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2008年12月23日 (火)

ベトナムと中国の政治体制の比較:ベトナムの人権問題

 松尾康憲『増補改訂版・現代ベトナム入門』日中出版、2008年を読んでいる。2005年に第1版が出版され、本年に内容が改訂された。松尾氏は、共同通信の元ハノイ支局長である。その現地取材に基づく情報は説得力をもっている。

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 日本人の中に根強いと思われる「ベトナム=共産党一党独裁国家=非民主主義」という見解、その反対に「ベトナム=市場経済化=資本主義化」という指摘もある。これら2つの指摘について、同書はベトナム政治の現状を明確に語っている。中国との比較で考えれば、それは理解しやすいであろう(206頁)。

・ベトナム経済⇒社会主義指向市場経済
・中国経済⇒社会主義市場経済

・ベトナムの現状⇒「民族民主革命」から「社会主義」に進む過渡期
・中国の現状⇒社会主義の「初級段階」から「高度な段階」に進む過渡期

 以上、すでに中国は社会主義国であり、ベトナムは未だ社会主義国になっていない。このような国家体制の根本的な規定の相違が、さまざまな政策に反映されている。そうすれば、両国の民主主義=人権問題についての相違も理解できる。ベトナムは旧ソ連や中国をモデルにしない独自の社会主義を指向している。そのために中国よりも柔軟な政治行動が可能である。

 米国のピーターソン前駐ベトナム大使が、2003年に次のように述べている。「ただ人権擁護に関する知識を得ることよりも、その進歩という点を考慮すべきである。それは、人権擁護を完全に実践する能力を持っている国は存在せず、我々は絶えず努力しなければならないからである。進歩について考えるならば、ベトナムは、個々人の人権についても様々な宗教団体についても、明らかにとてもよくやってきた」(174頁)。

 ピーターソン前大使の見解に松尾氏は「まったく同感である」(175頁)と述べているが、私も同感である。完全な民主主義や完全な自由は存在しない。それに向けての努力が重要である。他国を批判する前に自国について自省することが求められる。

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