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2008年7月 8日 (火)

カンボジア情報:新川加奈子『カンボジア今』を読む(8・最終回):カンボジア経済の状況

 カンボジア関係の書籍の中で、最も古く入手したものは先日に紹介した中村梧郎『この目で見たカンボジア』(大月書店、1979年)であるが、表題の新川加奈子氏の著書は最も新しい。その内容を連載で紹介・検討してきたが、今回は最後に、最近の経済状況についての指摘を考察してみよう。

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 新川氏は、カンボジア経済の特徴を3点指摘している。「1つは、ODA依存(2国間援助によるODA総計額はカンボジアの国家予算の4割に相当し、一番の拠出機関は日本)であること。2つ目は国民からの所得税が存在せず、税収入は国家予算の約9%であること。3番目は、強固な全国的経済圏が形成されていないことである。

 基幹産業は農業であり、GDPの3分の1を占め、就業人口の7割を吸収している。観光に代表されるサービス業、縫製・製靴などの製造業が成長分野とされているが、観光業は,アンコールワット周辺に凝縮されており今後の伸びは期待されない。製造業は中国の底力に押され、伸び悩みが今後予想さzれる。・・・・・・カンボジア経済において「安価な労働力」が唯一の好条件であり、物理的インフラの整備、法の支配の確立、透明性のある行政運営等、依然として課題は多いために、今後の大きな経済発展は望めない」(p.93)。

 新川氏がベトナムを旅行して気がついたこととして、「社会主義国ベトナムでは、制服を着た公務員が多く見受けられる。・・・・・・長期にわたるベトナム戦争によって破壊された社会が、この数年で目覚しい経済発展をとげているが、その理由の一つは、公務員の安定性ではないだろうか」(p.104)。

shineコメントshine: 私のベトナムやラオスの経験から言えば、やはり現地の滞在が長ければ長いほど、より正確に言えば、現地の人々との交流が長ければ長いほど、その国を理解できる。この意味で、新川氏は私よりも遙かにカンボジアに精通されている。

 しかし、カンボジアについて「今後の大きな経済発展は望めない」と言われることには、やや驚いた。新川氏も著書で指摘されているように、王立プノンペン大学の卒業生やODAによる外国留学生といった優秀な人材が育成されている。こういった人材を吸収する外国企業が増えている思われる。また、海外在住のカンボジア人が本国に帰国・投資する事例も増えている。また国内観光地として、シハヌークビル周辺の海岸や島がリゾート地として期待できる。

 カンボジアがいくつかの有力財閥が存在した王国であることを考えれば、タイ国に似た発展過程を取るように思われる。このような発展の大きな潮流の中に隣国ベトナムや華僑(中国人)の影響が合流して、カンボジア独自の流れが形成されるような印象を私はもっている。

 なお、ベトナムの公務員の制服着用は、これまで普通の風景であっただけに新鮮な指摘であった。なるほど、新川氏の指摘の通りかもしれない。国家の統制は、少なくともインドシナ3カ国においてベトナムが最も強力である。

 ただし、この強力な国家が、近年に台頭してきた富裕層(民間大企業)と一般国民さらに貧困層をどのように調整するかは、今後のベトナムにとって大きな課題であろう。これに対してカンボジアは、民間の財閥企業と外国企業の主導の下に経済発展することが明白である。国家の役割が小さいだけに、経済成長の中で発生する問題は単純化できると言えるのではないか。

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