« 名古屋でお会いしましょう:ベトナム講演会のお知らせ | トップページ | ベトナム金融政策に提言:金融引き締めの継続とベンチャー投資の促進 »

2008年4月16日 (水)

ベトナムのインフレ対策は「悪循環」を生む懸念がある!

 ベトナム財務省が発行するVIETNAM FINANCIAL REVIEW(No.03(No.12), March, 2008, pp.4-5)は、貿易大学のグエン=ヴァン=ミン博士によるインフレーションとの戦いという巻頭のコメントを掲載している。

 ベトナム政府の政策動向を予測する場合、ミン博士のような非政府系エコノミストの見解は重視されなければならない。私的な意見として公表されているが、その反応もしくは反響を政府は注視しているからである。このような手順を踏んで世論の動向を政府は探っていると考えられる。政府の公式発表だけを信用すると、思わぬ判断ミスをすることもある。

 さて前掲の記事でミン博士は次のように述べている。
 インフレーションを抑制するために政府は厳格な金融政策を採用しなければならない。
第1に、商業銀行に対して支払準備比率を10%から11%に強制的に引き上げさせた。
第2に、2月1日から3つの主要な金利を上昇させた。基準金利を年8.25%から8.75%、借り換え金利を6.5%から7.5%、割引金利を4.5%から6.0%に引き上げた。これは、ベトナム通貨ドンの魅力を増加させて、実物市場における通貨流通の減少を目的としている。

 最近の最も極端な施策は、年7.8%の国債20兆3千億ドン(12億6875万ドル:1ドル=16000ドン)の強制的な発行であった。すべての商業銀行は、公平な割合で国債を購入しなければならなかった。ベトナム投資開発銀行(BIDV)、産業商業銀行(Incombank)、ベトナム貿易銀行(VCB)は、それぞれ3兆ドン(1億8750万ドル)を購入しなければならない。またACBは1兆5千万ドン、サコムバンクは1兆2千億ドンである。テコムバンク・エクシムバンク・ドンアを始めとする他行は、それぞれ5千億ドンを購入しなければならない。これは、通貨流通市場からの過去最大の通貨引き上げである。 

 政府のインフレ-ション管理は当然である。しかし商業銀行では預金金利が10%~12%であるにもかかわらず、上記の7.8%の国債購入を強制される。商業銀行にとって損失の発生は明らかである。結果として、貸出金利は年15%以上となり、企業は資金不足に陥る。これは生産コストの上昇を招き、さらにインフレーションを悪化させる。 

 マクロ経済を安定させ、インフレーションを沈静化し、生活水準を改善する中央銀行(SBV:ベトナム国家銀行)の対策は、実際には反対の結果をもたらす。これらの対策は、自らの責任を企業や国民に転化し、長期的な結論として悲劇を生む可能性が高い。

 インフレーションは今後も継続すると予想される。これまでの金融引き締め政策は時代遅れとみなされる。さらに金利の高騰は民間企業にとって厳しいが、他方、国家予算に組み込まれた国営企業にとってその混乱は小さい。

 ミン博士は、これらの事情を考慮した包括的な解決策が望まれることを指摘するが、具体的な政策手順を提示していない。しかし現在の政府および中央銀行の施策が、経済悪化の悪循環を招くという批判的見地を明示している。

 私見では、貧困層に対する十分な保護や支援を考慮しながら、また自然環境(=公害対策)に配慮しながら、高物価・高賃金といった拡大成長路線を進めることが、上記の「悪循環」を断ち切る方法ではないかと思われる。

 そのためには、高金利による資金調達の困難性をエクイティファイナンス(新株発行による資金調達)によって克服する視点が必要ではないか。この資金供給源として、株式市場における外国投資が改めて注目される。第2次株式投資ブームの到来が期待・予想される。

|

« 名古屋でお会いしましょう:ベトナム講演会のお知らせ | トップページ | ベトナム金融政策に提言:金融引き締めの継続とベンチャー投資の促進 »