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2008年7月20日 (日)

NHK衛星放送:地球特派員2008「激変ベトナム最前線~チャイナプラスワン戦略を追う~」を見る

 土曜日・午後にベトナム中小企業について講演して、その日の夜に上記のベトナムビジネスのテレビを見た。実は、午後3時45分からのベトナム講演前、午後1時から恒例の「ラオス清掃ボランティア活動」の説明会を同じ場所で開催した。このように土曜日はラオス・ベトナムの日であった。

 表題のNHKテレビは、エコノミスト伊藤洋一氏のハノイ取材で構成されていた。取材先は次のようであった。日系企業ではTOTO社、そのほかに韓国系企業のグローバルMFG社、台湾企業のパソコンメーカー・コンパル社、同じく台湾のプラスティック金型成形のドラゴン=ジェット社、さらに計画投資省のダット副大臣、また住友商事が開発したタンロン工業団地周辺の出稼ぎ労働者の自宅を訪問していた。

 このタンロン工業団地に隣接する村は、空港からハノイ市内を通ると、いつも若者で溢れている様子が車窓から見える。「お祭りでもあるんですか」というような人出である。この村の取材は私もやってみたかった。中国進出の日系企業なら工業団地内の従業員寮に一般に住まわせるのだが、ベトナムでは住居は自由にさせている。これまで労働力が豊富で、周辺から労働者が集まってきたから、ベトナムで寮は必要なかった。この中国とベトナムの相違は、両者の労働力に何か影響を及ぼすのであろうか。興味あるテーマである。

 ベトナムの場合、かつての日本企業と同様に寮を建設した方が、労働者の定着率や愛社精神・相互協力の姿勢が高まると私は予想している。私の知る限り、寮を建設しているのは、日系企業ではエースコック=ベトナム社である。短期の日本人出張者は、この寮に宿泊すればよいのだ。従業員と同じ場所に住んで、同じものを食べる。こんな日本企業があれば、ベトナムで成功する可能性は高い。ベトナム人は、こういうことに感激する。意気に感じる。

 また取材ではランソンの中国国境まで足を運び、中国・広州を中心とする華南地方とベトナム間が「中越回廊」道路を通して経済交流が拡大する現状が紹介された。また中国・昆明が「すそ野産業」の集積地であり、その関係も深まる。2015年には中国とASEANの経済統合が完成し、それにより、18億人の経済圏ができると指摘された。

 韓国企業・台湾企業の取材は、さすがにNHKである。これは、日本企業にとって貴重な情報源となる。多数の日系企業は日系企業間での情報交換に終始するからである。リスクに対してより寛容な韓国や台湾の企業経営者の見解は、日本企業にとって参考になるであろう。

 私が特に注目したい会社は、台湾のドラゴン=ジェット社である。典型的な「中国プラスワン戦略」の企業だからである。社長は台湾人だが、すでに進出した中国の管理者を15名連れてきて、ベトナム人700名を指導している。

 中国人管理者にベトナム人労働者を指導させることについて、私は問題が生じるのではないかと指摘したことがある。中国人が偉そうにでもしたら、ベトナム人労働者は猛反発するであろう。ただし考えてみれば、中国人であろうが、日本人であろうが、韓国人であろうが、ベトナム人は偉そうにする人は嫌いである。この意味で、上記のドラゴンジェット社が順調に操業しているとすれば、その中国人管理者の技術的・人間的な力量は高く評価できる。

 ベトナム政府のインフレ対策が「後手」に回ったという指摘があった。この「後手」というのは、いつものこととも考えられる。何か問題があっても、それが深刻になるまでは放置される。誰も責任を取りたくない体質がベトナム人にもある。より卑近な実例では、昨年12月に実施されたバイクのヘルメット着用の義務化がそうであった。この義務化を数年前に実施しておけば、交通事故死はもっと早くに減少していたはずだ。

 政策を的確なタイミングで実施することは、ベトナムのみならず日本でも米国でも難しい。日本の「バブル経済」時の政策は的確だったのだろうか。最近のサブプライム・ローンの破綻に対して米国の対応は的確なのだろうか。このように考えれば、WTO加盟を果たして世界経済に乗り出したばかりのベトナム政府は健闘していると言わざるをえない。

 当面最大の問題は、現在の金融引き締め政策の緩和のタイミングであろう。これについては機会を改めて議論してみよう。

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