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2008年5月28日 (水)

イオンとダイエー:特別講義の紹介

 流通科学大学の「実学」講義の一環である「21世紀の業界展望」では、学外の実務家の方々を特別講師として迎えて、ご講義を賜っている。そこで流通業界については以下の講義が開講された。

5月7日(水):イオン株式会社 西日本カンパニー人事教育部部長 田中恒星氏
「真のグローカル企業を目指して:新たな成長に向けた変革と挑戦」

5月14日(水):株式会社ダイエー 人事・人材開発本部人事企画部 久保 敦氏
「21世紀の業界展望:小売業再編の中で」

 かつては強力なライバル関係にあった両社も、今ではイオングループの一員として、それぞれの個性を競う関係に変化しているように思われた。

 イオンの田中氏は、少子高齢化の日本社会をグローバル化で乗り切ることを明言された。このように紹介すると、攻撃的な企業のように思われるのだが、他方で、「創業250年」の伝統と「社会貢献」の重要性が指摘された。流通最大手企業の風格を感じた。

 イオンの前身である岡田屋の次の家訓が印象深い。
 1.下げて儲けろ、上げて儲けるな。
 2.大黒柱に車をつけよ。


 1は価格のことである。「便乗値上げ」で儲けるなんてとんでもない 誠実な商売をするという意味である。2は即座に理解できない。「動かしてはいけ不動のものに車輪を付けて変化に対応する」という意味である。この家訓によってイオンは「変化に対して抵抗がない」。

 ダイエーの久保氏は、流通小売業界におけるダイエーの先駆性を強調された。創業者・中内功の開拓者・革命家としての情熱が社内に継承されていると感じた。流通小売業において利益率を上げると同時に販売価格を下げる「切り札」とも言えるPB(プライベート=ブランド)は、ダイエーによって最初に開発された。

 1961年:インスタントコーヒー。1964年:ブルーマウンティングンゼ(下着)。1970年:ブブ(カラーテレビ)・・・。1980年にPBの総称「セービング」が発売され、その後に2回の改訂を経て、1996年には「プライベートブランド製造業者協会」の優秀賞を受賞した。そして2007年にイオンの「トップバリュー」がダイエーで販売開始され、「セービング」は歴史の歩みを終えた。

 ダイエーは、「小売業界の先駆者として業界や社会に対して大きな影響を与えてきた」。これは、だれもが認める事実である。このDNAをダイエーが継承することで、イオングループの中にあっても、その個性を今後も発揮できる。また、そうあってほしと私は思う。

 注:イオンは本年8月に純粋持株会社を設立し、その傘下にグループ企業を集約させる。このことは、イオンがダイエーの株式を所有するのではなく、この持株会社がイオンやダイエーの株式を所有することを意味する。持株会社がグループ企業を統括し、それと同時にグループ各企業は、より独立性や個性を発揮できる。イオンの大黒柱に車をつける方法で、ダイエーの開拓DNAが温存されたとみなされる。

 

 

 

 

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