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2008年11月30日 (日)

各国の景気対策コンテスト:国際的な評価を意識せよ!

 米国発の世界同時不況に対して各国は景気対策を発表している。この不況の発生が、一般に指摘されているように100年に一度とすれば、各国の景気対策を国際比較することは、やはり100年に一度の研究の好機とみなすことができる。

 「好機」と言うのは、不景気の中で資金繰りに苦慮されている経営者の方々に申し訳ないが、社会科学の研究者として、これを好機と感じないわけにはいかない。

 通常、研究対象を比較・対照して分析する場合、「ほかの条件が同じとすれば」という環境を設定しなければならない。たとえば新薬の効果を実験するとき、薬を飲んだという心理的な影響を除去するために、単なる小麦粉でできた薬を飲む人と、新薬を飲む人とを被験者として用意することがある。この2人は、それぞれの体質や肉体条件は同じであるほどよい。

 自然科学では、こういった実験の条件を人工的に設定できる場合が多いが、社会科学ではそれが困難である。同じ条件を同じ時期に設定できないからである。何か一つでも同じ条件が与えられただけでも、その国際比較から得られる成果はより的確である。

 このような意味で今回は、世界が同時に不況という同一の条件が与えられたのである。それに対して、たとえば消費税の引き下げを採用する国もあれば、公共投資を増大させる場合もあるだろう。日本のように給付金を国民に直接支給する国はあるのだろうか? このように各国の景気対策コンテストのような状況である。これらを比較することによって、その国の政府の特徴が明らかにできるだろう。

 今後、日本政府の緊急で本格的な景気対策が期待されるが、それは国内に向けた視点で検討されるだけでなく、外国からも注目されていると認識されるべきである。国際的な視野で外国からも高い評価を受ける景気対策が求められる。そうであるからこそ、日本人の優秀性や存在感を世界に示すことができる。

 日本国内でも「愚策」と批判されるような政策を強行することは、国際的に日本の評価を低下させることになる。このような「愚策」の提案者は、国際的な視野が欠如していると批判されても、また世界から嘲笑されることになっても、それを甘受しなければならないであろう。日本の政策に世界が注視しているという緊張感が政府に必要であると思うのだが・・・。

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2008年11月29日 (土)

どのようにバンコックから帰国するか?

 毎年、学生を中心に組織したラオス清掃ボランティア活動をしているが、ラオスにタイ経由で向かう場合、タイでは2006年に軍事クーデター、今年に反政府運動に遭遇した。そして現在、国際空港の閉鎖という最悪の事態である。

 私はホーチミンまたはハノイ経由でビエンチャンに行くことにしているが、学生は格安航空券のバンコック経由を頻繁(ひんぱん)に利用する。しかし今回のように国際空港の閉鎖となれば、もう安心してバンコック経由を利用できない。

 バンコック国際空港が閉鎖の場合、どうすれば日本に帰れるか。こういうシュミレーションをしておかなければ、海外旅行のリスク管理としては不十分である。

 国際線があるチェンマイまで国内線で行って、そこからラオスそしてベトナム経由で日本に帰る。国内線も封鎖されたら、鉄道かバスでビエンチャンまで行ってベトナム経由。タイとラオスの国境越えは簡単だから、このようなルートが考えられる。

 もちろんバンコックからカンボジアの首都プノンペンまで陸路で行くことも考えられる。プノンペンから韓国のインチョン経由またはベトナム経由で日本に着く。このカンボジア経由の場合、タイとカンボジアの国境通過について私は未体験であるから確かなことは言えない。

 タイの政情が今後も安定しなければ、インドシナ半島の「ハブ空港」はホーチミン市と認識されることにもなりうる。事実、昨年に新築されたタンソンニャット国際空港に加えて、さらに巨大な新空港の建設がベトナムでは計画中である。その話を数年前に聞いて「そんな過大な計画?」と思ったが、それも今では現実味がある。

 

  

 

 

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2008年11月28日 (金)

政治的安定:ベトナムの優位性

 タイの国際空港が反政府市民団体によって現在も閉鎖されている。11月26日にはインドのムンバイで死者100名以上のテロ事件があった。さらに少し前には、タイとカンボジアの国境での軍事衝突があったが、現在は沈静化している。

 このような政治的・軍事的な紛争・対立は、経済発展にとって大きなブレーキになる。工場生産や物流が中断する「オペレーショナルリスク」が確実に増大する。その結果、もちろん「カントリーリスク」が高まる。外国投資は減少・撤退する。

 これに対してベトナムの政治的な安定性は世界から評価されており、それがベトナム直接投資の主要な魅力になっている。なぜ安定しているのか? 

 理由は単純ではないが、そのキーワードは「ホーチミン思想」、儒教精神、「草の根」の保守イデオロギー、柔軟な政策、祖国戦線、愛国心、着実な経済成長と言ったところであろうか。ベトナムの政治的な優位性が改めて再認識されなければならない。

 なお、この「草の根」の保守イデオロギーは古田元夫教授(東京大学)の命名である。

 

  

 

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2008年11月27日 (木)

政府首脳の人事が株価を上げる:「救国内閣」で政治的安定が必要では?

 米国の次期大統領オバマ氏による政府首脳の人選が進んでいる。

 「オバマ次期政権がニューヨーク連銀のガイトナー総裁を財務長官に起用する方針との報道を受け、取引終了間際に買いが膨んだ」と報道された(『日本経済新聞』2008年11月22日夕刊)。事実、この日は「前日比494㌦13㌣高の8046㌦42㌣で取引を終了した」。

 その前後の報道によれば、米国の政府首脳人事は、民主党からはヒラリー上院議員やゴア前副大統領(ノーベル賞受賞者)、さらに共和党からも人材が起用される可能性もあるそうである。まさに全米「オールスターキャスト」政権になるのではないか?

 そこまでしなければならないほどに米国の経済危機は深刻ということである。「挙国一致の救国内閣」が日本の歴史の中でも成立したと記憶しているが、まさに米国がそれではないか?

 他方、日本も米国以上に危機的な状況が政治や経済に及んでいると私は思う。日本でこそ再び「救国内閣」が必要ではないか? 政党の主張や思惑は様々であるが、閉塞感に満たされた日本において、国民生活を最優先にした政権が必要であることに異論はないであろう。

 政治が健全に機能しないと、景気も回復しない。株価も上がらない。当然である。「政治の安定が経済成長の前提である」とベトナム投資環境の議論で何度も指摘されてきたが、これが今こそ日本にも妥当する。米国は、それに向けて動いているように思われる。

 このように考えると、日本の場合、政治的な対応の遅延が景気回復の「足かせ」になっているのではないか? その対応とは、個々の景気対策の善悪やタイミングの問題ではなく、日本における政治体制の安心感・安定性を確立するという問題である。

 この2つの政治問題は区別されなければならない。私は、後者の問題が解決しなければ、本格的な経済成長は日本でありえないと懸念している。

flairflair: ベトナムの経済政策の稚拙が、日本を含む先進国から批判されることがある。たとえばインフレ対策のための「金利引き上げが遅かった」というような内容である。これは上述の政治問題で言えば、前者の問題である。確かに個々の政策での失敗はあるだろうが、少なくともベトナムの政治体制は安定しており、安心感がある。日本は、政治の安定感・安心感に「ゆらぎ」が発生しているのではないか? これは注目の論点であると主張したい。

 

 

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2008年11月26日 (水)

ロータス投資運用会社提供「ベトナム経済ニュース(23)」:ベトナム証券市場の回顧と展望

 ベトナム証券界で有名なファンドマネージャーのタイ社長(ロータス証券ファンド投資運用会社)が、ベトナムの証券市場について次のように述べている。

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 証券取引所が開設以来この8年間、ベトナム証券市場は上場企業数や外国投資家数、法律の整備及び市場参加者の拡大などの成長が見られました。

 世界における多数の証券市場と同様にベトナムの証券市場も株価の上昇周期と下落周期があります。証券や株式会社に関する知識や経験が不十分な個人投資家が大部分を占めるベトナムのような新興市場では、このような変動は顕著に現れます。

 これらの変動周期においては、長期的志向の投資家や、一般投資家の逆方向に行動し、慎重に企業を選択する忍耐強い投資家は必ずハイリターンを獲得できると思います。

 ベトナム証券市場はこの2年間激しく下落しましたが、おそらく将来は激しく上昇するでしょう。その重要な根拠は、時間と共に企業が成長することと投資家心理が周期的に変化するためです。

 その他の反転の根拠としては、1)IPOされた国営企業が上場、2)未上場企業が上場、3)民間企業のIPO及び上場などが期待されます。

 国内外の投資家がベトナム証券市場により積極的に参加するような市場変化が、近い将来に目撃されうると思います。投資チャンスは現在及び将来に非常に多数存在すると確信しております。
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flairコメントflair
 
以上の見解に私も同意見である。当たり前のことを言われているようであるが、ベトナム人のファンドマネージャーであるタイ社長が述べていることが注目されてよい。ベトナム人の優秀性を証明している。彼と話していて、その英語力や証券知識・投資哲学に私は感心させられてばかりである。このような会社がもっと成長して不思議でない。顧問としての私の非力を反省している。

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2008年11月25日 (火)

「こだわり」の精神が必要:ベトナム製造業

 日本人や日本企業では「こだわり」という意味が理解され、実践されていることが多々ある。それが日本人の文化的な固有の特徴であると思うし、それが日本企業の競争優位性の源泉の一つであると私は考えてきた。

 そこで私はそれを英語で subtle difference と訳して、これまで何回かベトナム人を始めとする外国人に講義してきた。直訳すれば、「微妙な差異」である。

 日本企業からの教訓として、同業他社との「微妙な差異」を自社で追究しなさい。品質・検品・原材料・サービス・笑顔など何でもよい。いわゆる「価値連鎖」の中で何でもよいので「微妙な差異」を作り出す。この継続と蓄積が、差別化戦略になり、競争優位性を形成する。

 無料情報誌『セーリング・マスター』(http://www.bwg.co.jp/sailingmaster/index.html)(第9号、2008年11月)において、株式会社エーエヌラボ・代表取締役のハー氏(Nguyen Viet Ha)は、私と同じ意見を述べている。

 「ベトナム人のビジネスパーソンにとって、一番足りないのは「こだわり」だと思っております。・・・ベトナムにとって、現在一番の課題は、『サービスの質(産業の場合は品質)』と『自分の強みでないところに資源を集中させ、バブルを起こしている』ことです」。

 「求められるから仕事をするのではなく、自分のこだわりや、自分の製品を誇りに思う心、向上心を持つことが、今後のベトナムンのビジネスパーソンにとって、一番重要です。

 また、こだわりを持ったビジネスパーソンは、自分の強み以外の分野にビジネスを展開することに警戒心を持つでしょう。その結果、バブル的な経済発展が起こりにくくなるのではないかと考えております」。

 これは私も同感である。また、この「こだわり」は、製造業における「もの作り」 にも通用する。単なる「組み立て」ではなく、それに各自が「こだわり」をもつことが「もの作り」になる。その結果、自らの製品に対して愛着や誇りが生まれる。このことをベトナム人に体験・実感してもらうことが重要であろう。

 このような研修のためには、たとえば1週間、同じ会社で大学生のインターンシップのように従業員と一緒に仕事することが効果的かもしれない。

 

 

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2008年11月24日 (月)

ベトナム株式投資の最新情報:優秀なベトナム人の「試金石」となる時期が到来か?

 ベトナム株式市場における投資環境の悪材料が年度末までに出尽くして、来年の「テト明け」から、いよいよ株価反転と私は指摘していた。

 また複雑な仕組みの金融商品に投資するのではなく、実体経済の成長が伴った目に見える着実な株式投資が今後の主流になると私は本ブログで提唱した。世界同時株安といった空前絶後の状況においてこそ、企業の資金調達に寄与する株式の機能の原点に立ち返った投資商品が、古くて新しいコンセプトの金融商品になりうると私は思ってる。それがベトナム株式である。

 そう考えるのは私だけではないようである。世界の資金がベトナムに集結する可能性が高いと思われる。ここでも日本は再び出遅れか? 

 2007年の「バブル経済」の崩壊からベトナム人は教訓を学んだのか? 株価暴落によって学習したベトナム人投資家とベトナム企業が、今後は長期投資を考えた賢明な投資家および発行主体に成長してくれることを期待したい。

 それができなければ、「ベトナム人は優秀もしくは賢明」という評価が軌道修正されなければならない。単なる「拝金主義」に堕した発展途上の国民にすぎないという評価をベトナム人は甘受しなければならないだろう。

 ベトナム株式の再起の時期は近い。もちろん私見である。

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2008年11月23日 (日)

ベトナムが抱える課題と魅力:『セーリングマスター』誌から

 『セーリング・マスター』誌(第9号、2008年11月)は、「ベトナムが抱える課題と魅力」という特集記事を掲載している。同誌は、日本のみならずベトナムの主要ホテルにも設置され、無料で配布されている。http://www.bwg.co.jp/sailingmaster/index.html

 ベトナムビジネスの魅力を再発見という記事が満載されており、ベトナム関係者は必読である。この中で大木健司氏(株式会社ブルーチップ・コンサルティング代表取締役)が、次のように述べている。

 「ベトナムではチェーン展開化されたサービス業が皆無に等しい状況。裏を返せば伸びる余地が非常に大きい。ベトナム特有のリスク、例えば人的リスクを抑えることができ、成功できる可能性を大いに秘めています」(9頁)。

 すでにG7マートが、チュングエンコーヒーで成功した店舗展開のノウハウを活用して、コンビニチェーン店を展開している。数年前にヴー社長にもお会いして、お話を伺ったが、その後のビジネスの進捗状況をお聞きしていない。

 当時の話を敷衍して私見を述べれば、チェーン加盟店を指導するスーパーバイザーの人材不足が問題点である。独立して営業している店舗が、加盟料を支払ってチェーン店に加盟する。店主が期待することは、売り上げ増加と本部からの的確な経営指導である。この指導体制が不十分ではないか?

 ベトナム製造業において中間管理職の人材不足が指摘されて久しいが、流通小売業でも人材不足は同様である。この人材とは、単なる知識の所有者ではなく、顧客のニーズを把握して、それに柔軟に対応できる感覚と行動力とリーダーシップをもった人材である。

 製造業のみならず、小売業さらにサービス業における実践的な人材育成は、ベトナムの企業成長および経済成長にとって大きな課題である。日本の官民が協力した支援が求められるが、ただし、その日本でも「実学」教育は難しい。それだからこそ、このブログの副題にもなっている。

 

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2008年11月22日 (土)

どうぞ紅葉を楽しんで下さい

 私の住んでいる大阪府箕面市の紅葉を以下でお楽しみ下さい。パノラマ動画も必見です。

http://www2.city.minoh.osaka.jp/SYOUKOU/kankou.htm

 今日は、余韻をもって終わりです。 

 

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2008年11月21日 (金)

「貯蓄から投資へ」と言いながら・・・

 日本国内では「貯蓄から投資へ」という政策の潮流がある。これは、間接金融から直接金融へ資金の流通経路の重点を移行させようという趣旨である。そのために規制緩和が推進され、その結果として金融商品取引法が新たに制定された。

 このような金融政策は、現在の日本政府の基本姿勢であると私は思っていた。しかし米国ワシントンで11月14日に開催された「金融サミット」では、麻生首相が、世界的な間接金融の強化を推進する提案を行った。

 すなわち『日本経済新聞』の第1面の紙面は、新興国支援策として「外貨準備から10兆円、IMF強化」(11月13日)、「IMF資本金倍増}(11月14日)、「金融安定化、途上国銀行に資本注入」(11月15日)と報道した。

 日本が提案する国際金融機関の機能強化策として、国際通貨基金(IMF)・世界銀行・アジア開発銀行の資金量を増やすという提案である。これこそ、国際的な間接金融の促進策に他ならない。このことは、日本政府の独自の支援策を放棄して、とりあえず国際金融機関に任せるということである。

 私見では、日本政府が「貯蓄から投資へ」・「間接金融から直接金融へ」と本気で考えていて、それを世界にアピールするためには、日本政府の自己責任で直接に新興国や発展途上国を支援すると提案するべきだったのである。二国間の直接支援によって、日本の影響力を拡大できるのである。

 これができなかったのは、自己責任を取るリスク負担に対して、日本は腰が引けたからではないか。政府が「貯蓄から投資へ」と主張して、投資の自己責任を国民に強調しながら、その政府自身が自己責任を取らないのである。こういった中途半端な弱気の政府の姿勢が、国内的にも国際的にも、日本政府の迫力あるリーダーシップを感じさせない理由であると思う。

 

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2008年11月20日 (木)

今日は何の日?

 11月20日は何の日か? 「ボージョーレ=ヌーボー」の発売日という人は、その通りであるが、ベトナムでは「先生の日」である。

 今年夏にホームステイを引き受けた貿易大学のベトナム人学生2名から、先生ありがとうというメールをもらった。こういう習慣は日本にないから、非常に嬉しかった。

 そう言えば、私の留学当時の1998年にも「先生の日」があった。ベトナム語の先生に「花束」と「寸志」をプレゼントしたことを思い出した。

 日本にも、こういった日を多数作ればよいのだ。いろいろなイベントで日本が活力できる。「敬老の日」・「母の日」・「父の日」に続いて、職業別の日を作る。「銀座ホステスさんの日」とか「タクシー運転手さんの日」があってもよい。麻生総理の謝罪発言の対象であった「医師の日」があってもよい。これらは、企業の社会貢献として提案されてもよい。

 たとえば毎月1日は「映画の日」として定着している。「ゲームセンターの日」があってもよいし、「ラーメンの日」も悪くない。また外国の日を設定する。たとえば「アメリカ合州国の日」や「ベトナムの日」である。全国の関係団体や留学生が各種のイベントを実施する。

 こういったイベントに伴って百貨店・スーパー・商店街・小売店が関連商品の販売促進活動をすればよい。景気の刺激になるであろう。

 

 

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2008年11月19日 (水)

株価修正はいつになるのか?

 『日本経済新聞』(2008年11月13日)の「十字路」で、山口大学経済学部教授の城下賢吾先生が「株価修正はいつになるのか」という表題の記事を執筆されている。城下先生と私は大学院生時代の先輩後輩の間柄である。もう30年前の話である。

 城下先生は、最近の株価下落の異常な下落について、「最終的に投資家が誤りに気づき非合理的な部分を解消し、株価は妥当な水準に近づいていくであろう」と述べている。

 この点について、ベトナムのロータス投資ファンド運用管理会社のタイ社長が同様のことを述べている。2006年末の創業当初から私は同社の顧問をしており、同社は、いよいよ有限会社を株式会社化して上場を目標にすることになった。日本とベトナム間の民間資金の流通経路がますます拡大することが期待される。さて、ロータス社の投資哲学として、以下の点が指摘されている。これはタイ社長(投資運用部長を兼務)の見解でもある。

 1.株式はその企業の一定の所有権を表示する為、株式投資はその企業の経営活動に参加することを意味します。
 2.ある企業の過去・現在及びその企業の将来に影響を及ぼす可能性がある要素に関する綿密な研究調査を通して、その企業の将来性を予測することができます。
 3.将来の一定時点で、その企業の株主が獲得できる成果が大きく下落するかもしれませんが、これらは市場心理(センチメント)、現時点の市場投資機会の存在レベルなどに起因すると考えます。
 4.投資先会社に対する支援は一定の状況において実施することができます。これは株式の価値を増加させることに繋がります。
 5.長期的に見て、時間の経過とともに株価は企業の基本要素をより的確に反映するようになります。

 この中の5番目の事項が、城下先生の指摘と同様の意味である。行き過ぎた株価下落は、必ず修正される。この逆に、行き過ぎた株価上昇(=バブル状態)も必ず修正される。この認識が重要である。このように考えると、ともかく長期投資がリスクを減少させる。今日の株価乱高下の時こそ、この戦略が再検討されてよい。今こそ、日本でもベトナムでも、長期保有のための「仕込み」の絶好のチャンスである。

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2008年11月18日 (火)

ベトナムで外資100%銀行が認可された背景

 少し古いニュースになるが、ベトナムの金融市場が外資に開放された。より正確に言えば、ベトナムのWTO加盟時の約束に従って、100%出資の外国銀行設立をベトナム中央銀行が認可したのである(『日本経済新聞』2008年9月15日)。

 この銀行は、英銀大手のHSBCとスタンダード=チャータード銀行である。同報道によれば、「今後も順次、100%出資を認める方針とされる。外資が本格進出すれば、収益力の弱い中小行などが金融再編の対象になる可能性もある」。

 この両行が認可されたことの背景は何か。両行は、すでにベトナムで操業の実績をもっている。今回の100%外資化によって自由裁量の経営展開ができる。新たな競争の導入によって、ベトナムの銀行業全体の経営効率化とサービス向上が促進される。これはWTOの趣旨にも合致している。

 他方、ベトナムにおける銀行の問題として、私は不良債権の問題を指摘してきた。昨年からの不動産価格の上昇を加速したのは銀行融資であり、現在、不動産価格の下落によって、その銀行が不良債権を抱え込んでいると想像される。こういった不良債権処理をする適当な会社がベトナムに存在していない。そうであるとすれば、今年度の第4四半期の決算を前にして、銀行の経営破綻が発表されるのではないかと私は懸念している。

 認可された二行は、今回の世界同時金融危機の影響が大きくない(『日経ビジネス』2008年10月20日)こともあり、この時期にベトナムに積極的な進出する。このように考えられる。では日本の銀行はどうか? 日本の銀行も経営状態は悪くないはずである。ベトナムにおける東京三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の動向はどうなっているのか? 気になる問題である。

 以上のことから推理すれば、100%外資銀行が不良債権を抱えたベトナム銀行を買収するというシナリオが考えられる。つまり不良債権を処理するために外資銀行が利用されるのである。『日本経済新聞』の報道では、「収益力の弱い中小行などが金融再編の対象」と指摘しているが、これは一般的な説明である。

 実際には、より具体的で緊急性のある銀行の不良債権処理がベトナム金融再編の「引き金」となり、その「主役」として上記のHSBCとスタンダード=チャータード銀行が抜擢されたのではないか? 日本のバブル崩壊後の日本の銀行の不良債権処理は、欧米系金融会社の独壇場であったと聞いている。ベトナムでも、その歴史が部分的に再現されるのかもしれない。今後の事実の推移によって、この推理が検証されるであろう。

 

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2008年11月17日 (月)

世界同時不況下のベトナム経済:最悪のシナリオ

 先週の土曜日(15日)に既報であるが、大阪市・本町で「ベトナム・ドバイ・ヘッジファンド投資セミナー」があった。

 主催者を代表して、金融商品仲介業・ユニバーサル・マネーコンシュルジュ株式会社http://www.aru-aru43.com)の代表取締役・北野明信氏が挨拶をされた。この金融商品仲介業については、ぜひ上記のHPを参照していただきたい。2004年から認可された新たな投資家向けの金融サービス業である。

 このセミナーで私は、今後のベトナム経済やベトナム株式の見通し、さらにカンボジアやラオスの株式市場開設の進捗状況を話した。いつもベトナムについて私は「楽観論」ばかりなので、以下では「悲観論」を紹介してみよう。

 世界同時経済不況の中で、ベトナムの直接投資と間接投資の両方が停滞することが想定される。対米輸出の減少を始めとして輸出全般が縮小する。外貨を稼ぐ輸出企業を保護するために政府は「ドン安」を誘導するが、これは輸入価格の上昇を意味する。これはインフレ抑制に反する。この微妙な政策調整が難しいのではないか。

 また、いわゆる「すそ野産業」が十分に発展しない場合を考える。これは、ベトナム製造業における原材料・部品の国内調達が不十分なことを意味する。そのまま2015年のASEAN経済統合に突入すれば、無関税の原材料・部品がASEAN周辺国や中国から輸入される。外貨獲得のために政府が輸出企業を支援するとしても、輸出が増加すればするほど原材料・部品の輸入も増加するから、思ったよりも貿易黒字にならない。その結果、外貨準備が増えない。

 これは韓国経済の状況に似ている。貿易黒字で外貨を稼いでも、対日貿易は常に赤字である。製造部品を日本から輸入しているからである。韓国人の中には貿易黒字なら、対日赤字を気にしなくて良いという人もいるが、経済活動の根幹を日本に依存していることは事実である。総じて外国投資に依存した韓国経済は、今日の「ウォン安」や1997年の通貨危機を見ても理解できるように不安定である。

 農産物・水産物の加工輸出において、今日の中国のような状態が発生する可能性もある。「ベトナムよ、お前もか」とベトナム食品の信頼性が喪失する。さらに10月末にハノイを襲ったような自然災害が頻発することもありうる。以上の状況に対して政府の対策は後手に回る。国営企業の改革が進まず、自国の天然資源の「切り売り」状態で輸出を促進し、それによって外貨を獲得するが、いつか天然資源は枯渇する。

 以上の悲観的なシナリオの実現を回避するためにベトナムは何をするべきか。その実行はベトナム人に依存する問題である。ただし私見では、ベトナムは危機に対する強靱性・耐久性がある。ベトナムの民間組織である「祖国戦線」を中心にした国民運動が発動されれば、世界で最も愛国心をもった国民は、おそらく大部分の危機を克服するのではないか? 悲観論を言いながら、やはり最後は楽観論になってしまった。

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2008年11月16日 (日)

ロータス投資運用会社提供「ベトナム経済ニュース(22)」:10月の株価レポート

 ベトナム現地法人・ロータス投資ファンド運用管理会社の提供による10月のベトナム株式レポートを紹介する。

 10月に Vn-indexは24.01%、Hastc-indexも22.67%の下落を示し、OTC市場も同様の下落が見られました。その結果、本年6月の「底値」を下回り、新たな「底値」を探る展開となりました。10月の証券市場は多くの要因によって影響を受けましたが、その中で次の4点が注目されます。

 1.世界同時株安:特に米国証券市場の歴史的な暴落です。これはベトナムにとって突発的な外部要因でした。ここから2つのことが指摘できます。まず、米国証券市場との連動性が強いということです。米国市場の取引時間はちょうどベトナムの夜間になります。多数の投資家は翌日の投資行動を夜間に考え、結局その夜の米国市場の変動が彼らの翌朝の売買に心理的な影響を及ぼします。更に、米国市場を考慮しない人さえもこの影響を受けてしまいます。ベトナムにおける株価変動はほぼ米国の株価と同じ方向に変動しています。
 次に、この変動は売買される株式の企業価値よりも注目されています。ベトナムの短期投資家は米国の事情にかなり関心を向けています。弊社の私見では、この連動性は時間と共に不合理と認識する投資家が増え、その為この連動性も弱くなってくると考えられます。もちろん米国経済の動向に業績が大きく依存する企業には注意が必要です。

 2.上場企業の業績発表:第3四半期の予測と公表された実績との落差は、最近の株価の変動に大きな影響を及ぼしました。今後の第4四半期の業績発表の影響にも注意が必要です。

 3.外国投資家の売り越し:外国人は債券や株式を連続売り越しました(特に債券です)。弊社の私見では、株式の売却は必ずしも悪い兆候とは言い切れません。売却の目的は多々ありますから、たとえば高値や安値になったから売却するという単純な話ではないと思います。今回の外国人の売却に対しては、内部株主あるいは発行企業が自社株式を買い入れている場合は評価すべき一点と思います。

 4. 国家銀行(中央銀行)の基本金利の引き下げ:同時に調達金利及び貸出金利も下げられました。それにより信用創造が促進され、株式や債券などのようなその他の金融資産の価値も上昇させます。インフレ動向を見ながら、慎重な景気・株価対策をベトナム政府は採用しています。

 弊社の知る限り、消費需要の縮小、原材料の輸入価額の下落、輸入会社の資金不足などの困難に直面している企業が多数あります。これらの困難も株価を落下させた原因の一つです。但し、株価の上下の変動には限界があります。そのため困難を乗り越えられた時期、あるいは乗り越えられそうな時期まで投資する行為は最善の選択ではないと思います。今は待機する時期です。(ただし、これを選択した投資家も多数存在します。)

flairコメントflair
 すでに指摘したように、ベトナム金融機関の不良債権問題が噴出する時期が、上記の指摘にもあるように、本年度の第4四半期である。つまり、これから年末が問題である。さらに来年のテト前に株式売却して換金するベトナム人も多いであろう。
 他方、オバマ米国新大統領の就任が来年の1月20日であり、それ移行に新政権の経済対策が定まる。さらにヘッジファンドなどの世界的な損失が確定する時期は来春ではないか? 
 これらの悪材料が明確化されてから、いよいよベトナム株式の出番であろう。今から来年春までは、注意深く底値の株式を仕込む時期である。 

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2008年11月15日 (土)

東アジア諸国の経済成長率の比較:大幅な修正か?

 カンボジアでは、経済経営関係の英文雑誌 Cambodian Review が出版されている。以下の添付ファイルは、その中で紹介されている各国の経済成長率(GDP)の比較である。

「AsiaGDP.doc」をダウンロード

 英文のビジネス雑誌はベトナムでも数冊を目にするが、カンボジアの本誌は紙質も印刷もベトナムより以上であるし、その記載の情報も有益である。けっしてカンボジアがベトナムより劣っているとみなしてはいけない。少なくともWTO加盟国として、カンボジア(2004年)はベトナム(2007年)よりも先輩である。

 ただし、原文(英語)の数値表における(注)の意味が不明であった。おそらく表中に(注)の数字を添付することが忘れられていると想像される。この杜撰な表記のままの印刷物が発売されていることが、カンボジアにおける仕事の質を示唆しているように思われる。たとえばベトナムの印刷物において、このような杜撰な誤りは現在ではありえない。

 本表によれば、経済成長率について2007年は中国の11.9%の次は、カンボジアの9.6%、ベトナムの8.5%、そしてラオスの8.0%と続く。このように中国に次ぐ東アジアの経済成長国はベトナム・ラオス・カンボジア、メコン川流域3カ国である。 

 さらに本表では、アジア開発銀行による2008年と2009年の成長予測が記載されている。これは、おそらく米国発の経済危機の発生(米国投資銀行リーマンブラザーズ破綻:2008年9月15日、日経平均バブル後最安値6994円:同年10月28日)によって、大きく下方修正されると予想される。特に先進国はマイナス成長が確実であろう。

 これに対して、ベトナム・ラオス・カンボジアといった国は世界同時株安からの負の影響は間接的である。そもそもラオス・カンボジアには株式市場が未開設であるし、ベトナム株式市場にしても、その下落の主要な原因は、投資家の弱気な心理状態であるとみなされる。米国の景気減退による輸出の減退はありうるが、それを補填する国内また域内の需要拡大が期待できる。

 以上、これらの経済成長予測が、米国発の経済危機の今後の進展によって実際 どのように修正されるか? 今後の推移を注目したい。

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2008年11月14日 (金)

ベトナムの外貨不足はどうか?:国営企業からの雰囲気

 本年5月末に、米国大手投資銀行のモルガン・スタンレーのエコノミストが、ベトナムが第2のアジア通貨危機の引き金になるかもしれないと指摘した。その後の経緯を見れば、皮肉にも米国の大手投資銀行が、アジアどころか世界の通貨危機さらに経済危機の引き金になった。

 ベトナム政府は、これまで公表していない外貨準備を200億ドル以上と発表し、通貨危機の懸念はないと言明した。このことによって、対ベトナム投資家の動揺は落ち着いた。しかし、その後の世界経済危機は、ベトナムにも大きな負の影響を及ぼしていることは間違いない。

 個別企業のレベルでいえば、輸出企業の業績不振が懸念される。為替レートは安定しているものの、特に米国経済の不振によって対米輸出が減少し、それが輸出企業の収益を下方修正させている。

 最近のベトナムからの情報では、国営企業が積極的な輸出促進に方針転換し、外貨獲得を優先にしているように思われる。

 より具体的に言えば、資源関係の国営企業の話である。ベトナム政府として外貨獲得は政治的・経済的な安定と発展に不可欠である。昨今の世界経済危機において、その対応に政府が苦慮しているように思われる。

 外貨獲得のためには、①ODA・②直接投資・③間接(証券)投資・④輸出・⑤観光といったルートがある。さらにベトナムでは⑥外国からの送金が加わる。そして⑦投機である。

 これらの中で、政府か直接できることは、国営企業において保蔵してきた天然資源の外国輸出の促進である。それ以外は、いずれも相手側に大きく依存する問題である。ベトナム政府の懸命の経済運営の努力と工夫が感じられる。そして私にできること・・・。観光に行って、株式投資して・・・。円高の今こそ、ベトナムを応援しよう。

 

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2008年11月13日 (木)

根拠のない自信あふれる古森義久氏の「ベトナム政府の本音」を問う!

 古森義久氏が、「ベトナムから見た日本」という新聞記事を執筆している(「ポトマック通信」『産経新聞』2008年11月7日)。これは、10月下旬に米国「ワシントン東西センター」で開催された「中国と米国とのはざまのベトナム」というテーマの講演に対する印象記である。

 講演者は、ベトナム外交学院の研究員グエン・ナム・ズン氏である。「ズン氏はベトナムが中国と米国との戦略関係をそれぞれどう保ち、どう動かすのかを実例をあげて明確に語っていった。30代にみえる同紙は流暢な英語で、スライドを駆使しながら、米中両大国との間合いの取り方や、一国だけに接近した場合の一長一短を説明した」。この古森氏の記事について私見を述べてみたい。

 私見では、講演者のズン氏が所属するベトナム外交学院は、ハノイの貿易大学に隣接して立地しており、ベトナム外交官の養成所である。彼は、米国の研究機関に研究員として留学しており、ベトナム政府の対米政策の将来を担う若手の俊英であると想像される。

 「報告後の質疑応答で米国人学者から『ベトナムにとって日本の米中両国が超重要とはいえ、日本との関係も考慮すべきではないか』と質問が出た。するとズン氏はごくあっさりと「いや、日本はこの種の戦略構図に含める必要はないと思う」と答えた。

 そこで古森氏も、ベトナムにとって日本が「戦略パートナー」として重要だと指摘し、それはベトナム側も認識していると意見を述べた。「すると、ズン氏はやや気まずそうに『まったくの私個人の見解であり、政府の政策を代表していない』と、早口で述べた。だがベトナム政府の本音も、そんなところかなと、つい感じさせられたのだった」。

 古森氏の「ベトナム政府の本音も、そんなところかなと、つい感じさせられた」という理由が私には理解できない。そもそも、この発言の真意が不明である。私の独断で敷衍すると、ベトナムにとって日本は最大のODA供与国であり、経済的には尊重するが、政治的により重視している国は米国と中国であり、ベトナムは日本を軽視しているということであろうか? 日本とベトナムの友好・親善・協力関係に「水を差す」意図が古森氏にあるのだろうか? これまでの古森氏の論説から考えれば、おそらくそうであろう。

 米国と中国が歴史的・政治的・経済的に最大の影響をベトナムに及ぼしてきたし、現在もそうであることは間違いない。さらに両国は、より単純に言えば、ベトナム最大の「敵国」であった。日本は、これらの米中と比較すれば、友好国・同盟国に近い存在である。当然、ベトナムの対外戦略にとって、米国・中国と日本とは位置づけが異なっている。同じモデルで論じることに無理がある。

 この講演者のズン氏も、そのように考えたのであろうし、この報告のテーマは米中に焦点がおかれており、日本は最初から報告の対象ではなかった。ましてや報告が米国で行われており、主要な出席者は米国人であることが想定されていたと思われる。米国に滞在して研究している30代の若手研究者が、わざわざ日本を取り上げる必然性はないと想像される。

 米国で開催されたセミナーに自分より年配の日本人がたまたま出席し、「日本はどうなってんねん?」と質問されると、それは当惑するであろう。そういう質問は想定していない。それを「ベトナム政府の本音」と邪推されても、そのことにズン氏の責任はない。

 よく日本の学会でも「ないものねだり」の質問をする人がいる。報告の主題でなく、報告に含まれていないことを質問する。本来の質問は、報告の内容それ自体の内在的な問題を指摘することが正当である。それによって報告者の報告内容は改善され、それが研究の深化につながる。

 上記のズン氏は、上記のような質問には「ご質問、ありがとうございます。日本を含めたモデルは別の機会で検討します」とだけ回答しておけばよかったのである。それだけの問題について「ベトナム政府の本音」を感じる古森氏を私は不思議な人であると思う。 

 

 

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2008年11月12日 (水)

日越経済交流センターが『ベトナム経済法令集』を刊行

 大阪の日越経済交流センターは、創立15周年(2008年)記念出版として『最新ベトナム経済関係法規集(上)』を刊行した。この上巻には、次の法律が収録されており、その後の下巻と合わせれば、現在のベトナム経済法が網羅されることになる。

 上巻
・企業法
・企業法施行細則政令
・競争法
・破産法
・労働法一部条項修正補足

 下巻
・投資法
・投資法一部条項の施行細則政令
・投資法政令付録
・証券法
・証券法一部条項の施行細則政令
・個人所得税法
・企業所得税法
・付加価値税法

 なお企業所得税についてはWTO加盟後、内外差別の禁止が順守されなければならず、外国企業の優遇税が2009年1月1日から廃止される。これについても、日越経済交流センターは『経済交流ニュース』で紹介しており、本書の下巻に収録されている。また証券法一部条項の施行細則政令も、現在の株式市場の動向を反映し、証券会社や証券運用会社の設立などの条件が2009年1月1日から変更される予定である。このように法律は、その時代を規定し、また反映する生き物である。

 本書は、WTO加盟を目前としたベトナム法が収録されている。その時々の歴史的な背景や出来事を想起すれば、無味乾燥な法令ではあるが、新しい時代を迎えようとしているベトナムの息づかいを感じることができる。私は法律専門家ではなく、このような感慨を今まで抱いたことはなかった。この新鮮な感覚を与えてくれるベトナムに感謝したい。

 本書の上巻・下巻ともに頒価5千円である。購入希望の連絡先は、日越経済交流センターhttp://www.j-veec.jp/)である。本書は、ベトナムに関係する企業には必携であり、その後の法律の改訂・追記は『日越経済交流ニュース』が補遺の役割を果たしている。このニュースの定期購読もお勧めである。

 最後に、これらの法令の翻訳をされた同ニュース編集長・日越友好協会大阪府連の伊藤幹三郎氏に敬意を表したいと思う。

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2008年11月11日 (火)

ベトナム・ドバイ・ヘッジファンド:「怖いもの見たさ」の注目セミナー締め切り迫る

 すでに紹介させていただいた通り、以下のセミナーが開催されます。このセミナーの開催計画時には予想もしなかった世界同時株安が発生し、世界恐慌の危機まで懸念される現状となっている。当然、その影響を受けて、ベトナム株式は新たな底値を探る展開となり、ドバイの株価も不動産も大幅に下落、世界の主要ヘッジファンドの損害も大きいと予想されている。

 この時期に、このセミナー開催は、まさに「怖いもの見たさ」の感覚になる。どれだけの損失があって、その見通しはどうか? もがけば、もがくほどにズブズブと身体が沈んでいく。底なし沼に吸い込まれるような恐怖と絶望のスリラー的・オカルト的な惨状が披瀝されるかもしれない。happy02確かに怖い・・・crying

 ただし、現在の日本株の場合もそうであるが、歴史的な暴落の後は、歴史的な「買い場」であることは間違いない。その時期はいつか? このように考えると、以下のセミナーは、最悪の時期ではなく、絶好の時期でのセミナー開催である。

 多数の投資家の皆さんは、守勢一方であろう。それでよいのだが、その間には情報収集し、次の攻勢の時期を待つ。その勉強のために多数の皆さまの参加をご案内申し上げます。

 私は、ベトナム株式の直近の動向と、カンボジア・ラオスの株式市場の開設準備の状況、さらに注目される有望なIPO株式について紹介します。このセミナーは有料ですから、このブログには絶対に出て来ない耳より情報をお教えします。lovely情報はタダではない!!happy01

 なお、以前にお知らせした会場が変更になっています。ご注意ください。詳細は、次のウェブサイト、または下記をご覧下さい。http://www.aru-aru43.com/formmail/oosaka.html

happy01混迷の世界金融市場:誰も注目しない投資手段だからこそ勝てる!happy01

第1部 「成長期のベトナム株式市場:次に注目のラオス・カンボジア市場」流通科学大学・教授・上田義朗氏

第2部 「湾岸諸国とイスラム金融の成長性:国際金融センター「ドバイ」とともに成長を続ける世界規模の金融市場」株式会社・ザ=スリービー代表取締役・石田和靖氏

第3部 「世界経済の分析とリセッション(景気後退)局面における投資戦略:ヘッジファンド」(株)ベネフィック=アセット=マネジメント・CEO・杉友耕治氏

日 時:2008年11月15日(土)13:00~16:30(会場12:00)
会 場:TKP大阪本町ビジネスセンター ホール7A 7階
〒541-0053 大阪府大阪市中央区本町2-3-4 アソルティ本町、TEL 06-4706-6937)
参加費:2000円
定 員:200名
申込締切日:11月13日
主 催:大阪金融仲介業者連合(代表幹事:ユニバーサル=コンシェルジェ株式会社)
総合企画:時事分析セミナー実行委員会
事務局:クロスゲート株式会社
協 賛:トレーダーズ証券株式会社、日越経済交流センター

 お申し込みは、日越経済交流センターinfo@j-veec.jpまたは、直接会場でお名刺をお渡し下さい。また上記のウェブサイトから登録をお願いいたします。

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2008年11月10日 (月)

メコン川流域国で内需拡大:CLMV首相会議の合意

 『日本経済新聞』(2008年11月7日)によれば、11月6日にハノイで第4回CLMV首脳会議が開催された。CLMVとは、:カンボジア・:ラオス・:ミャンマー・:ベトナムである。これら「各国は米国発の金融危機で打撃を受けており、生きない連携の強化で影響を最小限に抑える狙いがある」と指摘されている。

 この会議の中でベトナムのズン首相は、金融危機が「新たな困難を生み出した。CLMVは世界や地域の変調によって簡単に傷ついてしまう」と延べ、さらに「危機の影響拡大に懸念を示すと共に、生きない各国に早急な対応を促した」。

 より具体的な対応として共同声明では、次のような主な指摘があった。「最重要と位置づけた貿易・投資分野において」:(1)各国が事業の許認可や労働力の確保などで協力する。(2)食品加工・鉱業・水力発電・インフラ整備・物流サービスなどの活性化を急ぐ。さらに(3)交通・運輸ネットワークの拡充のために横断的な整備計画を作業部会で検討する。

 私見では、以上の会議は、世界経済危機の対応策として時宜にかなっていると評価されうる。特にCLMVにおいて危機感を共有し、特に相互協力が必要な交通・運輸分野の整備が具体的に促進されることは歓迎されるべきである。

 さらに(1)の指摘は、先進国の景気後退に伴う輸出減少を補填するために、これら4カ国が協力して地域内の需要拡大を促進することを意味していると思われる。各国単独での国内需要の拡大は難しくとも、4カ国が相互に協力した地域内需要の拡大は可能であろう。いわゆる「内需拡大」の「内」の意味を本来の「国内」から「地域内」に拡大させた試みである。

 また各国に共通して(2)インフラ整備・食品加工・物流サービスの促進、カンボジアにとって鉱業の発展、主にラオスにとって水力発電の建設促進が、CLMVにおける国際的・外交的な公約として確認された意義も大きい。公約することによる圧力が、国内の政策実施の遅延要因を減少・解消させる効果をもつことが期待される。

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2008年11月 9日 (日)

ラオス経済最新情報:世界経済危機の影響は?

 ラオス人消息筋の情報を参考にしながら、最近のラオス経済の状況を紹介する。ラオスの堅調な経済成長が理解できる。これは、世界経済の暗い展望の中での「光明」であるかのような印象を受ける。

 ラオスの経済と金融は世界に十分に統合されていないので、最近の経済危機の影響は間接的である。これはカンボジアの事情と同様である。

 ラオスにおけるインフレーションの推移(%)
月  2005年  2006年 2007年   2008年
1       8,05     8,10     5,50       6,08
2       7,04     8,54      4,92      6,43
3       6,48    8,17      4,64       7,73
4       6,41    8,31     3,56        8,68
5       5,86     7,99      3,43      10,32
6       5,45     8.08      3,49       10,20
7       5,35    7,74      3,53      9,96
8       6,55    6,32      3,58        9,57
9       7,66    5,49      4,25      約 9
10     9,44    3,70      5,59      約 9
11     8,75      4,40      6,13       ―
12     8,78     4,72     5,57      ―
年間  7,16      6,81       4,51       ―
   出所:ラオス銀行(中央銀行)。

 ラオスの為替レートは依然として安定的であり、ドルに対してキープ高である。インフレーションは、上記の表のように1桁台(約8~9%)であり、十分に制御可能である。原油価格の最近の下落はインフレーション抑制に役立っている。

 GDP成長率は計画値の7~8%よりも若干低い。来年はGDP成長率8%の目標を政府は設定しており、1人当たりのGDPは約840万キープ(約990ドル)に達する。もしそうであれば、来年度はラオスが1人当たりGDPについてベトナムを追い抜くように思われる。このように、これまでの世界経済危機の影響はラオスにとって重大ではない。

 韓国の民間企業のラオス投資は多額ではないが、韓国証券取引所は今後2年間までにラオス株式取引所の株式の49%を所有する予定である。ただし株式市場設立を支援できない条件を今日の経済環境が生み出したことは否定できない。政府の野心的な目標が影響を受けたかもしれない。

 しかし関係者はラオス株式取引所の開設日程に変化がないことを依然として確信している。2年以内に周辺の環境や金融状況が回復することが望まれる。

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 世界経済危機の影響は韓国経済に波及し、それがラオスに及ぶことが懸念されていることが上記の報告から理解できる。証券取引所の開設という観点から見れば、現在までのところカンボジアがラオスよりも先行しており、その両国ともに韓国証券取引所から主要な支援を受けている。韓国経済の危機によって両国ともに負の影響を受けることは間違いないが、私の感触では、後進のラオスの方がその影響は大きい。支援する側の韓国にしてみれば、とりあえずカンボジアを優先し、次にラオスという順序になると想像される。

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2008年11月 8日 (土)

「ベンチャー・エキスポ2008」関西発シーズとニーズのビジネス・コラボレーション

 11月5日(水)午前中の講義「特別セミナー(経営学)」の時間を利用して、学生8名を「ベンチャー・エキスポ2008」に引率した。大阪国際会議場を会場として日本経済新聞社が主催した。

 この中でいくつかの印象深い企業の方々のお話を伺った。それぞれが顧客のターゲットを明確にした商品・サービスの提供である。どの企業も大成功するように思われるほどに工夫されていた。ただし共通して、積極的な外国市場志向の会社は少数のような印象を受けた。外国企業から問い合わせがあれば、それぞれ対応しようという受け身の姿勢である。まず日本の国内市場の拡大を優先するという戦略である。

 ベンチャー企業なのだから、まず国内市場と考えるのは当然かもしれないが、それでは少子高齢化・人口減少という国内市場の縮小に対応できないのではないか。ベンチャー企業だからこそ、最初から外国市場も視野に入れてよいのではないか?  

 私にとっても学生にとっても、もっと時間のほしい有意義なフィールド=スタディであった。 その日の午後に大学に戻って講義をしていると、「先生がテレビのニュースに写っていましたhappy01」と報告する学生がいた。担当者と私の会話の様子をテレビが取材しているのは知っていたが、それが即座にニュースになるとは驚いた。

 引率した学生にレポートを書くように指示した。それに基づいて次の講義では、それぞれの企業の「狙い」を討論する予定である。顧客および市場のセグメンテーションや差別化戦略、販売チャネル・マーケティング、今後の経営戦略などが具体的な事例によって学ぶことができるようにしたい。このようなフィールド=スタディの実施が、私の講義におけるの「実学」教育の要諦である。

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2008年11月 7日 (金)

米国大統領選挙とベトナム

 米国大統領選挙の結果、オバマ氏が当選した。これについてベトナム人は、どのように考えているのであろうか。

 ベトナム北部では10月末からの大雨のために歴史的な洪水が発生した。ハノイ市内でも18名の死亡者が出たと言われている。ハノイの大学も休講になっている。このようなベトナムでも米国大統領選挙は大きな話題となったようである。THE JAPAN TIMES, NOVEMBER 5, 2008の記事を簡単に紹介しよう。

 共和党の候補者であったマケイン氏は、1967年のハノイ空爆時に撃墜され、その後5年以上も捕虜になっていたことはベトナム人も知っている。その後に上院議員になったマケイン氏は、米国とベトナムの二国間関係の正常化を支援した。54歳の男性ティエン氏は、オバマ氏を支持しているけれども、マケイン氏はベトナムを理解する人物であると評価している。オバマ氏を支持する理由は単純である。民主党が共和党よりもタカ派でないからである。

 他方、ハノイの不動産王で女流小説家アインさんは、マケイン氏を支持する少数派である。「マケイン氏は偉大な人間だ」と言う。その理由は、自分の出獄の機会を譲って、他の米国人捕虜を優先させたことである。「彼は愛国者である。マケイン氏は兵士としてわが国を破壊するために来たが、私は彼の威厳を賞賛する」。

flairコメントflair
 
ベトナム人から見れば、それぞれの経歴からオバマ氏よりもマケイン氏になじみがあるのは当然だ。さらに同じ愛国者として「敵ながらアッパレ」という気持ちがマケイン氏に対して働くようである。「米国に勝ったベトナム」という自負は、こういった気持ちを助長するのかもしれない。また事実、マケイン氏の演説や表情をテレビで見ていると、愛国者というイメージが強く打ち出されているように思われる。

 上記のベトナム人が正確に指摘しているように、タカ派という観点から見て「民主党は共和党よりもまし」ということである。確かに現在の政策から見れば、共和党よりも民主党が平和主義であると思われるが、ベトナムで北爆を開始したジョンソン大統領は民主党であった。もし前任の民主党のケネディ大統領が暗殺されなかったら、ベトナム戦争はどうなっていたかは不明であるが、少なくとも政党の印象や先入観だけで政治や政治家の中身を判断できない。これは日本も同様であろう。さまざまな先入観で政治家を判断するのではなく、その政治家の人間性を判断する時代が到来したのかもしれない。オバマ氏の当選は、それを示唆しているように思われる。

 なお、米国大統領選についてベトナム人の感想をさらに私自身で取材してみたいと思う。

  

  

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2008年11月 6日 (木)

経済成長国「NEXTイレブン」の見直しが必要では?

 BRICsブリックス:ブラジル・ロシア・インド・中国)の次に経済成長が期待できる国として、VISTAビスタ:V=ベトナム、I=インドネシア、S=南アフリカ、T=トルコ、A=アルゼンチン)が指摘されるが、この命名はBRICs経済研究所の問倉貴史氏と言われている。

 さらにポストBRICsとして、NEXTイレブンが列挙される。その11カ国には、イラン・インドネシア・エジプト・韓国・トルコ・ナイジェリア・パキスタン・バングラデシュ・フィリピン・ベトナム・メキシコが含まれる。

 VISTAとNEXTイレブンに重複して含まれる国は、heart04ベトナム・インドネシア・トルコheart04であり、これらの国の中でベトナムは、手前味噌ながら確かに注目である。ただし、ここで気づくことは、NEXTイレブンの命名者が、happy02世界最大手の投資銀行であったゴールドマン・サックスhappy02ということである。

 同社は、今回の米国発金融危機に関与し、その損失のために普通銀行に業態を転換した。経営破綻したリーマン・ブラザーズと同様に米国投資銀行ビジネスの崩壊・消滅の象徴である。このゴールドマン・サックスが2005年の経済予測レポートで、この11カ国を推奨した。

 以上の紹介は、インターネットのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に依拠しているが、そこでは11カ国の選定基準が統一されていないと指摘されている。確かに私見でも、たとえば韓国とベトナムが同じように経済成長すると言われても、その道筋は異なるであろうし、それらを同列に指摘することに違和感がある。

 『ウィキペディア』によれば、「唯一の共通点としては、規制緩和政策によって外資の流入が始まっていることである。これにより各国は2050年までに飛躍的にGDPを増加させると予測されている。しかし、BRICsよりも深刻な政治的不安定要素を抱えている国が多いことも事実で、それが安定成長を阻むリスクとなる恐れも指摘されている」。

 今回の世界金融危機によって、たとえば韓国ではウォンが暴落し、大きな被害を受けた。「規制緩和政策によって外資の流入」を拡大させた国が、米国発の金融危機では大きな被害を受けたと考えられる。この意味で、世界金融危機の再発防止のためには、こういった規制緩和政策に対して一定の見直しが提案されても不思議でない状況である。

 さらに各国の経済成長性を考えるのなら、金融の規制緩和の観点ではなく、実物経済における労働力や技術の水準および特性に注目しなければならない。実物経済の発展が経済成長を意味すると私は信じてきたが、金融バブルを伴う「マネーゲーム」の拡大が最近では経済成長と認識されるのであろうか?

 以上、ゴールドマン・サックスによるNEXTイレブンの指摘は、同社の投資銀行撤退に伴って消滅したとみなしてもよいのではないか? さらに言えば、同社自身の投資ビジネス促進のために11カ国が提起されたのではないか? 自らが「バブル」を発生させて、それを世界中に拡散し、その利益を享受する。その後のバブル崩壊によってより大きな損害を自らも受ける。

 企業経営は自己責任であるから、このような自業自得は当然である。さらに問題点を言えば、ゴールドマン・サックスを始めとする投資銀行は、バブル崩壊に一般投資家を巻き込んだ加害者責任があるとも言えるのではないか? 今後の世界金融危機の検証によって、歴史の教訓が導かれることを期待したい。

 なお昨日、11月5日に米国大統領に民主党オバマ氏が選出された。規制緩和を推進した共和党の規制緩和の経済政策の変更が推進されると予想される。

 以上、「NEXTイレブン」の国々に責任はない。その命名のように成長することに異論はない。ここでの問題は、その命名者の意図と責任である。

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2008年11月 5日 (水)

カンボジア経済の現状を知る:必見のブログ

 先週、カンボジア経済に対する世界経済危機の影響について、私見とカンボジア消息筋の見解を公表した。これについて私宛にメールを頂戴し、以下のブログをご紹介いただいた。

「最近の金融危機のカンボジアへの影響」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh

 このブログの執筆者は「Jackおじちゃん」。プノンペンで仕事をされている日本人の方である。かなりの経済専門家と思われる「Jackおじちゃん」の情報は、何と言っても現地在住だけあって的確で非常に参考になる。

 このようにブログを通して、見知らぬ人との交流ができる。もし英語でのブログを頻繁に発表できれば、もっとより多くの人々との情報交換が可能であろう。今後の課題である。

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2008年11月 4日 (火)

パナソニックが三洋電機を子会社化:ベトナムでの影響

 三洋電機がパナソニックによって株式取得され、来春には子会社化されるという。11月1日の報道である。この両社ともにベトナムで生産し、ベトナム国内市場で販売している。私見では、両社の統合はベトナムで大きなメリットがあると思われる。

 白物家電(冷蔵庫・洗濯機)については、サンヨーがホーチミン市近郊のドンナイ省のビエンホア工業団地、パナソニックがハノイのタンロン工業団地で生産・販売している。サンヨーは操業開始して10年以上が経過し、ベトナム国内での部品調達も進んでいたのに対して、後発のパナソニックでは当初CKD(完全ノックダウン)生産であった。

 両社の統合によって、白物家電が南北で生産分担することができると思われる。納入部品会社の共有化ができるかもしれない。これは生産の効率化を可能にする。ただしサンヨーはベトナムにおける白物の市場占有率の第1位を維持してきた。そのブランド名はベトナム人に親しまれている。この意味で、白物家電については「サンヨー」のブランドをベトナムで維持することが望ましいのではないか? 「サンヨー」のブランド価値は、少なくともベトナムでは「パナソニック」に優るとも劣っていない。

 パナソニックの在ベトナム工場は合計4社であるが、ホーチミン市におけるテレビなどのAV生産会社を除く3社はハノイに立地している。これに対してサンヨーの工場はホーチミン市である。これらの工場の最適な生産分業が今後の課題となるであろう。それによって、ベトナムにおける「総合デジタル家電メーカー」としての地位を確立することが可能になるかもしれない。

 ただし問題は、日本本社の統合の影響は、ベトナムだけに限定されないことである。アジアそして世界における両社の生産分業体制の全体的な見直しが必要とされる。そうなれば、以上で指摘したベトナムの生産・販売の位置づけも影響を受ける。

 新聞報道によれば、三洋電機の太陽発電や電池技術にパナソニックが魅力を感じたことが子会社化の理由であった。私見では、この見解は技術問題に偏重している。両社の統合に伴うグローバル戦略の再編成は、間違いなく世界規模の生産・販売体制の効率化が意図されるであろう。それに伴って、いわゆる「リストラ:事業再構築」(工場・販売会社の統廃合とその従業員数の削減)が発生することも想定しなければならない。

 世界同時株安の今こそ、こういった株式取得を通した業界再編は好機となる。私見では、パナソニックと三洋電機のような日本本社の間だけではなく、海外の子会社間における株式取得による業界再編が進行することが予想される。それはベトナムなど新興国でも例外ではない。たとえばパナソニックとサンヨーでベトナムで重複する工場や生産設備が他社に売却されてもよいし、それが法制度上は問題ない。

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2008年11月 3日 (月)

2008年度・VJCC「ビジネスコース」講師研修(3):最後に贈る言葉

 今回の「ベトナム日本センター・ビジネスコース講師研修」の修了式(10月30日)において、私は次のようにご挨拶をさせていただいた。それを要約すれば、「急げ、ベトナム」である。

 本日は、本研修の修了式に参加させていただき、ご挨拶の機会を頂戴したことに、関係者の皆様に御礼を申し上げます。また、研修生の皆さんの日本滞在中の熱心な研修に対する意欲と、その成果に対して敬意を表したいと思います。

 私は最初の講義で、ベトナムの経済発展にとって現在、最も必要なことは「産業政策」の観点から言えば、「裾野産業」の育成であり、それを企業経営の観点から言えば、「ものづくり(MONO-ZUKURI)」の精神を学ぶことであると指摘しました。これは、言い換えれば、品質・価格・生産性・在庫・サービス・労務(人事)など、生産活動のすべてに関わる徹底した「改善(KAIZEN)」を意味します。これは、よりよいものを作るための「こだわり」ということです。たとえばトヨタ自動車では「なぜ?」を5回繰り返すという事例も紹介しました。これが、問題解決に取り組む「こだわり」ということです。

 「MONO-ZUKURI」は、これまでの日本の企業成長の原動力でした。ベトナム企業の皆さんに、このことを理解してもらい、国際競争力のある商品・サービスを提供できるようになってほしい。2015年にアセアン諸国と中国の経済統合が予定されています。それまでに「MONO-ZUKURI」の体制をベトナム企業に整備してほしい。この願いが、ベトナムを愛する日本人そして本研修に関係する日本人に共通したものです。

 「急げ、ベトナム」。これも私は最初に皆さんに述べたことです。ベトナムは急がないと間に合わない。そのために日本がお手伝いをしている。ベトナムの背中を日本が押している。この12月にはEPAが締結されます。日本は、これまで以上にベトナムに協力を進めることになるでしょう。

 今回の研修の皆さんは、その成果をベトナム企業の皆さんに伝える責任があります。それは大学の研究者として、自らの研究成果を社会や国民に還元するという使命でもあります。

 「急げ、ベトナム」。これを私が皆さんに贈るメッセージにしたいと思います。帰国後に、研修成果が具体化するように、ぜひ努力してください。私は、そのための援助を今後も続けたいと思っています。「急げ、ベトナム」。皆さん、ありがとうございました。

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2008年11月 2日 (日)

2008年度・VJCC「ビジネスコース」講師研修(2):理論から実践に

 今回のJICA研修の成果報告会で、「日本センター」における講義について研修生から次の指摘があった。これについて以下で紹介する。それは、ベトナム進出の日本企業がベトナム人の管理職や従業員に指導する場合にも共通した問題点である。

 ベトナムのビジネスコースにおいては、日本人講師もベトナム人受講生に対して講義している。それらの講義の内容は非常に有益であるが、その知識を実際に応用する場合に何かが不足している。その「不足しているもの」は何か? つまり理論と実践を結び付ける要因は何かという問題である。

 A先生lovely:ベトナム人には「もの作り」の精神が欠如している。生産または仕事の品質に対する「こだわり」が欠けている。「まあ、こんなもんでよいだろう」と勝手に妥協する。

 B先生sad:ベトナム人受講生は整合性・全体像を見ることができない。部分的な知識を学んでも、全体を理解していないから、その知識を実践に適応する場合、それは部分的であり、結局は成功しない。

 C先生happy01:受講生は経営責任者ではないので、職場に帰っても、それを実行する権限がない。結局、知識が無駄になってしまう。

 D先生coldsweats01:権限のない人が受講生の場合が多い。たとえ権限がある人が受講生であっても、これまでの通常の仕事に追われて、新しいことをする「お金」や「時間」が不足する。

 以上、いずれも鋭い的確な指摘である。さすがにベトナム屈指の名門大学・貿易大学の先生だと感心してしまう。どの意見も、すべて当たっている。しかし私は、次のようにコメントした。

 私見では、ベトナム人が実践上で不足しているものは、熱意・情熱・思い入れ・意欲・執念・信念といった心理的要因である。ベトナムや日本を問わず、世界中で成功した起業家そして企業経営者に共通した資質は、こういった心理的なエネルギーを所有していることであると考えられる。現在でもベトナムの企業経営者の中の成功者は、こういったエネルギーをもっているはずである。そのためには、たとえば経営者が自ら「率先垂範」することが重要である。

 こういった心理的エネルギーを発揮するためには、将来の夢や理想を全社的に共有していることが重要である。これは経営理念と言ってもよい。また逆に共有することは、会社存続の危機感といったマイナス要因であってもよい。いずれにせよ、こういった心理的エネルギーを発揮するための「風土」もしくは「仕組み」を社内に醸成しておくことが求められる。

 私は、以上のようにコメントした。たとえば大企業から独立して自分で会社設立したベトナム人は、必ずしも当面は高収入を目的としていない。自分のやりたい仕事をするため、さらに自己実現のために仕事に熱中する。こういう人々を支援することが、ベトナムの企業成長さらに経済成長にとって最も効果的であると思われる。国営企業のサラリーマン経営者は、いくら優秀であっても、その仕事に対する心理的エネルギーは不十分ではないか。

 政府の政策に期待するのではなく、自らが主体的に工夫する。日本のODAや支援に依存するのではなく、自らが率先して改革の仕事に取りかかる。こういった姿勢や発想がベトナムの政府および企業に最も必要とされているのではないか?

 この意味では、ベトナムの「日本センター」ビジネスコースでは、民間企業の起業家を対象にしたビジネス教育が最も効果的であり、それがベトナムで最も必要とされているように思われる。そういった研修を受講した上場候補の企業に対して、民間の投資ファンドが積極的に資金援助をすればよい。そうすれば、そういった企業を発掘するコストが投資ファンド側も節約できる。これこそ官民連携の新しいスキームではないか? 今回の研修を通して、このような提案を私は考えた。

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2008年11月 1日 (土)

2008年度・VJCC「ビジネスコース」講師研修(1):研修の概要

 JICA(国際協力機構)が主催し、PREX(太平洋人材交流センター)が引き受け機関となった上記の研修が2週間に渡って日本で実施され、先週10月30日に無事に終了した。

 このVJCCは「ベトナム日本人材協力センター」が正式名称であるが、一般には「日本センター」と呼ばれている。ビジネスコースと日本語コースがあり、ベトナムではハノイとホーチミン市の2カ所、それにラオスやカンボジアにも設置されている。詳細は、以下を参照。http://japancenter.jica.go.jp/

081016_19160001  この研修のコースリーダーとして私は、研修生の皆さん4名と討論の機会をもった。研修生といっても、ベトナムの貿易大学の先生方であり、たとえばベルギーのブリュッセル大学や英国ウェールズ大学で学位を取得した俊英である。

081016_19160002  ただし、ビジネスコースの受講生が企業の経営者・経営幹部・従業員であるために、講師からの学問的・理論的な知識の一方的な提供だけでは、その研修効果が十分に期待できない。教える側の講師自身が、まずビジネスの実態を理解し、次に、理論を実践に応用する考え方を修得しておく必要がある。そのためにベトナム人講師に対する日本研修が実施されている。

 大阪・東京を始めとする多数の中小企業を訪問し、そこから生産管理・経営理念・品質改善・コスト削減・物流などの工夫や体制を研修生は学んだ。これらは、ベトナム中小企業における今後の「裾野産業の育成」のための教育に役立つはずである。

 なお上記の写真は、来日3日目に「大阪府中小企業家同友会」の有志の方々が、研修生をご招待してくださり、夕食をご一緒した様子である。ベトナムについて親しく意見が交換され、有意義な時間であった。日本食の中で初めての「鍋料理」に研修生の評判は上々であった。

 日本での研修成果が、ビジネスコースのベトナム人受講生に広く伝達されることを期待したい。日本から何を学び、それを帰国後にどのように伝えるか。「学んだこと」は日本の研修終了時に各自に質問すればわかるのだが、その後の「伝え方」は、現在のJICA研修体制では不明である。今後、こういう事後のチェック体制の整備も必要であろう。それはともかく、少なくとも今回の研修生の日本理解が深まり、両国の友好親善に役だってほしいと心から願う。

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