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2008年10月 6日 (月)

証券経済学会・第70回全国大会の開催(2):奥村宏先生の報告について

 表記の学会において昨日の午後、会社学研究家の奥村宏氏が「株式会社の第三期」という論題で報告された。これは「会社は誰のためのものか」というセッションの一部である。

 奥村先生は、産経新聞の記者を経て、(財)日本証券経済研究所・大阪研究所の主任研究員になられた。私は、同研究所で奥村先生の隣の研究室というご縁があった。その後、先生は龍谷大学教授、中央大学教授を経て、現在は78歳になっておられる。そのご報告の様子は元気一杯、「往年の奥村節」は依然として健在という印象を受けた。

 奥村先生の株式持ち合い論・法人資本主義論・六大企業集団論は、何度も読み返した私の記念碑的な著書や論文となっている。

 個人的にも奥村先生には多々お世話になった。特にカリフォルニア大学・デービス校における奥村先生の在外研修中、私は何日かホームステイさせていただいたことがある。奥様にも大変お世話になった。米国におけるアパートやホテルでの滞在経験は何度かあるが、アメリカの一戸建ての木造建築での滞在はこれが唯一の経験である。私にとって懐かしい思い出となっている。

 さて奥村先生の報告では、現在の株式会社が、結核で言えば「第三期」の末期症状に似ていると指摘された。「第一期」は、近代株式会社が成立した19世紀。株式会社の株主は個人株主が前提であった。「第二期」は、20世紀の「経営者支配」の時代。株式所有が分散し、所有と支配が分離した。しかし株主は依然として個人株主が大多数であった。

 そして「第三期」が、20世紀の後半からアメリカでは機関投資家に株式が集中し、日本では株式持ち合いが進展した。個人株主が後退した株式会社は、どのような存在か? 真の出資者=株主は誰か? このような疑問に的確に回答できない時代となっている。株式会社の原則から逸脱した現状があるが、それをどう考えればよいか? 

 奥村先生は、以上のような問題を提起された。通常は、企業が社会的存在となり、それに伴って「企業の社会的責任」(CSR)を果たすことが強調される。しかし奥村先生は言う。「殺人をすれば、自然人は裁判で死刑になる。しかし法人が殺人をしても、損害賠償はあるものの、死刑にならない。つまり刑事責任を問われない」。「犯罪の責任を取らない企業が、どうして社会的責任を果たせるのか?」。

 この鋭い論点が、まさに「奥村節」である。さらに奥村先生は、投資ファンドマネージャーについて、短期的利益を目標とする投機を煽る錬金術師のように特徴づけて批判する。利益を最優先するファンドマネージャーが、株式会社の本来の姿をゆがめているという主張のように私には思われる。これは全面的には同意できない。

 投資運用会社および投資ファンドマネージャーの実際の仕事を直視しない偏見と言えば、奥村先生に失礼であろうか? ファンド運用会社は手数料収入が、預かり資産の通常は1%~3%程度である。一般の産業における「売り上げ高」に相当する。10億円の預かり資産であっても、年間で1千万円から2千万円程度の売り上げである。各種の規制が課せられている中で、これでは利益が出ない。

 それを補うために成功報酬が設定されている。それが20%と言っても、その半分は販売を担当する証券会社などと折半することが多い。この成功報酬は、もちろん利益を出してこそ受け取れるのだから、きわめて不安定な収入である。

 中小規模の投資運用会社の大部分は、このように苦労しながら、投資家のために働いている。これらのファンドマネージャーは、大手運用会社と競争するために、投資家の目線に立った運用商品とサービスを提供している。私の関係するベトナムのロータス社もそうである。

 奥村先生の批判は、ごく限られた一部の大手運用会社のエリートのファンドマネージャーを対象にしており、それを単純に一般化している。これは、たとえば「天下り」のエリート官僚を批判することと、大多数の一般公務員を同じに扱うようなものである。より簡単に言えば、奥村氏は大企業と中小零細企業を同列に扱って、ファンドマネージャーを批判している。

 ファンドマネージャーは、投資家のために働いているのであって、その報酬は正当・合理的である。そのことが証券市場を活性化している。この本来の機能から逸脱した場合、それは投資家から受け入れられないし、ファンドマネージャーの自殺行為である。その名声や評価は一瞬に失われる。

 奥村先生の主張に違和感を覚えることも、私の「実学」の成果である。

 

 

 

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