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2008年4月30日 (水)

ベトナムでの聖火リレー:中国国旗を振るベトナム人

 長野県で北京オリンピックの聖火リレーがあった。その後の報道によれば、韓国、そしてベトナム・ホーチミン市でも行われた。

 『朝日新聞』(2008年4月30日朝刊)によれば、29日午後6時半にドンコイ通りの市民劇場前から出発し、約10㎞を走者60人が完走したそうである。「沿道には五輪や聖火リレーを歓迎する垂れ幕が掲げられ、中国から来た「応援団」や動員された地元の共産党青年組織が中国国旗を打ち振った」。

 ここでも「中国国旗」である。ベトナム人は、どうして自国のベトナム国旗を振らないのだろうか。日本でも中国国旗ばかりが目についた。同上の『朝日』は、ベトナム国旗を掲げようとすれば、取り締まりが行われたと報道している。世界で最も愛国心が強いベトナム人は、この事態を当然不満に思うはずである。

 私見では、聖火リレーが世界各国で行われる意義は、それぞれの国で自国の聖火走者に声援を送り、その走者のみならず、その国民の「思い」を聖火に込める儀式であろう。このような過程を通して聖火は、世界の人々の様々な「思い」を集約・結集した象徴として、オリンピック開催中に競技者を見守るのではないか。

 中国人が中国国旗を振るのは当然だが、ベトナム人がベトナム国旗を振って、ベトナム走者を応援することが禁止される理由がわからない。

 確かに、もしベトナム国旗をベトナム人が振れば、その愛国心が高揚し、中国人との小競り合いが発生したのかもしれない。その理由は、同上の『朝日』も指摘しているように、チベット問題よりも南シナ海での領有権問題について、ベトナムと中国の対立が存在しているからである。軍事的な紛争解決をしないと両国政府は合意しているが、ベトナム政府の領有権問題についての説明は、国民感情を抑制するまでには至っていない。

 このように考えれば、ベトナム公安当局の対応も理解はできる。中国に対して世界が気を遣う。それほどに中国の存在感が大きくなった。この事実を中国人自身も自覚するべきであろう。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」。これを中国政府は理解できるのであろうか。

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