« カンボジア情報:新川加奈子『カンボジア今』を読む(8・最終回):カンボジア経済の状況 | トップページ | ベトナムの流通事情:消費者行動の分析(下) »

2008年7月 9日 (水)

ベトナムの流通事情:消費者行動の分析(上)

 神戸大学大学院経営学研究科の丸山教授と大学院博士課程のチュン(Trung)氏の次の論文から、ベトナムの流通事情や消費者行動の実態を知ることができる。以下では、その要点を紹介する。

 丸山雅祥・Le=Viet=Trung「移行期経済諸国の流通革命に関する実証研究―ハノイにおける消費者行動のプロビット分析―」神戸大学経済経営学会『国民経済雑誌』第197巻第2号、2008年2月、pp.21-36。

 すでにベトナムには、次のような外資系スーパーマーケットが進出している。ドイツのMETRO、フランスのBIGC,台湾のユニマート。さらにロッテマートが本年3月に店舗を建設中であった。このような外資系スーパーに加えて、COOPマートなど国内スーパーがあり、さらにG7マートなどいくつかのコンビニエンスストアもチェーン展開している。

 他方、伝統的なCHO「市場(いちば)」も健在である。また街頭には、野菜・果物・花を売る「おしん」と呼ばれる行商がいるし、家電製品・木工品・衣料品などの店舗の集積も見られる。以上の小売業の概観は、私の文字通り「私見」であり、それらを体系的に調査したわけではない。

 これに対して本論文は、ベトナムのハノイにおける2000件の家計に質問票を送付し、その中の有効回答413件から、消費者の選好や行動を定量的に分析している。このような実証的・定量的な消費者行動の分析は、これまで皆無であり、それが本研究の優れた独自性・独創性である。

 まず、ベトナムの流通構造について歴史が概観される。旧ソ連型の配給制度における禁制品や密売人の存在の指摘や、「人々は米や肉が収納できるように工夫した「重ね着」をまとうなど、あらゆる手段を使って監視の目をくぐろうとした」(p.23)といった記述が注目される。「重ね着」は、ハノイの冬なら利用可能だが、夏はどうしていたのだろうか? このような状況を想像すれば、当時は「暗黒時代」であった。大多数のベトナム人が、現在の市場経済を強く支持していることが理解できる。本論文は、学術的な価値は当然高いのだが、こういった新たな情報提供も興味深い。

 ベトナム政府の流通政策として、外資系スーパーの導入と規制緩和によって流通近代化を進めると同時に、既存の伝統市場を近代化するために優遇措置を講じることが指摘されている(Decision No.559/QD-TTg、2004年5月31日)。この決定の目標期限が2010年である(p.24)。この進捗状況はどうなっているのであろうか? 

 本論文では、食料品の流通チャネルを図示し(p.25)、さらに伝統的な小売業態を次のように分類する。公設市場、フロッグ=マーケット、家族従業の零細店、スーパーマーケット。この中で「フロッグ=マーケット」とは露天商のことであり、警察の取り締まりの強化にもかかわらず、依然として健在である。こういった「商人たちの不屈の精神」(p.26)を本論文ではやや肯定的に紹介しているように私には思われる。

 分析結果として、回答者413名の消費者行動の詳細が紹介される。消費者がスーパーで買い物する理由の上位は「セルフサービス」(80.7%)、「品質の保証」(76.3%)、「定価販売」(75.6%)、「ユニークな商品の発見」(61.6%)、「ワンストップショッピングの利便性」(60.1%)となっている。またスーパーでの購入品目は、「トイレタリー関連商品」、「家庭用品」、「菓子」、「冷凍食品」、「飲料品」、「加工食品」となっている。

(以下、続く)

|

« カンボジア情報:新川加奈子『カンボジア今』を読む(8・最終回):カンボジア経済の状況 | トップページ | ベトナムの流通事情:消費者行動の分析(下) »