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2008年10月18日 (土)

新しい投資ファンドの考え方:世界同時株安の影響

 証券業界に「不況」はつきものである。その「不況は逆にチャンス到来」とも言える。社内組織やビジネスモデルの改革など大胆に再構築できる好機である。

 先日、大学の講義「特別セミナー(経営学)」において「不況に攻める地味企業」『日経ビジネス』(10月6日号)の企業事例を教材に使用した。その中で、何でも諦めると、その時点で「思考停止」になる。常に「諦めるな」。最善の工夫を最後まで考える。こういう教訓を話した。「不況だからしかたがない」では「思考停止」になる。不況の今できることを考える。これが当面のビジネスの鉄則だ。

 さて今回のアメリカ発の世界株価下落や、それ以前の大手投資銀行の破綻は、これまでの「権威」に対する信頼性の崩壊を意味する。エレガントで精緻な金融工学は、文学的な表現にすれば、どす黒い欲望を覆い隠す薄く脆いベールのようなものにすぎなかったのかもしれない。

 神戸大学経済学部の故・置塩信雄名誉教授は、「美人の女性と思っていても、その体内に病毒を抱えているかもしれない」という意味のことを名著(新野幸次郎・元学長と共著)『ケインズ経済学』(三一書房)で述べられていた。私の大学生時代の話だ。詐欺商法も同様であるが、ビジネスにおいて調子の良い話には十分な注意が今も昔も必要である。

 さて、この「権威失墜」のアメリカでは、おそらくオバマ大統領の選出によって、新しく生まれ変わる「再生アメリカ」が演出されるのではないかと予想される。ベトナム戦争の英雄マケインが大統領になった方が、ベトナムにとっては外交的にプラスの影響があるのかもしれないが、「アメリカ再生」のイメージからは遠い人物像であると私には思われる。

 他方、日本の個人投資家は、より覚醒した主体的な投資家が増えると思われる。投資信託の場合、透明性や説明責任を強く求めるであろうし、「顔の見える投資スキーム」の新しい投資ファンドが歓迎されるのではないか? ベトナム投資ファンドの戸松氏のセールストークも「顔の見える投資ファンド」であった。

 ただし私は、この戸松氏の投資ファンドのベトナム国内の運用スキームには依然として疑問をもっている。投資信託資金の運用管理は、ベトナム証券法によれば、「投資運用会社」の認可が必要だからである。日本では一般投資家から資金募集しながら、ベトナムではそれに対応した法的規制を受けずに単なる投資会社として活動する。この首尾一貫していないビジネスモデルが、たとえ合法的であるとしても私には納得できない。

 それはさておき、「顔の見える投資スキーム」が支持されるとすれば、従来型の投資ファンドではなく、新たなコンセプトの投資ファンドの組成が必要と思われる。たとえば課税回避を目的としてケイマン島にペーパーカンパニーを設立するというような従来型の投資ファンドの構造に嫌悪感をもつ投資家が増えるのではないか? それが結局、すべて管理手数料などとして投資家の負担増を招くことになるからである。

 この意味で、節税効果と手数料増加との比較が必要である。こんなことを顧客が質問した場合、明確に回答できる投資信託の販売担当者は極めて少数であろう。他方、こういった質問をする投資家が増加することが予想される。

 このように考えれば、より単純でより明確な投資ファンドが、結局は最も安全で安心と投資家に判断されるようになるかもしれない。このような投資ファンドが組成されても不思議でない。

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