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2008年5月27日 (火)

熊岡路矢『カンボジア最前線』岩波新書を読む:1993年までのカンボジア(下)

 カンボジアにおけるポル・ポト派は、熊岡路矢氏から次のように指摘されている。

 「どんなイデオロギーであれ、これだけ人間を(カンボジア人に対しても、外国人に対しても)物のように、またゴミやがらくたのように扱えるポルポト派に対し、強い違和感を感じた。「旧体制の人間、都市住民、知識人、われわれに反抗する奴らは、田畑の肥料になることで役立つしかない」という有名なポルポト派のおどかしと、実際ストレートにこの言葉を実行してしまう荒々しさは、破壊的ニヒリズムぬきには理解できない」(p.48)。

 このような国際的・歴史的に類例を見ないような凶悪なポル・ポト派を政権から追放したベトナム自身は、おそらく「正義」を実行し、国際社会からも賞賛されると思っていたのではないか。しかし実際は、大虐殺を行ったポル・ポト派を含む反ソ連・反ベトナムの「民主カンプチア」政権が依然として国連で承認され続けた。

 他方、ベトナムに支援されカンボジアの大部分を実効支配したヘン・サムリン「カンプチア人民共和国」政府は、「ソ連・東欧諸国・ベトナム・ラオス・キューバなどが承認するに留まり、中立的な立場からはインド一カ国が国交を樹立した」(p.174)。ヘン・サムリン政権は国際社会からの開発援助を受けることができなかった。このことは「「援助」の政治性が指摘されるポイントである」(p.174)。

 ベトナムに対しては、おそらくベトナムが想定していた国際的な賞賛どころか非難と制裁が待ち受けていた。

 イラクのフセイン政権を打倒するためにイラク侵略した米国は、自国の行為を「正義」と広言している。他方、おそらく米国より以上にカンボジアで「正義」を実現したベトナムが非難された。カンボジア情勢が正確に伝達されていなかったからである。また伝達されていたとしても、政治的な観点からベトナムが非難された。公平に見て、これは理不尽である。近い将来に開廷される予定の法定では、ポル・ポト派の犯罪を裁くと同時に、ベトナムの名誉回復がなされてもよいと思われる。

 このようなベトナムやヘン・サムリン政権に対して、カンボジアの人々の中には次のような感情をもつ人がいる。「ポル・ポト時代に家族を殺されました。憎いです。しかし、カンボジアを乗っ取ろうとしているベトナムと、これに協力してきたプノンペン政権はもっと嫌いです」(p.204)。

 おそらく現在のカンボジア人であっても、以上のようなベトナムに対する感情をもっている人がいるであろうことをベトナム人・ベトナム企業は念頭に置いて、カンボジアでのビジネス活動を検討しなければならない。

 

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