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2008年10月 5日 (日)

証券経済学会・第70回全国大会の開催(1):滋賀大学経済学部・彦根キャンパス

 表記の学会で、日本大学大学院グローバル=ビジネス研究科の水野満教授による「東アジア諸国のベンチャー市場の特性と課題」という報告に対するコメンテーターの役割を果たすために彦根市の滋賀大学経済学部を訪問した。

 昼休みには雨の彦根城を見学した。ちょうど「井伊直弼と開国150年祭」が、本年6月から来年3月まで開催されていた。彦根城は国宝となっており、現在は世界遺産に申請中である。その落ち着いた雰囲気の町並みは、島根県の松江市に似ており、京都よりも歴史を実感させてくれる。滋賀大学は勉学に最適の環境であるように思われた。

 さて水野教授は、東アジア6カ国(韓国・タイ・シンガポール・フィリピン・マレーシア・香港)におけるベンチャー市場の現状や課題を的確に特徴づけられた。私もベトナムのほかにカンボジアやラオスを研究対象にしているが、複数の国を同時に取り扱うことは各国の論点に濃淡があり、その抽出が難しい。水野教授は、その点を簡潔にまとめられていた。論文や報告書の公刊が待たれる。

 さらにベンチャー市場が発展するための条件として、教授は次の8点を指摘された。多数の上場予備軍リスクを甘受する投資家層の存在、投資家保護の規制、証券市場の価格形成の公正性・透明性、不健全企業の退出ルール、投資家教育、ベンチャーキャピタルの役割強化:ハンズオン、ベンチャーキャピタルの企業分析力から企業育成能力の強化へ。

 この中で私はについて、ベトナムの実例を想起して私は次のように指摘した。

 通常のファンドマネ-ジャーは企業分析=企業価値分析=株価分析をする。これに対して企業育成能力はそれとは別の能力や経験が必要である。たとえば同じ経営者にインタビューしても、前者は減点評価、後者は前向きのコンサルティング能力が必要とされる。発展途上国では、これら両方の人材が不足している。

 企業育成能力をもった人材は、当該国の経営環境に熟知することが最低条件となる。また先進的な技術やノウハウの知識も体得していなければならない。このような人物が、特に発展途上国に存在するのか? 私見では、当該国の現地企業の経営幹部の経験者=OBを採用・派遣する。いわゆる退職者をアジア諸国のVCにおける上場までの企業育成・企業支援に活用する。

 このような人材の派遣を通した技術移転(=経営・生産・販売技術の移転)は、これまでJICA(国際協力機構)やJICAのシニアボランティアの枠組みで実施されてきた。しかしVCと結びついた企業育成のために、こういった人材が活用されることが望ましい。公的資金の節約と民間ビジネスの活性化につながる。民間レベルの途上国の新しい支援のスキームともなりうる。すべての当事者が利益を獲得できる仕組み(WINーWIN)である。

 日本とアジア諸国の官民連携の協力スキームとして、このような金融証券面での試みが今後、積極的に検討されるべきであると思われる。

 またベンチャー市場の投資家について、注意すべき点は次のようであると思われる。

 各国の証券行政における外国に関する対内と対外の規制の程度が、ベンチャー市場の投資家行動に影響を及ぼすということである。

 たとえば韓国の場合、ハイリスク=ハイリターンを志向する投資家は、国内ベンチャー市場に向かうのではなく、たとえばベトナム市場に投資する可能性は高い(注:統計的な実態は未確認である)。また2009年から2010年に開設予定のカンボジアやラオスの証券市場に対して韓国の証券取引所が資金・IT・人材育成で協力し、韓国の証券会社が関心をもっている。

 韓国の場合、国内ベンチャー市場の育成よりも、新興国の株式市場の育成や投資に魅力を感じているように見受けられる。このように考えれば、各国の国内ベンチャー市場の動向は、その国の投資家や証券会社のグローバル投資の程度からも影響されると言えるのではないか?

 私は以上のようにコメントし、水野教授からも賛同を受けた。有意義な学会の討論であったと思われた。

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