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2008年6月16日 (月)

為替市場の規制と自由化:為替レートの二重性

 長期的に見て、食糧や鉱物資源を始めとする資源大国であるベトナムは、これまでの「ドン安」傾向から「ドン高」に移行すると思われる。しかし当面、「ドン安」傾向が続いている。これは、すでに指摘したように私見では、USドルの国外流出ではなく、国内の投機と外貨準備のためである。

 この「ドン安」傾向は、輸出企業にとって「追い風」となる。インフレの状態に依存するが、たとえばUSドルの支払い賃金は一定でも、労働者の受け取るドン建て賃金は上昇する。これまでのベトナムがそうであった。

 ただし今日、実際のビジネス現場では、ドンをUSドルに転換できない状況が生まれている。政府が、銀行を通して外貨流出を抑制しているのである。ドン建ての預金があっても、それがUSドルに転換できなければ、国際的には「紙くず」を保有していることと同じである。たとえば輸入企業は、USドルが調達できないので、輸入代金の支払いができない。

 このような現状を回避するために、ベトナムでは「闇市場」(=自由市場)が存在していた。為替は、公定レートと実勢レートの二重レートとなるが、その乖離は大きくなく、これまで両者は共存してきた。

 政府は、銀行を通した決済を監視することができるから、その範囲内で為替管理が可能である。しかし「闇市場」(=自由市場)における為替取引を政府は管理できない。しかし、この両者が補完的に機能してきた。民間企業は、正規の為替取引をしながら、必要に迫られる場合は闇市場を利用する。換言すれば、政府の顔を立てながらも、他方では自由に取引する。

 一定の闇市場の存在は、政府の為替管理が徹底しないという欠点をもつが、実際のビジネスでは「必要悪」であった。

 このような為替市場の二重性は、途上国ではよく見られる。ミャンマーもそうである。2003年時の私の経験では、公式レートと実勢レートの乖離が、正確に記憶していないが、数倍というレベルではなく、それ以上であった。これに対して、潔癖なミャンマー軍事政府は、公式レートに統一するために「闇市場」の取り締まりを強化した。そうなれば、通常の貿易は不可能である。これで経済は大混乱を招いた。flairflair:ミャンマーについては「民主化」問題に関心が集まるが、このような経済問題の解決や是正が当面は強く望まれる。

 ベトナム政府が、今日の為替市場を厳格に管理するために「闇市場」を取り締まればどうなるか? さらに暗く潜伏した「闇市場」が形成されるだけである。外貨準備が十分な水準になるまでの過渡的な段階として、こういった為替市場の二重性はやむをえないと思われる。

 事実、政府が市場を管理する場合、その管理の及ばない市場の存在を敢えて容認することが有効ではないか? 自動車のブレーキを踏む場合の「遊び」のようなものである。この詳細なメカニズムの究明は、開発経済における研究テーマにもなりうるように感じる。

 

 

 

 

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