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2008年7月16日 (水)

ベトナムは「正念場」を乗り越えたか?

 『日本経済新聞』長谷川岳志・ハノイ支局長は、「点検・新興国経済ベトナム」という記事で、次のような見出しでベトナム経済の懸念材料を報道した(2008年6月25日)。

 annoyインフレ加速、市場混乱annoy annoy株・通貨安、金融政策は後手にannoy annoy不透明感、外資誘致に影もannoy

 長谷川さんとは、ハノイで以前にお目にかかったことがある。ベトナムに赴任される前は、兜町を取材されており、金融証券の専門家である。その長谷川さんが、以上のような記事を書かれるのだから、それは説得力がある。そして何と言っても『日経』である。その影響力は大きい。

 さらに、この記事の中で登場する古川さんは、私がJICA短期専門家としてラオスに滞在していた2001年に、同じくラオスにJICA長期専門家として赴任されており、何度かお話をしたことがある。私にとってラオスの大先輩である。その古川さんのコメントは、次のように紹介されている。

 「日銀OBで国際協力機構(JICA)専門家としてベトナム経済の分析に当たる古川久継氏は「不動産価格の急騰が顕著になった昨年夏の時点で金融引き締めを強化すべきだった」として、金融政策が後手に回ったと指摘する」。

 古川さんの指摘それ自体は納得せざるをえない。しかし昨年夏の時点で、私の知る限り、このような指摘は皆無であった。この時点で株価が軟調になり、それに代わって不動産価格が上昇した。これは当時、株式から不動産(=実物資産)に資金が移動したと解釈されていた。

 この急騰した不動産価格も今や下落したが、それがベトナムでは「買い局面」とみなされている。この現状は株価についても同様である。以上のようにベトナム経済は、、まさに市場経済そのものである。

 私見では、生真面目なベトナム政府は、市場経済を導入するとなれば、本気で市場経済を実践しようとしている。その延長でWTO(世界貿易機構)にまで加盟を果たした。ただし「社会主義国家」を目標とするベトナム政府は、自由放任の市場経済ではなく、市場を管理・規制したいと考えている。そこで日本の高度経済成長を実現した経済政策・産業政策を参考にしようとした。このような事情が、日本とベトナムの間における経済・社会・外交の深い関係の基盤となっている。

 自由放任の市場経済では「勝ち組」と「負け組」が生まれる。民間企業は、当然に「勝ち組」になろうとするし、そのために自由放任の市場経済メカニズムを最大限に利用しようとする。そうなれば、ベトナム政府が意図するような「市場の管理・規制」は民間企業にとって迷惑である。民間企業の政府規制に対する不満・批判の発生が予想される。この事情は現代の日本も同様であろう。

 これまでのベトナム政府は、その国家運営において調和・調整・合意を重視してきた。この意味で、民間企業が自由放任の市場経済を希求し、それに対する規制・管理を好まないとすれば、ベトナム政府は昨年夏の時点で「金融引き締め」政策を採用できなかったのではないか? 金融政策よりも政治の安定を優先させたのである。古川さんの指摘に対して、ベトナム政府を弁護するとすれば、このように説明できる。

 長谷川さんは、「これまで経験のなかった世界経済との連動や急速な成長をコントロールし、足元の不安定な経済を軟着陸させることができるか。ベトナムは正念場を迎えている」と最後に指摘されている。

 これに私も同意する。しかし私が強調したいことは、これまでのベトナムの歴史を見れば、現在よりも困難な「正念場」を乗り越えてきた実績をもっているということである。ベトナム政府は、ベトナム戦争・カンボジア紛争、さらに中国による1979年のベトナム侵略から学習している。これまでの歴史的な経験から教訓を積み重ねている。それが「全方位外交」という基本政策が採用され、それが国連の安全保障理事会・非常任理事国の地位を獲得するまでに至っている。

 この歴史的な事実を考慮すれば、今回のベトナム経済危機の懸念についても、政府は重要な教訓にしているはずである。これが正しいとすれば、たとえ最悪の事態として国際通貨基金(IMF)の緊急融資を受けようとも、それはベトナムの教訓となり、長期的な経済成長が継続するであろう。 

 長谷川さんが指摘されるようにベトナム経済の停滞・低迷が懸念されたが、それは今や解消しつつある。古川さんが指摘された「金融引き締め」が実行され、その効果が着実に現実の経済に反映されているからである。

 私が以前に述べたように、ベトナムを「蟻の眼」で見ると、その欠陥・問題点が山積している。「鳥の眼」や「魚の眼」で見れば、ベトナムは「正念場」を見事に乗り越えていくと思われる。

 

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