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2008年7月12日 (土)

フィリップ=コトラー他『ASEANマーケティング:成功企業の地域戦略とグローバル価値創造』マグロウヒル・エデュケーション、2007年。

 マーケティングの教祖であるフィリップ=コトラー教授(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院)が、昨年8月にベトナムのホーチミン市で講演し、その様子がテレビでも放映されたことは本ブログでも紹介した(2007年9月2日・22日)。

 なぜコトラー教授がベトナム訪問したのか? それは表題の書籍の出版と関係があったのだ。原著名は、Think ASEAN! ベトナムの成功事例(清涼炭酸飲料水・ナンバーワン)も含まれており、そのほかにPho 24にも言及している。本書によって、コトラー教授がベトナムを含むアセアン諸国に深い関心を寄せていることが理解できた。

ASEANマーケティング―成功企業の地域戦略とグローバル価値創造 (マグロウヒル・ビジネス・プロフェッショナル・シリーズ) Book ASEANマーケティング―成功企業の地域戦略とグローバル価値創造 (マグロウヒル・ビジネス・プロフェッショナル・シリーズ)

著者:フィリップ・コトラー,ホイ・デンフアン,ヘルマワン・カルタジャヤ
販売元:日本出版貿易
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 本書は、その副題を見ても理解できるように、各国の多様性(「地域戦略」)と統一戦略(「グローバル価値創造」)を両立させた企業がアセアン諸国で成功することを具体的な企業事例に基づいて主張している。そのための方法として、伝統的な分析概念であるポジショニング・差別化・ブランドの3つを使用する。これらの相互の連携が効果的・効率的に機能すれば、どのような国においても企業は成功することが示されている。

 たとえば日本で成功した製品戦略だからと言って、それが中国で成功するとは限らない。さらに言えば、中国の北京で成功しても、それと同じことが広州では成功しないかもしれない。また中国での成功が、必ずしもベトナムの成功につながらない。それぞれの成功の時期もしくは時代背景が異なっているし、各国・各地域の民族・社会・習慣・慣行・市場構造が相違しているからである。それらの多様性に対応した前述のポジショニングや差別化が的確に分析・検討されなければならない。そのことが、国家や地域を超えた統一されたブランドの形成をもたらす。そして、そのブランド形成が、さらに新たなポジショニングや差別化の戦略を必要とする。本書は、このようなことを説得的に教えてくれる。

 本書の豊富な成功事例は、そのままでは外国で通用しない。どのような修正・改善・応用が必要なのか。たとえばシンガポールで成功した「ブレッド・トーク」(焼きたてのパン屋さん)から日本のパン屋さんが学ぶことは何か。この「ブレッド=トーク」が、たとえばベトナム進出する場合、留意点は何か。本書の事例からこういった問題を設定して討論することは、国際ビジネスまたは国際マーケティングの思考方法を深める絶好の訓練となる。

 日本のビジネス=パーソンや学生のみならず、広くアセアン諸国の人々に読んでもらいたい著書である。

annoy追記annoy:シンガポールの「ブレッド=トーク」の事例で感心したことは、次の点である。①パンを贈り物のレベルに向上させたこと。②台湾地震の時にはそれに応じたパンを創作するなど、商品開発に社会性があること。③「焼きたてパン屋」の単なる「香り」のみならず視覚的に好印象の店舗づくりをしていること。④新製品を次々に発売して顧客を飽きさせないこと。日本で乱立気味の「焼きたてパン屋」さんにとって、これらのことは教訓となるであろう。

 

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