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2008年10月31日 (金)

メコン川の出逢い:南北と東西の融合する3カ国

 先日、流通科学大学の大谷昭仁教授から、仏教の伝播についてお話を伺った。大谷教授は工学博士であると同時に、姫路市の名刹である亀山本徳寺の住職でもある。

 ベトナムの大部分の人々の宗教は大乗仏教、ラオスとカンボジアのそれは上座部仏教である。このような各国の宗教的な特徴は、以前から私は紹介してきた。しかし大谷教授によれば、もう一つの区別ができるそうである。

 ネパールのルンビニで誕生した釈迦が、インドで布教を始める。それが南に広がって海を渡ってタイに伝わると「南伝仏教」、それが北方に向かってシルクロードから中国に伝わると「北伝仏教」と呼ぶそうである。この「南伝」が上座部仏教、「北伝」が大乗仏教である。

 東西に隣接するベトナムとラオス・カンボジアであるが、仏教の伝播から考えると、ベトナムは「北伝」、ラオス・カンボジアは「南伝」ということになる。このように考えると、これらメコン川3カ国は、地理的に東西に隣接し、文化的に南北の接点になった地域と言える。

 これらメコン川流域3カ国は、以上のように考えれば、「南北が東西から出逢った」地域とも考えられる。それらの発展を日本政府はCLVと呼んで特別に支援している。事実、豊富な天然資源や農産物開発の発展可能性をもった地域である。またベトナムの工業化も次第に進展している。このような歴史的・宗教的に特異な3カ国が、今後のアジア経済を牽引することは間違いないと私は思う。

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2008年10月30日 (木)

カンボジア近況:世界経済危機の影響

 昨日のカンボジア私見について、プノンペンの消息筋から連絡があった。以下では、それを紹介する。現地の意見は、より尊重されるべきである。参考にしていただきたい。

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 カンボジアとタイの国境紛争は偶然に発生したものでり、再発しないと考えられる。なぜなら両国首脳は、すべてを平和的・外交的に解決することを約束したからである。さらにタイについて言えば、この戦争によって得るべき利益は何もないと思われる。万が一、紛争が再び発生すれば、国際社会が関与することになるであろう。

 したがって、今回の紛争は日本を含む外国人投資家に影響はないであろう。たとえばヤマハでは現在もプノンペンの工場が操業中である。

 今回の世界金融危機がカンボジアに与える影響は大きくない。現在のカンボジアの外国との関係が大きくないからである。カンボジア経済は、農産物輸出・観光・縫製・不動産(近年になって)で主に構成されている。これらの規模が小さいので、外国経済からの影響は大きくない。

 韓国の「投資引き上げ」については、現在まで大きなニュースになっていない。ただし確かに、新しい投資はない。経済財務省は株式市場をできるだけ早く開設することに専念しており、この意味では、国境紛争や世界金融危機の影響はない。しかし、実際の投資家や上場企業については影響があるかもしれない。いずれにせよ、カンボジア株式市場の開設準備は粛々と進められているので、その遅延はないと考えられる。

 IMFからのカンボジア融資については、すでに昨年以前から受けており、特に今回の金融危機で融資を受けたからと言って、大きな影響はないと思われる。
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flairコメントflair
 カンボジアのWTO加盟は2004年である。2007年加盟のベトナムよりも早い。これについて知人のベトナム人は、多少の負け惜しみの感情も含めてであろうと思われるが、「カンボジアには失うものはないから」と指摘した。WTOに加盟して市場開放すれば、国内産業が崩壊するという話は、国内産業が存在している場合である。確かに当時のカンボジアには「アンコールワット観光」と小規模な縫製業のほかに産業はなかった。大部分は農業であった。

 こういった意味で、「持たない者の強み」をカンボジアはもっていると言えるかもしれない。新興国の経済分析は、先進国のそれと同様に扱えない。たとえば韓国が1997年にIMF融資を受けることによって、大きな経済改革を迫られた。韓国にとって経済主権が奪われる重大事件であった。しかしカンボジアでは、すでにIMF融資を受けて、その指導の下に経済成長政策が遂行中である。世界金融危機の影響の有無以前の段階である。これら両国の経済統計や成長率を同等に考えることに無理がある。

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2008年10月29日 (水)

世界金融危機の唯一の効用は軍事紛争の回避:カンボジアとタイ

 米国発の金融危機が世界中を震撼させている。カンボジアはIMF(国際通貨基金)の融資対象国になる可能性もある。

 おそらく韓国資本の投資引き上げが原因ではないか。韓国本国の外貨準備不足が、その投資先であるカンボジアの外貨準備を減少させるという「負の連鎖」が発生しているように思われる。カンボジアにおいて韓国の支援で2009年後半に予定されている証券取引所の開設が遅延するかもしれない。

 他方、タイ国境付近の「プレアビヒア遺跡」の領有権紛争は、10月15日に死傷者を出す軍事衝突があった。この進捗が懸念されたが、10月24日のアジア欧州会議(ASEM)においてタイのソムチャイ首相とカンボジアのフンセン首相が二国間首脳会談を行い、平和的解決に向けて協議することで合意した。

 当初、本年7月の総選挙を平和的に圧勝したフンセン首相は、タイに強気の姿勢であったように思われたが、この9月の金融危機の発生は状況を一変させた。カンボジアは経済危機と軍事紛争の同時発生を回避したいであろうし、それはタイも同様である。この意味で、今回の金融危機が両国の軍事衝突の先鋭化を防止したと言える。

 そもそもカンボジア人のタイに対する国民感情は良好ではない。

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2008年10月28日 (火)

「薄いベール」と「フランケンシュタイン的怪物」の暴露:新しい投資ファンドの提案

 ノーベル経済学賞を1970年に受賞したポール=サミュエルソン(マサチューセッツ工科大学名誉教授)は、米国発の経済危機について、私には的確と思われる分析と対策を指摘している(『朝日新聞』2008年10月25日)。

 私の大学生時代、サミュエルソンの『経済学』は版を重ねる標準的な教科書であった。当時、原書を読まなければならないと購入したものの、最初の数ページで終わった記憶がある。その後、大学院の入学試験対策でフランス語を勉強するために、サミュエルソン経済学のフランス版を少し読んだ記憶もある。

 サミュエルソンは「天才」であって、学生の指導が下手と聞いたことがある。わかり切ったことを詳しく説明したり、難しい数式を当然のように使用したりした。自分と学生の能力格差を十分に理解できていなかったことが原因だと言われていた。そのサミュエルソンも現在93歳。彼の写真を新聞で見て、確かに老人になっていたが、その記事の内容は依然として明解で鋭い。やっぱり天才は衰えずだ。

 さて彼によれば、今回の経済危機は、1929年の大恐慌以来「最悪」であり、それと同時に、それは「避けられたはずの危機」であると指摘されている。これまでの米国政権の共和党・ブッシュ大統領の失政が原因である。ブッシュ大統領は「億万長者に対して優しい政治」を推進し、「米国の歴史におきて最悪の大統領として名をとどめる」と評価されている。

 今後の経済対策として、これまでのブッシュ路線を転換し、「赤字をいとわない財政支出」が必要だと提案する。これは、オバマ大統領候補の「公的資金の投入」という経済対策と符合している。これまでの自由主義的な市場経済の「小さな政府」の下での金融政策の時代から、政府が主導する財政政策の時代に軸足が動くということである。

 この記事の中で、今回の危機を招いた不動産・株価バブルを増大させた犯人として「悪い規制緩和」や「無能な人物の登用」と同時に金融工学が摘発されている。サミュエルソンは「『悪魔的でフランケンシュタイン的怪物のような金融工学』が危機を深刻化させた。表現が長すぎるというのならば「金融工学のモンスター」と縮めてもいい」と述べている。

 この金融工学「のもとで、『信じられないほど激しいレバレッジ(てこの原理を使うように、少ない元手で大きな取引をすること)のやりすぎ』が横行した。そうした中で、人々は自分が何をしているのかがわかならくなってしまっていたのだ」。

 私見では、たとえば極めて高いリスクの証券でも、格付けが最優良(AAA)の金融機関が販売すれば、そのリスクが忘れられてしまう。これが債権の証券化の「落とし穴」である。この金融工学について私は10月18日に次のように指摘した。「エレガントで精緻な金融工学は、文学的な表現にすれば、どす黒い欲望を覆い隠す薄く脆いベールのようなものであるかもしれない」。これは「大きなリスクを隠すための華麗なラッピング」と言い換えることができる。

 このような「金融工学」の反省として、単純で明解な投資が今後は選好されるのではないか。たとえば、たとえ損失リスクがあっても、その投資それ自体は無駄ではない、社会的に貢献する納得できる投資である。より具体的には、地球環境保護の目的に限定された投資ファンドがそうであるし、私が関係するベトナムについては、ベトナムのインフラ建設・中小企業育成・裾野産業育成のための投資ファンドもそうである。民間の投資ファンドが発展途上国の経済発展を支援することは、公的なODA資金では不可能であった大きな効果と利益の可能性をもっている。こういった投資ファンドの理念・コンセプト・スキームの新しい提案が投資運用会社には求められていると私は考えている。これが、今回の金融危機に伴う私の教訓である。 

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2008年10月27日 (月)

故・緒形拳氏と青木雄二氏を偲ぶ:『ナニワ金融道』から学ぶ

 俳優の緒形拳氏が亡くなった。NHK大河ドラマ『太閤記』の秀吉役が出世作であった。私は小学生時代に見た。その後の弁慶役も秀逸であった。最近では、TV番組『ナニワ金融道』(原作:故・青木雄二)でのマチ金業者「帝国金融」の金子高利社長役が印象深い。これはDVDで販売・レンタルもされている。主役は中居正広。また、原作の漫画本は文庫版もある。

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 私は『ナニワ金融道』原作者の故・青木雄二氏を大学の講義にお招きしたことがある。新神戸にご自宅があった。緒形拳氏の逝去もあり、再びDVDを見た。この中の登場人物である「カード地獄」に落ちた泥沼亀之助氏から、現在の金融危機でカード支払いに苦しむアメリカ人を想起した。

 クレジットカードで新幹線のC制チケットを購入して、それをチケット屋で換金する、その現金で別のカードの支払いをする。その繰り返しで、カードが数十枚になる。自己破産しようにも、借り入れの金額が少なすぎてできない。最後は、カードを使った取り込み詐欺まで考えるようになる。真面目な証券マンだった泥沼さんが、帝国金融から借金したことによって転落の道を進む。

 日本のバブル経済後の不良債権処理についての経験が、米国発の金融危機の対策に活用できると麻生総理大臣は述べている。日本の不良債権は担保物件が確定しやすく、その債券回収ビジネスで米国企業は大儲けした。今度は日本企業が儲ける番だと思うのだが、今回の不良債権は、単なる不動産ローンではなく、それが「証券化」されている。不良債権が世界に証券として拡散しているだけに、その損失金額の確定には時間がかかると言われている。それまでは、世界の投資家の不安が増長する。不安は株価の下落を加速する。青木雄二氏が存命なら、今の事態について何とコメントするだろうか?

 さまざまな金融問題は、すでに青木雄二氏の漫画の中に出てくる。『ナニワ金融道』を読んで、そしてテレビで見た日本人は金融ビジネスそれ自体に不安や不信をもって当然だ。「貯蓄から投資へ」と政府が訴えても、日本人が投資に慎重なのは無理もない。「お金は怖いですよ」と上掲の「ナニワ金融道(1)」の高橋正子役の女優・深津絵理がDVDの最後で感想を述べている。

 確かにお金は人間を変えてしまうほどに「怖いもの」であるが、そうだからと言って、投資やお金それ自体を怖がる必要はない。しっかり勉強すればよい。事実、現在の日本経済それ自体は悪くない。しかし将来が見えない。それが不安を高める。将来の明るいシナリオを描くのは政府の役割である。このように考えれば、日本の株価下落の心理的不安の根底には経済問題ではなく、政治問題がある。

 目先の景気対策で株価は安定しない。政治問題の解決には時間がかかる。それなら当面は外国に目を向ける。これが私の現状分析と対策である。当然、自己責任を前提にして冷静に考えて合理的と思われる投資判断をすることが原則である。

 『ナニワ金融道』から学びながら、お金を怖がらずにお金と友達になる。この作品は私にとって永遠の名作である。ここで改めて緒形拳氏・青木雄二氏のご冥福を祈りたい。

 

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2008年10月26日 (日)

新連載「そこまで言うか?チョット待ちいな」(1):世界同時株安について

 このブログの新しいシリーズとして、「そこまで言うか?:チョット待ちいな」を連載する。ベトナムのハノイに下宿していた日本人と知日家・親日家のベトナム人との対話である。このベトナム人(happy01VN氏)は京都の大学に留学経験があり、ベトナム屈指の関西弁の使い手である。さらに日本人(sadNP氏)は、コテコテの関西人である。2人は年齢不詳だが、同世代の親友である。

 これら両氏の対談の紹介を通して、両国の相互理解を促進することが目的である。さらに近い将来、ラオス人(LA氏)とカンボジア人(CN氏)も加わって、国籍の異なった4人がワイワイと自由に議論できればと思う。さらに、それぞれのガールフレンドや奥さんの登場が期待される。まず第1回の話題は、世界同時株安についてである。

 sadNP:「ベトナムの株式指数が、本年最安値の345ポイントになったやん。どないなっとんねん?。このブログには、6月20日の366ポイントが「底値」って書いてあったで」。
 happy01VN:「そんなん、ボクに言うても知らんがな」。「先生に直接聞いてみいな・・・」。
 sadNP:「そんなん聞いたって、なんやかんや言われて、また『今が買いや』って言われるだけや。それで、何となく納得してしまうとこがあかんねん・・・」。
 happy01VN:「ホンマやな。口は達者やな。ほかは知らんけど」
 sadNP:「あの人は、いつでも楽観論やから、それはショウナイわ。大学教授はそんなもんやろ・・・」

 happy01VN:「それよりも日本の株価も下がっとるで。ベトナムよりも、ようさん下がっとる」
 sadNP:「ホンマや。それで困っとんねん。と言うても、ワシは株持ってへんけどな」
 happy01VN:「日本は、アメリカ発の金融危機で被害が一番少ないんとちゃうんかい? そやから円高になってんやろ。円高は、ベトナム投資にチャンスやで。日本は、どうなっとんねん」。
 sadNP:「それより、ベトナムは大丈夫なんかいな?」
 happy01VN:「金利を1%下げたようやし、ベトナム政府は頑張ってると思うで。インフレ抑制と経済成長の両方をやらなあかんのやから・・・。それより、日本はどうなってんねん? ボクの質問に答えてよ」。

 sadNP:「難しい質問やな・・・。株価は、心理的な要因で決まるというのは、みんなが言うとるよな。たぶん、それやと思うで・・・」
 happy01VN:「そら、ベトナムでも同じや。アメリカ発の金融危機いうても、サブプライムローンの証券なんて誰も買うてへんで。外国投資ファンドの換金売りがあるそうやけど、なかなか買い手がおらんそうや」
 sadNP:「えらい、詳しいな」
 happy01VN:「友達が証券会社に務めてんねん。そやけど、給料エライ下がってとるらしい。ところで日本人投資家は、何で弱気やねん?」
 

 sadNP:「将来が不安ということや。食糧もエネルギーも年金も仕事も医療も・・・みんな不安や。まあ、政治の責任やな」
 happy01VN:「政府がしっかりしてない、いうことかいな?」
 sadNP:「まあ、そういうこっちゃな。将来の展望を示すのは政府の責任やからな」
 happy01VN:「日本人の投資家は、ベトナムの政治的安定が投資には大事や言うけど、日本が安定してないいうことかいな?」
 sadNP:「簡単に言うたら、そういうこっちゃ」
 happy01VN:「そんなんやったら、日本よりベトナムの方が政治的に安定してるで。2020年までに工業国になる言うてるし、確かに最近の所得も上がっとる。それなりに将来の希望があるで。今までホンマに貧乏やったけど、今はおカネさえあれば、何でもあって幸せや。ともかく頑張ったら何とか食べていけるから・・・」
 sadNP:「アンタがそう言うんやから、そうなんやろな。エラソウに日本人が言うてるけど、確かに日本の政治家はシッカリせんとアカンな。ちょっと反省したワ」

flairコメントflair
 
株価が「心理的要因」に影響されることは間違いない。最近の出来事を振り返れば、日本の将来を弱気にさせるような出来事ばかりである。それを忘れさすようなテレビの芸能情報や娯楽番組が流されているが、それがあるからといって、当面の不安から逃避できても、将来の漠然とした不安は解消されない。

 今こそ、日本の将来を日本人が真剣に考える時なのかもしれない。明るい日本の未来があれば、株価は上がるに決まっている。日本人も日本企業も実力は依然として世界一流であると思う。ノーベル賞の受賞者を輩出し、世界のトヨタは円高であっても健在である。もっともっと日本人は自国に誇りと自信をもってよい。

 ただし、それを将来の発展に結び付ける国家戦略を国民が共有できなければならない。簡単に言えば、安心して暮らせる将来像が見えれば、それで国民の資金は「貯蓄から投資へ」自然に向かう。この対談ではベトナム人のVN氏に教えられた。日本人のNP氏は納得したのだろうか。

 

 

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2008年10月25日 (土)

日本とベトナムの経済連携協定(EPA)交渉が妥結:次の課題は何か?

 日本ベトナム友好協会の機関紙『日本とベトナム』(2008年10月15日)は、そのベトナムニュースのページで「日越経済連携協定の交渉が妥結」したことを紹介している。以下では、それを引用する。

 「9月29日、ハノイ市で商工省及び在ベトナム日本大使館は日越経済連携協定(EPA)の交渉妥結を明らかにした。同協定の調印は今年末の予定である。

 ベトナムが二国間経済連携協定を交わすのは今回が初めてになる。EPA交渉妥結公表の式典でブー=フイ=ホアン商工相は、交渉妥結及び年内調印は、日越国交回復後の35年間において重要で、政治的にも意味があると言明した。

 EPAでは、両国は農業・工業・貿易取引・投資・人材育成・観光・環境保護・交通運輸を含めた多くの分野における協力を強化する。ホアン商工相によると、EPA締結によって、日本は、ベトナム農産品に対して更に国内市場を開放する一方、日本の工業製品のベトナムへの浸透が進む。

 EPA交渉のファン=テー=ズエ団長によれば、EPA調印でベトナムが日本へ輸出する農・林・水産品の86%及び工業製品の97%は税優遇を受ける。初期段階において日本はベトナムと看護士の育成、裾野産業の投資開発、食品安全基準策定に協力し、ベトナムの品質基準システム構築を支援する。

 現在、日本はベトナムとの貿易取引額が120億ドルでベトナムにとって3番目のパートナーである。今年の貿易総額は、150億ドルを超え、両国の元首が掲げた2010年の目標を2年早く達成する見込みである。(08年9月29日、サイゴンオンライン)」 

flairコメントflair
 
上記の報道によれば、ベトナム農産物の日本輸出の場合に税優遇がある。これはベトナムのみならず、農産物の輸出が有望なラオスやカンボジアはベトナムを経由させるメリットが生まれる。いずれにせよ農産物の対日輸出では、同じく日本が協力を約束している「食品安全基準策定」が必要である。私見では、その策定だけではなく、その基準の実施により以上の問題がある。まあ良いだろう」というベトナム人の「いい加減さ」「詰めの甘さ」の解消が決定的に重要である。

 また、裾野産業の投資開発がEPAの合意事項に含まれたことも注目である。これまでベトナムは北部「フォアラク工業団地」を始めとするハイテク分野を重視する開発協力を要望してきた。しかし、このEPAで「裾野産業」が明記されたことは、ベトナムと日本の現状に対応しているという意味でより適当である。日本の製造業すなわち「もの作り」における熟練技術そして「匠の技」のベトナム移転は、双方にとって急務である

 日本とベトナムのEPA締結を歓迎するとともに、その実施のためのロードマップの策定、さらに官民連携の投資スキーム、さらに日本の裾野産業を構成してきた中小企業のベトナム進出に対する支援など、次のステップの具体的な施策が望まれる。日本とベトナムが相互にパートナーとして両国の経済の持続的成長に貢献する。これこそがEPA本来の目的である。

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2008年10月24日 (金)

関満博氏(一橋大学教授)から学ぶ:中国企業とベトナム企業

 一橋大学(地域産業論)関満博教授は、「五輪後の中国:世代交代が進む製造業」『朝日新聞』(2008年10月20日)において、最近の中国の製造業の現状と動向について述べている。以下では、その中で注目の指摘をいくつか紹介し、それについてコメントを加えることにする。中国企業について学びながら、それを材料にしてベトナム企業を検討するという趣旨である。

◆「製造業での最大の変化は若い力の台頭です。いま成長している民営企業の経営者は25~35歳が中心。・・・・・・そうした世代は改革開放後の市場経済の中で育っているので、合理的な経営ができる」。

shineこれはベトナムも同様である。1986年(「ドイモイ政策」採択)以降のベトナム人は20歳代になったばかり。大学生と考えれば、これらの世代が企業経営の中心となって活躍するのは数年先である。今ビジネスで活躍するのは、ベトナムでも中国と同様に30歳代。この世代は旧世代を無視するわけではない。両親そして年長者の権威や人脈を活用・尊重しながら、自分は合理的(=経済的と言ってもよい)な行動をする。

◆「かつての国有企業が民営化されたものは、古いインサイダー体質の塊で、まともな企業とはいえないものがまだ多い。私は日本の企業関係者に『社長が40歳以上の中国企業とはつきあうな』と言っています」。

shineベトナムについても同感である。こういった企業の社長は一般に人柄がよい。笑顔で親切。しかしビジネスとなれば、なかなか動いてくれない。どっぷりつかった国有企業の体質が染みついているかのようである。他方、国営企業の社長が30代という場合もある。「大抜擢された優秀な若手」という印象を受ける。合理的な判断や対応をするように思われる。しかし多くの場合、個人的に優秀であっても、古い体質の組織の論理を打破することは難しいようである。ベトナム企業について私は「つきあうな」とまでは言わないが、「あまり期待しないほうがよい」とは言うだろう。

◆「毒入りギョーザ」事件など中国企業の品質管理は「ピンとキリの差が激しい。また、中国人は『自分は自分、他人は他人』という傾向が強く、日本のように互いの仕事をカバーしあうという文化があまりないので、品質管理上の死角ができやすい」。

shineベトナムの場合も、上記のような個人主義的な傾向はありうる。ただし私見では、「お互いの仕事をカバーしあうという文化」は、個人的または民族的な性格の問題ではなく、生産システム管理の問題である。たとえば班ごと(もしくは各部署ごと)の業績評価システムにすれば、お互いに仕事をカバーしあうことは、中国でもベトナムでもありうると思われる。

◆特に広東省の「珠江デルタから逃げ出す企業も増えている。台湾系企業は主にベトナム北部に移っています」。・・・・・将来にベトナムが中国の強力な競争相手になることは、「難しいと思います。国が小さいこともあるが、旧ソ連圈にいたのが不幸でした。経済相互援助会議(コメコン)の国際分業体制で、ベトナムは農業生産に特化させられたため、農業機械以外の製造業が育たなかった。さらに隣の中国から安価な製品が流れ込んでおり、自前の国内産業が育つ余地がない。外資の進出に頼るしかないんです。モンゴル・カザフスタンなども同じ問題を抱えている」。

shineこの分野の権威である関教授の指摘は重い。「ベトナムが中国の強力な競争相手になることは難しい」という指摘は、そうだろうと私も思う。経済の規模や発展段階に大きな格差がある。2015年の「アジア経済統合」を考えれば、二国間の「競争相手」という発想ではなく、協力関係の発展を志向することが期待される。たとえば「競争相手」の中国に対抗してベトナムが核兵器の開発をして、ミサイルを打ち上げる。これは、ベトナムが加盟するアセアン諸国から強烈な反対があり、ベトナム自身もそれは考えていない。また、たとえば「シンガポールが中国の競争相手になっているか?」と言えば、どのように回答すればよいか。このような質問は、バレーボール選手とサッカー選手の競争を想定するような愚問である。ある特定の分野でベトナムが中国と競争することは、現在でも縫製業などでありうるだろうが、全面的な競争はありえない。

shine次に「外資の進出に頼るしかないんです」という指摘は、現在の時点ではそうかもしれないが、将来は不明である。ベトナム政府およびベトナム国民の意思に依存する。中国から流れ込んでいる「安価な製品」の品質が良くないことをベトナム人は十分に理解している。しかし安価だから、しかたなしに購入している。中国輸入品の代替の欲求は強い。ただし、その代替品がベトナム製になるかどうかは疑問である。
 日本は第2次世界大戦後、確かに廃墟から出発したが、その当時の技術水準は世界最先端と言ってもよかったと思う。ゼロ戦や戦艦大和の「製造力」を日本は保有していた。同じ廃墟から出発したベトナムには、そういった技術蓄積はない。このように考えれば、ベトナムは日本の明治時代である。当時の日本も、ほとんどすべてを外国に依存せざるをえなかった。明治時代の日本人の「富国強兵」の意気込みが、今日のベトナム人の「富民強国」の情熱に受け継がれるかどうか? これが「ベトナム工業化」の将来を左右する。

shine他方、関教授の指摘の通り、ベトナムが「農業生産に特化」することも今後の展望ではある。しかし「2020年までに工業国の仲間入りをする」という当面の目標がベトナム政府にはある。「アセアン共同体」さらに「アジア経済統合」という新しい枠組みの中では、一国内でのフルセット型の産業配置の工業化は必ずしも必要ない。当面は「外資の進出」に依存しながらも、ベトナム独自の工業化が進展すると思われる。そのヒントは、日本の熟練技術つまり「匠(たくみ)の技」そして「ものづくり」の技術移転である。

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2008年10月23日 (木)

祝:アクセス件数延べ20万件を突破

 昨日、本ブログのアクセス件数が延べ20万件を突破しました。読者の皆さんに感謝を申し上げます。

 何日かの中断はあったにせよ、記事数は1千を超えています。

 そんな理由で、今日はここまで。いろいろ多忙です。

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2008年10月22日 (水)

混迷の世界金融市場:投資セミナーのお知らせ

 日本の株価が乱高下している。世界同時経済危機の中で日本は円高という市場評価を受けている。これは、そんなに日本経済が悪い状態ではないことの証左である。輸出企業に円高は負の影響をもたらすが、それだけで株価下落は説明できない。本来は好影響を受ける企業の株価まで下落している。過去の経験則やテクニカル分析が日本では役に立たない状態ではないのか? それでは、株価下落の本質的な原因は何か? 

 それは米国の経済停滞の不透明性といった外部要因ではなく、日本の内部要因と思われる。より率直に言えば、日本の今日の政治停滞が原因である。企業不祥事がのみならず、政府内さらに地方自治体内の不祥事が最近は連続して発覚している。日本は大丈夫か? 企業に対しては市場の規律が働くが、政治に対する規律が近年には働かない。国民的な人気があれば、何でもありという状況である。このような現状において日本の将来に対する漠然とした不安が国民に広がって当然だ。それが株価に反映する。

 こういった政治的不安を解消する「特効薬」はない。「小泉改革」が特効薬のように多数の国民は信じたが、その後の各種の副作用は大きかった。政治改革とは「漢方薬」のように徐々に国家の体質改善をすることに似ていると思われる。政治改革は、換言すれば、国民ひとりひとりの自覚的な意識改革と言ってもよい。このためには、マスコミや教育などが重要な役割を果たす。そうであれば、日本の政治経済の健全な改革と発展には、しばらく時間がかかる。

 それでは当面、日本の投資家はどうすればよいか? しばらく日本が落ちつくまで静観するしか手段はないのか? いや、外国に目を向ければよい。少なくとも日本だけしか投資先に選択肢がないよりも、いくつかの国を選べる方がよいに決まっている。そこで以下のセミナーが大阪で開催される。ぜひ、お時間のある方はご来場ください。

 第1部の私の話は、ベトナムに加えてラオス・カンボジアの投資戦略の話が中心になります。第2部の石田さんは、ドバイ投資の「カリスマ」と評価されており、ご著書も出版されています。さらに第3部の杉友さんはシンガポール在住で「ヘッジファンド」を組み合わせてリスク分散・高収益を追求するファンドを組成されました。金融危機の今こそ、世界に目を向けて、次の1手を考えるための好機となるセミナーです。

happy01混迷の世界金融市場:誰も注目しない投資手段だからこそ勝てる!happy01

第1部 「成長期のベトナム株式市場:次に注目のラオス・カンボジア市場」流通科学大学・教授・上田義朗氏
第2部 「湾岸諸国とイスラム金融の成長性:国際金融センター「ドバイ」とともに成長を続ける世界規模の金融市場」株式会社・ザ=スリービー代表取締役・石田和靖氏
第3部 「世界経済の分析とリセッション(景気後退)局面における投資戦略:ヘッジファンド」(株)ベネフィック=アセット=マネジメント・CEO・杉友耕治氏

日 時:2008年11月15日(土)13:00~16:30(会場12:00)
会 場:ホテルグリーンプラザ大阪・ダイヤモンドの間(http://www.hgpo.co.jp/
参加費:2000円
定 員:200名
申込締切日:11月13日
主 催:大阪金融仲介業者連合(代表幹事:ユニバーサル=コンシェルジェ株式会社)
総合企画:時事分析セミナー実行委員会
事務局:クロスゲート株式会社
協 賛:トレーダーズ証券株式会社、日越経済交流センター

お申し込みは、日越経済交流センターinfo@j-veec.jpまでどうぞ。

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2008年10月21日 (火)

流通科学大学「実学」講義始まる:感動の連続

 私が担当している講義「21世紀の業界展望(後期)」が始まった。流通科学大学の「実学」を代表する看板講義のひとつである。

 10月4日(水)には第一生命保険相互会社・大阪総局・大阪営業推進部・大阪マーケティング推進課長・大阪営業部課長の木村徹さま、同社・大阪中央支社・大阪第一コンサルティング営業室・大阪第四オフィス・特別営業主任の伊藤理沙さま、次いで10月8日(水)には丹陽信用金庫・人事部人事課・課長代理の大西大輔さま、同金庫・事務部事務指導課・課長代理の神本佐和子さまからご講義を賜った。

 この両方の講義とも、私は不覚にも涙ぐんでしまった。講師の皆さんの熱弁が理由である。両社の企業形態は、共通して株主の利益を追求する株式会社ではなく、前者は相互会社、後者は協同組合である。こういった相互扶助を目的にした企業が原点に立ち返り、独自の経営戦略を追求するようになれば、日本経済の閉塞感が打破できるのではないか? このようなことを考えさせていただいたご講義であった。

 もっとも第一生命は多様な事業活動の展開のために、株式会社に転換することが予定されている。またベトナムに進出している。「Daiichi Life」の大きな看板はホーチミン市で散見されるようになっている。

 第一生命の伊藤さんは流通科学大学の卒業生であり、最優秀の成績を維持するトップ営業レディである。中学生の時に阪神大震災に遭遇し、自宅に被害があったそうでが、その時に家族の絆を実感したそうである。この話にホロッとした。

 伊藤さんから営業トップの秘訣を話していただいた。「口癖が人生を作る」。絶対に成長しない成功しない人の言葉は、「だけどでもどうせだってできません」のbleah5Dhappy02である。今後これらは禁句にしよう。

 目標達成のために伊藤さんが実践していることは次の「か・き・く・け・こ」である。「か:紙に書く。き:期待する・希望をもつ。く:口に出す。け:継続する。こ:行動する」。

 丹陽信用金庫の大西さんは、金融機関の機能や信用金庫の独自性そして最新の経営事例を説明して下さった。さらに同金庫のCI(企業アイデンティティ)である「”よろず相談”信用金庫」について、ご自分が作成したDVDを見せていただいた。これが感動であった。

 「お年寄りご夫妻が、丹陽信用金庫の窓口で年金の中から2000円を引き下ろしに来る。天気やお孫さんの話を馴染みの窓口担当者と交わして、それから買い物に行く。このご夫妻にとって信用金庫に来ることが楽しみになっているし、健康にも役立っている。ATMを利用してもらった方が効率的であるが、それは企業側の都合である。顧客の幸福や満足を追求することが私の仕事だ。この仕事に私は誇りをもっている・・・。窓口担当者のセリフである」。

 信用金庫の原点に帰り、効率性を最優先にしない不器用に仕事をする。もちろん利益がなければ、こういった企業は存続しない。本年3月期の経常利益は225億円超、預金量は5384億円に達している。この利益は兵庫県下で第2位であり、このビジネスモデルは成功と判断される。また2007年の毎日新聞の調査によれば、都市銀行を含めた「メインバンクはどこですか」という質問で、丹陽信用金庫と回答した企業数が兵庫県下で最も増加している。

 最近の世界金融危機の中で、金融機関の「貸し渋り・貸し剥がし」の動向が注目されている。これによって実体経済の悪化が加速される。丹陽信用金庫の経営理念・経営方針から考えれば、「貸し渋り・貸し剥がし」はありえない。こういった時代だからこそ同金庫は最も頼りにされる金融機関になりうる。メインバンクと考える取引企業が、今後さらに増えて当然であろう。

 仕事を通して生き甲斐を見つける。労働力の売買だけでなく、その中から精神的な満足感を得る。これはお金には換算できない。お二人の講義から、仕事・職業・労働の意義や本質を改めて考えさせられた。仕事の対価としてお金は欲しいが、それだけでは面白くない。それでは「仕事が面白い」とは何か? 面白い仕事ができれば、それは幸運で幸福である。

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2008年10月20日 (月)

ラオス証券市場の開設:その最新の進捗状況は?

 ベトナムの隣国ラオス人民民主共和国(Lao PDR、以下でラオスと略記)でも、カンボジアに続いて証券取引所の開設が準備されている。現在までの進捗状況に関するラオス消息筋の情報を紹介する。

 ラオスの中央銀行であるラオス銀行(BOL:Bank of Lao PDR)は、2010年までにラオス株式市場(LSM:Lao Stock Market)を設立する責任をラオス政府に対して負うことになった。そこで2007年12月末にBOLは、LSM設立のFS(Feasible Study:予備調査)実施のために韓国証券取引所(KRX)と覚書を交わした。

 ラオス株式取引所設立の合弁契約が2008年早々に締結され、ラオス側が51%、KRX側が49%を出資することになった。2008年11月KRXは、今後2年間に渡る人材の研修教育に関する覚書をBOLと結ぶためにラオスを訪問する予定である。

 BOLは、副首相とBOL総裁の監督下でラオス証券市場設立委員会(SMEC:Lao Securities Market Establishment Committee)を設置した。同委員会の下で証券法が提案され、それを原則としてラオス政府は承認した。さらに証券発行規則とOTC市場規則も起草され、現在は検討・修正中である。上場と情報開示に関するその他の規則は、間もなく起草されるであろう。

 ラオス政府は、外国証券会社がLSMに参加することを歓迎しているが、地元銀行との合弁形態を考えている。2010年10月10日(LSM開設日)までに市場参加者として数社の証券会社の設立と、最初の段階で約10社程度のラオス企業の上場が期待されている。

flairコメントflair:ラオスでは、すでに証券取引所の開設日まで決定されている。他方、カンボジアでは証券取引所の開設が2009年末と言われているが、明確な日程は未定である。いずれにせよ、両国の証券取引所は韓国の支援で開設されることは間違いない。ただし韓国経済が、今回の世界同時株安の影響で悪化している。ラオス証券取引所に対する出資のみならず、ベトナム・カンボジアに対する大量の韓国投資案件が、これまでの計画通りに実施されるのであろうか。このような懸念がある。

 ベトナムの経験を想起すればよいが、株式市場の創設は経済発展を加速する反面、国民の所得格差を拡大するし、株価下落による国民の不満も増大させる。また実体経済から乖離したバブル発生も予想される。政府は追加的な難題を抱えることになる。

 それにもかかわらず、国家発展の戦略として株式市場は開設する価値がある。株式市場の開設は企業の資金調達を円滑にし、それが実態経済の発展に貢献する。ただしラオスそしてカンボジア両国は、隣国ベトナムの教訓を学ぶべきであろう。それは投資家についても同様である。

 健全な株式市場の発展のために何をするべきか。長期的な観点からの投資家を育成するために何をするべきか。単なる法制度の整備のみならず、証券行政の手法についてベトナムの貴重な経験はラオスとカンボジア両国にとって身近な教訓になるはずである。

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2008年10月19日 (日)

ベトナム株式市場は「はしか」に感染した:マネーゲームの教訓

 新規株式公開(IPO)前の株式を取得し、それが店頭市場や上場市場で売買されることによって株価が上昇する。株式市場で儲かる典型的なシナリオである。

 ただし、これまでのベトナムの経験では、このような過程を必ずしもたどっていない。IPO時の入札価格よりも、その後の株価が下落することが頻繁に発生していた。

 私は、この理由について、ベトナム人個人投資家が、現実の企業価値以上の高値で入札するためであると指摘してきた。また、ベトナム現地法人の投資運用会社ロータス社のファンドマネージャーのタイ社長なども同意見であった。

 しかし考えてみれば、IPOで調達した資金が有効に使用されていれば、その後の企業業績は向上して株価も上昇するはずである。それが実際には、そうなっていないということは、投資家側だけでなく、株式発行主体である企業側の資金使途にも問題があると指摘しなければならない。

 ベトナム株式の昨年までの株価高騰は、単に個人投資家のみならず、発行主体である企業もマネーゲームに参加したと言えるのではないか? 資金調達の必要性が当面は特にない企業が、とりあえず株式ブームであるから株式公開して一儲けしようと考える。その調達資金を経営者や従業員の給与や遊興に使うが、それだけでは資金が使い切れないから、流行の不動産会社や証券会社でも設立しておこうかと考える。やや極端であるかもしれないが、昨年の株式ブームについて、こういった説明ができないこともない。

 株式発行によって調達した資金を何に使うのか? この最も単純で重要な問いかけが、すべての上場をめざす企業になされるべきである。本業から離れた事業に投資するというような企業は、資金調達という株式市場の本来の機能から自ら逸脱して、単なるマネーゲームに参加した企業であると言えば、それは言い過ぎであろうか? 将来の経営計画を吟味し、その内容と調達資金に適合性があるかどうか判断する。これが、ベトナム未公開株式を取得する場合の大前提である。

 ベトナム企業やベトナム株式市場は、ベトナム個人投資家と同様に、まだまだ未熟で幼稚である。また政府の株価対策においても、自社株取得の容認などという知識はあるものの、その実施は有効でなかった。このように考えれば、昨年から今年の株価下落は、いわば「子ども」が感染する「はしか」のようなものである。そういった苦しい経験を一度は経て、ベトナムの市場も投資家も企業経営者も、そして政府も成長し、一人前の「大人」になるのではないか?

 以上、ベトナム株式市場を先進国の市場と同列に考えると、それはミスリーディングな判断を招くことがあるので注意である。子どもは幼く未熟であるから子どもなのである。ただし大人の想像以上に強い生命力成長力をもっているという側面もある。

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2008年10月18日 (土)

新しい投資ファンドの考え方:世界同時株安の影響

 証券業界に「不況」はつきものである。その「不況は逆にチャンス到来」とも言える。社内組織やビジネスモデルの改革など大胆に再構築できる好機である。

 先日、大学の講義「特別セミナー(経営学)」において「不況に攻める地味企業」『日経ビジネス』(10月6日号)の企業事例を教材に使用した。その中で、何でも諦めると、その時点で「思考停止」になる。常に「諦めるな」。最善の工夫を最後まで考える。こういう教訓を話した。「不況だからしかたがない」では「思考停止」になる。不況の今できることを考える。これが当面のビジネスの鉄則だ。

 さて今回のアメリカ発の世界株価下落や、それ以前の大手投資銀行の破綻は、これまでの「権威」に対する信頼性の崩壊を意味する。エレガントで精緻な金融工学は、文学的な表現にすれば、どす黒い欲望を覆い隠す薄く脆いベールのようなものにすぎなかったのかもしれない。

 神戸大学経済学部の故・置塩信雄名誉教授は、「美人の女性と思っていても、その体内に病毒を抱えているかもしれない」という意味のことを名著(新野幸次郎・元学長と共著)『ケインズ経済学』(三一書房)で述べられていた。私の大学生時代の話だ。詐欺商法も同様であるが、ビジネスにおいて調子の良い話には十分な注意が今も昔も必要である。

 さて、この「権威失墜」のアメリカでは、おそらくオバマ大統領の選出によって、新しく生まれ変わる「再生アメリカ」が演出されるのではないかと予想される。ベトナム戦争の英雄マケインが大統領になった方が、ベトナムにとっては外交的にプラスの影響があるのかもしれないが、「アメリカ再生」のイメージからは遠い人物像であると私には思われる。

 他方、日本の個人投資家は、より覚醒した主体的な投資家が増えると思われる。投資信託の場合、透明性や説明責任を強く求めるであろうし、「顔の見える投資スキーム」の新しい投資ファンドが歓迎されるのではないか? ベトナム投資ファンドの戸松氏のセールストークも「顔の見える投資ファンド」であった。

 ただし私は、この戸松氏の投資ファンドのベトナム国内の運用スキームには依然として疑問をもっている。投資信託資金の運用管理は、ベトナム証券法によれば、「投資運用会社」の認可が必要だからである。日本では一般投資家から資金募集しながら、ベトナムではそれに対応した法的規制を受けずに単なる投資会社として活動する。この首尾一貫していないビジネスモデルが、たとえ合法的であるとしても私には納得できない。

 それはさておき、「顔の見える投資スキーム」が支持されるとすれば、従来型の投資ファンドではなく、新たなコンセプトの投資ファンドの組成が必要と思われる。たとえば課税回避を目的としてケイマン島にペーパーカンパニーを設立するというような従来型の投資ファンドの構造に嫌悪感をもつ投資家が増えるのではないか? それが結局、すべて管理手数料などとして投資家の負担増を招くことになるからである。

 この意味で、節税効果と手数料増加との比較が必要である。こんなことを顧客が質問した場合、明確に回答できる投資信託の販売担当者は極めて少数であろう。他方、こういった質問をする投資家が増加することが予想される。

 このように考えれば、より単純でより明確な投資ファンドが、結局は最も安全で安心と投資家に判断されるようになるかもしれない。このような投資ファンドが組成されても不思議でない。

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2008年10月17日 (金)

ベトナム経済について2つの記事(3):真の懸念材料は何か?

 私見では、happy02ベトナム経済の真の懸念材料は、ベトナム国内の銀行破綻の危機であるhappy02ハノイやホーチミン市の不動産開発・不動産投資の資金が、銀行融資でまかなわれてきたのである。これはベトナム人の複数の消息筋からの情報でもある。

 昨年からのベトナム株価下落の原因が、株式投資の資金が不動産投資に移ったと指摘した。これは事実であって、その当時の不動産価格の上昇は2倍・3倍が当たり前であった。これは、今から思うと明らかにバブルであった。

 実需が伴わない加熱した不動産市場はマネーゲーム化しており、そのバブルは早晩に崩壊することが必然であった。こういった不動産価格の下落は、銀行にとって不良債権となる。これは1990年代の日本が経験したことを想起させる。そして、その不動産融資が証券化され、さらに融資が過熱し、その結果バブルが崩壊した今回のアメリカ経済危機は、より深刻と言わざるをえない。

 ベトナム政府は、株式投資を目的とした銀行融資を制限したが、不動産投資について放任したのではないかと思われる。たとえば日本の不動産融資では「居住証明」の提出が融資条件になっていることが多々ある。こうした政策をベトナムも採用できたのであろうが、それを実施できなかった。それを調査する公的機関の職員が不足し、また実施できたとしても、贈収賄が日常化している現状がある。

 もっとも、こういった銀行の不良債権処理は、外国企業にとって新たなビジネスチャンスである。しかし株式市場にとっては、この不良債権の処理に失敗した銀行の破綻が懸念材料となる。これから年末にかけて、これら銀行や不動産関係企業の業績悪化の情報が開示されるようになると、さらなる株価下落もありうる。

 以上、ベトナム株式市場における本格的な株価反騰は、年末以降の新年およびテト(旧正月)休暇明けからであろう。今後の株式投資方針は、現在は高金利の銀行預金で現金を寝かせておいて、来年以降の株価上昇局面に備えて優良株を適時仕込むことである。

 ただし当然ながら、この預金先の銀行が破綻するとweep悲惨weepである。ベトナムの預金保護は数千ドルに過ぎない。個人投資家のベトナム情報収集力には限界がある。これまでに紹介してきたロータス社などの投資運用会社に資金を委託することが無難であろう。

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2008年10月16日 (木)

ベトナム経済について2つの記事(2):株式市場における3つの懸念材料

 最近のベトナムに関する次の記事も興味深い。『日本経済新聞』「点検アジア・新興国株」で「ベトナム株、不安定な展開 金融危機への警戒感強く」(2008年10月14日)と指摘されている。

 世界同時株安の影響を受けて、ホーチミン市証券取引所のVN指数が、本年最安値366.02(6月20日)の水準に近づいた。今後の見通して、記事では次の3点の懸念材料を列挙している。

 第1に、「米国発の金融危機への警戒感が強い中で、投資家の間で「調整期を迎えているベトナム経済も深刻な打撃を受けるのではないか」との不安が根強い」。

 第2に、「ベトナム国家銀行(中央銀行)は商業銀行に払う準備預金の利息を増やし、流動性の確保に動き出している。ただ、最も効果が大きいとされる政策金利の変更には踏み切らない見通し」である。「消費者物価指数(CPI)が前年比で高止まりし、インフレ懸念がぬぐい去れないためだ」。

 第3に、「利下げというカンフル剤が期待できない中、十月はファンドを組成している海外の機関投資家が解約に備えて株式の換金売りを進めているもよう」である。

 以上の材料のために「大きなマイナス材料がない中でベトナム株が下がる原因の一つになって」おり、「今後は「370近辺で二番底を探る展開になる」(大手証券)との見方もある」と述べられている。

 第1について、これは心理的な要因である。アメリカ経済の停滞は、対米輸出の減少といった成長のマイナス要因をもたらす。しかしベトナム政府の「全方位外交の成果」と言うべきか、ベトナムの輸出は全方位である。マイナスの影響は小さいと見なされうる。
 ただし、世界経済の同時不況という状況が生まれれば、その影響はベトナムにも及ぶ。その場合、ベトナムは内需拡大に重点を移して経済成長を維持するであろう。

 第2について、的確な政策と見なされる。インフレ抑制は政府の最優先課題ということは以前から公表されていた。そうでなければ、国民の不満が拡大するからである。長期的に見て高金利政策は継続はしないから、株価上昇の政策手段として利下げカード」は温存されている。

 第3は、新たな投資ファンドの買いが、こういった換金売りを吸収すると考えられる。現在の株価水準は間違いなく底値に近いわけで、明らかに買い局面である。

 このように考えれば、以上の3つの懸念材料について懸念する必要は余りないことになる。より深刻なベトナム経済の問題点は、この記事にあるようなアメリカ発の経済危機という外部要因ではなく、内部要因にある。それは何か? (以下、続く)

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2008年10月15日 (水)

ベトナム経済について2つの記事(1):直感的・皮相的

 ベトナム経済について、大前研一氏が、「米「破綻連鎖」で中国・インド・ベトナムが大失速 日本は「10年不況」に備えよ」と述べている(大前研一「ビジネス新大陸」第186回「ジャングルで勝ち抜く戦闘力をつけろ」『週刊ポスト』2008年10月24日、p.72)。

 「まずアメリカがこけたら、世界で最初にこけるのは、アメリカ経済と深くリンクしてきた「中国」と「インド」である。すでに中国経済は全土で失速しているが、なかでもアメリカ向けの商品を中心に作っていた広東省の落ち込みがひときわ激しい」。・・・・・・「その次はベトナムだ。先進国は、あまりにも中国に工場が集中したためベトナムにヘッジをかけていたが、中国が空いてきたので、もはやベトナムを押さえておく必要がなくなっている」。

 まあ何と、直感的・皮相的なコメントであろうか。どうせ電車の中や待合室で読まれるのだから、単純なメッセージで十分というのだろうか? 確かにベトナムのアメリカ輸出が最近急増しており、アメリカ経済の失速はベトナムに負の影響がある。しかし全方位外交を堅持し、食糧と資源の輸出国であるベトナム経済に大きな後退はありえない。ベトナムからカンボジア・ラオスの周辺国にも経済発展が波及している。今後のベトナム国内需要の拡大も十分に期待できる。

 アメリカの経済失墜がベトナムに波及し、アメリカがベトナムを道連れにする。ベトナム戦争に負けたアメリカが、こんな形でベトナムにリベンジする・・・。与太話としては面白いが、現実にはありえない。まだまだベトナムは発展途上の国である。ベトナムの発展余力は、世界経済後退の影響を補って余りある。昨年のWTO加盟後、ベトナムは中進国になっていると私は指摘したことがあるが、それをより正確に言えば、「なった」のではなく、「なりつつある」。

 ベトナムについて大前氏が注目してくれることは有り難いが、依然としてベトナムは発展途上国である。その年々の成長には目を見張る。世界からのODAに依存する側面はあるものの、ベトナムを始めラオス・カンボジアの発展は継続する。大きな政変や災害が発生しない限り、発展途上国の発展は止まらない。 (以下、続く)

 

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2008年10月14日 (火)

国際的な資金流通システムを整備せよ:金融危機からの教訓

 世界同時株安、株価暴落、円高不況・・・。日本を取り巻く経済環境は不透明で暗い。今日は、日経平均が1000円上昇し、やや明るい方向性が見えてきた。今回の世界同時株安からの教訓は何か? 

 市場経済の不安定性は必然であるから、それを信奉する限り、こういった事態を甘受するほかない。このような冷めた見解に基づけば、そこで「思考停止」になってしまう。

 そうではなくて、日本の経済体制の進路を考えることは、国民レベルの問題とするべきである。より一般に言って、経済知識の普及は健全な経済発展を促すことになる。政府の経済政策をチェックする機能が高まる。また個々人の経済認識の向上は、次から次に発生する経済的な詐欺商法に引っかからないことにもなる。

 ここで「健全な経済発展」とは何か? たとえば高速道路を建設する。この必要性や優先性は、日本とベトナムのどちらが大きいか? 世界全体の経済発展や投資効果を考えれば、ベトナムの方が優先されてよいと私は思う。この場合、もちろんベトナムの中で高速道路と病院建設の優先度が検討されていなければならないが、このように公共投資の優先度を世界規模で考えても良い時代ではないか?

 そのためには、グローバルな資金流通システムを整備しなければならない。資金過剰の国から資金不足の国に円滑に資金が流通すれば、そこから得られる利益は実体経済の成長を伴っており、それは「バブル経済」とは呼ばない。

 過剰な資金はマネーゲームを生む。そういった資金があれば、資金不足の国に投資する。当然、そこからも利益を得ることができるが、それは安全で確実な利益である。このような国が、日本にとって今はベトナムと見なされる。他方、中国は、もはや資金過剰国であり、その資金は周辺国に広範に投資されている。この投資は、将来の中国経済成長の基礎になる意図が込められている。

 この投資は政府主導とみなされる。市場は、それぞれの参加者が利益を追求する。この参加者の自主管理は難しい。やはり市場管理の役割は、中立的な政府の役割である。そのためには賢明な政府の存在が不可欠である。

 

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2008年10月13日 (月)

三浦展『下流大学が日本を滅ぼす!――ひよわな”お客様”世代の増殖』を読む

 

 下流大学が日本を滅ぼす! ひよわな 下流大学が日本を滅ぼす! ひよわな"お客様"世代の増殖
販売元:TSUTAYA online
TSUTAYA onlineで詳細を確認する

 上記の図書を連休中に読んだ。同書は、大学教員にとっては一般に知られたくない本音を赤裸々に表明してる。この中で紹介される学生の実態は多くの点で当たっている。

 いまどきの困った学生たち!:①メールの件名が毎回「助けてください」、②笑い物にするため、先生を盗撮する、③「わからない」と言ったら、すぐ泣く、④卒論を教授にタイピングさせる、⑤間違いを指摘すると、固まる。こんな若者が会社に入ってくる!!

 要するに基礎学力も社会常識もない大学生が増加しているということである。その実態を突き付けられた大学教員側は、それを直視し、それに真剣に対応しなければならない。それが大学における教育者としての使命であろう。ここで必ず、大学は研究することも使命だという意見が出てくる。しかし2つの使命を同時に追求するから大学である。研究は、教育を軽視する理由にはならない。

 本書の具体的な内容は、以下の引用と目次から想像していただきたい。また実際に広く大学関係者や受験生そして父兄にも読んで頂いて、広く議論することが必要であると思う。

 「大学は学生からお金をもらう側だから、バカ学生でもかまわないが、会社はお金を払う側だ。社員がバカでは困るのである。しかし日本の教育は、16年間かけて、そうしたバカを大量生産し、最後の仕上げに大学がバカに磨きをかけて、社会に送り出しているのだ。大学は、日本を破滅させる気なのか?」(p.5)。

 「要するに大学の先生は、自分の立場を守るために口を閉ざしているんだね。それで仕方なく、バカ学生と付き合わざるを得ない。まあ、自業自得さ」(pp.30-31)。

 目次

 第1章 大学がバカ学生を大量生産する
 第2章 お客様化する学生とモンスター・ペアレンツ
 第3章 バカ学生は社会では通用しない
 第4章 「大学貧乏」の登場
 提 言 オンライン大学で下流脱出を

 私は現在、学生の就職担当の委員をしている。この観点から言って、第3章は以前からの私の意見と同じである。たとえば「もっと板書をキレイにしてほしい」と学生から要望されるのだが、それに対して私は「商談時に取引先が板書してくれる実例は1%もない。相手の言うことをメモする習慣をつけなさい」と反論(=言い訳)している。会社で働く時に困らないように、こういったことも知識のみならず教育する。これが大学教育における「実学」かもしれない。

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2008年10月12日 (日)

カナリア~西條八十物語~:関西大学「学園座」公演を見る

 関西大学の演劇部には4団体ある。その1つが学園座である。機会があって、その公演を見ることになった。10月10日(金)~12日(日)の4回公演。http://gakuenza.yu-yake.com/

 11日(土)の昼に関西大学の校門前で、萩尾千里さん(株式会社・大阪国際会議場社長、関西経済同友会前事務局長)に偶然にお目にかかった。これはオマケの幸運だ。日越経済交流センターの活動に何度か支援をいただいている。立ち話であったが、ご挨拶できてよかった。

 学園座の演目は、「カナリア~西條八十物語~」(作:斉藤憐、演出:吉井恵)である。率直に言って、面白かった。演技も熱演であったが、それ以上に作品それ自体、さらに言えば、西條八十の生涯に共感したし、興味深かった。

 西條八十は、現在で言えば、マルチタレント教授である。このマルチとは、①叙情詩人、②児童文学作家、③作詞家(流行歌・軍歌)、④フランス文学者(元早稲田大学教授)。さらに⑤株式投資家。

 活動自体もマルチだが、それぞれの内容もマルチである。たとえば作詞家として次の作品がある。童謡「歌を忘れたカナリアは・・・」、軍歌「貴様と俺とは同期の桜・・・」、戦後の流行歌「父は夢見た、母も見た・・・青い山脈・・・」そして「吹けば飛ぶよな将棋の駒に・・・」。驚くべき多様性と才能である。政治的には、左翼劇団に資金カンパしながらも、その後は従軍記者となり、戦後は戦犯容疑にも問われている。

 フランス文学者としては、逝去の3年前の75歳で『アルチュール=ランボー研究』(1967年)を刊行してライフワークを完結させた。

 これらのマルチタレントおよび多様性の基礎には、その天性の才能があることは言うまでもない。しかしその原動力や契機は、女性好きから生まれる多数の愛人遍歴、そして断り切れない優柔不断な性格である。また、それを容認する家族の理解と忍耐力。

 いくつかの教訓を以上から感じた。①優柔不断で断り切れない仕事は悪いことではない・・・仕事の幅を広げることになる。②ライフワークは完成させる・・・私の場合、「役員兼任ネットワークの研究」? または「博士号」を取得すること? そのほかに③好奇心を忘れない。④仕事には極度に集中する。 

 なお西條八十は、株式投資の利益で「詩人会館」を建設する夢があったそうである。株式投資のような不労所得は、自分だけのために使っては、世論の支持が得られない。東京には日中友好親善のための会館があり、格安で宿泊もできるが、私も、お世話になっているベトナムやラオス・カンボジアのためにビルを1つか2つ建ててもよいのだと思う。夢は大きい方がよい。

 いろいろ考えさせられた公演であった。時代の変革が求められている時代に、その変革の中でどのように生きていくか。人間の生き様=人生観を大学生にも考えてほしい。熱演の学園座の皆さんに感謝を申し上げたい。

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2008年10月11日 (土)

ロータス投資運用会社提供「ベトナム経済ニュース(21)」:9月の株価レポート

 最近、ベトナムのことを書いていないが、それはベトナムのことを忘れているのではなく、ベトナムのことで仕事が込み入って簡単に書けないからである。

 今週のベトナム株価指数は、本年6月の近年の最低水準に近くまで下落した。世界同時株安にベトナムがつきあう必要はないと思うが、弱気の心理的要因はベトナムにも伝播している。またアメリカ経済の減退は、ベトナムの輸出に悪影響を及ぼす。これらは、ベトナムが国際化している証左である。

 さて、ベトナム現地法人であるロータス社(http://www.lotusimc.com/)の社長兼ファンドマネージャーであるタイ氏からのメッセージを以下に紹介する。彼は、客観的な業績値で証明されているが、ベトナム屈指のファンドマネージャーと言っても良い。

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 9月、VN-Indexは15.28%、539.10ポイントから456.70ポイントまで落下しました。Hastc-Indexは22.80%(192.43ポイントから148.55ポイントまで)下がりました。OTC市場も同様の下落を見せました。

 米国発の金融危機は世界中の投資業界の注目を集めています。ベトナムに対する米国金融市場の影響に関して投資家の皆さまからいくつかの問い合わせを受けましたが、弊社の見解は次の通りです。

 1.経済および企業に対する影響:米国経済は世界各国の経済に大きく影響を及ぼしているため、ベトナムの輸出にも影響を与えるでしょう(ベトナムは全方位外交を基本政策として米国のみならず世界各国に輸出しています)。また経済の各分野は相互関係があるため、この輸出減退はベトナムの他の分野にも一定の影響を与えるでしょう。

 ただし、ベトナムの金融機関は米国大手金融機関と密接な関係がないために、深刻な影響は少ないと言えるでしょう。事実、2008年9月末までの時点では、ベトナムの輸出総額は昨年同期よりも39%増加しました。この影響は、個別の投資チャンスにおいて具体的に検討されるべきであると考えております。

 2.証券市場に対する影響:インターネットを始めとする通信手段の発展によって世界の投資業界における心理的要因の伝達は拡大・加速されています。弊社の観察によると、ベトナム国内投資家が上場株また未上場株の取引を行う場合、米国証券市場および外国の状況に徐々に関心を払うようになってきました。OTC取引が最も賑やかに行われている軍隊銀行(MB)における考察の結果によると、日々のMB株価は、米国市場およびベトナム上場市場の動向に大きく左右され、その終値は、ベトナム上場市場およびその他の市場に追随することが判明しました。また外国法人投資家は、ベトナム証券市場に参加する場合に世界の証券市場からの影響を受けています。

 ただし、この影響は企業の本質的な価値に対してではなく、株価に対してだけに及んでいるにすぎません。したがって株価の上下は一時的なものに過ぎず、その株式の将来価値を反映していません。

 3.ベトナム経済の現状:年初9ヶ月のGDPは昨年同期を上回り、6.25%となりました。またCPI(消費者物価指数)は0.18%上昇し、第3四半期の貿易赤字は15億1100万USDでした。また、登録された直接投資額は571億2000万USDに達し、2007年同期より5倍に増加しました。FDI(外国直接投資)の年初9ヶ月の支出は約81億USDになりました。
上記の経済実績は、政府の景気刺激策の結果だと思います。9月25日に国家銀行総裁は、強制準備金の金利を年間3.6%から5%にまで引き上げることを決定しました。一方、インフレ率も抑制されたために、商業銀行は調達金利と貸出金利を下げる動向を見せました。しかし、金利が下がったと言いながらも企業にとっては依然としてはるかに高い水準です。

 以上、世界経済からの影響およびベトナム経済の内在的な要因によって、ベトナム経済の発展速度はやや遅くなるでしょうが、これは新しい動向というよりも周期的な調整であると思われます。ベトナム経済の潜在力が時間の経過に伴って表出するでしょう。また、経済成長が鈍化する時期であっても、良好な経営の企業を発掘できると思います。このような観点から幅広く企業を渉猟したいと考えております。
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 ベトナムのような成長国では、潜在的な投資対象企業の宝庫である。それは「人材の宝庫」と言うこともできる。日本の戦後、松下幸之助・本田宗一郎・盛田昭夫・稲森和夫といった起業家精神が溢れるリーダーが生まれた(ジョン=コッター「偉大なリーダーは危機の中で創られる」『日経ビジネス・マネジメント』Autumn,2008)。さらにダイエーの中内功もそうである。こういった人材の発掘がベトナムでは求められている。その前に、発掘できる人材が必要なのかもしれない。それは誰か・・・。これからの時代に必要なことは、これである。

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2008年10月10日 (金)

歓迎されるIMFの新融資

 今日の『日本経済新聞』(14版)の朝刊トップは、「IMF,新興国に新融資:日中などの外貨準備活用」「日本、G7で提案へ:金融危機封じ狙う」という見出しである。

 これは歓迎されるべきことである。先日に本ブログで紹介したが、資金需要の旺盛な国に資金過剰国の資金円滑に流れる仕組みを作ることは、大局的に見て、資金過剰国のバブル経済化を防ぐことになる。上記の試みは、その一環とみなすことができるので、私は積極的に支持したい。

 同様に第7面には、中央三井トラスト・ホールディングスが、中国証券大手の海通証券と業務提携し、共同ファンドなどの設定を検討するそうである。金融機関や証券会社の日本の大手企業が、外国の大手企業と資本参加したり、業務提携したりする。大手同士の資金の流れが進展したことを意味する。

 それならグローバルな中堅・中小同士の提携があっても良いはずである。そのことによって、国際的な資金の流れが多様化する。こういった観点からの金融機関の国際的な提携が検討されてもよい。しかし実際は、日本の中堅・中小金融機関(地方銀行・信用金庫・証券会社)の動きは、どうもそうではないように思われる。提携先の外国企業については大手志向が強いのではないか。それでは、その外国大手会社に対して資金が集中してしまう。資金ルートの多様化にはならない。「大手企業なら安心だ」という根拠のない理由が、そういった傾向の原因であると思われる。

 よく指摘されるように、経済活動における資金の役割は、人間の身体活動における血液にたとえられる。そうであれば、金融危機は、血液が末端まで伝わらず、一カ所に集中して血管破裂したようなものである。血液の円滑な流通(=血行をよくする)、そしてサラサラ血液が健康の基本と言われることもある。複雑な国際金融の課題も、このように考えればよい(・・・という部分もある)。

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2008年10月 9日 (木)

外国為替の窓口の行列:不況の商機

 大阪・梅田の三井住友銀行の外国為替専門の窓口で、日本円を米ドルに両替した。1ドル=102.69円。最近の円高に対応して、高齢者の方々も含めて多数の顧客であった。

 こういったドルの売買によって、個人であっても確かに利益を出すことができる。為替ボートに目を近づけて数字を眺めていた70歳代に思われる女性は、このような個人の為替ディーラーなのであろうか。

 このような為替で利益を上げることは、まずグラフを書くことから始めるとよい。株式投資と同じことだ。でもメンドウである。今の技術水準によれば、おそらく自動的に売りと買いの時期を知らせてくれるソフトが開発されていても不思議でない。

 たとえばドルを買った金額を入力すれば、毎日の為替レートのデータを自動的に更新して、5%の利益、10%の利益と教えてくれる。このような個人向け為替管理ソフトがあってもよい。世界同時株安に伴って、しばらくの間、景気低迷が続くと予想される。生活・家計の防衛策が受け入れられる世相である。それなら、そういった商品開発・サービス提供に商機がある。

 

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2008年10月 8日 (水)

世界同時株価暴落:株式市場の原点回帰の好機・・・

 世界的な株価暴落。アメリカの投資銀行・金融機関の破綻がきっかけである。世界の「金融センター」の金融機能が不安定となるのだから、その激震が世界に拡大するのは当然である。

 こういった危機の時代には、大局的な視点が必要である。株価下落の「底値」を探り、そこで買うという指摘は当然だが、何年か先には再び危機は再来する。この機会に、証券市場の原点回帰を考えてみればどうか。

 たとえば日本で株式投資をする。手軽で安心だからと言って、日本のトヨタ自動車の株式を買う。しかし本当にトヨタ自動車が、投資資金を必要としているわけではない。株式の流通市場として売買は必要だが、過度な売買は企業の実力以上に株価を押し上げる。もちろん、この株価には企業の将来性に対する期待が含まれている。

 しかし、その期待が過剰であれば、その株価は過度に値上がることになる。これは「バブル」だ。株式市場の売買は「マネーゲーム化」する。いつか株価は下落する。

 もし日本の投資家がベトナムの株式を買えばどうか。そのベトナム企業でも、先のトヨタ自動車と同様に、過度に株価が上昇するであろう。そして、いつかは株価が下落する。昨年からのベトナム株式の下落は、このようにも解釈できる。

 ただし、より大局的にみれば、ベトナムでは日本より以上に資金需要は旺盛だ。南北高速鉄道、高速道路、地下鉄建設など今後のインフラ整備を考えれば、ODAや融資だけで資金需要は賄えない。多様な形態の民間資本の導入が求められる。国際競争力のために企業の設備投資や人材育成も不可欠だ。しかし、その資金経路は十分に開設されていない。さらに、ベトナム側で資金の受け皿も十分でない。

 資金過剰の日本から資金不足のベトナムに多様な資金経路を開拓する。これが、証券市場の原点に立ち返ることである。そして、こういう仕事が、証券会社や金融機関に求められている使命である。

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2008年10月 7日 (火)

ラオス人留学生のこと

 ラオス人留学生と話す機会があった。来春には帰国するそうである。いろいろ雑談をして楽しかった。

 ラオスの大卒賃金は300ドル程度に上昇。国営銀行の部長クラスになると、1,000ドル程度になる。こういった調査は最近していないので参考になった。

 途上国での情報は常時バージョンアップしなければならない。このことを痛感した。今年8月には、ラオスの1人あたりGDPは800ドルを超えたと言われていた。昨年にカンボジアを抜いたが、この調子の急成長であれば、ベトナムを追い抜く日も近い。

 もちろん「ラオスは人口が少ないから・・・」という背景はあるが、この数字には注目しなければならない。それに伴って生活水準や賃金の上昇が見込まれるからである。

 ラオスの証券市場の開設準備は進んでいる。いよいよ「癒しの国」ラオスの経済も起動である。

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2008年10月 6日 (月)

証券経済学会・第70回全国大会の開催(2):奥村宏先生の報告について

 表記の学会において昨日の午後、会社学研究家の奥村宏氏が「株式会社の第三期」という論題で報告された。これは「会社は誰のためのものか」というセッションの一部である。

 奥村先生は、産経新聞の記者を経て、(財)日本証券経済研究所・大阪研究所の主任研究員になられた。私は、同研究所で奥村先生の隣の研究室というご縁があった。その後、先生は龍谷大学教授、中央大学教授を経て、現在は78歳になっておられる。そのご報告の様子は元気一杯、「往年の奥村節」は依然として健在という印象を受けた。

 奥村先生の株式持ち合い論・法人資本主義論・六大企業集団論は、何度も読み返した私の記念碑的な著書や論文となっている。

 個人的にも奥村先生には多々お世話になった。特にカリフォルニア大学・デービス校における奥村先生の在外研修中、私は何日かホームステイさせていただいたことがある。奥様にも大変お世話になった。米国におけるアパートやホテルでの滞在経験は何度かあるが、アメリカの一戸建ての木造建築での滞在はこれが唯一の経験である。私にとって懐かしい思い出となっている。

 さて奥村先生の報告では、現在の株式会社が、結核で言えば「第三期」の末期症状に似ていると指摘された。「第一期」は、近代株式会社が成立した19世紀。株式会社の株主は個人株主が前提であった。「第二期」は、20世紀の「経営者支配」の時代。株式所有が分散し、所有と支配が分離した。しかし株主は依然として個人株主が大多数であった。

 そして「第三期」が、20世紀の後半からアメリカでは機関投資家に株式が集中し、日本では株式持ち合いが進展した。個人株主が後退した株式会社は、どのような存在か? 真の出資者=株主は誰か? このような疑問に的確に回答できない時代となっている。株式会社の原則から逸脱した現状があるが、それをどう考えればよいか? 

 奥村先生は、以上のような問題を提起された。通常は、企業が社会的存在となり、それに伴って「企業の社会的責任」(CSR)を果たすことが強調される。しかし奥村先生は言う。「殺人をすれば、自然人は裁判で死刑になる。しかし法人が殺人をしても、損害賠償はあるものの、死刑にならない。つまり刑事責任を問われない」。「犯罪の責任を取らない企業が、どうして社会的責任を果たせるのか?」。

 この鋭い論点が、まさに「奥村節」である。さらに奥村先生は、投資ファンドマネージャーについて、短期的利益を目標とする投機を煽る錬金術師のように特徴づけて批判する。利益を最優先するファンドマネージャーが、株式会社の本来の姿をゆがめているという主張のように私には思われる。これは全面的には同意できない。

 投資運用会社および投資ファンドマネージャーの実際の仕事を直視しない偏見と言えば、奥村先生に失礼であろうか? ファンド運用会社は手数料収入が、預かり資産の通常は1%~3%程度である。一般の産業における「売り上げ高」に相当する。10億円の預かり資産であっても、年間で1千万円から2千万円程度の売り上げである。各種の規制が課せられている中で、これでは利益が出ない。

 それを補うために成功報酬が設定されている。それが20%と言っても、その半分は販売を担当する証券会社などと折半することが多い。この成功報酬は、もちろん利益を出してこそ受け取れるのだから、きわめて不安定な収入である。

 中小規模の投資運用会社の大部分は、このように苦労しながら、投資家のために働いている。これらのファンドマネージャーは、大手運用会社と競争するために、投資家の目線に立った運用商品とサービスを提供している。私の関係するベトナムのロータス社もそうである。

 奥村先生の批判は、ごく限られた一部の大手運用会社のエリートのファンドマネージャーを対象にしており、それを単純に一般化している。これは、たとえば「天下り」のエリート官僚を批判することと、大多数の一般公務員を同じに扱うようなものである。より簡単に言えば、奥村氏は大企業と中小零細企業を同列に扱って、ファンドマネージャーを批判している。

 ファンドマネージャーは、投資家のために働いているのであって、その報酬は正当・合理的である。そのことが証券市場を活性化している。この本来の機能から逸脱した場合、それは投資家から受け入れられないし、ファンドマネージャーの自殺行為である。その名声や評価は一瞬に失われる。

 奥村先生の主張に違和感を覚えることも、私の「実学」の成果である。

 

 

 

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2008年10月 5日 (日)

証券経済学会・第70回全国大会の開催(1):滋賀大学経済学部・彦根キャンパス

 表記の学会で、日本大学大学院グローバル=ビジネス研究科の水野満教授による「東アジア諸国のベンチャー市場の特性と課題」という報告に対するコメンテーターの役割を果たすために彦根市の滋賀大学経済学部を訪問した。

 昼休みには雨の彦根城を見学した。ちょうど「井伊直弼と開国150年祭」が、本年6月から来年3月まで開催されていた。彦根城は国宝となっており、現在は世界遺産に申請中である。その落ち着いた雰囲気の町並みは、島根県の松江市に似ており、京都よりも歴史を実感させてくれる。滋賀大学は勉学に最適の環境であるように思われた。

 さて水野教授は、東アジア6カ国(韓国・タイ・シンガポール・フィリピン・マレーシア・香港)におけるベンチャー市場の現状や課題を的確に特徴づけられた。私もベトナムのほかにカンボジアやラオスを研究対象にしているが、複数の国を同時に取り扱うことは各国の論点に濃淡があり、その抽出が難しい。水野教授は、その点を簡潔にまとめられていた。論文や報告書の公刊が待たれる。

 さらにベンチャー市場が発展するための条件として、教授は次の8点を指摘された。多数の上場予備軍リスクを甘受する投資家層の存在、投資家保護の規制、証券市場の価格形成の公正性・透明性、不健全企業の退出ルール、投資家教育、ベンチャーキャピタルの役割強化:ハンズオン、ベンチャーキャピタルの企業分析力から企業育成能力の強化へ。

 この中で私はについて、ベトナムの実例を想起して私は次のように指摘した。

 通常のファンドマネ-ジャーは企業分析=企業価値分析=株価分析をする。これに対して企業育成能力はそれとは別の能力や経験が必要である。たとえば同じ経営者にインタビューしても、前者は減点評価、後者は前向きのコンサルティング能力が必要とされる。発展途上国では、これら両方の人材が不足している。

 企業育成能力をもった人材は、当該国の経営環境に熟知することが最低条件となる。また先進的な技術やノウハウの知識も体得していなければならない。このような人物が、特に発展途上国に存在するのか? 私見では、当該国の現地企業の経営幹部の経験者=OBを採用・派遣する。いわゆる退職者をアジア諸国のVCにおける上場までの企業育成・企業支援に活用する。

 このような人材の派遣を通した技術移転(=経営・生産・販売技術の移転)は、これまでJICA(国際協力機構)やJICAのシニアボランティアの枠組みで実施されてきた。しかしVCと結びついた企業育成のために、こういった人材が活用されることが望ましい。公的資金の節約と民間ビジネスの活性化につながる。民間レベルの途上国の新しい支援のスキームともなりうる。すべての当事者が利益を獲得できる仕組み(WINーWIN)である。

 日本とアジア諸国の官民連携の協力スキームとして、このような金融証券面での試みが今後、積極的に検討されるべきであると思われる。

 またベンチャー市場の投資家について、注意すべき点は次のようであると思われる。

 各国の証券行政における外国に関する対内と対外の規制の程度が、ベンチャー市場の投資家行動に影響を及ぼすということである。

 たとえば韓国の場合、ハイリスク=ハイリターンを志向する投資家は、国内ベンチャー市場に向かうのではなく、たとえばベトナム市場に投資する可能性は高い(注:統計的な実態は未確認である)。また2009年から2010年に開設予定のカンボジアやラオスの証券市場に対して韓国の証券取引所が資金・IT・人材育成で協力し、韓国の証券会社が関心をもっている。

 韓国の場合、国内ベンチャー市場の育成よりも、新興国の株式市場の育成や投資に魅力を感じているように見受けられる。このように考えれば、各国の国内ベンチャー市場の動向は、その国の投資家や証券会社のグローバル投資の程度からも影響されると言えるのではないか?

 私は以上のようにコメントし、水野教授からも賛同を受けた。有意義な学会の討論であったと思われた。

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2008年10月 4日 (土)

変革の時代を迎えて

 会社を停年退職して、自分の趣味や孫の世話を楽しむ。これは人生の幸福であるかもしれない。

 ここで「かもしれない」と言うのは、そのような話は想像できるが、自分が体験していないからである。偶然に最寄り駅で大学を停年退職された先輩職員にお目にかかり、そんなことを考えた。

 最近は、こういった幸福な人生設計の予想が難しい時代になりつつあるように思われる。日本の将来が不透明になっている。このままでいいのか? 自民党から共産党までが、このような問題を提起している。ということは、本当に変化が迫られているということだ。今こそ、変革の時代が到来した。

 この変革には国家戦略が必要である。アジア諸国の中で堂々とした「大人の国」。アジア諸国から信頼と尊敬を集める国。私は日本がこんな国になってもらいたい。近隣のアジア諸国からの信頼は、世界からの信頼を集めることに通じる。

 日本の変革の将来像を議論し、選択する。そういった争点であってほしい総選挙が間近に迫っている。 

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2008年10月 3日 (金)

ベトナムにおける知的財産権保護

 表題のセミナーが大阪と神戸で開催される。出席希望者は、添付ファイルを参照していただきたい。未だ間に合うそうである。「090908.doc」をダウンロード

 WTO加盟後のベトナムは、非常に真面目に加盟条件の遵守を考えている。これは先日、堺市で外務省と工商省の副大臣と話す機会があり、そのときの感想である。それだけ外国からの圧力が強いという印象ももった。

 おそらく、この知的所有権保護もベトナムは真面目に取り組むに違いない。そのために「知的財産権庁」まで設置されている。今回は、この副長官が来日している。

 実は以前に、次のような出来事があった。日本のパソコンをベトナムに貸与したのだが、そのパソコンを期限が来ても返してくれない。お互いの信頼関係の貸借であるから、正式の契約書は存在しない。

 ベトナムのビジネスで契約書の作成は重要であり、あらゆる場合を想定して、できるだけ多くの条文を書き込むことが一般に重要である。契約書の内容までを無視することは、ベトナムでは少数である。トラブルが生じた場合は、ベトナム側も信用をなくすからである。このトラブルの発生は、おそらくベトナム側が契約書の「盲点」を突いているのである。

 さて前述のパソコンの返済を日本側が求めるには、どうすればよいか。ベトナムの弁護士の助言を求めると、パソコン内の知的所有権の面から返済を要求するという指摘を受けた。つまりパソコン内のソフトウェアの知的所有権は今も日本側にあり、その返済を求めるという趣旨である。そのためにベトナムのソフトウェア協会に相談することを勧められた。

 結局、パソコンは返済されたが、この出来事は、ベトナム側がソフトウェアの所有権、知的所有権の保護に関心が高いことを実証しているように思われた。

 このセミナー、私は出席したいのだが、講義がある。ここで「残念なから」と書くと、本業である講義を軽視しているように思われても困る。主催者に代わってぜひ、多数の人々に参加を呼びかけたい。

 

 

 

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2008年10月 2日 (木)

ビジネス実践の魅力とは何か?

 大学2年生のゼミが始まって、「大学とは?」「研究=学問とは?」「ゼミとは?」「ビジネスとは?」「就職とは?」「アルバイトは・・・」 といった入門的な話をしています。

 これらには多様な意見があって当然で、私の考えや見解を学生の押しつけるつもりではありません。ただし、これまで余り考えたことのない話を学生は初めて聞くのですから、その影響力は大きいと言わざるをえません。

 これらの中で「ビジネスとは?」は、実際にビジネスに関与していないと自信をもって言えない部分でしたが、自分で会社を設立してからは、少しばかりの体験に基づいた意見を言えるようになりました。最近になって気がついたことは、ビジネスが知的な興奮を伴う魅力的な体験を提供してくれると言うことです。

 学問の世界でも、もちろん知的な好奇心や興奮があり、それこそが学問の醍醐味なのですが、その対象が、どちらかといえば、静態的・固定的なものです。たとえば文献研究は重要な作業ですが、すでに書かれた文章を読み込んでいく地味な性格をもっています。そこからの知的な発見はありますが、この年齢になると、それほどの興奮はなくなります。

 新しいことを言っている著書や論文でも、「どこかでだ誰かが言っていた」というような内容を読まされると、少なくとも興奮はありません。

 これに対してビジネスは千変万化。相手が変わり、環境も変わる。毎回毎回のビジネスの商談が応用問題。この変化対応は間違いなく面白い。知的な好奇心・刺激を受けます。しかし注意すべきは、日々の応用問題に没頭すると、より新しい大きな変化(=パラダイムの転換)を見逃すかもしれないということだと思います。

 「ビジネス実践は金儲け」は事実ですが、それがすべてではありません。知的な興奮にハマってしまうと、これはやめられん・・・。おもろいで・・・。

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2008年10月 1日 (水)

ブログ復活:エネルギー総量を高める・・・

 大学の講義も始まり、私の気力が回復しました。より正確には、気力を回復させました。以前から懸案の原稿は未完成ですが、ブログは再開したいと思います。もちろん原稿も超人的に頑張ります。

 執筆のエネルギー(=気力・士気・意欲)を原稿に「集中」するためにブログを休載していましたが、ブログの休載によって、このエネルギー総量の水準が低下したようです。これは「集中」から派生する悪影響というべきものです。

 これに類似したことは企業経営にも発生するように思われます。現在は経営資源の「選択と集中」の時代と一般に指摘されていますが、これは要するに、従来の「拡大成長路線」が継続できなくなったことを意味しています。

 「選択と集中」では、必ず「選択されない」部署(=人間)が発生します。そういった人々のエネルギーは低下して、全体としてのエネルギーは低下する。そうなれば、「選択と集中」の成果は予想外に低いかもしれません。「行け行けドンドン」という拡大成長路線が、全体のエネルギーの総量を高めることは間違いないと思います。特に私の場合は・・・。

 先週末、私の高等学校(甲陽学院)の同窓生が突然に亡くなりました。神戸大学医学部の講師をして現在は神戸市西区で眼科医を開業していました。原因は多忙な仕事のようです。彼には何度か眼科手術のことで相談したことがあります。ご冥福をお祈りしたいと思います。こういうことがあると、改めて健康に注意しなければと再認識できます。私にとって拡大成長路線の制約条件は健康問題です。

 ベトナムの証券投資ファンド会社ロータス社は、いよいよ上場を目標に増資をすることになりました。世界的な金融危機の状況下ですが、ベトナムの株式市場は直接には影響を受けていません。本年5月に「ベトナム通貨危機説」を唱えた米国投資銀行が、自ら金融危機を迎えることになりました。強大な戦力を誇った米国軍が敗退したアメリカ戦争(=ベトナム戦争)を思わせる「皮肉」のように思われます。

 世界経済の停滞でベトナムの輸出は減退するでしょうが、かえってインフレ抑制効果があり、ベトナム経済にとって好都合かもしれません。ベトナム経済の堅調な成長が期待されます。このことは、ベトナム株式市場に好影響を与えないはずがありません。すでにベトナム証券関係者は、昨年からの「バブル崩壊」を体験し、そこから多数の教訓を学んでいます。「黎明期」の熱気を経て、着実な「成長期」に入った。これがベトナム株式市場の現段階と言えます。では、次の熱気はどこに移るか? おそらく間違いなく、カンボジア・ラオスです。

 「行け行けドンドン」の拡大成長路線によって、エネルギーの総量を高める。これは、「選択と集中」路線が主流となっている日本を舞台にしては無理かもしれませんが、ベトナム・ラオス・カンボジアでは可能なことだと思います。日本国内で「選択と集中」なんて気取っていないで、ガンガン前進できる新しい舞台(=国)を見つける。日本の経済社会を活性化する一つの方法であると思います。

 今後とも、よろしく本ブログをお願い申し上げます。

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