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2008年12月30日 (火)

ベトナムにおける「全会一致の原則」の撤廃:少数株主の保護も必要

 ベトナムの新しい企業法では、取締役会の「全会一致の原則」が撤廃されている。これは、2003年から開始された日越共同イニシアティブの成果である。

 合弁形態で進出した日系企業が、株式所有では過半数を掌握しているにもかかわず、少数株主を代表するベトナム人取締役の反対によって取締役会で経営方針が決定できない。たとえば利益配分を決める場合、配当性向を100%にするか、一定の内部留保を保持するかという選択問題がある。さらに労働者の賃上げやボーナス額の決定などで意見が相違することもある。これらはベトナムに限らず、海外ビジネスでは一般に悩ましい問題である。

 こういう問題を回避するために外資100%の海外進出が望ましい。このアドバイスが通常である。また私見でも、これが正攻法の海外進出であると思う。

 ただし、日本企業側が少数株主になる場合が発生する。ベトナムにおいて日系企業で株式上場している企業は未だないが、将来には出てくるだろう。企業規模が大きくなれば、日本側が少数株主になるかもしれない。また上場はしなくても、現地ベトナム企業の株式の一部を日本の親会社の方針で売却する場合がある。日本側が100%もしくは過半数の株主の立場から、少数株主の立場になる。これについてはすでに複数の実例がある。

 おそらく今後、株式の取得・譲渡によるM&Aがベトナムで活発になる。そういうことが可能になるほどに株式市場がベトナムで定着していると予想される。この場合、少数株主になれば直ちに無権利状態になるとすれば、こういった「M&A市場」が活性化しない。これは経済全体として経営資源の再配分を阻害している。1960年代に指摘された「会社支配市場」の論理である。

 たとえば51%の株式の31%を売却して、その資金で新しい事業を始めたい。残り20%で既存の会社経営にも関与し続けたい。こういう事例が想定できる。この経営者は、今のままでは株式所有が51%から20%になって支配力が消滅する。それを懸念すれば、株式を売却しないであろうし、新しい事業も始まらない。これは経済成長にとって負の影響を及ぼす。

 少数株主の権利が保護されていれば、株式所有が20%でも安心できるのではないか。日本でも少数株主は保護されている。

 日本企業による「全会一致の原則」の撤廃要求は、おそらく日本側が過半数をもって当然という前提である。少し短絡的な要求ではなかったのかと私は思う。日本側が少数株主の場合、この原則の廃止は逆に日本側には不利になる。これについて少し次に検討してみよう。

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