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2008年6月 6日 (金)

カンボジアの証券法について(2):ベトナム法との比較

 カンボジア証券法は10章58条から成っている。ベトナム証券法が11章136条(2006年6月29日成立)と言うことを考えれば、非常に簡潔な法律内容と言える。

 さらにベトナムには、すでに本ブログで紹介した証券法施行細則(6章31条、2007年1月19日成立)がある。かつてベトナム国会の法律の「生産性」が低いという指摘があったが、このように比較してみれば、なかなかベトナムは健闘している。さて以下では、カンボジア証券法の第1章を紹介する。

第1章 総則

第1条 基本方針
 この法律の基本方針は、証券取引所・清算決済機関・証券保管所・証券市場において金融サービスを取引または提供する業者のみならず、公開有限会社あるいは証券発行を認可された事業者を規制することである。この法律は、投資の資金需要を満たすために、一般大衆すなわち証券投資家からの資本を動員することを通して、社会経済の発展に貢献する。

第2条 この法律の目的
 この法律の趣旨は次の通りである:
 1.一般投資家の法的権利を保護することによって、および証券の売り出し・発行・買い付け・販売が公正で整然と実施されることを保証することによって、カンボジア王国における一般投資家の信頼を深化・維持する。
 2.証券市場の効果的な規制、その効率性および整然とした発展を促進する。
 3.証券および他の金融商品の購入を通して貯蓄手段の多様化を促進する。
 4.カンボジア王国の証券市場における外国の投資と資本参加を奨励する。
 5.カンボジア王国における国有企業の民営化の促進を支援する。

第3条 範囲
 この法律は、カンボジア王国における非政府証券取引を対象としている。

第4条 定義
 この法律で使用される用語は、付記される用語解説において定義される。

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 (1)第1条はobjective。第2条はpurpose。どちらも目的の意味があるが、前者を「基本方針」、後者を「目的」と邦訳した。また、カンボジア証券法は「非政府証券」を対象としてる(第3条)。このことは、政府証券つまり国債の発行は別途に規定するという意味であろう。

 (2)ベトナム証券法では、こういった基本方針や目的に相当する条文は、第5条で次のように記載されている。

第5条 証券市場育成の政策
 1.国家は、各経済セクター、人民各階層に所属する組織、個人が発展投資のために中長期の資金調達をめざして証券市場における投資と活動に参加することを奨励し、有利な条件を整える政策を執る。
 2.国家は、証券市場が公平・公開・透明・安全で効果的な活動を行うよう保証する管理・監察政策を執る。
 3.国家は、証券市場のインフラストラクチュアを現代化し、証券部門の人材を育成するとともに、証券および証券市場に関する知識を宣伝、普及する投資政策を執る。

 以上のように、ベトナムでは証券法において国家の役割や任務が明確に指摘されている。さらに人材育成・技術革新・普及宣伝にまで言及している。これに対してカンボジアでは法律それ自体の目的・趣旨が記載されるだけである。

 本来、人材育成や技術革新などは、民間証券会社が競争的に自由に行うことが市場経済とみなされる。これに対してベトナムは、国家がなすべきこととして法律で規定している。ベトナムが「法治国家」を指向しており、国家が市場を管理することを明記していると指摘できる。このことは、ベトナム証券法の第7条の1と2において、次のように述べられている。

第7条 証券および証券市場への国家管理
 1.政府は、証券および証券市場について統一的に国家管理を行う。
 2.財務省は、証券および証券市場の国家管理について政府に対して責任を負い、以下の任務と権限を有する:(以下、省略)

 以上、カンボジア証券法は、ベトナム証券法に比較して、国家管理の色合いが薄く、「自由度」が高いと特徴づけることができる。このことは、ベトナムより以上に「投機的」な市場が創出されると予想される。

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