う。助け合う。謙虚な気持ちをもつことである。これは、芥川龍之介『蜘蛛の糸』の話とも共通している。

 これは、米国流の「強欲の資本主義」から生まれた世界同時不況からの教訓となるのではないか。お金が必要なことは当然であるが、その儲ける過程が問題であろう。また、その使途が問われる。その基準は「天国」に行けることである。

 この「天国」が、どのようなものかは不明であるが、そういった基準を各企業や各自がもつことが必要な時代になったように思われる。自己を律する。換言すれば、その企業や人間の理念や哲学が求められる。より一般的に企業について言えば、企業統治に対する経営者の考え方という問題である。

 稲盛和夫氏の著作をもう一度、読んでみなければならないと思った。土曜日の午後の有意義な時間であった。

 

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2009年1月10日 (土)

あきらめない人に幸福は訪れる:ベトナムに送ったメッセージ

 表題のメッセージを親しいベトナム人に送った。英語で以下の通りである。

 Happiness comes to those who never give up.

 これは自分でも気に入っている。自分の体験でもあるからだ。具体的な内容は伏せるが、最近のベトナム人の若い世代は苦労を知らないから、この言葉をベトナム人に伝えることに意義がある。

 1960年代から70年代にかけて米国と戦争をしていたベトナム人から、多大の勇気や感動をもらった日本人は多いと思う。強大な米国軍を始めとする西側諸国に対して、自由・独立・統一のために勇敢に戦ったベトナム人の経験は、今でも感動を覚えることがある。

 しかしながら今のベトナム人の若者世代は、その経験を知らず、その苦労を親も子どもにさせないようにと考えて、ともかく子どもを甘やかす。最近の若いベトナム人は忍耐力がない。すぐにあきらめる。日本人から見ても、簡単に頭を切り換えてしまって粘りがない。この傾向は、ベトナム人のみならず日本人の若者も同様である。

 携帯電話を使ってメールをするのは、日本人もベトナム人も共通した若者の風俗である。インターネットの普及によって、iこういった気質は世界で共通化しているのかもしれない。

 企業経営者として言うべきことは言う。このことについてベトナム人に遠慮することはない。より一般に行って、何事にも「あきらめる」と、そこで思考停止である。その時点から創意工夫は望めない。最も考えなければならない自己成長の時期を自ら放棄したことになる。「あきらめるな」。これは世界に共通したビジネスの基本ではないか?

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2009年1月 9日 (金)

ベトナム人の投資失敗の末路

 もう5年以上前になるが、会社を停年退職されたA氏がベトナムで日本語を教えたいというので、そのお世話をしたことがある。奥様は仕事をお持ちなのでハノイに単身赴任である。ご自分の年金で十分にベトナム生活できるので、これまで日本語を無料で教えてこられた。何か社会のために役立ちたいとか、生き甲斐を感じたいということがA氏の気持ちであった。

 そのA氏の住居の大家さんが投資に失敗して、その家を売却したそうである。そのためにA氏は退居を迫られて一時帰国されている。昨年末のことである。せっかくの円高でベトナム生活を楽しめると思っていたのに・・・と残念がられていた。

 投資に失敗して自己の不動産を売却する。まさに投機である。一攫千金の夢を見ることは日本もベトナムも同じであるが、その夢の程度がベトナムは大きいのかもしれない。大きいというよりも、夢の実現の程度を知らないという方が正確であると思う。

 たとえば1億円の「宝くじ」を借金して500万円買うことが合理的な行動かどうか。少なくとも日本人なら合理的とは思わないと思うのだが、上記のベトナム人の大家さんは、それと同じようなことをやったのだとみなされる。

 このような事例によって、ベトナム人を笑うのは簡単であるが、日本でも「お金」に関連する詐欺事件は頻繁に発生している。通常の「儲け話」だけでなく、日本では「振り込め詐欺」のような家族の感情に訴える詐欺もある。このような事件はベトナムでは未だ聞かないが、おそらく今後に発生するのではないか。

 トランプを始めとして投機=賭け事を、もともとベトナム人は好む。その延長で株式投資や不動産投資をしているのであろう。この事例のような悲劇を経験しながら、投資と投機の区別ができるようになるのかもしれない。

 

 

 

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2009年1月 8日 (木)

論理的な思考の誤り:勤勉でないハングリー精神のカンボジア人やラオス人とは?

 論理的な思考方法として一般的に指摘される「演繹法」には、次のような誤りの可能性がある。十分に注意する必要がある。今日の2回生向けのゼミ(研究演習)で学生に話した内容である。

 論理(1)
① 日本は天然資源がないから国民は勤勉である。
② カンボジアやラオスは資源大国である。
③ カンボジアやラオスの国民は勤勉ではない。

 論理(2)
① 日本は富裕国だから国民はハングリー精神がない。
② カンボジアやラオスは貧困国である。
③ カンボジアやラオスの国民はハングリー精神がある。

 以上の論理(1)と論理(2)の結論を一緒にすれば、「カンボジアやラオスの国民は勤勉でないが、ハングリー精神がある」。この意味は不明確である。どこかが間違っている。何か変だ。こういうことが起こらないように論理的な思考方法の訓練をしなければならない。では、論理(1)と論理(2)のどこが変なのか。さあ、考えてみよう・・・。両者ともに②は事実である。では①の前提条件に問題がある。

 私の2回生のゼミでは、こんなことを勉強している。実践的なビジネスにおいて、論理(1)と論理(2)の結論は重要な意味をもっている。結局、妥当な結論は、単なる論理ではなく、体験や実践の中から導き出されると考えるべきである。

    
 

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2009年1月 7日 (水)

大学の「勝ち組」と「負け組」:経営戦略的な視点

 大学経営について「勝ち組」と「負け組」がある。その基準は何か?

 ます学生の「定員割れ」の有無がある。これは大学の「売り上げ」に直接影響する。大学の「定員割れ率」が基準になるかもしれない。たとえ定員割れしていなくても、大学受験生の全体の減少に対する各大学の受験生の推移を見ればよい。たとえば受験生全体が5%減少しているのに、2%減少なら「勝ち組」もしくは「健闘組」であるし、8%減少なら「負け組」である。

 こういった各種の「経営指標」を用いた大学経営の戦略が必要な時代である。私の勤務先・流通科学大学学長である石井淳蔵先生からお教えいただいた。さすがに日本のマーケティングと流通論の第一人者である。

 私見では、近い将来、大学経営の「再建ビジネス」や「M&Aビジネス」が興隆するかもしれない。大学の事業活動を学問や研究とすれば、その領域は本来グローバルである。学問や研究は世界に普遍的である。そう考えれば、大学の「再建」や「M&A」もグローバルな視点が必要ある。日本と韓国と台湾と米国の大学が連携したり、経営統合したりする。こういった連携マッチングのビジネスは十分に成立すると思う。

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2009年1月 6日 (火)

東京の「お蕎麦」屋さん:同窓生の酒井さんの店

 私の高校生時代の同窓生の酒井さんが、東京で「蕎麦さかい」を開店されています。ぜひとも今年は訪れたいと思っています。同じく同窓生で大阪で開業されている岩田研二郎弁護士からの紹介です。

 http://soba-sakai.com/

 自分が未訪問のお店をお勧めするのはどうかとも思いますが、上記のホームページを見れば、自信をもってお勧めです。それが信頼関係というものでしょう。ともかく「ビジネス=モデル」がしっかりしている。換言すれば、経営理念=長期戦略が確立されている。こういう企業は一般に成功すると思います。

 ただし蕎麦つゆの味は、色が黒くて塩辛い関東風なのでしょうか・・・。私自身、今年も好奇心をもって、元気で仕事に取り組みたいと思っています。

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2009年1月 5日 (月)

企業論では何を教えるか:反省と課題

 私が担当する「企業論」では、少し前まで日本経済において規制緩和が必要であり、グローバル=スタンダード(米国標準)の導入がグローバル経済に埋め込まれた日本では当然と講義してきた。

 ただし、それは企業側の論理であって、それは現在の一般的な主流の理屈にすぎないということを「言い訳」のように最後で付け加えてきた。しかし、それは特に強調した主張ではなかった。少数派の意見だったからだ。それが今や逆転したのではないか。規制緩和=市場競争原理=米国偏重に対する反省が2008年世界同時不況からの教訓と言われている。

 このような自己反省の結果として、企業の理論の原点に戻ることである。企業の本質は何か? 本来の企業とはどうあるべきか? この課題に答える講義が必要である。派遣・非正規労働者の大量解雇の現状を見ていると、「労働コストを固定費から変動費に変更させる」という理屈を安易に講義してきたことに深く反省させられる。

 こういった理屈は軽いが、現実は重い。現実には、「コスト」と呼ばれる人間の生活や生命がかかっている。このような講義時に必ず、人間を「コスト」扱いする企業の論理を私は批判的に指摘したつもりであるが、それが学生に伝わったかどうか。

 「歴史博物館」に収蔵されていたと思われた小林多喜二『蟹工船』が復活し、広く読まれる時代である。このことだけからも、明らかに1年前とは時代が変わった。

 変化の時代は、ともかく原点から考えることである。そもそも政治とは何か。政党とは何か。企業とは何か。銀行とは何か。証券会社とは何か。大学とは何か。大学生とは何か。 それぞれの存在意義を原点から問い直すことで、変化の中で進むべき新しい方向が見えてくるのではないか? 不易流行。 

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2009年1月 4日 (日)

2008年世界同時不況からの教訓:キーワードは「原点回帰」

 ベトナムやラオス・カンボジアの経済や企業経営に関する問題を私は10年以上考えてきました。その観点から見て、昨年2008年世界同時株安・世界同時不況からの今後の教訓は、特に証券市場について言えば、その「原点回帰」であると私は考えています。すでに、このことは本年の元旦に指摘しました。

 こういったことを大学の教材にしようと添付のような資料を作成しました。簡単な概念図ですが、具体的な統計数値を調査すれば、各国の国際金融の特徴が浮かび上がると思います。以下、そのファイルを添付します。ご意見やご批判を頂戴すれば幸いです。

 「2008lessons.doc」をダウンロード

 今回はコメントを頂戴できればと思います。以下に自由にお書き下さい。

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2009年1月 3日 (土)

ラオスは「オランダ病」に感染した?:広島修道大学・豊田利久教授の診断

 ラオス通貨(キープ:KIP)の対米ドルの為替レートが上昇傾向にあり、1人当たりの国民所得もカンボジアを抜いてベトナムに迫ろうとしている。これは豊富な天然資源(金・銅・電力・・・)を輸出した成果である。

 このことについて、広島修道大学(前・神戸大学)の豊田利久教授は、完全な「オランダ病」と診断している。豊田先生には、2001年の私のラオスJICA専門家の滞在時からお世話になっている。先生からの年賀状にラオスについて、このように指摘されていた。

 この「オランダ病」とは経済用語である。1970年代にオランダが天然ガスを輸出して社会福祉を充実させたが、その後に財政赤字になったことが、この用語の起源である。天然資源の輸出によって国家財政が一時的に潤って通貨高となる。その時に製造業の国際競争力が十分でなければ、製造業の輸出品が伸び悩む。その後に天然資源の市況や枯渇によって国家財政が赤字=破綻に転換する。 

 昨年から私もラオスのキープ高の原因が気になっていたが、それは米ドル価値の下落の反映であって、貿易高が最も多いタイ通貨のバーツに対してはキープ高とみなされないと指摘されており、それに私も納得していた。しかし豊田先生による「オランダ病」の診断は確かに注目しなければならない。

 来年10月に予定されているラオス証券市場が開設されると、米ドルが大量に流入することは間違いない。これに伴って、さらなるキープ高が加速されることは必至である。このキープ高は、ラオスの人件費や輸出価格の国際競争力を低下させる。この対策として、それを補填するほどの生産性向上や輸出促進のために、証券市場で調達された資金が有効に使用されなければならない。

 ラオスの場合、上場予定企業のほとんどが国営企業もしくは国営企業との合弁企業であるから、株式公開による利益は国家財政の収入となる。この収入が、上述のようにラオス経済の「オランダ病」の予防薬として使用されるかどうかが、ラオス経済の将来を決定する重要な分岐点である。

 日本や韓国のような資源不足国の国民は勤勉に働く。ラオス・カンボジアは共に天然資源の宝庫である。したがってラオス・カンボジアの国民は勤勉ではない。この単純な三段論法を論破するためにどうすればよいか? 実際には、天然資源の多寡と国民の勤勉性の高低の間には、いくつかの前提条件が存在している。「オランダ病」 の処方箋を考えるためには、このような問題も検討しなければならない。

 ラオス=「オランダ病」の分析視点を頂戴した豊田先生に感謝を申し上げたい。

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2009年1月 2日 (金)

瀧安寺に初詣:レトロ感覚

 「ANEetoRI0052DE1.gif」をダウンロード

 阪急電鉄・箕面線の終点、箕面駅。そこから箕面滝までの途中にある瀧安寺に初詣に行った。http://www.nanokaichi.com/ryuanji/index.html

 瀧安寺の少し滝側には山本珈琲館がある。また沿道に位置する音羽山荘は大正時代の木造建築の旅館がる。この両者は、積極的にレトロな雰囲気を「売り」にしている。

 私は中学生時代、この滝道を何度も冬のシーズンに陸上部の練習で走った。雰囲気も想い出も古く懐かしい。以下、写真をどうぞご覧ください。

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2009年1月 1日 (木)

カンボジアとラオスの展望:証券市場の原点回帰

 謹賀新年

 本年もよろしくお願い申し上げます。happy01 lovely

 2009年はカンボジアとラオスが注目される年になるであろう。理由は簡単である。両国ともに証券取引所が今年から来年にかけて開設されるからである。

 事実、この数年、中国に次ぐ経済成長率を達成しているアジア諸国は、ラオス・カンボジアそしてベトナムである。米国発の経済危機、世界同時不況の影響が懸念されるが、もともと国内生産が低水準の発展途上国は必ず成長する。

 簡単に言って、100が101に増えて成長率1%、1が1.1に増えて成長率10%になる。売り上げを1単位増やすのは困難かもしれないが、0.1単位増やすのは比較的簡単である。先進国=成熟国が前者であるとすれば、発展途上国は後者である。これまでは、この成長率を一般の人々が享受する手段がなかったが、今年からはカンボジアとラオスで証券投資=間接投資ができるようになる。

 証券市場の開設はベトナムで経験している。このベトナム証券市場は「バブル」と「バブル崩壊」を経験済みである。それは様々な教訓をベトナムのみならず、 周辺国であるカンボジアやラオスにもたらしたはずである。それは実体経済との連動に注目することである。

 昨年からの世界同時不況の原因は米国を中心とした「マネーゲーム」であったが、そうならないためには、証券市場で調達された資金が実体経済の成長に向かうことである。株式公開や増資によって調達した資金が生産設備や工場建設に使用される。これが証券市場の機能の原点である。

 この原点回帰が、証券市場の再生・復活のキーワードであると私は思うし、それを最も必要としている国がカンボジアやラオスである。これらの国では、証券投資の資金がマネーゲームに使用されると困る。経済成長のために本当に資金を必要としている。こういう国の証券市場が、この世界不況の時期に登場することは、投資家にとっても、その国にとってもheart04幸運heart04である。

 

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